個の時代に、メディアは書き手や編集者を囲い込むべきか?
求められるのはメディアの文脈で広告を企画できる力

大予測!2019年ビジネスメディアの潮流 #2/4

2019年1月23日、ログミー株式会社と株式会社OKPRの共催によるイベント「大予測!2019年ビジネスメディアの潮流」を開催しました。細かい数字を追うことよりもブランドコントロールの要素が強くなってきている昨今、ビジネスに特化したウェブメディアはどのように立ち回り、今後マネタイズをどのように考えていけばいいのか。今回は、「Forbes JAPAN」Web版編集長の林亜季氏と、 ビジネスインスピレーションメディア「AMP」の共同編集長 木村和貴氏を招き、2019年に起こるビジネスメディアの潮流について幅広い観点から話をうかがいました。本記事では、「メディアとコンテンツ」と題した2つ目のテーマを中心にお送りします。

読者に気づきを与えられるような編集者やライターは、そう多くない

川原崎晋裕氏(以下、川原崎):2つ目のテーマは「コンテンツ」になります。

このあたりも林さんが書かれた記事に詳しいところで、メディアの書き手の囲いこみがすごく重要になってくる、というお話をされていました。ご自身の体験を含めて、そこのご説明をしていただけますでしょうか?

林亜季氏(以下、林):一時期、ネット上に「ライターです」とか「編集者です」という人がどんどん増えてきた、という向きがありまして。今メディアもそうですけど、読者も良い記事と「これはちょっとよくないよね」という記事を見分けられる能力が、すごくついてきている。

これは上から目線かもしれないですけど、読者の方もリテラシーが上がってきて、本当にいい記事が、ちゃんと読まれる時代になってきたと思ってるんですよね。「これってただ人の記事を書き写しただけかもしれない」「これってどこかで読んだことあるよね」みたいなものって、今は読まれなかったりする。

かなりリテラシーが上がってきているなかで、編集者も書き手も二極化が進んでいると思います。本当の意味で読者に気づきを与えられる人や、文脈を作れる人って、実はそんなに多くないんじゃないかということに、メディアもクライアント企業も気づきはじめている。

そこで、そういう方を囲い込むという動きが、今できてきているんじゃないかと感じています。

川原崎:ある意味、コンテンツってすごくコモディティ化してきたな、というのがあります。誰でも情報ソースを辿りやすくなっていて、誰でも書ける記事の範囲がすごく増えていて。最後に残るのは、その人しか取って来れない1次ソースのネットワークを持っているか、すごく独自な発想力があるとか。

:そうですね。

書き手の囲い込みは、日本の編集界にはなじまない?

川原崎:極端な話、書き手がネームバリューを持っているという以外に差別化ができないという話になるんでしょうか。

:はい。テクニカルな部分でうまい方は、いっぱいいますけどね。速報で出した大手メディアの記事よりも、検索で上に行っちゃうような。まとめで書いてあるのに、そっちのほうが上に行っちゃうような記事を、テクニカルに書ける人はけっこういると思うんです。本質的には、コモディティ化しているのは間違いないと思います。

川原崎:その書き手の囲いこみという考え方が、日本の編集界にはなじまないんじゃないかと思ってまして。芸能人などのほうがまだ帰属性が高いというか。「テレ東に属しています、でもある日フリーアナウンサーになっちゃいました」という話はありますよね。

だけど、ライターさんやフリーの編集者とかは、もっと流動的で、あらゆる媒体でわりと節操なく書いている人も多いと思うんですよね。

:そうですね。

川原崎:書き手の力が高まって、書き手にたくさんファンがついて、書き手がますます強くなる。でも、せっかく育った書き手さんが他へ行ってしまうと、メディアにどういうメリットが残るのかなと心配になる部分もありまして......(笑)。

:なるほど(笑)。個人的に思っているのは、書き手次第でコンテンツの流通が左右されるので、そこが大きいかなと思っています。例えばBuzzFeedさんなんかは、1人1万人ぐらいファンを持っている書き手の方が、けっこう揃っていたりして。

メディアとして「この記事を出しました」というよりも、書いた人が「私が書きました」とやるほうが、すごくダイレクトにささりやすいというか。そのほうが、そのファンの方々が、また記事をシェアするじゃないですか。

そういう重層構造みたいになってきて。ある程度のコンテンツの流通が今厳しくなっているなかで、流通力を持っている人を囲っておく意味はあるのかな、と思います。

メディアの機能は、コンテンツ力からアサイン力へ

川原崎:なるほど、流通はたしかに。でも、できれば独占したいですよね(笑)。

:(笑)。

川原崎:囲いこみっていうところで言うと。

:そうですね。けっこう流動的になってきていて、引き抜き合いなんかもよく聞きますけれど。ただ、その書き手の人がこのメディアにいたいと思うかどうかは、それこそメディアのブランドであったり、メディアの信念であったりが大事なのかな、と。

給料を上げて「いてください」というよりは、やっぱり「うちのメディアはこういうことが書ける」「あなたのこういうところを評価している」みたいなところを、書き手の方や編集者に対して、すごく丁寧にコミュニケーションしていかないといけない時代じゃないかなと思っております。

川原崎:先ほど芸能プロダクションの例を出したように、出版社とメディアの機能が、芸能プロダクションにどんどん近づいているなと思っていまして。要は企画力やコンテンツ力みたいなものから、アサイン力に変わっている気がするんですよね。ライターさんをそこに留めておけるとか。Forbesさんもそうじゃないですか。

例えば、中田英寿と食事会をアサインできるとか、イベントに呼べるみたいなところはすごく強力にまだ残っていて。企画力、コンテンツ力みたいなものも、若干のコモディティ化を見せはじめているような気がするんですね。

これからは個の力が強くなる時代

:そうですね。おっしゃるとおりだと思います。我々もForbesブランドが大事で、Web編集部では、中の人間にちゃんと専門性を持たせて、それなりの勉強をさせた上で外に出していこうっていうのは、今ちょうど言っているところです。

川原崎:それ、すごいですね。

:私が今日ここに呼ばれたのもたまたまあの記事を出したからですけど、そうやって出ていけるような人間を育てていきたいな、と思ってますし。それはスタートアップの世界も実は一緒で、社長がどんどん出ていったり、自分でソーシャルをやったり、という会社がどんどん存在感を増しているのは、もうまちがいないなと。

それはメディアに限ったことじゃなくて、これからの企業というか、1つの事業体のあり方なのかなと思ってます。タレント化を進めていくというのもそうですし。

川原崎:そういったものも、誰が言うかみたいなことで。

:誰が言うかが大事ですよね。

川原崎:誰がやるかにすごく、シフトしてきている。要は個の力が強まっているということですよね。

:はい、そう思います。

川原崎:ありがとうございます。

人が流動的なほうが市場の生産性は高まる

川原崎:木村さん、このあたりはいかがですか?

木村和貴氏(以下、木村):そうですね。さっきの囲いこみみたいなところの話でいくと、すごいライターさんが書く記事というのは、たぶんどこで書いてもすごい記事なんだと思うんです。

川原崎:そう、ブログであっても一緒ですよね。ブログで書いたほうがライターさんは儲かるかもしれない。

木村:そうですね。「note」とかでやったほうがいい、とかあるかもしれないんですけど、ただ理想としては、やっぱりそのメディアが掲げている方針や、ビジョンというのがあると思うんですよ。

川原崎:はい。

木村:AMPだったらミレニアル世代向けに、ビジネスインスピレーションを与えると。そういう方針が、かけ算されて生まれる記事というところに、価値があるのかなと思うので。

逆に言うと、その他でも書いてもらってもいいんですけど、AMPで書くときには「× AMP」になることで、よりいい記事というか、僕らにとっていい記事になる、という状態が作れるのかなと。

構図的には、たしかに囲いこめたらすごいなとは思いつつも、業界の盛り上がりや、効率性とかも考えると、流動的な状態のほうが、全体的には生産性が高いのかなとは思ってしまう。

川原崎:なるほど。かけ算って話になると、メディア側に特徴がないと、それこそ「他のメディアでもいいや」となっちゃうので、そこも重要なのかなと思います。

木村:そこがたぶんメディアに書くのと、ブログに書くちがいだと思うんです。

スポンサードコンテンツを通常の編集記事と同様に企画できる力

:一点だけいいですか? 囲いこみで言うと、広告を作れる人間がメディアに必要になってきたというトレンドは、まちがいなくあるじゃないですか。

自分の記事の中にも書きましたけど、ブランドスタジオみたいなのをメディアが抱えるようになってきて、企画制作力が問われるようになってきたというなかで、普通に出してる一般の編集記事のテイストや方向性を損なわずに、同じ方向を向いている企画をスポンサードで立てられる人が、意外と少ないんじゃないかなと。そういう人は積極的に囲いこみたいな、と思っているところです。

川原崎:とても共感します。広告をつくるのって、なんか矛盾を解消するみたいな仕事ですよね(笑)。

:(笑)。

川原崎:クライアントを選別するというとエラそうですけど、誰とおつきあいするのかとか、ご理解いただくとかは当然重要です。そこで、そもそも編集ポリシーが相反するとか、実現したいこととリソースが乖離しているといった無理なところを、芸術的にうまく実現するような。

:そうですね。

川原崎:そこは特に能力が問われるのかなと。

:編集記事よりも非常に難しい部分だと思います。うまくはまれば、スポンサードコンテンツ単体でバズったりということもあったり、非常に喜んでいただけたりという部分で、実は編集のコンテンツ以上に大事だったりするんじゃないかなと。

お題出しがあるじゃないですか。「この商材で、何月からこういう人たちに届けたい」みたいなのがあって、それをいかにこっちのメディアの文脈に当てはめるかっていう。そういう企画を立てられる人が、やっぱり我々にとってはすごく大事ですね。

原稿を「作品」としてしまう人には不向き

川原崎:そういった人材は、うちも含めて、めちゃくちゃ需要あると思います。向き不向きや、こういうキャリアの方だとフィットするという志向性などは、あるのでしょうか? 

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