2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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大貫美鈴氏(以下、大貫):それでは引き続きまして、金本さんからお願いいたします。
金本成生氏(以下、金本):今日は、お招きいただきありがとうございます。スペースシフトの金本と申します。弊社は10年前に立ち上げたんですけれども、自分はもともとITの業界にいまして、システム開発や業務システム改善といったお仕事をさせていただいていたんです。
子どもの頃から宇宙が好きで、さっき美鈴さんが出していたイーロン・マスクとか、ジェフ・ベソスとか、そういうITでお金を作っている人たちが宇宙事業に入っていく状況を見ながら、自分も何かできないかなと会社を立ち上げました。
主な業務として、衛星データの解析を行っております。衛星データと言ってもいろいろなデータがあるんですけれども、とくに衛星から地球を見た地球観測データの解析を行っています。
それも、これまではカメラのように光で地面を見て、様子をうかがうのが主流だったんですけれども、だんだんレーダーが地表面を見るという技術が発達してきています。
例えば雲があったりすると、カメラで写した画像では地表面が見えないんですけれども、レーダーだと雲を透過して見えるだとか、夜間でも地上の様子がわかる。そういった衛星がたくさん飛ぶことで、24時間365日、地上の様子がわかるような時代がやって来ようとしています。
ただ、データを実際にユーザーが使えるようにするための技術というのは、未だに20年前、30年前の技術を使っているままで、どうしても衛星の画像解像度を超えて地上を見ることができないという限界がありまして、そういった「地上の様子をより詳しく見る」というような技術を自社で開発しています。
金本:今そういう技術を開発するときに、活用しているのがいわゆるAIで、AIに学習させることで、人間にはわからない変化を見られるような時代がやって来ています。
そういったものを使って、実際にどういうふうに社会に役立てていくのかということも同時に行っています。例えば、観測していると海の表面にオイルが流れ出ているものがあるんですけれども、これは海底油田から沸き上がったオイルが、海の表面上に筋のように見える現象です。こういうものを見つけますと、新しい海底油田が発見できるということです。
あとは、例えばタンカーの座礁とか、オイルの不法な廃棄というようなところも、そういった衛星の画像を使って発見することができます。それを人間が見るのではなくて、AIが発見することで、全地球を常に監視することが可能になります。
弊社で作ったソフトで、そういったデータ分析を実施していまして、全地球上のマップの作成をしています。こういったマップがそうしたエネルギー企業や政府に販売される流れになっています。
もう少し身近な例でいいますと、農作物の生産状況を宇宙から見ることもできます。おそらく農作物もたくさん作られると、その分、価格が下がることになるんですけれども、例えばキャベツの値段が下がると、主婦の方は「キャベツで献立を考えよう」ということになりますので、実はキャベツを使う「回鍋肉の素」が売れるという現象が起こっています。
例えば衛星データを使って、「2ヶ月後のキャベツの値段」が予測できたとすれば、その時に合わせて「回鍋肉の素」のCMを打つと、すごく売れるということです。そういった、毎日常に衛星が観測しているデータを使って、実際にCMや食材の販売、マーケティングに使用されている状況も生まれてきています。
大貫:どうもありがとうございました。ここからは、お二人に質問するかたちでパネルディスカッションを進めていきたいと思います。今日、質問はあらかじめ3つ用意しているんですけれども、まず1問目。
衛星データや衛星側・宇宙側の技術ではなく、地上の技術でもいいです。今、着目している革新的な技術ですとか、そういったものを融合して新しい価値を作り出すということだと思うんですが、宇宙でも地上でも今、何かこういった事業を進めるにあたって、また、新たな今後の事業にあたって、何か着目している技術はありますでしょうか?
金本:さっき、ちょうど話の中でお出ししましたけれども、1つはデータ衛星のコンステレーションと言われる、大量のレーダー衛星を使った地球観測について非常に着目しています。それはなぜかというと、雲や太陽の光に関係なく、夜間であっても、地球上の様子を24時間見ることができるからです。
そういった衛星のデータって、どうしても途切れたり、「このときは観測していない」ということで「1時間おきに見えていたんだけど、夜は見えません」という話になってしまうと、「その間に何が起こったのか?」ということになります。非常に使いづらいデータになってしまうというところで、レーダー衛星が非常に重要な技術になるのかなと思っています。
大貫:レーダー衛星の技術って、今までまったくなかったんでしたっけ? これまでも、ありましたよね?
金本:これまでは、いろんな政府や軍の衛星とか、かなり大型の衛星が多かったんですけれども、昨年から非常に小さなレーダー衛星が上がり始めまして、そういったものが数百基、地球の周りを回っている時代がそろそろやってくるという状況ですね。
大貫:小型衛星でしかも民間でレーダーが使えるのが、新しいというところですね。佐藤さんはいかがですか?
佐藤航陽氏(以下、佐藤):そうですね。私はちょっと宇宙からはみ出ちゃうかもしれないですけども、テレイグジスタンス(遠隔存在感)と言うんですかね。宇宙空間上に、人間とシンクロしたデバイス、機械、ロボットを送り出して、地球上から宇宙空間にいるロボットや機械を操作できる仕組みですね。
世間はいろんな人を物理的に宇宙に連れて行く流れを踏襲していますけれども、場合によっては、この技術で感覚や視界が完全にシンクロできるようになると、どっちかと言うとたぶん、「宇宙に行っているという錯覚をその人間が感じられるようになる」ことの方が、早いんじゃないかなと私は思っています。
宇宙旅行も物理的に行くんじゃなくて、自分と繋がっているロボットが宇宙空間にいて、「宇宙に行って作業している」という錯覚が得られる流れになってくる。そうすると、旅行業界もそうですし、あとは宇宙空間上での作業なども変わってくるんじゃないかなと思っています。なので、IoTというかネット寄りではありますけれども、この技術はすごくおもしろい可能性があるなと思っています。
大貫:今までも「宇宙ロボット」という領域があるんですけれども、そういった「宇宙ロボット」の流れの発展というよりは、またちょっと違う流れですね?
佐藤:そうですね。それもあるんですけれども、たぶん完全に視界や触覚というレベルまでシンクロしてしまうと、人間は「宇宙に行っているんじゃないか?」と感じられるので、そのように人間が勘違いしているということは、すでに「行っている」ということじゃないかと思っています。バーチャル的な思想ですよね。
大貫:技術的に着目しているものについて、他は大丈夫ですか? 金本さんのスライドが出てきたので、ちょっとお勧めの画像などありましたら使ってお話をしてください。
金本:先ほど佐藤さんのスライドにもあったんですけれども、どうしても「宇宙開発」と言うと、ロケットとか衛星の開発や打ち上げが注目されがちなんですけれども、その間の「データ処理」をより細かくやることで、そのあとの利用が増えていくのではないかと考えています。
宇宙とIT技術が非常に高いレベルで融合され始めているという状況ですね。よくこの石油タンクの例が出てきますけれども、石油タンクをずっと衛星データで追いかけていると、石油の備蓄量のトラッキングができて、需給バランスがわかってきます。
全米にあるデニーズの駐車場の車の台数をAIで数えまして、それがオレンジのラインです。(オレンジのラインが)急激に立ち上がっているところのちょうど6ヶ月後ですが、(同じように立ち上がっている)緑の線がデニーズの株価です。6ヶ月前に、(株価変動の予兆が)駐車場のトラフィックとして観測されているということで、こういったデータがヘッジファンドに販売されているという状況があります。
これは先ほど申し上げた「オイルスリック」(海底油田や船舶からの流出で海上に漂う油膜)の件です。
最近、イタリアの衛星データ解析の会社と提携しておりまして、表面の変化を1ミリ単位で見るという技術があります。この赤い点は「1年間に10ミリ以上沈降した場所」ということですが、実はこのわりと赤いエリアが東京ディズニーランドのあたりで、そういったものが宇宙から観測できますね。
先ほどのキャベツの例ですね。
このようにAIを使いますと、人間が見つけられなかった場所に関しても変化を見つけることができるようになってきています。
人間の活動を把握して、流通やサプライチェーンの最適化をすることで、持続可能な社会、持続可能な経済の実現に寄与していきたいなと考えています。
大貫:はい、ありがとうございました。上(宇宙)では小型衛星で「分散化」が進んでいるんですけれども、下(地上)の方ではいろんなデータに、AIのような手段もありますので、「融合」が進んでいるという。インフラの分散化、データの融合が同時に進んでいるとも言えるんじゃないかと思います。
それでは次に2番目の質問です。最初の質問は技術だったんですけれども、次はビジネスモデルや市場のお話をいただければと思います。今日は「革新的な」がテーマなので、「革新的な」を頭に付けるようなかたちでお願いします。
金本:ビジネスモデルの話ですね。今までの宇宙のビジネスモデルは、政府の税金をロケットや衛星開発の企業が受けて、打ち上げてサービスをするというかたちでした。しかし、だんだん民間のロケットや衛星の開発会社がたくさんできてきて、上がる衛星の量も10基だったのが飛躍的に増え、今は2,000~3,000基という時代になってきているんです。
実際、さっき申し上げたような地球観測データの活用に関しても、どんどんロケットが安くなって衛星が安くなって、データも安くなるということで、マーケットが広がります。
そのことはすごくうれしいんですけれども、今度はロケット屋さんもどんどん売上が下がります。ロケットは年間100~200機が打ち上がると思うんですけど、(その数は)決して100~200万機にはならないですよね。
そういった意味で、宇宙輸送のインフラのビジネスも伸びていかなきゃいけないと考えると、単純にロケットを安くするだけではいけません。例えば、ロケットで上げた衛星が取ったデータで得た収益を、今度はロケットの打ち上げや衛星製造の会社がシェアする方へどんどん変わっていくと考えています。
そういったハードウェアを作っているところが、データを販売した収益をシェアするようなモデルができるのを考えると、データをお金に換えるところが非常に重要になってくる。そう考えると、みなさんがこの宇宙ビジネスモデル革新のプレイヤーなのかなと思っております。
大貫:ちゃんと回るバリューチェーンみたいなもので、一般的には川上の機器産業(ロケット)と、川下のダウンストリームのマーケット(データ)の両方が大きくなれば、市場が大きくなるのは事実なんですけれども、大きくなるのが難しい川上が回る仕組みですね。
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