「長老‐1グランプリ」で村の財産を手に入れるには
中田敦彦氏(以下、中田):プレゼンには「公共性・革新性・実現可能性」が必要と言っても、すぐには頭に入らないと思いますので、具体例を挙げて言います。
村があると考えていただきたいですね。長老がいて、村のお金を積み立てていたんですね。「蔵にすごいお金があるんだけれども、私も今後のことをいろいろと考えて、おもしろい催し物をしようと思う。村の若者を集めて、その中から魅力的な夢を語ったやつに、この村の財産を全額渡すことにしよう」と言ったので、みんなが「えっ!?」「長老-1グランプリが始まった!」と。
「長老の財産、全部くれるらしいぜ!」
「うわぁ! 長老-1グランプリ熱い!」
などと言って、みんなが集まるんですよ。
それで、「よし、では、夢を語ってください!」と長老が言うと、いろんな人がいるわけですよ。その中で一番の若者が言うんですね。
「はーい、長老!」
「なんだね、君は?」
「僕はAという者です。私の夢を発表させていただきます! 焼き肉をたくさん食べたいです!」
「なるほど。焼き肉を腹一杯になるまで食べたい。それがAだな。」
「Bはなんだ?」
「僕は村長になりたい!」
「おお、私の座を。Bは村長になりたい。Cはなんだ?」
「僕は隣村との間に流れている川が邪魔だと思っていて、遠回りするのが嫌なので、隣村との間に橋をかけたいです」
というようにね。この、A・B・Cが一体なにを象徴しているのかがわかりましたか?
プランの背景にある「欲望・自己実現・公共性」
中田:Aというのは、自分の欲望なんですよね。
「俺はこうしてみたい。」「ひたすら女にもてたい。」「一生不自由はしたくない。」「死にたくない!」といったことですよね。
それでは、Bはなにか。これは自己実現なんですよ。「自分がこうなりたい」ということですよね。
Cこそが公共的なプランなんですよ。橋をかけると、その人も渡るのが楽になるので、欲望であり、自己実現なんですが、それは周りの利益も含んでいる。これがあるかないかなんですよ。
聞いていて「Cになるに決まってるじゃん!」と思うじゃないですか。「逆にBやAを選ぶやついるの?」と思うかもしれませんが、そんなことはありませんよ。
この前、青山学院大学で特別授業をしたのですが、そのときのプランの中で「必ず夢を語れ」と言ったら「芸能人に会いたい!」なんて、普通にいますからね。「二宮くんに会ってみたいです!」というのは、ぜんぜんいました。「二宮くんと会いたいと言われてもな」と。「みんなも会いたいですよね?」と言われて、「はい」と言いましたが(笑)。
(会場笑)
あなたと私では、その会いたさの度合いがだいぶ違うだろうということですね。「次の方、どうぞ」と言ったら、次の方が「私は違います」と。「ああ期待できる!」と思ったら、「私はキスマイの玉森君に会いたいです!」だって(笑)。
(会場笑)
2連チャンで続いたときには、目の前が真っ暗になりましたからね(笑)。
(会場笑)
「やばいなこれは。どうしよう、なんてアドバイスしよう?」と思いましたからね。そういった人のほうが、世の中にはぜんぜん多いわけです。これは本当に陥りがちなことなんですよね。一番陥りがちなのは、昔話からずっと伝えられていることなんですが、「公共性を見失う」ということ。だってこれ、
「願いを叶える。なにか言ってみろ」
「xxしたいです!」
「それお前の欲望やないかい!」
ということです。
『アラジン』と『ドラゴンボール』の共通点
中田:これはなんだと思います? 『アラジン』なんですよ。『アラジン』でジーニーというランプの精が現れて、「なんでも願いを叶えてやろう!」という。「いたらいいな」と思うじゃないですか。
『アラジンと魔法のランプ』のジーニーがやっていることと、村長がやっていることは一緒。でも、必ずジャファーみたいな悪いやつが現れるんですね。「俺の国を作りたい」と。「お前の欲望やないかい!」と全員で突っ込んで、そこから『アラジン』が始まる。
日本の漫画にも同じ話がありますよね。それは『ドラゴンボール』です。ボールを集めるぞ。神龍(シェンロン)が「願いをなんでも叶えてやろう」。そうしたらフリーザなるやつが現れて「私を不老不死にしろ!」という。「それはお前の欲望やないかい!」と言って『ドラゴンボール』が始まる。
それこそ「欲望やないかい!」というのを伏せていた上でのすったもんだを、おのずとわれわれは見ているわけですよね。おそらく『アラジン』と『ドラゴンボール』はほぼイコールなんですよね。私は日本版『アラジン』と呼んでいますが。
そんな中で、まず公共性が大事だと。その後の革新性はどういうことかというと、橋を作りたいCという人が現れて、同じように橋を作りたい人がもう2人現れた。1人目の橋を作りたいやつに「お前はどういう橋なんだ?」と聞く。「丸太をドーンと横たわらせて」という。まぁ「なるほどな」と、それをAとします。