新米人事にはひたすら就業規則を読ませ、半年間は給与計算をやらせよーーHRが“テクノロジー頼み”になる前にすべきこと

パネルディスカッション #2/3

2018年8月30日、KOKUYO東京ショールーム5Fのスタジオにて「AIを活用して採用活動振り返り。テクノロジーと人の協働で変わる採用。」が開催されました。採用活動にAIを使う流れがあるなかで、どう活用すれば効果が出るのか。まだ明確な答えのないこの分野において、「働き方」「AI」「テクノロジー」といったキーワードに強みを持つ3社のトップがイベントに登壇。本記事では3名によるパネルディスカッションから、会社の規模に合わせた採用のスタイルについて語り合った中盤のパートをお送りします。

スタートアップの初期フェーズは、カルチャーでマネジメントする

藤野貴教氏(以下、藤野):それぞれ共通点がある内容だったので、今のことに対して思うことをお聞きしましょう。(石山)洸さんからいきますか。

石山洸氏(以下、石山):最初にご質問された方は、何人ぐらいのスタートアップですかね、

質問者1:今は30人弱です。

石山:自分の会社が30人のときに一番最初にやったのは、「全員人事です」ってやつですね。「1人が1人採ったら60人になります。よろしく」というので、本当に60人になりました。

スタートアップの仕事は与えられた仕事に限らず何でもやるということなので、まずは全員人事にする。そうすると30倍レバレッジが効くので、まずそれをやりましょう。それが一番最初のアクションなのかなと思います。

あと、気を付けないといけないのは、人数が増えてくると「人事だから」という意識が働くわけですね。ミドルマネジメントをどうしようかとか、ミッショングレードをどうしようかと考えるわけですね。そんなものはいらないです。

すぐに変な制度を作ると、どんどんパフォーマンスが悪くなってきます。「何もしない」というのもスタートアップの人事としては重要になってくるんじゃないかなと思います。

藤野:制度は作るなと。

石山:ダメですね。結局ルールでマネジメントするか、データでマネジメントするか、カルチャーでマネジメントするかという話なんですね。スタートアップの最初のフェイズは3番目のカルチャーです。

杉浦二郎氏(以下、杉浦):カルチャー。

石山:はい、カルチャーかなと思います。

質問者1:ありがとうございます。

AIにはできない「接待将棋」

石山:二つ目はみんなに浸透させるにはどうすればいいかということですな。飲み会です(笑)。これで8割は解決ですね。ということで、どうですか? 飲むのは好きな方ですか?

質問者2:アルコールは飲めないのですが、それで人とのコミュニケーションを取るということですよね。

石山:まさに、まさに。できれば飲み会がいいです。お酒を飲まなかったとしても飲み会がいいです。

藤野:アルコールのスケーラビリティは他の方に任せるとして、ホスピタリティ勝負でいいんじゃないでしょうか。

石山:将棋の羽生さんと対談したことがあるんですが、「AIにはできないこと」という話で羽生さんが言っていたのは接待将棋だったんですね。別にアルコール飲まなくてもいいですし、みんなでボーリングに行くとかでもいいんですけど、そういう人間ならではの技を使って忖度をして導入してもらうというのは非常に需要ですね。

仕事が終わってもネタがいっぱい出てくるので。意外に人間力ってすごく重要なんですよね。そういったところをうまく活用していくところがポイントかなと思います。

藤野:経営者のお尻を叩くと。

石山:そうです、お尻を叩く。私も叩かれてますね。なかなかやらない、みたいなことが多かったりするんですよね。Slackで「いっぱい連絡するbotを作る」みたいなのがいいかもしれないですね。こまめにリマインドするしかないです。自分だったら、お尻を叩かれたらどうですかね。何かやってることはありますか?

質問者2:飲み会が終わったかなと思う12時過ぎにチャットすると、だいたい返事が返ってきます。

藤野:すごいな! それは人に強いているということになっていますけど、bot化してもらえればいいですよね。今後botにすればいいですよ。いいじゃないですか。「飲み会終わった?」って聞くbot。

HRに携わる人には、コミュニティを形成する力が求められる

藤野:二郎さん、どうですか。

杉浦:けっこう共通点があるなと思っていたんですけど。僕は人事経験が長いので、まさしく石山さんがおっしゃられた通り、まだ小さいフェーズの時って、いわゆる人事の政策に落とし込まない方がいいと思っているんですね。

人事の人たちってすごく真面目で、すごく勉強熱心だし、外側のものをどう取り込むかすごく考えるんですよね。いろいろカンファレンスとか大規模なところに出て、偉い大学の先生がお話しされているのを聞いて、何とかそれをうちに導入できないかっていう話になっちゃうんですけれども。僕はそれが通用するフェーズって、サイズは大きくなってからなんじゃないかなと思っていて。

なぜかというと、僕の会社は今8人で何も使えないんですよ。いわゆる人事の中で当たり前のように流れているような考え方とか政策だとかって、まるで活きていない。例えばもう少し、10数人とかの規模になってくると、まさしくおっしゃられた通り「人間力」というか、いかに僕がみんなとちゃんと話ができるかとかにかかってくる。

うちのオフィスはそんなに大きくないんですけれども、30人ぐらい座れて、今の人数に比べれば広いんですね。その中で2脚だけ、今ぼくらが座っているKOKUYOさんの「ing(イング)」っていう揺れるチェアを置いてるんです。別に誰が座ってもいいんですけど、僕が座りたそうな顔すると譲ってくれたりしてですね。要は、そういう社長の距離感をちょっと近づけて行くとかができる。

人事の人たちも、人事だからという発想でなくて、いかに面白い仕組みを作るかとか、みんながコミュニケーション取れるようなやり方ができるかとか。そっちの方に本来行くべきですよね。これからのHRの人たちというのは、やっぱりつなぐ力とか、コミュニティを形成する力がすごく大事になってくるだろうなと思っていますね。

20〜30人規模になると労務問題が日常的に発生し始める

杉浦:逆に言えば、それ以外の能力は大学の偉い先生たちがみなさん持っていて、それをお借りすればいい。中の人たちはコミュニティをいかに作っていくかが大事で、そんなことを考えると人事ってうまくいくんじゃないかと思っています。

ただ、現実的に30人くらいの規模になってくると、労務管理とか実際の実務もめちゃくちゃ大変になってくると思うんですよね。僕の感覚からしても、僕が管理させていただいているクライアント様にしても、だいたい20人くらい超えてくると、いわゆる労務問題が普通に発生してきます。来なくなる社員が出てきちゃったりとか、何かコンプライアンスに引っかかるような問題が出てきたりとかですね。

残念ながら人事として具体的にやらなければいけなくなってくるというのは、やっぱりあると思うので。一番きついフェーズだろうなという気はするんです。ただ、あえてそこを取りに行ってるんだろうなと僕は期待しているので、半年後ぐらいにお話をさせてください。

(会場笑)

新米人事がやるべきは就業規則の読み解きと給与計算

藤野:質問者の方は大企業にお勤めなんですよね。

杉浦:ちょっと話がずれるかもしれないですけど、僕が三幸製菓時代に上長として、自分の部署に新人が入ってきたりすると、実は採用ってやらせないんですよ。僕が一番最初に何をやらせたかというと、まず給料計算なんですね。まず給料計算をやれと。それを最低でも半年ぐらいやらせるんです。

なぜかというと、給料に全てが詰まっているから。うちの会社の考え方は、給料に全部詰まっているから、ちゃんとそれを読み解けと言うんですね。その前にやらせるのは、とにかく1週間は仕事しなくていいから、就業規則をひたすら読めと。ずっと、ひたすら読ませるわけですね。

就業規則を読ませて、その後に半年間ぐらい給料計算ばっかりさせるんです。そうすると、だいたいどういう人たちが、どういう給料をもらっているのかというのは、もちろんわかるわけですけれども。うちの会社はどういう手当があって、どういう考え方で行われているか、要は人事の全体像が見えてくるんですね。

そうなってくると、自分たちが採用しようとするときに、どういう賃金テーブルにしたらいいのかとか、そもそも今までいない人たちを採用するにはこの評価でいいんだっけとか、この賃金テーブルでいいんだっけということが、全部連動するようになってくるんですね。

僕はその中心が給料だと思っているので、給料計算されないとしても、その辺はしっかりとされていた方が、採用をやるにしてもけっこう大事になってくると思っています。僕自身もそれなりにうまく育ってきていると思うので、やってみるといいかなと思います。

規模が小さいうちは、会社はオーナーのもの

杉浦:あとは社長の巻き込み方というか、スケジュールを忘れたりとかですね。僕もすごく多いんですよ。僕は諦めていて、自分のカレンダーとかスケジュールとか、自分であまり管理していなかったりしていて、本当に忘れるんですよね。めちゃくちゃ怒られたりとかするわけですよ。

やっぱり規模が小さいうちというのはオーナーの会社なんですよね。僕がよく言うのは、「誰が最終的に責任取るんですか、オーナーですよね」と。オーナーの会社である以上、やっぱりオーナーが目指す方向に全力でサポートするのが人事の役割なんです。

僕は人事の人たちと話をすると、自分たちが自立して考えなきゃいけないとか、自分たちの頭で、自分たちで会社を作っていかなきゃいけないという人たちが多いんですが、けっこうその人たちに対しては真っ向から反論していて。いやいや、会社は経営者のものであって、オーナーのものなんだから、その人たちがどう考えてどう実現するかというのを、人事の側からどう作るか考えるのが僕らの役割でしょうと。

そうなった時に、いかにオーナーが考えていることを理解して、それを人事という仕事からサポートし、しっかりと政策に落とし込めるかがとても大事です。だから一番最初にやらなきゃいけないことは、規模が小さいうちから一番最初に対話をし、経営者が考えていることを自分が語れちゃうぐらいまで落とし込むことって大事なんじゃないかなと、個人的には思っています。

藤野:なるほど。今立てたくなる問いは「人事の仕事ってそもそも楽しいんだっけ?」ということですね。飲み会するとか、人に会うとか、そういうホスピタリティ的なことが好きな人は合う気がしますよね。

テクノロジーが進化した時に人事の仕事は面白くなるのか? それを推進している人たちにはどう見えているのでしょう?

AIよりも人間のほうが何を考えているかわからない

石山:先に聞いてみたいですね。人事1.5ぐらいの人たちがもしいらっしゃったら、やってみて楽しかったか、つまんなかったかっていうのを、ちょっと聞いてみたいと思ったんですけど。どうでしょうか。

藤野:じゃあ、聞いてみましょう。テクノロジーを活用していったら人事の仕事は面白くなってきたか。どっちかと言うと、面白くなってきた。どっちかと言うと、つまんなくなったように感じる。すごい体感的なデータでいいですけど、どうでしょうか?

参加者A:私、人事じゃなくて、人事をサポートしている側なんですけれども。データで行うと言ったら怒られそうですけど、人事はブラックボックスというか、何もわからないです。人事の人たちを見ていると、ITへの抵抗感はある方もいるし、逆にワクワクして積極的にやられるという方もいらっしゃいます。

藤野:社内の抵抗感のケーススタディってないですか。こういう抵抗感が社内にあったりするんだよねとか。共有していただけると。

参加者B:僕はIT系企業で人事をやっています。人事の人にAIを導入することによって効果が違うのは、結果だけ知らされても、その裏にどういうロジックが潜んでいるかわからないし、わからないから信じられないと。

藤野:なるほどね。会社からは人事が何考えてるかわからないと言われてるくせに、人事はAIが考えることがわからなくて不安らしいですが、洸さんはどうですか?

石山:確かにそうですね。それはまさに、人事1.0の方が多いケースがカンファタブルか、2.0の方がカンファタブルかみたいな話ですね。思うのは、AIは不確実だという話はよくあって、何考えてるかよくわからないみたいな。実際マネジメントしていると、自分の部下の方が何考えてるかわからない。人間の方がよっぽど不確実ですよね。全然汎用じゃないんだけど、みたいな話もあったりするので。

少しでも不安要素があれば、人は抵抗を示すもの

石山:ただ、テクノロジーを導入した時に、50パーセントはいいことがあって、50パーセントは悪いことがあったという話になると、行動心理学的には「嫌だな」と思うわけですよね。

例えば、宝クジを買います。100万円投資してください。50パーセントの確率で200万円になります。でも50パーセントの確率でゼロになるとすると、ちょっとでも損する確率があると人間は嫌だなと思うんですよね。なので、AIを導入する抵抗感もあれば、そもそもオペレーションを変えることに対する抵抗感もあるわけですね。

「AIはブラックボックスだ」という部分については、合格に何が効いていましたかとか、特徴にランキングが出ますという点があったんですが、ITのリテラシー、データのリテラシーである程度カバーして、説明責任を果たすこともできたりする。

もう1個は、オペレーションが変えられるかという話ですね。こっちの方がなかなか大変で、実際にHRテックを導入しようとするとデータのリテラシーとか、ITリテラシーを要求されますし、会社のカルチャー自体を変化させることに対してどれくらいオープンかという二つの軸があって、どうしても両方必要になってくる。

というので、いろんな会社をずっとやっているんですが、「人事の人はみんな理系だし、すごく早い」ところもあれば、「このデータは誰にも見せないです」って人事の人が言っちゃう会社もあったりします。ここで差が出やすくなっているんじゃないかなと思いますね。なので、伸びそうな会社とダメそうな会社がそれぞれHRテックを導入しようとすると、けっこう明確に分かれるのを少し感じ始めています。

どうすれば「明日も頑張って会社行きます」と言ってもらえるか

藤野:杉浦さんはどうですか?

杉浦: なかなか難しいところではあるんですけど、僕らはどちらかというと実務側の観点で常にやっていくものを見ていくので、話の論点から若干ずれちゃうところもあるんですけど。最近とくにHR領域というのは、めちゃテック流行りじゃないですか。テック系のイベントって毎月どこかでやっているなというのがあって。

この3人でもさっき話してたんですけど、そこではやっぱりHow議論の深みにはまってしまっているなというのがあります。HRではテック、つまりAIなどのテクノロジーを使わなきゃダメだよね、みたいな議論からスタートするんですね。

まず僕らが考えなければいけないのは、「そもそも採用ってどうしなきゃいけないんだっけ」とか、自分たちの会社は何をしなければいけないのか、どういう観点でアプローチしなければいけないのかとかですよね。先ほどの定義の話じゃないんですが。自分たちの会社で人事ってどういうことをするのか、最低限もうちょっと定義してみるとかが必要です。

例えば僕が、今自分の会社でチャレンジしたいのは、とにかく評価というくだらない仕組みをやめたいなというのが一つあるんですね。評価コストというのはめちゃくちゃかかっていて、自分たちもコンサルタントで評価をいろいろと入れてるんですけど、やっぱりすごく評価に時間がかかっちゃうわけですよ。評価って、やる側もやられる側も、誰も納得しないんですね。

それに膨大な時間をかけてて「なんだ、この仕組み」ってなった時に、「もううちの会社は全部システムなんだからさ」と決めてしまった方がいいと思っていて。年収1,000万円で足りないと思えば出て行けばいいし、自分の能力が満たないと思ったら超頑張ればいい。それしかないと思っています。

その方がすごくシンプルだし、わかりやすいなって思っていて。大事なのは、評価で人をコントロールするというよりも、コンディションをどう整えてあげるかということです。そのコンディションがどういう状態なのか。それはもちろん、プライベートも含めてですよね。

「今日はなんか調子悪そうだから帰った方がいいよ」という、その一言を言っただけで次の日から超頑張れるとかですね。要は、大事なことって「明日も頑張って会社行きます」という一言を言ってもらえるかどうか。どうやってそういう状態にしてあげれるかというのは、AIに可能性がある。

AIが一旦そのデータを吸い上げて、コンディションを教えてくれて、そっと人がフォローする。そういう仕組みがあると素敵だなと思います。そうやって、自分たちがどうしたらいいか、これからどうしていくべきかをまずは考えてから、やっとHOWの話ができるかなと。そう思っているので、うまくつなげてほしいなと思います。

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