読んだ本をグループ内にシェアする「共読」ワークショップ

安藤昭子氏(以下、安藤):それでは、まだ頭をぐるぐる動かしていただいていいのですが、もう一回グループでのディスカッションの時間に入りたいと思います。

ここではけっこう細かいルールを設定していますので、まずは聞いてください。今読んだ一冊の本を、グループでシェアするのですが、ここから先は共読という状態に深く入っていきます。

グループで探究していただくテーマは「チームの力を最大化する方法」ですね。これをみんなで考えてください。

まず、ルールを3つ書きました。1つ目が、今読んだ本の内容と、それから書いていただいた自分ごとのところがありましたね? 自分ごととしてどう考えるか。

あとはテーマに寄せてどういった発見があるかといったところを、ぎゅっとかいつまんで順番に発表してください。

そのときのルールです。発表者はほかの人の発言を、なにかしら引き取ってください。自分だけの発表をするのではなくて、誰かが何か言ったことを、無理矢理かもしれなくても引き取って、関係づけてしゃべる。

そのときにコツがあるんですね。「…と関係あるかもしれませんが」「…ということを聞いて思ったのですが」と言ってみる。もしくは、これが大事なのですが「…という見方とは私はまた違うのですが」と、違う意見を言う。それでもいいですね。

これらの枕詞をおいてみると、けっこうつなげて喋れますよ。これをまずやっていただく。グルッと回って戻ってきたら、先頭の人は、今度は全体の意見を、一旦こうした意見が出ましたと、上手にではなくていいので、まとめてみてください。

価値観にとらわれずに、世代間も超え、ダイバーシティをカオスにする

安藤:ここからがちょっと難しいのですが、さらに新たな問いを、これもレベルは問いませんので、とにかくなにか提案してみる。みなさんのお話しを聞いてみて、こういうことが今度はどうかと思ったのですが、というような、次の問いを出していく。最初の親にあたる人ですね。

そしたらもう一巡、その新たな問いについて、全員が思うことを発言してください。これも他の人の意見を一部でも引き取りながら、順番に発言していく。いいですか? ルールは分かりましたか? では、このルールを忘れないうちに始めましょうか。

最初、各テーブルの中で親になる人をまず決めてください。誰から始めるか。順繰りにこのルールの通りに、はい、始めてください、どうぞ。

(会場セッションスタート)

今はもう2番に入っていてもいい時間ですね。親の人がこまっていたら、みんなでアイデアを出してあげてください。

(会場議論中)

そろそろいいですか? 各グループから、今の議論の成果をマイクをむけてお聞きしたいと思います。グループとしての見解、とくに新たな問いと、チームの力を最大化するためのアイデアが出たかどうかということを、少し頭においてまとめてみてくださいね。

それぞれのテーブルで議論が盛り上がったようですが、簡単にどんな議論があったのか、どんな新しい問いが生まれたか、どんなアイデアが出たのかというようなことを、かいつまんでお話しいただきたい。どなたかお願いします。

グループ1:私たちのチームは、4冊の本の共通点として、遊びながら成果を出すため、世の中の役に立つためにはどうしたらいいかということについてディスカッションをしていました。

みんなで案出しをしていったのですが、型にとらわれない提案型の意見を自分から発信していく、好きなことを極める、価値観にとらわれずに世代間も超えてダイバーシティをカオスにしてコミュニケーションをとっていくといったことをしていけば、解決できるのではないかとまとまりました。

安藤:素晴らしい。ありがとうございます。

(会場拍手)

俎上に上がったのは、「組織にリーダーは必要なのか?」

安藤:今日の学びも生かしていただいて、カオスを取り入れていかに遊ぶかということでしたね。では、こちらのチームも行きましょうか。

グループ2:我々の4冊の場合は、3冊が似ていて、1冊はすこし違うのですが、自分と他者、日本と世界だったり、そういったさまざまなものがあり、いろんな自己と相手の世界の中で、どうやって生きていくのか、どうさまざまな情報を考えていけばいいのかと考えたときに、50:50くらいで考えてるのがいいのかと。

自分と他者とどちらを重要視するかというような世界で、自分50、相手50、日本と世界も、日本50、世界50、といった感じで切り取っていくとうまくいくのではないかと考えました。

安藤:はい、ありがとうございます。

(会場拍手)

自分と他者というテーマが出てきたということですよね? それが、個々人という関係もあれば、国というようなレベルもある。面白いと思います。ありがとうございました。あと2チームぐらい聞きたいのですが、こちらは?

グループ3:私たちのチームは、4冊の本をそれぞれまとめますと、会社組織のようなヒエラルキーや、上司がいる、そういったところの組織と、もうすこし緩い組織、弱いつながりなどがキーワードで出てきている本がありました。

その中で新たな問いとして、そもそも組織、上司とはなにか。リーダーは必要なのか? それともそうではないのか? どういった見方ができるのかというテーマでした。

安藤:はい、ありがとうございます。

(会場拍手)

なかなか考え込んでしまうような問いにいたりましたね、ありがとうございました。 短時間で見ず知らずの方同士が、1冊1冊の本を媒介にしながら、それでも各チームかなりのところまで話がおよんでいましたね。

バラバラな知識をつなぐリンキングネットワーク

安藤:今日は駆け足ですが、これが共読の力なんですね。仮にチームの力を最大化するアイデアをみなさんで出してくださいというお題があったとしても、生身の自分として意見を交わすだけではなかなかここまでは行っていないと思います。

これが本を思考の道具として使うということの威力です。そろそろまとめに入っていきます。

クエストリーディング1回目のときもいいましたが、個々人の頭の中、もしくは今のような共読をすればチームの中で、バラバラだった知識がつながっていく瞬間があります。このつながりを生む状態を私たちはリンキングネットワークと呼んでいますが、本を媒介にすることで、このつながり状態がつくりやすくなるのですね。

この本1冊は、こうして自分の外側にあれば情報に過ぎませんが、それが一旦、自分の中に取り込まれれば知識になる。取り込まれた知識はそれだけでは知識のままですが、活用すれば知恵になる。その知恵がネットワークされた状態というものを、知性というのではないでしょうか。

ですから、昨今、教養と言われていることや、リベラルアーツと言われていることなども、このような断片的な知識がつながっていくところにこそ意味があるんじゃないかと思います。

文字は、想像力を必要とする入力情報の少ないメディア

安藤:あらためて今みなさんに駆け足で、素晴らしくやっていただけた共読の力を振り返ってみたいのですが、そもそもどうして本なのかと。なぜ本を使うと有効なのか? ということですね。しかもそれを共読という状態でチームで読むとなぜいいのか? 

実は書物は、みなさんの中のイマジネーションを触発するという意味では、最強のメディアなんですね。

その理由を、言語脳科学者の酒井邦嘉さんという方が『脳を作る読書』という本の中でわかりやすく整理されています。

脳を創る読書

入力情報が少ないメディアほど、想像力が必要なんですね。入力情報の量でいうと、この順番に、少ないから多いになります。文字は一番入力情報が少なくて、その次が音声で、その次が映像。

文字に比べれば、YouTubeなどの映像から入ってくる情報のビット数は相当な量になりますよね? それは情報を受け取った後の頭のなかの想像力の量と反比例するんです。入力情報が少ないものほど想像力が活性化するということは、文字で情報を得るということが、自分自身の想像力を触発するという意味では、最も有効ということなんですね。

また、本を媒介にした対話というのは、相互の想像力を引き出しあうというところで、今度は出力情報になります。出力情報が多いほど、想像力が活性化する。これは入力情報とは逆なんですね。

つまり、出力情報が多いのは、例えば今、みなさんが読んだことをここにメモしていただく。このように書くことも1つのアウトプットとしては有効なのですが、それよりも喋るほうが、ボディーランゲージや声の調子といったいろんな情報が含まれるので、情報量が多くなっていく。

さらにそれよりも、対話をするほうが、相手の反応をみたり、誰かの詞を引き取ったりというかたちで、どんどん情報量が増えていくんですね。ですから、少ない情報量のメディアでインプットして、多い情報量のフォーマットでアウトプットする。このプロセスがもっとも自分のイマジネーションを働かせることになるわけです。

このグルグルの繰り返しが、書物を使った共読という行為で引き出されるというのが、この脳科学的な図から成り立つというところなんですね。