CAから新規事業はどのように生まれるのか
藤田晋氏:人も事業も自分たちで育ててきたと言ってきましたけれども、事業の規模をどんどん拡大していく中で、どうやって(新しい事業を)生み出しているのか。サイバーエージェントは子会社だけでも100社を超えます。「なんでこんなにいっぱい会社が創れるんだ?」というのは、もう仕組み化されているからなんです。
逆に言うと、例えばスライドの中のゲーム会社が作ったゲーム、僕が威張って言うようなことじゃないですけど、(藤田氏が)やったことのないゲームなんていっぱいあるんです。要はリーダーとして細かいことに口を出さないし、必要もないんです。
それでは、どのように(新規事業を)生み出して、どのように管理運営しているのかをこれからご説明します。この事業のアイデアがどのように生まれるのか。
実は一番たくさん生まれているのは「あした会議」という、だいたい半年に1回、50人くらいでやっている会議体です。
会議体と言っても軽井沢に行ったり箱根に行ったり、50人くらいで泊りがけでやるんです。この日のためにその50人くらいが一生懸命新規事業を準備してくるんですね。合宿中に実施可能なところまで詰めます。
先ほど言ったとおり役員が8人で、そのうち僕を除く役員がリーダーとなり全社員の中からドラフトでだいたい4、5名を指名して最初にチームを組むんです。そのチームごとに新規事業を3案ずつくらい用意してきて、この合宿の会場でどんどん発表していく感じです。その発表のアイデアに点数がついていって、役員ごとのランキングが発表されていきます。
そこには当然競争のような仕組みがあるんですけれど、うちの社員はそれ以上にここで出たアイデアが本当にどんどん事業になっていくことをよく知っているので、ここで決めてしまいたい事業とかを持ってきますね。新規事業だけじゃなくて課題解決とかもあるんですが、大きく組織を変えたいものをここに持ってくるのが習慣になっています。
ここで「今ある事業チャンスで見落としているものはないか」「それとももっと大きくできる機会はないか」というのを、うちの役員とドラフトで選出されたエリートの社員たちが血眼になって探しまくります。だいたいこれが終わると「もうないわ」という感じになります。
ここで決めたものを会社……累計27社決まったと言いましたが、子会社を設立したのが27社です。ちなみにゲーム事業に参入して、それがもう会社の事業の柱の1つになっていますけど、「ゲーム事業に参入する」というシンプルなことが決まったのもこの会議のときですね。
「スタートアップJJJ」で数多くの新規事業を創出
「なんでそんなに会社がいっぱいできるのか」というと、これはルールが決まっているんです。「スタートアップJJJ」とスライドに書いてありますけど、まずこちらを見ていただきますと100社以上の会社が創られています。新しく創ったらJ3で、その下にスタートアップJJJというのがあります。
そこから入って、サッカーで言うとJFFみたいなものからJ3、J2、J1になる。JはJリーグのJじゃなくて、事業のJですのでお間違いのないように。J1、J2、J3と。利益の規模によって昇格・降格します。昇格するケースがほとんどですけれども。
これも利益の額によって変わるんですが、撤退ルールというのがあるんです。「2四半期連続で減収減益になったら、原則撤退を検討する」というものです。AbemaTVだけ会社の注力事業として別ルールでやっているんですが、月の赤字額をこれ以上上回ってはならない。いわゆる投資額ですね。
そういうルールがあるので、1個会社を創ったらどの程度マイナスがあるのかが計算できる。月の赤字額で「MAXでもここまでしかないんだ」というのがわかる。その中でうまくいったものはもちろんJ2、J1と伸ばしていくし、ダメだったものは撤退ルールに基づいてやめると。
藤田晋流の「サーバントリーダーシップ」
最初に撤退ルールを決めておくのは大切です。飲み食いで潰れる会社はないけれど、だいたい潰れるのは趣味みたいな事業を始めたときだと言われることが多いんですよ。
事業というのはすごくコストがかかるんですけど、1回始めるといろんな関係者を巻き込んでいるので「やめる」と非常に言いづらくて難しい。