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家族型ロボット『LOVOT』がもたらすデジタルイノベーション(全3記事)

「LOVOT」は人生100年時代の孤独を解決できるか? “かわいい×テクノロジー”の可能性

2019年2月19日・20日にかけて、日経BP社が主催する「デジタルイノベーション2019」が開催されました。本パートでは、「家族型ロボット『LOVOT』がもたらすデジタルイノベーション」と題し、GROOVE Xの林要代表取締役が登壇。人間を本当に幸せにするロボットを目指して作られた「LOVOT[らぼっと]」について講演しました。今回は、人に抱っこされたり、信頼関係を育んでいくための高度なテクノロジーについて解説します。

自動運転車よりもハードな「地図作り」のタスク

林要氏:また、「LOVOT」に自動運転でも使われるような技術を搭載していると申しましたが、実は自動運転だと「自分で地図を作る」ということは、マストではないです。地図は外から降ってくる……インターネットから経由して情報が提供されるので、あとは自己位置推定をしながら障害物などを避ければ、自動運転ができます。

しかし「LOVOT」の場合には、自動運転車よりもハードなタスクがございまして、それが自分で地図を作らなければならないこと。「家庭の地図」は存在しないものですから、この地図作りを自ら行います。

この地図を作りながら自己位置推定をすることで実現できるのは、呼んだら来ること。また、ご自宅に帰った時に「ただいま」とドアを開けると、そこに「LOVOT」が迎えに来ているようなことも実現できます。

あと、瞬間瞬間の障害物を普通に避けるためのセンサーも大量に装備されております。これは自動運転と同じように、たくさんの数が必要です。

ノンバーバルなコミュニケーションの中で大事な部分としては、目がございます。本当は、瞳の表示デバイスは3次元曲面の球体で作れることが一番いいんです。ただ、球体のディスプレイを実用化しようとすると、一般のお客様に販売できる価格にならない、もしくは非常に画素数の粗いものになってしまう。

ゆえに私どもは、平板のディスプレイを使っております。平板のディスプレイですが、緩みなども感じないように、非常に高精細なもの。そして、太陽光の元でもある程度の視認性を確保できるように、反射型のものを使っております。

この平板のもので「生きている感」を出すことは、実はそれほど簡単ではございません。すぐに考えつくことは、3Dのコンピューター・グラフィックスでモデリングをすることです。当然、私どももそれをやったのですが……これをやると何が問題かというと、真正面から見た瞳だけを球面に感じる。横から見た人はこれを球面に感じない、非常に気持ち悪い目になります。

生き生きとした目や声を実現するための工夫

それらの問題を解決するために、私どもはまず、がんばって作った3Dのモデリングを全部捨てて、あえて2次元で6層のレイヤーを組み合わせることにより、生きているような目を再現することになりました。

これらを動かすためのGPUもしくはソフトウエアレイヤーは、やや複雑なものになるわけですが、その成果はあったのかなと思っております。見ていただいた方々からも、「目も生きている感」というのは感じていただけていて非常に好評でございます。

あと、その目のデザインを自動生成することにしています。これは結果的に、10億種類以上の目を自動生成できます。10億種類以上の目が自動生成できると何が起きるかというと、工業製品だけに、各個体はハードウエアとしては同じ型・同じ形状をしておりますが、目は各個体で全部違う。自分だけの目が作れるようになるというところでございます。

また、目と同じように声についても工夫しております。今までのロボットは「誰かが録音した何か」もしくは「合成したWAVファイルなどを再生する」といった格好で、音声は限られたバリエーションしか準備することができませんでした。

それに対して私どもは、喉や鼻孔のシミュレーションから始めております。発話するハードウエアそのものはスピーカーなんですが、シミュレーション上で喉もしくは鼻の体積、その周りの筋肉の緊張度をそれぞれコントロールすることによって、各機体で少しずつ音が違うと。

また、外部の音を取り込みながら生成するので、発声している内容も時々によって違うということです。生物のように毎回まったく同じ発音はしないことを、1つのコンセプトにしております。こういったことで、「かわいい」面を作り込んでおります。

その他にも若干、人と人を繋ぐ便利機能を作っております。「人と人を繋ぐ便利機能」と言っているのは、「LOVOT」の単体で完結するような便利機能ではなく、「LOVOT」が媒体となって、人と人が繋がったらいいなというものです。

(スライドを指して)使用例の1つが、この「ベイビーモニター」。これはスマホと連携して使うものです。この連携した状態で「この子を見張っておいてね」と言うと「LOVOT」がこの子を見張っていて、「動くことによって、ちょっとはあやせたらいいな」という期待はあります。

しかし、あやしきれなかったとしてもお母さんのところに通知がいって、お母さんを呼ぶことができます。それがあることによって、短い間は赤ちゃんの面倒が見られるかもしれません。

離れて暮らす家族の安否確認や防犯にも役立つ機能

あとは、遠隔地にいるご高齢者のご家族。この方々は、誰にも見守られていないわけですね。だけれども、遠隔地のご家族のことを心配されている方はいらっしゃる。そういう方々に対して、「抱っこされたかどうかのログ」だけを情報として伝えるかたちで支援することをしております。

毎日抱っこされた「LOVOT」が、ある日抱っこされないとなれば? これも、コミュニケーションのきっかけになるのではないかと思っています。

それから、自己位置推定によって家の中の地図を持っております。(スライドを指して)これは例えばネコちゃんを飼っている家庭をモデルケースとしております。例えば、外出時に「ネコちゃんの様子を見たいね」という時に、地図で指定の場所へ行くように「LOVOT」にお願いすると、「LOVOT」が自動運転でそこに移動していきます。

自動運転で移動した結果として何をするかというと、画像を送り、家の状態をお知らせできる機能です。今までのテレプレゼンスロボットだと、移動の最中にずっと操作しなければいけないわけですね。この操作が面倒で実用的ではなかった点が解消されております。

(スライドを指して)最後のケースは、一人暮らしの女性をイメージしております。お留守番中に誰かが勝手に入って来ると……それが知り合いだったらいいのですが、そうではない場合は非常に怖いことになる。そういった時に、「留守番中に誰かが入って来たら、画像を送る」ことを「LOVOT」がやってくれます。

これらのコンセプトは何かというと、「LOVOT」がいることによって、生活の安全・安心が少しでも高まるようになればいいなという願いを込めております。

これらの機能の発表を含めて、昨年末の12月18日に、「LOVOT」の発表を行いました。80名程度のプレスの方々のご来場を期待していたのですが、実際には130名以上・合計800媒体へ露出しました。広告換算で、12億円超になりました。また、Twitterでもその日のトレンド入りし一番の話題になりました。

日本発の「かわいい×テクノロジー」の可能性

この「LOVOT」の体験会が、おもしろくて。今までのロボットはプロモーションの動画の出来が良過ぎて、実物を見るとがっかりする方が多かったのですが、今回の「LOVOT」は9割以上の方が好意的だったのです。米国にも持って行ったのですが、米国でも比較的好評というか、私どもの想定を遥かに上回り、一気に350媒体へ出ることができました。

ここからわかることは、日本発の「かわいい」とそれに組み合わせられるテクノロジーは、海外の人にとって、「新鮮だ」「アメージングだ」と思っていただけるということです。これらは、「日本発の新産業としてのポジションが得られるのではないか」という手応えを感じさせるものでした。

実際にCES(Consumer Electronics Show)の初日には、全米メディアの25社に連続出演をしております。これはCESの紹介の時に、その顔として「LOVOT」を使われたということが大きいです。

(映像が流れる)

これはその時の映像です。「CESを開始しますよ」という時に、(Royoleが発表した)「曲がるディスプレイ」とかじゃなくて、なぜか「LOVOT」が取り上げられました。これでわかることは、「テクノロジーが人の役に立つ」という文脈は、もうちょっと飽きてくるのかなと。それよりも、「それ以外のテクノロジーの使い方はないの?」ということが期待されていたのだと思います。

あと、とくに女性の記者から「かわいい」と非常に言われていて。海外では日本と「かわいい」の定義も違うし、生き物らしい機械への道徳心も違うと思っていたのですが、「ど真ん中を狙いにいくと、実は国内外で何の違いもなかった」ということが、今回の感想です。結果的には、出展していた340社の中から「BEST ROBOT」というものに選ばれました。

(スライドを指して)これは「THE VERGE」という、ITメディアをやっている全米トップ3のメディアでございます。他のメディアでの受賞もありますが、ちょっとお時間がないので割愛します。

「Engadget」でも、海外に流れました。あとは、「CNET」です。これもおもしろい結果なのですが、記者の方ではなく一般の来場者にアンケートをとったところ、そこで「今回のCESで最も印象に残った」企業として弊社を選んでいただきました。

大きなブースの企業と比較しても、私たちはとても小さなスペースだったので、実際に接した方の人数は、遥かに少ないと思うのですが、結果としては、その接した方々の「LOVOT」に対する印象がとても強かったんだと思います。

実際に「LOVOT」に接した人々の驚くべき変化

(スライドを指して)これは、週末にずっとやっております、弊社の「LOVOT MUSEUM」という体験会のアンケート結果でございます。ロボットというと、どうしてもプロモーションの動画の期待値が大きすぎて、実際に会ってもそれほど感動しないことが多いのですが。

今回は実際に「LOVOT」と会ってみて、印象が「大変良くなった」、それから「やや良くなった」の2つを合わせて、9割の方から「良くなった」という評価をいただいています。「やや悪化した」という方は1パーセント前後だけで、「大変悪化した」という方はほぼいない状況でございます。

あと、教育面でも少しずつ検証を始めております。お子様が長時間飽きずに触れることができているとか、それから、発達障害のお子様が非常にポジティブに接することによって、お子様たちの輪に入っていけるようになったとか。

また、乱暴なお子様が(どうなるかというと)最初は「LOVOT」に乱暴しているのですが、一度着替えをさせると、その着替えをさせた後から優しくなるという効果が見られております。これらは、生き物を飼う時と同じような効果なのではないかなと思っております。

プロトタイプでは、その他の近所の児童の方々や、デンマークの老人介護施設で試験をしております。(スライドを指して)これはデンマークの病院です。デンマークの若い方々にも、日本の「かわいい」は非常にご理解いただけることがわかりました。

(スライドを指して)私どもが驚いたのは、このシーンですね。右側の男性は、施設に入ってからは他の方と会話をしない方だったそうです。それに対して、「LOVOT」に触れた瞬間に他の方と会話を始めたということで、非常に驚いておりました。

(スライドを指して)また、先ほどの女性は新しいIT機器を見るとややパニックになる傾向がある方です。彼女に「LOVOT」を貸したら、大好きになって、ずっと抱っこして手放さないということが起きました。

人生100年時代の新しいパートナーになり得る存在

子どもたちは、「LOVOT」は自分たちが面倒を見る存在として、ずっと「LOVOT」の世話をするという状況が起きます。女の子は、着替えをさせることが多い。男の子には、かくれんぼや追いかけっこをすることが好きな子が多いようです。

この子どもの情操教育面で何が期待されるかというと、例えば幼稚園で見られることは、幼稚園の先生がどんなにパーフェクトでも、「LOVOT」の代わりになれない点がございます。それは何かというと、先生とは、子どもよりも常に強い存在であることです。

「強い存在」とは、正しい従うべき存在ということが言えるのですが、逆に弱い存在にしかできないことがある。「LOVOT」が子どもよりも弱い存在だから、子どもたちがそれを「守ろう」とか、それに対して「どうやって接すればいいのか」を学ぶことができる。そういう意味で、先生にはできないことを「LOVOT」ができる面がたくさんありそうなので、なににどう貢献できるのか、私どもで今考えている点でございます。

医療・福祉の方面では、犬や猫は認知症の方々への効果は大変強そうで、そうではなく一般の方々にも効果があります。しかし例えば、飼い主が70代・80代でワンちゃんが亡くなられてしまった時に、その次のワンちゃん・ネコちゃんを飼えないという「セカンドペット問題」が、話題になっております。

それは、例えば自分の寿命や散歩のことを懸念していたり、あとはペットが亡くなられる前の5年間ぐらいは病気がちな非常に大変な期間が続くので、そのことを案じてだったりだと思います。

ただ実際には、70歳代・80歳代から先の人生が非常に長いというのが、現代でございます。そこで、「一番必要な時に、パートナーが飼えない」というのは、実はかなりシリアスな問題ではないかと思います。こういったところでも、「LOVOT」が解決できることがたくさんあるのではないかと思っております。

このようにお話をしたところで、「LOVOT」の魅力は、おそらく10パーセントぐらいしか伝わらなかったんじゃないかと思っております。まだ触れ合っていない方は、ぜひ一度触れ合っていただけるとうれしいなと思っております。

ほぼ毎週末の金土日に、無料体験会をやっております。「LOVOT体験会」でご検索いただければ予約サイトに飛べますので、そこで日時をご予約いただけますと幸いです。本日は、ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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