クローン技術は絶滅危惧種の動物を救えるか?

Why Can’t We Clone Endangered Species to Save Them?

栄枯盛衰という言葉があるように、どんな動物にも必ず「滅びる」という結末は待ち受けています。世界には数多くの絶滅危惧種が存在していますが、クローン技術で絶滅を防ぐことはできるのか? 今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、絶滅予防の観点からクローン技術が応用できるかを検証しています。

絶滅危惧種のクローン培養の是非

ハンク・グリーン氏:トラ、ゴリラ、サイ……今日、絶滅の危機に瀕している動物は近年、非常に数多く存在しています。しかし、動物のクローン化の技術が発達した今、サイの個体数が少ないことが問題であるならば、クローンで個体数を増加させればよいのではないか。そんなふうに考えたことはありませんか。

絶滅が危惧される動物のクローンは、実際に作られています。しかし、私たちが考えるほど物事は単純ではありません。結論として、種が絶滅にまで追いやられた当初の原因を解決することはできません。

成熟した細胞から作られた最初の哺乳類のクローンは、1996年に作られたヒツジのドリーにさかのぼります。ドリー以降、ネコ、イヌ、サルに至るまで、さまざまなクローンが作られており、絶滅に瀕した動物も、まもなくそのリストに載せられました。

例えば、2000年代初頭、野生の牛の一種であるガウルがクローン化されました。

同様に、絶滅に瀕した家畜や野生のヒツジ、さらにはすでに絶滅した野生のヤギに至るまで、さまざなクローンが作られました。こういった業績はすばらしいものですが、実際の種の個体数増加には繋がりませんでした。

映画などとは異なり、クローンの軍隊を生産することは、容易ではありません。クローンを生産するにはまず、通常であれば、オリジナルの生物からのDNA採取にとどまらず、DNAを注入し、胚を生成するための卵子が必要となります。さらに、生成された胚を移植して培養するための代理母が必要となります。こういった過程を実践するには、シャーレだけでは不可能です。

これだけでも大変そうですが、大前提の卵子採取からして、対象の動物にとっては難しく、危険を伴います。卵子の採取には、対象の動物について、排卵の時期、卵子の培養、放出のタイミングなど、生殖生物学の詳細な知識が要求されます。

ヒトであれば、定期的に排卵し、排卵サイクルも頻繁ですが、全ての動物が同じとは限りません。例えば、パンダの排卵は年一回のみですし、ネコのように交尾後に排卵する動物もいます。

排卵を促すためにホルモン剤を注入することもありますが、必要な量や処方は、個々の動物により異なります。

無事に排卵が行われれば、次は卵子の採取です。例えばサイであれば、体重1,700キログラムの排卵中のメスのサイに、特注の50センチメートル長の卵子採取器を用いて、卵子の採取をお願いする必要がありますが、僕であれば、やれと言われればお断りです。

もちろん、鎮静剤を使用するという手がありますし、実際に使用されていますが、リスクを伴います。動物から卵子を採取するには、複数のホルモン剤を注入し、麻酔薬を使用したり外科手術を行ったりしますが、概していえば、すべての個体がこのような過程に耐えうるほど健康状態が良いわけではありません。

さらに、卵子は多数採取する必要があります。人工授精は全てが成功するわけではないため、生存能力のある胚を得るためには、何百もの卵子を採取しなければなりません。

クローン化を阻む要因

このような過程がすべてうまくいったとしても、さらに代理懐胎を継続する代理母が必要です。代理母に関しても卵子の採取と同様に、生殖生物学の詳細な知識と、さらには、生産を予定しているクローンの数より多くの健康なメスの個体が必要です。なぜなら、移植された受精卵がすべて、健康な幼体に成長するとは限らないためです。

個体数の多い種の場合、もしくは乳牛や羊のように、人間が生態を熟知している種であれば、これはさほど大きな問題とはなりません。

しかし、トラやサイのように絶滅の危機に瀕している種である場合、クローン化を成功させるに十分なだけの頭数を揃えることができない可能性があるのです。

良いニュースとしては、これには別途に解決手段があるのです。一例として、卵子や代理母を、より一般的な数の多い種で代用できます。例えば、ガウルの赤ちゃんの代理母は、ベッシーという名のごく普通の牝牛でした。ベッシーという名は、よく牝牛につけられる名ですね。

また雑種胚には、発達の途上で問題が発生することもあります。この問題に対して、研究者たちは、冷凍した組織サンプルに遺伝子操作を行って、卵子や精子を生成することで対応しようとしています。

ですから、いつの日か、大量のメスの個体なしで、多くの卵子を生成することができるかもしれません。ただし、これはまだ、ごく初期の段階であり、個々の動物種に対応する必要もあります。いずれにせよ、こういった難問を克服する手段を見出せる可能性があるのです。

さて、思うがままに動物をクローン化することに成功したとしても、根本的な問題の解決にはなりません。クローン化により個体数が増えたとしても、遺伝がすべて同一であるため、遺伝上の多様性は失われます。個体群が近親交配を起こし、病気や遺伝子異常症が起こりやすくなってしまうため、よくありません。

別々の個体から採取した冷凍保存の組織を使用する場合は、こういった問題を回避できる上、失われた遺伝上の多様性を取り戻すこともできます。ただしこれは、これまでどれほどのストックができたかにかかってきます。

絶滅危惧種のクローン化について、真に問題となるのは、密漁や生息地の縮小など、そもそも論としての種の減少にかかわる、無数の原因を取り除くことができないことです。

また、クローン化には非常に高額なコストがかかり、研究者によっては、そのコストを密漁の撲滅や自然保護区の確保など、従来の対処方法のほうがより効果的であると指摘する者もいます。

しかし、クローン化の研究者たちは、失われた遺伝子の再現や、ごくわずかしか残らない種の保存の最後の命綱として、いつか活用されるのではないかという希望を持って研究を進めています。

しかし今のところは、トラやサイなどの保護は、従来の手段に頼るほかはないようです。

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