かわいい子犬を見かけたとき、「赤ちゃん言葉」を発してしまうのはなぜ?

公園でかわいい子犬を見つけたとき、思わず突然声のトーンが2オクターブ上がり、「いい子だねえ!」と、変な話し方をしてしまったことはないでしょうか。

実は私たちが犬に対して、思わずそのような話し方をしてしまうのにはしっかりとした理由があります。人間と犬との絆には、大きな関係があるのです。

犬に対してのおかしな話し方は、私たちが「赤ちゃん言葉」と呼ばれる話し方で赤ちゃんに話しかけるその方法と、とてもよく似ています。高いピッチで、ゆっくりしていて、通常の話し方と比べてまるで歌を歌っているかのような話し方です。

研究者たちは、犬も赤ちゃんも話すことができないので、大人の私たちは話し方をメロディやピッチがつくように大げさにすることにより、相手の注意が続くようにするのではないかと考えています。この方法は、少なくとも若い犬には有効なようです。

犬は自分にかけられた言葉を理解している?

2017年に発表された実験では、あらかじめ録音された「赤ちゃん言葉」を、拡声器によって10匹の成犬と10匹の子犬に聞かせました。すると子犬は、普通の大人の話し方を流したときより、かわいい「赤ちゃん言葉」を使った話し方を流したときの方が、素早く拡声器に寄ってきて、その側に座りました。

しかし、これは声のトーンの問題だけではなさそうなのです。犬は話している内容にも注意を払っているようです。もちろん犬は話すことができませんが、犬を飼っている人は「おやつ」とか「散歩」という単語を使うと、犬がより興奮してしまうことをよくご存知でしょう。

2018年に、研究者たちは人間の話す言葉の内容とトーンで、犬の反応がどれくらい異なるかを実験しました。その実験では「赤ちゃん言葉」と普通の話し方をごちゃまぜにしました。すると犬は、典型的な高いトーンの「赤ちゃん言葉」で、「おいで!散歩に行くよ!」という声の方が、普通の話し方より好むことがわかりました。

その実験ではさらに、「ジムに行く」などのつまらない内容の話を「赤ちゃん言葉」で話したものを録音しました。また逆に、普通の話し方で「いい子だねぇ」というのも録音しました。これらの録音を成犬に聞かせたところ、かわいい話し方でつまらない話題を話したり、犬に関係のない話題を話しているのを聞いても喜びませんでした。つまり、犬の注意を引くには、犬の好きな単語を使うのも必要なのです。

何千年も続く、人間と犬との絆が成す現象

犬に対しての「赤ちゃん言葉」はまた、人間と動物の間の絆を強める働きもあります。犬や狼は、互いに挨拶をするときや食べ物をねだるとき、そして母親からの世話をねだるときに、高いピッチで泣きます。科学者の中には、人間が意識せずにこのコミュニケーションの方法を取り入れたのだという仮説を立てている人もいます。

何千年も前に始まった犬の家畜化の中で、人間は犬がよりよく注意を払ってくれる、尻尾を振ってきゃんきゃん返事をしてくれるなどの、犬の反応がよくなる話し方を選ぶようになったのかもしれません。あるいは、犬が生まれた時から、人間の「赤ちゃん言葉」の話し方に反応するようしつけてきただけかもしれません。

いずれにせよ、2017年の実験でその論文の筆者は、成犬はすでに飼い主との良い絆ができあがっているので、実験者が何を言っているか興味がなく、子犬のように「赤ちゃん言葉」を聞いても反応がなかったのかもしれないと述べました。そして結論として、人間が犬に対してそのような話し方をするのは、感情的になっているからという理由だけではないと述べました。

実際犬はそれに反応し、人間との絆を深めることができるのです。ですから、あなたがコーギー犬を見るたび、思わず声を変えて「赤ちゃん言葉」になってしまうという現象が奇妙であると考える必要はありません。何千年も続く人間と犬との絆を促進しているに過ぎないからです。