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「入社したときから転職のことを考えよう」 尾原和啓さん×北野唯我さん(全6記事)

「いつでも転職できる人」になれ 『転職の思考法』で読み解く、この先10年の働き方を考えるヒント

2019年3月7日、紀伊國屋書店新宿本店9階にて、「『入社したときから転職のことを考えよう』 尾原和啓さん×北野唯我さんセミナー」が開催されました。尾原氏は『ITビジネスの原理』や『どこでも誰とでも働ける』など、多数の著書を執筆。北野氏の著書は『転職の思考法』で12万部、『天才を殺す凡人』で9万部を記録(いずれも2019年4月時点)。これまでにない「転職」と「働き方」の書籍を上梓し、大きな話題を呼んだ著者二人が、就活やキャリアの新常識を解説します。本パートでは、起業や転職を考えている若手社員たちにアドバイスを送りました。

今後10年というスパンで働き方を考えるヒントとは

質問者3:僕は大学院を出ていて、企業に勤めて2年目で、いま、転職を考えています。まだそんなに自分の中ではスキルがあるわけでもなく、人脈が広がっているわけでもない。経験という観点においては、少しだけ出てきただろうかという部分はあるのですが。

僕は今27歳になるのですが、ここから先、今の会社で働いて、このままスキルを磨いて、30歳ぐらいまでやっていくのか、それともさっさと別の会社を見つけて、どこかに行くべきなのか。今後、10年ぐらいというスパンで見たときに、どういった動き方をするのがいい手なのかということについてお聞きしたいと思います。

北野唯我氏(以下、北野):それ、まさに『転職の思考法』という本がございまして。

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

(会場笑)

いい本がありまして。ドンピシャなテーマな気がしました。えっ、でも、どうして転職しようと思っているんですか?

質問者3:転職をしたいと思ったのは、そもそも自分自身が起業をしたいという方向に向いていて、それをするにあたって、今は商社で働いているのですが、ここである程度ビジネスの作り方などを学びたいと思っていましたが、そのポジションに行くまでにはかなり時間がかかると感じたからです。

時間がかかって、例えば40歳、50歳になったあとで「よし、起業」となる体力を持っている自信もなく、早めに動くべきなんじゃないかと思いました。

北野:なるほど。どうですか? 起業。

尾原和啓氏(以下、尾原):そうですか。いや、その前に、カチンと来る言葉を一つしゃべっていたので、ぶった切ってもいいですか?

北野:いいですよ、いいですよ。

(会場笑)

北野:商社マンは大丈夫です、絶対に。

尾原:いや、自分が何者かと呼ばれる存在になる前に「人脈を広げる」というような、クソみたいなことを言うのはバカだという話です。

北野:(笑)。

尾原:人脈を広げるというのは、「北野さんと話したいです」、「この方はディープラーニングのプログラムができる方だから会いたいです」というように、個体認識できるようになれたら広げればいいけれども、何者でもない状態で人脈を広げても、相手は次の日に覚えているわけがないだろうと。

そんなことよりも、あなた、商社という深い仕事に就いていらっしゃるのであれば、取引先の会社から「ぜひあなたが来てください」という人になれなくてどうすんの?

だから、『転職の思考法』には書かれていないからいいんだけど、世の中、なんか社長の名刺の数を集めりゃいいという人がいっぱいいるけど……。

(会場笑)

「あなたと仕事をしたい」と言ってくれる人は何人いるか?

尾原:そんなことよりも、「あなたと仕事がしたい」「これだけの時間を使ってくれる」でもいい。「こんなに汗をかいてくれる」でもいい。「こんなに真剣に訴えてくれる」でもいい。「あなたと仕事がしたいんだ」という人が、いま何人いるんですか? その人が5人いれば、必ず「あなたと仕事をしたい」という、次の仕事へのスライドがありますよ。

そういうことを最初のうちにやっておかないと、歳を喰ってからそんなふうにじっくり誰かに求められるようなことは、体力がなくなってくるとだんだんできなくなるから、俺みたいな人間になるぞ?

(会場笑)

北野:えっ、いいんじゃないですか?(笑)

横田大樹氏(以下、横田):どこでも誰とでも働ける。

北野:どこでも誰とでも働けるという(笑)。

どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから"の仕事と転職のルール

尾原:ごめんね。別にあなたを怒っているんじゃなくて、なにか最近の人脈を広げるというブームにすごくカチンと来ていて(笑)。

北野:カチンと来ているんですか?

尾原:カチンと来ている。俺もやたらネットワークが広いと言われるから、しょうがないんだけどさぁ。そんな想いで俺はネットワークをやってんじゃねぇんだよと。

北野:なるほどね。「一緒にすんじゃねぇ、ボケ!」ということですね。

著名な人にとってのいちばんのプレゼントは「いい質問」

尾原:一人ひとり、北野さんにどうやって気に入られるか、北野さんに「尾原さんに会えてうれしい」と言われるために、俺、どれだけ北野さんの本を何回も読み返したことか。

北野:まじっすか? ありがとうございます(笑)。

尾原:Twitterも、ここ3ヶ月分全部見たというように。

北野:えっ、やば……やばい(笑)。しょうもないことしかツイートしてません。いや、でもそうですよね。なんだかぜんぜん話がブレるかもしれませんが、僕も誰かと会うときや対談するときは、その人のTwitterや、その人の本などは絶対に読みます。それは、一定のレベルと言うと失礼かもしれませんが、すごい人たちにとっていちばんのプレゼントは、やっぱりいい質問だったりするからですよね。

尾原:そうそうそう。

北野:だから、お会いさせていただくときは、その人が喜んでくれるような、「あっ、そう、それなんだよ!」と言われるような質問はなんだろうか、とかなり考えたうえで、それを用意して2〜3個持っていってしゃべると、すごく仲良くなれる。

先ほど「お金がいる」というような話がありましたが、そういうことは別にお金はいりませんよね。本を2〜3冊読んで、ネットオタクじゃなくて、なんだ……。

尾原:ネットギーク?

北野:そういったことをしていけばいいだけのことです。知恵のような話なので。それが大事だと思っていますが。

尾原:いい質問というとビビってしまうかもしれませんが、基本は2つだけです。「たぶん北野さんはこういうことを考えて、この文章を書かれたのではありませんか?」というようなことです。

北野:いやぁ、具体的。いや、今のめっちゃ具体的や(笑)。本になりそう。

尾原:こっちが苦労したことや、こっちががんばっていたことを言い当てられると……。

北野:わかる、わかる!

「いい質問」とはどんなものか

尾原:あと、もう1つはまったく逆で、「いや、尾原さん。あのあと尾原さんの本を読んだんですが、20代の女性から見ると、こういうことはこんなふうに感じるんですよ」と、こっちが知らない気づきを言われると、「あっ、そっかぁ、そういうふうに考えるんだ」と、「これとこれとこれをやると、20代の女子にもなんとか俺の本を読んでもらえるのだろうか」というような。

北野:ははは(笑)。いや、すごい。今のおもしろい。

尾原:だから、前者はひたすら読み込むことで作れるし、後者は自分のナチュラルな感覚であったり、会いたい人と遠い人がどういう感覚を持っているかということを、できるだけインタビューしまくればいい。

北野:だいぶ話が逸れたんですけど、あれですよね、転職するか……。

尾原:あっ、ごめんなさい、転職だよね。ごめんね、泣いてる? 大丈夫?

(会場笑)

大丈夫だよ、あなたを怒っているんじゃなくて、全国に2,400万人ぐらいいる……。

北野:2,400万人もいるんですか?

尾原:そうそう、きっといるんだよ、「人脈広げればいい」みたいなクソが。

(会場笑)

北野:転職はどうですか? 転職についてはどう思われますか?

焦って転職をする前に一度考えるべきこと

尾原:だから、僕はやっぱりこう……。ごめんなさい、日本語が思いつかなくて。テニュアが低いうち、つまり、あなたが何者なのかがスキルや経験で示される前の転職は、やっぱり「僕はあなたと働きたいから、うちに来てくれ」という、その個性や関係性を築いていく。その中で転職を考えたほうがいい派なんですよ、僕は。

もしくは、ちゃんといろんな圧倒的な努力をして、今であれば、たまたまディープラーニングのエンジニアリングがスキルとして世の中的には珍しいから、その珍しいものを使って動くでもいいのだけど。

ただ、気をつけなければいけないのは、ディープラーニングのエンジニアリングは、今のタイミングは高いけど、今日もデザイナーの深津さんがツイートしていましたが、「でもさぁ、よく考えたら10年前は、Flashが書けると一生食えると言われてたよなぁ」というように(笑)。

北野:なるほどね。

尾原:本当にそのときの旬であって。要は、周りから見て珍しいと思われるスキルや経験を磨いたほうが、瞬間瞬間は自分を高く売れるよね。今の相場で言えば、やっぱり今のところ日本の中では、まだインドでビジネスをしている人は少ない、アフリカでビジネスしてる人は少ないといったように、瞬間瞬間に相場が高い経験とスキルはあるので、それをアービトラージしていくのも手ではあることだし。

ただ、そういう中で、最後はやっぱり「あなたと仕事をしたい」という人が何人いるのかということです。僕なんかはちゃらんぽらんに生きていますが、たぶん、たぶん、たぶん、5人ぐらいはなにかあったときに拾ってくれるんじゃないかな。北野さん含めて。

北野:いっぱいいるでしょう(笑)。いっぱいいるんじゃないですか? 2,600万人ぐらいはいるんじゃないですかね。

(会場笑)

尾原:世界で言えばね(笑)。というように信じて、一人ひとり、「あなたと、尾原さんと仕事したいです」という人を1人ずつ丁寧に増やしています。

北野:だそうです。

横田:ありがとうございます。最後のお一人は、あと5分ぐらいで終わりますから。

尾原:そうですね、話が長かったですね。本当にもう、ぶった切ってごめんね。

いつでも転職できるカードを持つことで幸せになれる

質問者4:お話をありがとうございました。ぶった切られたあとの質問で、緊張しておりますが(笑)。

尾原:いや、ぶった切られたいなら「ぶった切られたい」と言ってもらえれば。

質問者4:いや、忌憚なきご意見をというところで。お話したいのが、私も同じく入社3年目のタイミングにあたりまして、周りでも転職したい人がかなり増えています。実際に『転職の思考法』は友達に勧められたもので、もう2人ぐらい転職していて、本当に周りで流行っていますということを肌で感じています。

北野:ありがとうございます。

質問者4:僕自身もこの本を読んで、自分の人生について考え直して、転職も考えたのですが、そうは言っても今の会社でぜんぜん結果を出していない自分にも気づかされました。この1年間のミッションを与えられて、幸いにも与えられたミッションをやることはできるので、それは1年間がんばって、実績を出してから気持ちよく辞めていこうということは、自分の中で決めたんですね。

それで、質問としては「このように転職をしました」であるとか、「こうしたことをやることに決めました」となってから、『転職の思考法』で転職をしてから、実際にどのようにその選択を正解にしていくべきか、というお話を聞きたいと思います。

それこそ尾原さんもおっしゃっていたように、がむしゃらにやり続けて、まずはもう圧倒的な行動をしていくといったところにあると思うのですが、そういったテーマについてお聞かせいただけると幸いでございます。

北野:なるほど。まず『転職の思考法』をちゃんと読んでくださっていることがめっちゃうれしくて。『転職の思考法』は、別に「転職しろ」とは言っていませんよね。「いつでも転職できるカードを持つことで幸せになりますよ」ということなので、結果的に転職しないということも僕はぜんぜんありだと思うし、むしろめっちゃありがたいと思っています。

ビジネスパーソンは、覚悟が決まった時に掛け算になる

北野:その上で、『転職の思考法』には書かなかったのですが、やっぱり実力よりも実績ということが、キャリアを自由にするという点から言うと、かなり重要なのですね。「実力がある」「あの人は実力はなんとかだよ」といったことは可視化できないし、わからないじゃないですか。だから本であれば、それは部数だと思いますし、本を出すという行為かもしれません。

次のタイミングでどのようにキャリアを設計していけばいいか、という話だと思いますが、今の話だと1年間がんばってというのは一つの境目で、あえて言うのであれば、実力よりも実績で、何か書けるような、残せるようなものができたときが、たぶん次に進むべき判断軸の一つになると思っていますね。

そんな感じでいいでしょうか? 質問に合っていますか?

質問者4:あとは、最終的には「決めたことをやりきれ」という話になると思いますが……。まぁ、「やりきれ」という話ですよね。

(会場笑)

尾原:ははは!

北野:もうちょっとコンセプチュアルな話で言うのであれば、「ビジネスパーソンは、覚悟が決まったときに掛け算になる」と僕はいつも言っています。スキルは足し算ですよね。でも、ビジネスパーソンには、覚悟が決まるタイミングがあるんですよ。それで、覚悟が決まるといきなり掛け算になって、成果や実績がバーンッと上がったりする。

うちの会社にも、もともとすごくいい大学を出て、銀行に行って、いろんな会社を転々とした末にうちに入ってきたメンバーがいて、ちょっと言い訳くさいところもあったのですが、半年経ったぐらいのときには本当にどん底になって、そのときにもう「覚悟を決めろよ」というようなことを言って、そこから覚悟が決まったらいきなりブワーッと伸びた。

日本人は転職に関してもうちょっと不真面目でもいい

北野:どうしてかというと、『転職の思考法』にも書いていますが、覚悟を決めればみんなが応援してくれるからです。だからそれはなにか、たぶんどこかのタイミングで来るんですよ。いつも覚悟を決めろとは僕は思わないのですが、積み上げていた足し算が、自分のどこかのタイミングで覚悟を決めるタイミングが来るんで、そのときに掛け算になる。

もしも尾原さんと差があるのであれば、その掛け算のタイミングを経験されているからこそ、尾原さんはすごいハイパフォーマーだし、おもしろいことも言えるし、このように成果を出されているのだと思います。そのタイミングを逃さないということ自体も、僕はかなり重要だと思ったりしますね。

尾原:なんで「おもしろいことを言うし」というのが入っているの?

(会場笑)

北野:おもしろいこと、あっ、違うんですか?(笑)

尾原:いやいや、逆にゆるふわな方を言うと……。

北野:いいですね。

尾原:転職について、日本の方が転職に関してもうちょっと不真面目になっていいと思うのは、ヨーロッパの方では、平気で1年ぐらい休むわけですよ。それはなぜかというと、「1年経っても、俺の仕事だったら、だいたい年収いくらぐらいで最低は戻れるわ」という感覚があるんですよね。

日本人は真面目すぎるから、「1年間も仕事を離れると、もう二度と働けないんじゃないか」、「1年間も働けない、働いていない不真面目なやつだから、もう雇ってくれないんじゃないか」と思うんですが、少なくとも北野さんが言ったように、ある程度はもう、英語ではそういったものを「リマーカブルアチーブメント」、「メジャラブルアチーブメント」と言います。

「目的としての転職」と「手段としての転職」

尾原:「だってこの人、この数字でこれだけ営業実績があるということは、再現性もあるよね」と。だから、秀才としての再現性の方が実はカムバックしやすくて、「この人を雇えば、確実にこれだけうちに売上をもたらしてくれるのだから、雇わない意味がないよね」という状態になっていれば、1年間休職することもできる。

でも逆に、1年間休職できるということは、給料を半分にしてもいいから、まったく違うことをやってもいいということなんですよ。

だから、僕の本の中では、「目的としての転職」と「手段としての転職」という言い方をしています。例えば僕がGoogleに入ったのは、最初は手段としての転職だったわけですよ。

最終的な目的としては、ミーガン・スミスと働きたいというのはあるけど、英語で働いたことはないし、グローバルで働いたこともないし、まずはやっぱり手っ取り早く「グローバルで働く」という武器を装着したい。

その武器を装着するという手段のために、今までどんな下手な英語でしゃべろうが、iモードを立ち上げたときの総合的な経験をGoogleの中で知ってるやつは俺しかいないから、僕がどんな下手な英語でしゃべっても、聞いてきてくれるわけですよ。

それはやっぱり、等価交換なわけですよね。自分の何かを身売りして、給料分はいただく。でも、逆に言うと、手段として、その間にGoogleの中を歩き回って、結果的にGoogleの中での目的としての「転プロジェクト」に出会う。

あなたが今、そのように迷われてるんであれば、むしろまったく遠いところに1回行ってみて、もしかしたら、そこであなたの持っている本当にやりたいことがものすごく感謝されるかもしれない。まったくのムダで終わったとしても、元のスキルで会社に戻れば、少なくとも今の給料の9掛けぐらいで戻れるかもしれない。

でも、働いていて、たかだか4年目〜5年目ぐらいに給料が1割下がることは、人生の中でそんなに損失でしたか? という話じゃないですか。そんなふうに長い目で計算をしてみると、選択肢は広がりますよ。

まぁもちろん、「覚悟!」「仲間!」「オー!」みたいなほうがかっこいいんだけど。

(会場笑)

ね。それは北野さんしかできないから。

時代の変わり目で目新しいことをやり始める

北野:いえいえ、どちらかといえば、そんなことはありませんよ。確かにね、「NTTドコモのiモード事業立ち上げはどれだけ賞味期限長いんだ!」というような話ですよ(笑)。

(会場笑)

尾原:ごめん! ずっと使ってる! ありがとうございます。おいしい!

北野:すいません、ツッコむところはツッコんどこうかと思って(笑)。

尾原:ツッコミ返しにちょっとだけ入れるとすると(笑)、結局、時代の変わり目で先に飛び込むと、おいしいネタが手に入りますよという話です。僕、たぶんiモードがうまくいかなかったら、おそらく2個目、3個目の新しい場所にいて、何か別のことをそこに書いているんですよ。だって、4〜5回は失敗できるんだもん。

北野:そうですよね。

尾原:僕の場合、最悪、京都に帰って中古車のブローカーをやればいいんだもん。

北野:それはちょっとよくわかんないですけど……。

(会場笑)

横田:それは『どこでも誰とでも働ける』に書いてあります。ぜひよろしくお願いいたします。会場の時間が来てしまいまして、今日はこれで。

尾原:すいません。

横田:でも本当に、みなさんから前のめりに聞いていただけて、私自身、編集者として感動しました。どうもありがとうございました。

尾原:どうもありがとうございます!

北野:ありがとうございました。

(会場拍手)

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