2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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川原崎晋裕氏(以下、川原崎):次のテーマはメディアとマネタイズですね。今日は、特にマネタイズに強そうなお二人に来ていただいております。ユーザー課金は、海外ではニューヨークタイムズとかが一度課金を止めて、もう一回やって成功したみたいな事例も出てきてます。
国内でも日経さん、朝日さん、NewsPicksさんなどが、いろいろ課金をやってきて、夢物語だったことがリアルになってきているということで、非常に面白いなと思っています。Forbesさんはこのあたりのお取り組みはされていますか?
林亜季氏(以下、林):今のところ、ユーザーの方から直接お金をいただいているのは紙の雑誌だけです。Webでは無料会員というかたちで会員登録していただいたら、全部の記事が読めるようになっております。
川原崎:なるほど。それって課金コンテンツをやらない理由があったりするんですか?
林:課金は視野にずっとあります。Webでもちゃんと課金していくような世界をつくりたいとは思っているんです。まずはメディアとしてもっと大きくなっていく。使命としては、紙でいうと8万部の「Forbes JAPAN」の世界観をWebでたくさんの方に広めるっていうのが、1つミッションではあるので。そういう意味では、まだまだ今は投資段階だと思って、かなり贅沢なコンテンツでも無料で出しています。
川原崎:なるほど。
林:ゆくゆくは課金をやりたいですね。そう持っていくべきだと思いますし。
川原崎:注目しているメディアはありますか? 課金までやるとしたらこういうモデルとか。メーター制やイベントを含めたラウンジ制みたいなものは、Forbesさんと合いそうだなと思っていたりします。
林:やっぱり、そこだなと思っています。コンテンツだけでの課金というのは、非常に難しいと思ってますし。それができればね。例えば日経さんみたいに、それこそプレスリリースの情報を1週間も前に取ってきちゃうとかね。
日経さんは速報性がものすごく強いので、基本的に発表ものでは出てないですよね。紙面に大きく載ってる記事の多くが、特ダネなんですよ。それで成り立ってるメディアなので。ですので、経済という専門的な分野で、株をやっているなど情報を1番早く知りたいという方は、電子版を有料で見る必然性があるんですよね。
でも、なかなかそこまでの体制は取れない。ですけど、その世界観や、なんとか課金をできる形にしたいなと思うと、やっぱりコミュニティかなとは思っているんです。
今、コミュニティの担当の人も入れたりして。イベントなどでForbesによく出てきてくださる方とそのファンの方をちょっとつなぐ。こういったイベントです、というのを組み合わせながらの課金の検討なのかなと思っています。
川原崎:確かに「この記事が読みたいから」というだけで課金している人って、ほぼ存在しないんじゃないかと思ってまして。イベントと一緒だと思っているんですよね。日経新聞のこの記事を知らないと話題についていけない、みたいな理由でお金を払っている。
要はコミュニティ課金にすごく近いんじゃないかなと思っているので。私もコンテンツ単体で情報取得のためだけにお金を払うっていうのはない。株の情報なら買うかもしれないけど。
林:おっしゃるとおりですね。コンテンツって、取りにいくというよりは流れてくるものになってしまっているので。どっちかというとコンテンツ過多なのに、さらにそれをお金を払って読みにいくというのは、なかなかないかなと思っています。
ただ、このコンテンツに載っているこの人に会えるだったり、マッチングだったり、ミートアップだったりというのは、どんどん価値が上がっていくと思うので、そういった部分も絡めての課金なのかなと。
川原崎:Forbesさんぐらいのブランドがあれば、わざわざユーザーさんからお金を取らなくてもいいんじゃないの? って思ったりもします。
林:(笑)
川原崎:100万円つくるのに、1000人の個人から1000円集めるよりも、企業から100万円いただくほうが、手法としては圧倒的に簡単じゃないですか。
林:そうですね。そういう意味では、今はけっこう広告のお話をいただいているので、今すぐやらなきゃいけないという話ではないのですが。
林:Forbesでも、お金をいただくかどうかは別として、本当にForbesに深い縁を感じてくださっている方をこちらで把握したいというのはありますね。
川原崎:把握するというのは?
林:把握して、そういった方々からお知恵をいただいたり、記事をつくるときに例えば、ちょっと質問してみたりですとか。そういう層の方を知っておきたいという意味でも、深く関わってくださる方々のコミュニティをつくりたいとは思っています。
川原崎:なるほど。Forbesさんの場合、読者に対して「スポンサーがいるから、みなさんはこんないい記事を無料で読めるんですよ」みたいな、そういう世界観のほうがフィットする気がするんですよね。スポンサーもロイヤリティを感じやすいですし。押しつけがましいのはよくないですけどね。
林:それをなかなか大っぴらに言うことはできないですけど、正直現状はそうです。スポンサーの方々がいらっしゃるので、かなりコストをかけてつくっているコンテンツをやったり、USのForbesの翻訳なんかもかなり早いスピードで出してたり、そういったものを無料で提供できるという部分はあります。
川原崎:木村さん、このユーザー課金に限らずですけども、何か注目してらっしゃるマネタイズのモデルはございますか?
木村和貴氏(以下、木村):そうですね。AMPで言うと、例えば記事広告であったり、イベントを行うというのはありました。それぞれは結局コミュニティなのかなとは思っていて、AMPでこういう記事を出すことでコミュニケーションが取れて、AMPの編集力や彼らに刺さるメッセージを伝えていけるというのが魅力的です。
一方で、ユーザー課金というのを考えていった場合に、AMPに限らず一般的な話として、やっぱりお金を払う価値があるかないかというところだと思うんですよね。マネタイズそのものが「誰かに何か価値を提供してお金をいただく」ということだと思うので、その価値をどう作るのかという話だと思っています。
冒頭にお話しした「2019年のビジネスメディアの潮流」みたいなところで、「メディア×教育」というのを書いたのは、そこに実はちょっとつながってくるんです。普段コンテンツを消費するときって、わざわざお金を払って消費しようとはあんまり思わないはずなんですよ。基本的には、無料のものを無料で見ています。
ただ、「教育」となるとけっこうお金を払う人って多いと思うんですよね。例えば、プラスアルファで英会話に通ったり、学習教材を買ったり、参考書を買ったり。それは具体的に自分が学習することによって、自分がやろうとしてることにプラスの影響を与えるっていう、そこの価値を埋めてるから購入が行われていると思うんですよね。
ですので、ビジネスメディアという存在が、単に世の中で起きたことを伝えるものであるだけではなく、ビジネスメディアが発信する情報を摂取することによって、その人のビジネスのパフォーマンスがこのくらい上がるというものであるとか。起業して経営者をやってる方だったら、それを積極的に摂ることで、自分たちのビジネスがすごくスケールしていくとか。
そういう自分たちのプラスになる、そのための教育ツールとしてのビジネスメディアという価値を提供できれば、そこで新たなお金が発生するのかなと思っています。
川原崎:なるほど、その観点はありそうですね。林さん、そっち系で何かコンテンツをつくれそうですか? 教育向けのコンテンツですね。会社で研修として導入されて法人ライセンスいただいてるみたいなモデルはありますよね。
林:そうですね。リアルだったら、けっこう考えられると思いますけどね。
川原崎:イベント形式とか?
林:はい。イベント形式とか講座形式とか。近くて遠いのかもしれないですけど。
朝日新聞時代に、新規事業の部署にいたときに1つやった事業があって。朝日新聞にジャーナリスト学校という社内向けの教育機関があるんです。それはぜんぜん外部には出していなくって、例えば新入社員が入ってきたら、その人たちに記者とは何か、取材というのはどうやるかみたいなことを、かなり細かく教えていく研修機関なんですね。
このノウハウって、もしかしたら他のメディアの方にお伝えできるかもしれないと思っていて。あと例えば企業広報の方などにも応用できるかもしれない。それでジャーナリスト学校を事業化したことがあったんです。
そういう意味では、編集などのノウハウを外部にお伝えするという意味でも、1つのマネタイズというか、新たな事業展開というのはあるかもしれないですね。
川原崎:確かにそれはそうですね。新聞社やメディアだから持ってるノウハウみたいなところで。
川原崎:実際に事業化する場合には、たぶんあらゆる分野に突っ込んでいくじゃないですか。Forbesさんの紙面で対象にしているテーマで、何か教育モノをつくってくれと言われたら、けっこう難しい感じですか?
林:教育かぁ……。でもForbesが投資講座をやるのもちょっと変じゃないですか?
川原崎:ブランドが下がるかもしれないですね(笑)。
林:そうなんですよね(笑)。そこはメディアの公平中立性とかに関わってくるかなとは思うんです。
川原崎:そうですね。
林:ただ個人的に面白いなと思うのは、ファッション特集を紙面でやったりしているんですが、そこに出てくる人はモデルさんではなくて、一般の企業や起業家の方なんですね。ビジネスで活躍してらっしゃる男性や女性にスーツを着ていただいて出ていただく、ということをやっていたりする。
それは一つのビジネススタイルの提案であったり、そこから派生したイベントをやっていたりするんですよね。例えば、初めてのオーダースーツみたいなのとか。そういうのは、ちょっと面白いことをやっているのかなとは思います。
川原崎:それはメディアとして成り立っているかどうかが大きなポイントだと思ってまして。ユーザーに合わせてコンテンツをつくるって、かなりユーザー像や実際のユーザー数が固まってないとできないですよね。
林:おっしゃるとおりですね。
川原崎:けっこうやりがちなのが、うちはビジネスメディアだから恋愛はやらない、とか。でもターゲットユーザーの見たい切り口の恋愛やファッション、ライフスタイルはやるべきじゃないですか。
林:そうですね。そこは読者の方がある程度こちらでイメージできてるからこそ、そういった方々に、例えばどういったブランドさんと組んで、どういうコンテンツを届けるか。イベントなりマネジメントでもそうなんですけど、それらを提供できるかというのがわかる。そこがわかってないとなかなか難しいです。
川原崎:ありがとうございます。まだ少し時間ありますかね? これは答えにくいかもしれないんですけど、プラットフォームとメディアの関係性はどう変わっていくかについて聞かせてください。
私がたまにメディア向けの勉強会などをやるときに、「メディアはある部分ではプラットフォームに搾取されている」という話をしているんですよね。
プラットフォームには、メディアの何倍ものユーザーが集まっているので、当然お金もそっちにほとんど流れていて、メディアには1円にもならないPVが少しこぼれてくるみたいな感じです。タダで記事を書いてる編プロみたいだなって、ある意味では思うんです。
たぶんメディアをやってるみなさんは、けっこう共感いただけることが多いんじゃないかなと思うんですけど。
でも、もちろん本当になんのメリットもなければそもそも記事を配信したりはしないので、それだけではありません。プラットフォームに記事が載ることでたくさん見てもらえて、遠回しにメディアのブランディングになって、認知や売上が上がるというメリットはあります。
要はバランスの問題であり、そのことを自覚してプラットフォームとお付き合いできているかどうか。
先ほど出てきたユーザー課金っていうのは、脱プラットフォームの可能性も秘めています。そういうことができ始めると、プラットフォームとメディアの関係性も変わっていくのかなと思っているんです。そのあたり、林さんのほうからいかがでしょう?
林:そうですね。けっこう思うところはあるんですけど。
川原崎:思うところはある?
林:はい。
川原崎:でも大きな声では言えない?(笑)
林:まあ、そうですね(笑)。
林:プラットフォームの方々が1番強いのは、やっぱり流通できるということじゃないですか。コンテンツの流通経路をちゃんと持っていて、我々の本当に何百倍、何千倍のユーザーを抱えているというところで。
そういったところに出させていただくことによって、バックしてきて、そこからこちらに呼んでいただけるというのも少なからずあるので。一概に「厳しいです」というわけにはいかないんですね。
ただ、非常に客観的に言うと、例えば売上規模で考えると、プラットフォーマーさんとメディアは規模が違う。例えば今1桁億円でもがいているメディアはいっぱいあると思うんです。それが大きくなって、例えば2桁に行きましたと。ただ、次の3桁億円までデジタルメディアでいっているという話はあまり聞かないですよね。
それでいうとプラットフォーマーは、その先の4桁億円にいってたりしますから。そういう意味では、メディアのビジネスモデルがどこまで大きくなれるかというのは、そこのプラットフォーマーさんとの関係をどうするかというところだと思うんですね。
みなさんが1円にもならないPVのバックしかないにも関わらず、それでも配信をし続けているというのは、今が投資段階なのかなというところなんですよね。例えばPVやユーザー数でスケールさせるところをいったん止めて、ユーザー課金のほうにいくとなると、拡大するという1つのフェーズを終えてしまうことになるじゃないですか。
川原崎:はい。
林:そうするとある意味バーティカルな感じで、ユーザー層で固まってきて、そこに「1人いくら出していただきましょうか」という話になってきます。メディアを今はもっと大きくしていきたいというところとのせめぎ合いになるのかなと思いますね。
そういう意味では、一回そこであきらめちゃって掘っていくほうが、もしかしたら稼げるのかもしれないですけど。
川原崎:いまオウンドメディアもそうですし、プラットフォーム自体が中でコンテンツづくりを始めているじゃないですか。ヤフーさんとかもそうですよね。前職時代にあれをやったときに、私の周りのネットメディアの人たちはけっこう怒ってたんですよ。今までヤフーニュースを成り立たせてきたのは我々なのに、いざ自分のところにユーザー数が集まったら、自分でつくっちゃうのかよみたいな。
ビジネスとしては当然だと思いますし、優秀な編集者の囲い込みみたいな文脈で、企業、事業会社が一定規模のメディアは持っていないけれども、広告部隊やブランディング部隊を抱えるっていうのは出てきているわけじゃないですか。そういう対プラットフォームだけじゃなくて、企業に対しても、メディアの立ち位置が変わってくるのかな、という感じはちょっとしますね。
林:そうですね。現状をシビアに言うと、メディアは一生懸命に編集者やライターを育てて、そういう育てた人がプラットフォーマーに行ってしまったり、企業に行ってしまったり、というのが現状なのかなと。
川原崎:待遇の問題なんですかね?
林:待遇もあると思います。待遇の差があるというのは、全体の売上規模の話でもあったりするので、そこは非常に厳しい部分があるのかなと思ってます。どこかで本当にしびれを切らして、1つ大きい変化があるんじゃないかなと思ってるんですけどね。
川原崎:そう願いたいですよね。
林:そうですね。企業の方々も、オウンドメディアは一時期からけっこうブームでやってらっしゃったりしますけどね。オウンドメディアさんから改めて「Forbesと一緒に何かできないか?」というご相談をいただくことも多くて。
やっぱりその企業の数字の中でやっていることと、メディア部分で何かできるようなこと、また、例えばオーディエンスが違うからメディアのブランドを使いたいとか。そういう意味でまた改めて人気があるメディアと協力する、ということについてのニーズが出てきてるのかなとは思っています。
川原崎:単純にForbesに載せたほうがたくさん読まれるという以上に、読まれ方というか。そもそも客観性がオウンドメディアには存在しないわけで、ユーザー層もすでにファンの人が読んでるわけで、そのへんはぜんぜん違いますよね。
林:そうですね。一方でそのオウンドメディアの認知も高めたいという意味で、コラボして何ができますか? ということだったり。これからちょっと新しい形が出てくるんじゃないかなと。
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