日本の人事制度は「悪しき平等」に囚われている
個人を活かす会社と、囲い込む会社の行く末

人脈は誰のものか #3/4

Sansan Innovation Project 2019
に開催

2019年3月14日~15日にかけて、「Sansan Innovation Project 2019」が開催されました。「Sansan Innovation Project」は、あらゆる分野の専門家、最前線で活躍するプレイヤーを招き、組織を次のステージへと導くためのさまざまな 「Innovation」について紹介する、Sansan主催のビジネスカンファレンスです。本パートでは、14日に行われた「人脈は誰のものか」の講演をご紹介します。今回は、個人や働き方の変化に合わせて変わり始めている企業について語りました。

個人や働き方の変化に合わせて、企業も変わり始めている

北野唯我氏(以下、北野):これはいつも言っているんですけど、世の中の変化は螺旋階段のようなものだと思っていて。個人が変わってシステムや体制が変わり、また個人が変わって体制が変わるというふうに、世の中って進化していくものだと思うんです。

だから、おそらく去年までが個人が変わるというか、転職とか就労のかたちが変わっていって。「今年は企業側が変わらないといけない」というふうに、勘のいい企業は気づきはじめているなと思っていて。

例えば具体的には、トヨタさんなども変わろうとしているじゃないですか。Twitterでエゴサーチしていたら、ある人が「『転職の思考法』で書かれていた良い会社とはトヨタだった」みたいなことを書かれていて……。

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

浜田敬子氏(以下、浜田):ええ。

北野:「何?」と思って調べたら、トヨタの章男さんが……。

伊藤羊一氏(以下、伊藤):こないだのね。

北野:そう。社員向けにプレゼンしているところが、世の中に出されていたじゃないですか。そのときに確かに言っていたのが「みなさんはトヨタの看板がなくなっても、生きていけるように力を身につけてください」と。その中でも、トヨタはみなさんに働いてもらえるような会社を作っていきます、ということを言っていて。『転職の思考法』を読んだのか? みたいに一瞬思ったけど(笑)。

浜田:ははは(笑)。

北野:トヨタですらそういうことを言うというのは、20年前・30年前では絶対に考えられなかったじゃないですか。むしろ村を作って囲うというか。

浜田:人材を囲うっていう……。

北野:やっぱり勘のいい企業は(そうではなくなっているということを)言われている。ある商社さんもけっこう同じことを言われていたり。あとはこの間、スポンサーのサイボウズの青野社長と山田副社長と対談をさせていただいて。やっぱりサイボウズさんって、けっこう新しい取り組みをされているですよね。

浜田:そうですね。副業も申請なしでOKみたいなね。

人事制度は変えるのではなく増やすもの

北野:そう。なので、いろいろな企業の人事の方が、サイボウズさんに「どうやってやってるんですか?」と聞くらしいんですよ。そのときに「あっ、これが核心だな」と思ったのが、人事制度って“変える”って言うじゃないですか。

でも「違いますよ。人事制度は“変える”んじゃなくて、“増やす”んですよ」と言っていたんですよ。それは例えば、すごいスーパースターがいるとしたら、その人に合わせて人事制度を変えるわけじゃなくて、その人にちゃんとバリューを出してもらうために増やすんだと。

浜田:その人のためにと。おもしろ〜い。

北野:100人100通りの人事制度を作っていると。だから「変わる」というのは前時代の考え方です、と。要は昔の日本の考え方で、資本集約型の工場などでは1インプットとしたら1を正しく出す。そういう材料としての人材の時代は、それでよかった。

だけど、今みたいに1人の人が100とか1,000とか0.5とか(のアウトプットを出すような)、そういうバラエティがある世界においては「人事制度って変えるものじゃなくて増やすものなんです」と言っていて。僕はこれは格言だなと思っているんです。これは組織の話なのですが、個人側の話でいうと、正能茉優さんっていらっしゃるじゃないですか。

浜田:はいはい。

北野:講談社さんとの企画のイベントで、正能さんと対談させていただいたときに(うかがったんですが)、ソニーって正能さん用のPRの基準があるらしいんですよ。

浜田:へ〜。個人にカスタマイズしている。正能さんは今、ソニーの社員をしながら、学生時代に立ち上げた「ハピキラFACTORY」という地方の名産を広める自分の会社もやっていて。彼女の1社目は実は博報堂だったんですけれど、そのときは副業が許されず。それで、副業を許してくれるソニーに転職して、彼女は今4足のわらじなんです。

北野:そうですよね。

浜田:大学院にも行き、大学でも教えている。それをソニーが許しているという。

北野:そうそうそう。

浜田:すごいですよ。

日本の人事制度は、突出した人を作らない「悪しき平等」

北野:僕らはHRテクノロジー系の会社なので、今ボトルネックになっているのは、人事制度というものだと思っています。それを解消するには、変える概念と増やす概念を持たないといけない。多様性と言っていても、それを表現するシステムや制度がなければ、絶対に実践できないので。僕はそこがボトルネックかなと思ってたりしますね。

浜田:日本の人事制度って悪しき平等というか……。

北野:はははは(笑)。

浜田:突出した人を作らない。まさに『天才を殺す凡人』ですよ。

天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ

北野:それについて書いた本があるので(笑)。

浜田:なにか不公平がいけないというようなものがあって。そうした個人を許さなかったり、カスタマイズはしないよ、ということでずっと来たわけですよね。

伊藤:転職させないようにみたいなね。

浜田:そうそうそう。

伊藤:ちょっとだけ自慢していいですか?

浜田:はいはい。

伊藤:僕、Yahoo!アカデミアで「Lead the Self」という自分自身をリードするための研修をやっているんです。2015年からやっていて、その結果「Yahooじゃない」と感じたら、その時にはどーんと外に行ってくれと。

浜田:お〜!

伊藤: Yahooがそれを止めようとすることは、思考停止させようとすることだと思うんです。それでも「やっぱりYahooがいい!」と思ってもらうようにしなきゃいけない。

浜田:あ〜。

個人の活躍は組織にとってのメリットになる

伊藤:結局、会社としてそういうふうにしないと、「思考停止させるんですか?」という。30年前のパラダイムで思考停止して、アウトプットが最大化すればいいんだけど。そうじゃなくて、個が立った人が集まることが必要だったら、そういう「目覚めちゃったぜ!」という人たちの集団にしちゃうと。それは豊田章男さんのおっしゃる通りだなと。

浜田:ちょっと自慢していいですか? うちはすごく小さなベンチャーで、10人ちょっとの編集部なんです。そこに大企業の新聞社やテレビ局から人材を採るのは大変なことなんですよ。給料も下がるし。面接のときに必ず言うことは「絶対に一人前のジャーナリストにするからね」と。それで、10年後に転職や独立をしてもらえるようにするからって。

それが今人材を採るときの鍵だと思っていて。私だけがテレビ出演や講演をするんじゃなくて、「うちにこんな記者がいるから講演どうですか?」とか。

北野:確かにいろいろな人材がいますよね。

浜田:そうなんです。テレビに出る回数も多くなったんですよ。それがやっぱり、逆に人材を引きつける……。

伊藤:そうですよね。

浜田:うちのような弱い組織だと、そうせざるを得ないかなと思っています。

伊藤:それは組織・会社の役割だと思っています。個人と相対する局面もピンポイントで出てくるかもしれないけれど、Win-winな部分は絶対に出てくる。

浜田:まさに。うちもメディアにあまり知られていないので、(社員)みんなに宣伝塔として出てほしいです。

北野:そうですよね。

複業で得られた知見をほかの仕事にも活かす

伊藤:あとは副業ということに関しても、僕がやっているのはサブの副じゃなくて、パラレルのほう(複業)なんですよね。

浜田:パラレルの。

伊藤:Yahoo!アカデミアでやったことを外に展開するのとまったく同じことで。こんなの著作権もないから、ここ(複業)でやって得たものをYahoo!アカデミアに戻すんです。まったく同じことを繰り返す機会がめちゃめちゃ増えるわけですよ。

そうすると、こちらでやった人たちも嬉しいし、新Yahoo!アカデミアのクオリティも上がってくるという。これがカニバリの関係になると、一方は幸せじゃないけれど、HRの世界だとそれは関係ないよねって。みんなが幸せになれば、それが成り立つのであれば、同じことをやってもいいよねというのは強く感じてますね。

浜田:2015年にYahoo!アカデミアに最初にいらっしゃったときから、Yahooはそういう感じでウェルカムだったんですか? それとも伊藤さんが徐々に変えていったんですか?

伊藤:会社を経営している人たちが(複業でも)経営者であったりするので、そこらへんはかなり……。

浜田:経営層がパラレルなキャリアを持っているような。

伊藤:インターネットの世界だと、そういう人たちが多いですよね。

浜田:何かをやりながら、という。

伊藤:そういうのはありますよね。

浜田:うん、うん。

組織にとって本当に大事な人材とは?

北野:昔、村上憲郎さんという、グーグル日本法人の名誉会長で、米国本社の副社長までいかれた方と、2年連続で対談させていただいたんです。それが『転職の思考法』を書くきっかけにもなったんですよ。

そこで言っていたのが「グーグルって天才がいますよね」と。「天才って、どうやってマネジメントしているんですか?」と聞いたら「もう放牧だよ」と。

そういうやつらはどうしようもないから放牧する。だけど、たまに間違えたりルールを無視したりするので、そのときに謝りにいくみたいな。以上で終了で、「それしかできないんだよ」と言っていて。

浜田:なるほど。

北野:彼がグーグルに入る前にエリック・シュミットとしゃべったときも、エリック・シュミットですら同じようなことを言っていたらしくて。それってやっぱりリーダーの新しいかたちの1つだと思いましたね。あと、僕が聞いたのは「本当に放牧していたら優秀な人が辞めちゃいますよね?」ということ。

浜田:はい。

北野:そうしたら「いやいや。北野さんみたいな人事部が大事にする人材って、2年や3年で辞めちゃうかもしれないけど、その2〜3年は会社の神輿を担いで、めっちゃがんばってくれる人じゃないの」と。

「あと10年・20年、この会社にしがみついていようという人と、どっちが会社にとって重要なのかといったら絶対前者でしょ?」と言われて。

浜田:もう発想が違う。

北野:ソフトウェアかハードウェアの会社によっても変わると思うんですよ。現実的な話をすると、組織や人事制度は事業の特性と紐づいているので、例えば、工場の機械の会社が、働き方をぜんぶ自由にするというのは現実的じゃない。

これからの成長産業とか、まさにこのSansanに来られている方なんかは、どちらかというとソフトウェアの分野だと思うので、やってはいけないのは、資本集約型のハードウェアの考え方で人事制度を作ること。経営者はそこを意識しないといけないと思いますね。

伊藤:そう。

浜田:取材して「ここまで来たか」と思ったのが、個人のパラダイムシフトが組織に及ぼしている影響というものなんです。銀行でも、これまでは「辞めたやつ、許さん! 裏切り者!」「こっちに来るな」という感じだったのが、緑の銀行さんなどで非常に活動が活発になってきていて。

それで、中の人的交流が生まれていると聞いたときに、少しずつですけれども、まさに北野さんがおっしゃるように、組織が変わりつつあるのかなと感じましたね。

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