ポスト資本主義社会でも成長し続けるものとは何か

山口揚平氏(以下、山口):資本主義の課題として、例えば先ほど(鈴木)健さんが格差の問題があるとおっしゃっていましたが、それをどう解決していくのか、あるいはそれが本当に機能するのかといった話をしたいと思います。

柳澤大輔氏(以下、柳澤):資本主義とは、とにかく資本を増やし続けるっていうことじゃないですか? そういうものを追い求める指標としてGDPがあるんですけど、問題はGDPの成長が豊かさに直結しなくなっていることです。「その指標を追い求めることで幸せになる」というものを作り出すということなんだと思うんですよね。

GDPだけ追っかけて格差が広がったり、環境破壊が起きているからといって、「もう成長しなくていいんじゃないか」という話になると、資本主義を否定することになってしまう。僕はそれは違うと思っていて、「成長し続けるものは何か」を見つけて、それが幸せや豊かさに比例するという状況にしないと、資本主義の課題としては解決しない。

亀山敬司氏(以下、亀山):資本主義は「自分さえ良ければいい」という前向きで身勝手な活力を原動力にして伸びてきたもの。結局は俺も、起業の時は「稼いで女にモテよう」「ちょっといい車に乗りたい」ぐらいがスタートだったのよ。

でも、そのあとに家族ができたら「家族のために」、社員が増えたら「社員のこと」を考えないといけないみたいになった。ゆとりができてくると徐々に「社員が恥ずかしくないように、社会のことを考えようかなぁ」みたいな動きになってきて。明日手形が落ちるかどうかわかんないときは、そんなこと考えてられないけれど、余裕ができるごとにそう考えてきました。

「叩かれる前に先手を打っていいことをやる」のが、亀山流の会社の生き残り方

亀山:最近俺がやろうとしてるのは「Ecole 42」みたいなものです。2週間ほど前にフランスに行ってきたんだけど、俺みたいにエロで稼いで、ITで金持ちになって、そのあとに社会奉仕やろうみたいな人がフランスにもいるんです。

その人が無料でエンジニアを育てる学校を始めたんです。タダで人を集めて、課題についてこれる人だけを残して2〜3年勉強し続けると、AppleでもGoogleでもどこでも引っ張りだこになるほどのエンジニアにはなれる。みんなでコーディングを朝から晩までしあうような学校が生まれたらしくて。

それがすごく面白いなって思ったんです。うちなんかは稼ぐことぐらいしかやっていないわけよ(笑)。だから、このままやってるとそのうち俺も(カルロス・)ゴーンみたいに捕まっちゃうんじゃないかと思ったのよね。

(会場笑)

いいことをしておかないと捕まっちゃうなと(笑)。だから利益の10パーセントぐらいでも、社会に価値のあること、未来に価値あることをやっといて、ちょっと「いいね」もらっとこうと思っていて。叩かれる前に先手を打っていいことをやるのが、俺流の会社の生き残り方かなと思います。

山口:なるほど。

亀山:「いいことやってたら生き残りやすいよ」というのを社長たちが理解し始めると、大きい会社も「社会貢献っていいよね」「二酸化炭素の出し過ぎはやめとこう」となっていく。それが評判になって、株価や世間の評判が良くなったり、不買運動が起きなかったり。こうなっていくのが資本主義の次の世界かなという感じです。

でも、たぶんみんなそうだろうけど、上場会社には基本的に株主がいる。株主に対する責任がある以上は、資本主義から逃れられないところがどうしてもあると思うんだよね。社長が「これくらいは寄付しよう」と思っていても、「そんな金があるなら利益を配当しろ!」なんて言われるから。

そういった点で、うちは非上場で好き勝手できるから。「俺が次の資本主義を作るんじゃないかなぁ」なんて思ってて。「俺がやらずに誰がやる」ってね(笑)。しゃべりすぎたかな?

山口:いえいえ。

パイが小さくなっている時代に、取り合いをしていても仕方がない

家入一真氏(以下、家入):僕もよくこういうテーマでお話しすることが多いんですけど、最近「資本主義の限界」みたいな話ってよくあるじゃないですか。僕もたぶんそういうことを言っていたし。

だけど、実は資本主義に限界がきているとかではないと思っていて。高度経済成長のなかで国も会社も個人も豊かになって、パイが大きくなっていくなかでの成長といった意味合いだと、「パイがどんどん大きくなっていくんだから、僕たちも大きくなっていこう」という攻め方ですよね。

逆に、これから少子化高齢化が進んでいくなかでは、パイがどんどん小さくなっていく。先ほど健さんも言っていましたけど、縮小し分断されていくパイを取り合うのって、結局フィットしないよねという話なだけです。

だから資本主義が限界なんじゃなくて、従来の資本主義の構造のなかで大きくなってきた僕らが、今適応できなくなってきているだけなんじゃないかなとも思う。

ちょっと前に、ある大きな芸能事務所の社長さんから「これから先どうしていいかわからない。相談に乗ってくれ」みたいな感じでお話をいただいて。別に相談に乗れるほど偉くもないんですが、話を聞いてると、映画にしろ出版にしろ芸能事務所にしろ、いろんな業界で同じようなことが起きているのを感じたんです。

資本主義による成長と、幸福度は比例しない

家入:それは何かっていうと、その社長さんがおっしゃっていたのは「今まではトップアーティストや本当のヒットを出した人たちの売上でみんなを養えていた。それこそ、マネージャーやアシスタント、経理、舞台裏の人たちも養えていた。自分たちの経済圏にまつわる人すべてをそれで食わせてたんだ」と。

俺はこれで食わせてたんだという自負やプライドもある。だけど、今はもう音楽は売れないし、どんどん売上も減っていくなかで、今までのやり方ではお金が回らなくなってきているんですね。

それで誰がいちばん割りを食うのかというと、末端の人たちやこれから育てていかなきゃいけないアーティストのタマゴです。そこにお金がまったく回らない世界になってきているんですよね。

経済が伸びて、音楽が売れて、それでみんなを養うという構造が回っていた時代はよかったんだけど、音楽も売れなくなってきている今、こぼれ落ちてしまっている人たちがたくさん出てきている。それをどうすくい上げるのか、みたいな話なんだと思うんですよね。

山口:なるほど。芸能界のエコシステムも崩壊していて、次に回せなくなっているということですか。

家入:再分配の話なのかなという気はするんですよね。

柳澤:世界の富そのものが減ってるわけじゃないし、資本は増え続けてるんですよ。だけど結果的には富の格差と環境破壊が起きている。従来の資本主義における成長と、幸せ度はどうも比例しないということが問題なのであって、「成長しない」ということではないんです。

再分配のシステムの見直しが必要かどうかは産業や業界によると思いますが、全体で見た時の再分配システム自体は、必ずしも変えなくてもいいのかなと思います。

シェアエコノミーの経済効果はGDPで測れない

亀山:それで言うと「GDPを上げる」ことで競い合うのは間違っていると?

柳澤:それだと苦しい国がある、ということですよね。全体で見るとたぶん大丈夫なんでしょうけど。

亀山:話題のシェアエコノミーだって、みんなが自転車を買わなくなってレンタルにしたら、GDPが上がらないわけじゃない。「それでも幸せだ」っていう話にならないといけないよね。

「自動車の売上が減って、レンタサイクルになったら幸せじゃなくなった」というのはおかしいし、そろそろGDPじゃない幸せの指標を作らないといけない。ちょっとわかりにくくなってきていると。

柳澤:そうですね、指標を変えなきゃいけない。「成長し続けることを否定すると、資本主義そのものを否定することになるのかな」と思っていろいろ本を読んだ結果、やっとそれが理解できましたという感じです。

鈴木健氏(以下、鈴木):この10年ぐらいのタイムスパンで見ると、日本では劇的な少子高齢化が起きているように見えますが、これを50年とか100年単位にすると、世界中で少子高齢化が起きていることになるんですね。

次は中国もそうなるって言われていますし、人口が増えているインドもおそらく30年もするとピークになって落ちていくと。予測はいろいろありますけど、世界人口全体はだいたい100億人前後でピークアウトして、そのあとは減っていくと言われています。どうして起こるかっていうと、それは都市化によって起こるわけですよね。