ハイブリッドスクーリングとはなにか

松浦真氏:よろしくお願いします。今日は「ハイブリッドスクーリング」についてお話しさせていただく場を作らせてもらったんですが、そもそもハイブリッドスクーリングとは、まだ誰かがきちんとWikipediaに書いているような言葉じゃないんです。

おそらく、学校に合わない子どもたちがすぐに見つけられる言葉としては「ホームスクーリング」が一番多いんじゃないかと思います。もしくはアンスクーリングとか、ハックスクーリングですね。いろんな言葉がありますが、その中で私たちはハイブリッドスクーリングというものを考えてやっています。

定義をたくさん作るとややこしくなるだけなので、本当はあまり作りたくなかったんですけど。ただ、たまには学校に行ったほうがいい場面があるんです。

秋田には「なべっこ遠足」という、鍋をみんなで作る遠足があります。ほかにもマラソン大会だったり、そういうときだけは顔を出したりしています。わがままの極みなんですけれども、ただ学校に行かないんじゃなくて、学校を1つの学びの手段として使っていくということです。そういった学び方を始めました。

これはきちんとした数字が出てないんですが、日本にホームスクーラーは3,000人から6,000人くらいいるだろうと言われていて、今はそれがどんどん増えています。不登校の生徒数は小中高を合わせると17万人程度になるので、そのうちのまだまだ数パーセントなんですが。

これからはこういった学び方をする人がどんどん増えていくんだろうと思っています。私の場合は、車の上にルーフテントをつけてご飯を炊いたり、屋根で寝たりと、いろんな場所に顔を出しています。

私たちは学校に「学ぶこと」をアウトソースしてきた

(スライドを指して)ハイブリッドスクーリングで得られるメリットみたいなことを書いてみました。うちの場合だと、旅をしながら学べるとか、子どもの興味・関心が増えていくといったことがあります。なにになりたいかわからないというよりは、なにになりたいかわかる状態になるまで待っておくということです。

あと、いろんな場所に所属していくことがあります。

今日もここにうちの子どもが来ていて、東京で出会った子どもたちと一緒に外でよく遊んでるんですけれど、そういったかたちで子どもたち同士が仲良くなっていくこともあります 。

違う視点から考えると、学校という場所や教員の維持費というのは、少子化で子どもの人数がどんどん減っていくことで、減らさないといけなくなるかもしれないと財務省が言っています。

社会全体で見たときには、もちろん先生がたくさんいた方がいいと思っているんですけれど。私たちは今まで、学校の仕組みの「学ぶ」という機能をアウトソーシングしていたんじゃないかなと思うんです。

社会教育がキャリアや職業観に影響を及ぼす

(スライドを指して)今日ちょうどベネッセ教育総合研究所の所長の方にも来ていただいているんですけどれも、これはそこが2006年に出している大事なデータです。子どものときのキャリアと、成人してからの自己評価についてのデータなんですけれども。

この中で一番優位が高いのが、親や学校の先生以外の大人と話をすることや、新たに出会ったりする体験が、自分の職業観やキャリアの自己評価に大きな影響が出ているということがわかります。

今から12年くらい前のデータなんですが、この後に取ったデータがないので、12年間ずっと大事にしてきたんですけれども。それくらい、いろんな人と出会うことや、社会教育が大事だなと思っています。

(スライドを指して)ハイブリッドスクーリングっていうのは、こういった青い囲いの部分をやって、来年以降は緑の囲いの部分をやっていこうと思っているんです。

第三者機関への依存度は、保護者の学ぶ意識に左右される

この時間を使って、みなさんと今後考えていきたいと思っていることがあります。私たちも大事だなと思っていることについて、ここにプラス・マイナスと書いてあるんですが、こういう図を見たことある人いますか?

(会場挙手)

あんまりいないですね。これはシステムシンキングという図で、セオリーオブチェンジとも言います。

(スライドを指して)保護者が自分で調べたり学んだりする機会が多い人たちは、学校とか塾とか第三者の教育機関への依存度は減ります。

マイナスになっていけばいくほど、必要な教育費用も減っていくので、マイナスになっているのにそのまま並列して減ります。必要なものの時間が減ると、自己決定の機会が逆にマイナスになって、プラスになるという計算です。

逆に言うと、この自己決定する機会が保護者にないと、教育機関への依存度が増えて、必要な教育費用も増えて、必要な労働時間が増えてしまうから、逆に自分で学ぶ時間が減ってしまうんです。

アウトソースはマーケットを広げるが、自分で考える機会を減らしてしまう

なんでこうやって循環していくのかというと、必要な教育費用が増えれば増えるほど、教育事業者のサービスの品質が上がっていけばいくほどアウトソーシングが進んでいって、マーケットは現れ続けていく。その結果、保護者が自分で考える機会が減っていくのかもしれない。

保護者の学ぶ機会が減ったという前提だとすると、子どもとともに学ぶ技術も減っていって、ハイブリッドスクーリングやホームスクーリングのレベルもあまり上がらず、学びをインソーシングする体験も減っていく。

つまり、自分のところで学びを取り戻す経験も減っていくと、また自己決定の機会も減っていってしまう。そう考えてこのシステムを開拓しています。昨日もあるメディアの方と喋っていて、子どもの学びは自分たちで決めていかないと、誰かに頼っていてもどうなるかは正直わからないという話をしました。

じゃあ自分で決めるときに、覚悟はどういうところから出てくるんだろうという話をしていました。子どものときに自分でなにかを決めたとか、例えばこういう楽天さんとかの企業で自分で小さなものを作ったときに、誰かから「それおもしろいね」と褒められたとか、小さな経験でもいいので、そういうものがあると自分でなにかをするときの経験に繋がるんじゃないかなと考えています。

これまで、一人ひとりがいろんなアウトソーシングできる塾や教育機関をつくったということは、社会全体にとっていろんな人が働く機会を増やす意味ではよかったんですよ。でも、これからは働き方が変わってきたり、いろんな仕事の進め方が増えたりしていく。

そんな中で、子どもとともに学ぶ機能を、家庭でもやっていく機会を、それぞれ増やしていく事が、今後このハイブリッドスクーリングの中で楽しくできたらいいかなと思っています。

私の方からはハイブリッドスクーリングの話は以上となります、ありがとうございました。

(会場拍手)