アカデミックではなく、実践者として語る「お金の未来」
山口揚平氏(以下、山口):ブルー・マーリン・パートナーズの山口と申します。私は貨幣論を専門としておりまして、『新しい時代のお金の教科書』という本を昨年末に出させていただきました。
本日は、みなさんが名前を知っていて、実践者としてベンチャーをやっていらっしゃる重鎮のパネリストの方々から、アカデミックな観点からのお金ではなく、「どういうふうにお金の未来を見られているのか」についてお話ししていただければと思います。
では、登壇者を順番にご紹介します。最初にCAMPFIREから家入さん、よろしくお願いします。家入さんがちゃんと間に合ったというだけで、このパネルディスカッションは奇跡だと思うんですけど(笑)。
次は、DMMの亀山会長、よろしくお願いします。早くからいらっしゃっていました亀山さんは「顔出しはNG」ということでSNSなどへのアップはお控えくださいませ。よろしくお願いします。
それからスマートニュースの鈴木さんです。『なめらかな社会とその敵』という名著がございます。
最後に、『鎌倉資本主義』を出されたばかりの、カヤックの柳澤さんです、よろしくお願いします。
私を含めた5名で1時間ほどセッションを進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
現在の経済体制が維持できるのはオリンピックまで
山口:何も打ち合わせをしてきていないのですが、まず話を進める前に、みなさんから1、2分程度、自己紹介をしていただきましょうか。
まず私ですね。私のことはみなさん知らないと思います。10年ぐらい前に『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』という本を出し、それがベストセラーになって、シェアーズという会社を作りました。そして、同社を売却し、今は本を書きながら、インキュベーターとして投資をしております。
これは我々のビジョンですが、おそらく今の経済体制は、2020年のオリンピックまでしか持たないだろうなと思います。もう旧産業は没落していて、社会システムも終わっている。だけど、2020年まではなんとか保たれていきます。
ただ、それも2021年、22年、23年あたりには崩壊してきて新しい産業が生まれてくるだろうと。それが2040年ぐらいまで続くだろうと。
そういったことで、宇宙開発からロボティクスとか劇団、アート、そういった会社に出資・操業をしております。よろしくお願いします。
多くの人たちに、お金がなめらかにめぐる世界を実現したい
山口:では次、家入さん、お願いします。大丈夫ですか?
家入一真氏(以下、家入):大丈夫です。家入と申します、よろしくお願いします。CAMPFIREというクラウドファンディングのサービスをメインにやっていて、「1人でも多くの人に1円でも多くのお金がなめらかにめぐる世界を作る」ということをミッションに掲げて、クラウドファンディングをやっています。
「ポスト資本主義」という文脈でも、クラウドファンディングというものが、ある意味これからの互助のかたちなんだと信じてやっていますね。
そのほかに個人でやっているのは「リバ邸」です。「ベーシックインカム的な共同生活で人は生きていけるのか」という社会実験的なシェアハウスのことで、日本各地に現在30ヶ所ほどあります。最近はベトナムにもできました。
そこは「現代の駆け込み寺」って呼んでいて。そういうイメージのシェアハウスをやっています。あと、最近「やさしいかくめいラボ」というサロンを10代限定で募集したら、数時間で1,000人ぐらいバーッと集まりました。クローズドの無料オンラインサロンみたいな感じです。そこに中学生とか高校生とかがわーっと入ってきて、めちゃめちゃヤバいんすよ。
山口:ヤバい?
家入:最初は「起業したいです」「ファイナンスを勉強したいです」みたいな子たちしか来ないのかなと思ったら、ぜんぜんそんなことなくて。いわゆるSDGsや社会課題、宗教、哲学などに関して、みんなめちゃめちゃ議論しまくっています。
山口:なるほど。
家入:DiscordというSlackみたいなチャットツールを使ってやっているんですけど、その中にどんどんどんどんチャンネルができるんですよ。これは「今の10代、ヤバいな」と。
これはCAMPFIREとはまた別の活動で、これから個人で、そういった子たちと一緒にいろんな社会実験をやっていこうかなって思っています。
こんな感じで、お話できたらいいなと思います、よろしくお願いします。
山口:ありがとうございます。
(会場拍手)
資本主義の未来は明るい
亀山敬司氏(以下、亀山):はい、亀山です。こんにちは。今の若い人たちはすごいなと思っているので、むしろ資本主義の権化みたいな私を倒すことを目標にみんな生きてもらえたら、資本主義の未来は明るいんじゃないかなと思うんです(笑)。
俺は、エロからゲームや金融まで、ロクでもないことばっかりして稼いできましたから。
(会場笑)
最近、「この先の未来をどうやっていけばいいかなぁ」といくらか悩むところもあります。オープニングでさっき流れてたパイプオルガンの音を聞いてたら、完全に「懺悔しよう」という気になりました。
(会場笑)
なので、そのあたりは後でゆっくり話したいと思います。あと、次の鈴木健さんが自己紹介している間は顔を手で隠しておくので、その間に全体の写真を撮ってもらえたらと思います。はい。じゃ、どうぞ。
山口:ありがとうございます。では鈴木さん、お願いいたします。
200年前から飼いならせないまま続く、社会の分断の歴史
鈴木健氏(以下、鈴木):はい、鈴木です。よろしくお願いします。スマートニュースというニュースアプリの会社にいます。スマートニュース自体は資本家の方々にしっかり投資していただいて還元していますが、事業としてはニュースアプリの会社なので、なぜこのセッションに呼ばれたのかなと思ったんです。
でも、よく考えたら6年ぐらい前に、資本主義についての本を書いていたなと久しぶりに思い出して、自分で本を読んでみました。
この『なめらかな社会とその敵』という本は、ちょうどスマートニュースをリリースした6年ほど前に出版しました。
最近「なめらかな社会」というと、メルカリさんやCAMPFIREの家入さんにお株を取られているんですけど、一応オリジナルは私です。忘れないでください。
(会場笑)
この本の構想は「300年後の社会システムをデザインする」です。ちょうど20年ぐらい前、大学院生の頃から貨幣システムの研究をしていて、博士論文でも貨幣システムの研究をしているんですね。
94ページの右側を改めて読んでみると、実はこの新しい貨幣システムによって「ソーシャルミニマム」「ベーシックインカム」みたいなものが実現できるといったことが書いてあります。
今ってそういった、例えばブロックチェーンやベーシックインカムのようなものが話題になっています。僕は国が富の再分配をやっていくのではなく、貨幣システムの中にビルドインさせてしまう、つまり組み込んでしまったほうがいいんじゃないかなぁと思っています。
今、世界中で社会の分断が起きています。これはニュースアプリとも関係していて、まさに「パリが燃えている」という状況が起きています。
こうした格差を資本社会が生み出してしまっているのは、それこそ200年以上前から起きていることなんです。我々人類はそれを学びつつも、飼いならすことができないままこの200年という時代を生きているわけですね。