フェイクニュース撲滅を謳うメディアがデマを流している現実

山口幸穂氏(以下、山口):そろそろ、最後の質問にいきますね。いろいろと今日はうかがったのですが、今後のメディアに対する佐々木さんの展望と言いますか、これからの激動の世の中を生きるコツのような何かを教えていただければと思います。

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):フェイクニュース問題に関していうと、先ほどもお話ししたように、「フェイクニュースを退治せよ」という話ではまったく解決しないんですよ。

そうやって何か言っているメディアが「お前んとこもフェイク流しているんじゃないか」と、よくツイッターで反論されているという笑えない現象が頻発しているわけです。「フェイクニュース撲滅」などと新聞が言っているけれども、だったら新聞報道はどうなのよ? という。

新聞自体も、見ているとかなり過激化していますよね。左右に。例えば、『東京新聞』と『産経新聞』を比べるのが一番わかりやすくて。両方とも昔はもうすこし穏健な新聞だったのに、これは部数が減ったせいなのかどうかわかりませんが、より読者に適合しようとするうちにどんどん過激化して、最後は離れていくような。ぐるぐる回しているうちに、どんどん遠心力で遠くなっていくようなことが起きています。

気が付くと教唆しているようなことになっているんですね。こうした現象が起きているので、たぶんフェイクニュース問題は、この状態では解決のしようがないと思います。

ただ、先ほどもお話ししたように世代の問題も絡んでいたりするので、「インターネットが始まってからまだ20年とちょっとだよね」と長い目でみれば、徐々に我々が過激な情報通信テクノロジーを飼い慣らして、もう少し有用に使えるようになるんじゃないかという話です。

人がインターネットを使いこなすまでにはまだ時間がかかる

軍事技術もそうだと思うんですよね。軍事革命というのが20世紀の初めに起きて、それまでは槍や、せいぜい鉄砲で殺し合っていたものが、飛行機やら大砲やら迫撃砲やら戦車やら、いろんな新兵器がバッと登場する。最初はみんなそれらをどう使いこなしていいかわからないので、使い回すわけです。

第一次世界大戦においては毒ガスで大量に人を殺したり、もうわけのわかんないことがいっぱいあって、大量に人が死にました。2回戦争……大戦争をやったあげく、やっぱりこれはいくらなんでも使いすぎだよね、これもうちょっと使いこなさないとダメだよねとなった。BC兵器禁止などいろんなことをやって、核も抑え込んで、だんだん世の中が平和になっていった。

もちろん、今でも紛争などがいっぱい起きていますが、大戦争は起きていない。それと同じように、やっぱり今のインターネットはすごく初期の段階で、もうほとんど欧州体制、第一次世界大戦ですね。毒ガスをみんなでまき散らして、人が死にまくっているのとあまり変わらない状況だと思います。

山口:なるほど。

佐々木:これがあと10年、20年、もしくはもう少し経てば、だんだんと使いこなせて穏やかになっていくんじゃないかと思います。炎上などもそうですよね。今でも例えば、誰かが誰かを炎上させる……もちろん本人が悪いケースもありますよ。しかし、たいていはそこまで責めなくてもいいんじゃないかというぐらいの話です。

山口:そう思います。

炎上に加担するというのは、見知らぬ人を怒鳴り散らすのと同じ

佐々木:ワッとみんなで悪口を言っているわけでしょ? でもみなさん、考えてみてください。東京メトロの電車に乗っていて、例えば女子高生が座っている前に酔っぱらったおじさんがいる。おじさんが女子高生に対して、真っ赤な顔で怒鳴っている。普通はそれを見たらどうしますか? 止めるか、遠巻きに見守るか、立ち去るかでしょ? 

でも今のインターネットは、それを見つけてワァーと言って、おじさんと一緒に怒鳴っている。要するに、炎上に加担するというのは人に怒鳴りまくるのと同じ行為で、そんなことは日常生活であれば絶対やりませんよね?

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