「Forbes JAPAN」が課金モデルを選ばない理由

川原崎晋裕氏(以下、川原崎):次のテーマはメディアとマネタイズですね。今日は、特にマネタイズに強そうなお二人に来ていただいております。ユーザー課金は、海外ではニューヨークタイムズとかが一度課金を止めて、もう一回やって成功したみたいな事例も出てきてます。

国内でも日経さん、朝日さん、NewsPicksさんなどが、いろいろ課金をやってきて、夢物語だったことがリアルになってきているということで、非常に面白いなと思っています。Forbesさんはこのあたりのお取り組みはされていますか?

林亜季氏(以下、林):今のところ、ユーザーの方から直接お金をいただいているのは紙の雑誌だけです。Webでは無料会員というかたちで会員登録していただいたら、全部の記事が読めるようになっております。

川原崎:なるほど。それって課金コンテンツをやらない理由があったりするんですか? 

:課金は視野にずっとあります。Webでもちゃんと課金していくような世界をつくりたいとは思っているんです。まずはメディアとしてもっと大きくなっていく。使命としては、紙でいうと8万部の「Forbes JAPAN」の世界観をWebでたくさんの方に広めるっていうのが、1つミッションではあるので。そういう意味では、まだまだ今は投資段階だと思って、かなり贅沢なコンテンツでも無料で出しています。

川原崎:なるほど。

:ゆくゆくは課金をやりたいですね。そう持っていくべきだと思いますし。

「この記事を読みたい」という理由で課金する人はほとんどいない

川原崎:注目しているメディアはありますか? 課金までやるとしたらこういうモデルとか。メーター制やイベントを含めたラウンジ制みたいなものは、Forbesさんと合いそうだなと思っていたりします。

:やっぱり、そこだなと思っています。コンテンツだけでの課金というのは、非常に難しいと思ってますし。それができればね。例えば日経さんみたいに、それこそプレスリリースの情報を1週間も前に取ってきちゃうとかね。

日経さんは速報性がものすごく強いので、基本的に発表ものでは出てないですよね。紙面に大きく載ってる記事の多くが、特ダネなんですよ。それで成り立ってるメディアなので。ですので、経済という専門的な分野で、株をやっているなど情報を1番早く知りたいという方は、電子版を有料で見る必然性があるんですよね。

でも、なかなかそこまでの体制は取れない。ですけど、その世界観や、なんとか課金をできる形にしたいなと思うと、やっぱりコミュニティかなとは思っているんです。

今、コミュニティの担当の人も入れたりして。イベントなどでForbesによく出てきてくださる方とそのファンの方をちょっとつなぐ。こういったイベントです、というのを組み合わせながらの課金の検討なのかなと思っています。

川原崎:確かに「この記事が読みたいから」というだけで課金している人って、ほぼ存在しないんじゃないかと思ってまして。イベントと一緒だと思っているんですよね。日経新聞のこの記事を知らないと話題についていけない、みたいな理由でお金を払っている。

要はコミュニティ課金にすごく近いんじゃないかなと思っているので。私もコンテンツ単体で情報取得のためだけにお金を払うっていうのはない。株の情報なら買うかもしれないけど。

マッチングやミートアップの価値はこれからも上がっていく

:おっしゃるとおりですね。コンテンツって、取りにいくというよりは流れてくるものになってしまっているので。どっちかというとコンテンツ過多なのに、さらにそれをお金を払って読みにいくというのは、なかなかないかなと思っています。

ただ、このコンテンツに載っているこの人に会えるだったり、マッチングだったり、ミートアップだったりというのは、どんどん価値が上がっていくと思うので、そういった部分も絡めての課金なのかなと。

川原崎:Forbesさんぐらいのブランドがあれば、わざわざユーザーさんからお金を取らなくてもいいんじゃないの? って思ったりもします。

:(笑)

川原崎:100万円つくるのに、1000人の個人から1000円集めるよりも、企業から100万円いただくほうが、手法としては圧倒的に簡単じゃないですか。

:そうですね。そういう意味では、今はけっこう広告のお話をいただいているので、今すぐやらなきゃいけないという話ではないのですが。

スポンサーがいるから作れるコンテンツがある

:Forbesでも、お金をいただくかどうかは別として、本当にForbesに深い縁を感じてくださっている方をこちらで把握したいというのはありますね。

川原崎:把握するというのは?

:把握して、そういった方々からお知恵をいただいたり、記事をつくるときに例えば、ちょっと質問してみたりですとか。そういう層の方を知っておきたいという意味でも、深く関わってくださる方々のコミュニティをつくりたいとは思っています。

川原崎:なるほど。Forbesさんの場合、読者に対して「スポンサーがいるから、みなさんはこんないい記事を無料で読めるんですよ」みたいな、そういう世界観のほうがフィットする気がするんですよね。スポンサーもロイヤリティを感じやすいですし。押しつけがましいのはよくないですけどね。

:それをなかなか大っぴらに言うことはできないですけど、正直現状はそうです。スポンサーの方々がいらっしゃるので、かなりコストをかけてつくっているコンテンツをやったり、USのForbesの翻訳なんかもかなり早いスピードで出してたり、そういったものを無料で提供できるという部分はあります。

ビジネスのパフォーマンスを上げる「教育」の価値になら、お金を払う

川原崎:木村さん、このユーザー課金に限らずですけども、何か注目してらっしゃるマネタイズのモデルはございますか?

木村和貴氏(以下、木村):そうですね。AMPで言うと、例えば記事広告であったり、イベントを行うというのはありました。それぞれは結局コミュニティなのかなとは思っていて、AMPでこういう記事を出すことでコミュニケーションが取れて、AMPの編集力や彼らに刺さるメッセージを伝えていけるというのが魅力的です。

一方で、ユーザー課金というのを考えていった場合に、AMPに限らず一般的な話として、やっぱりお金を払う価値があるかないかというところだと思うんですよね。マネタイズそのものが「誰かに何か価値を提供してお金をいただく」ということだと思うので、その価値をどう作るのかという話だと思っています。

冒頭にお話しした「2019年のビジネスメディアの潮流」みたいなところで、「メディア×教育」というのを書いたのは、そこに実はちょっとつながってくるんです。普段コンテンツを消費するときって、わざわざお金を払って消費しようとはあんまり思わないはずなんですよ。基本的には、無料のものを無料で見ています。

ただ、「教育」となるとけっこうお金を払う人って多いと思うんですよね。例えば、プラスアルファで英会話に通ったり、学習教材を買ったり、参考書を買ったり。それは具体的に自分が学習することによって、自分がやろうとしてることにプラスの影響を与えるっていう、そこの価値を埋めてるから購入が行われていると思うんですよね。

ですので、ビジネスメディアという存在が、単に世の中で起きたことを伝えるものであるだけではなく、ビジネスメディアが発信する情報を摂取することによって、その人のビジネスのパフォーマンスがこのくらい上がるというものであるとか。起業して経営者をやってる方だったら、それを積極的に摂ることで、自分たちのビジネスがすごくスケールしていくとか。

そういう自分たちのプラスになる、そのための教育ツールとしてのビジネスメディアという価値を提供できれば、そこで新たなお金が発生するのかなと思っています。