座右の銘は「待っていても、はじまらない」
阿部広太郎氏が語る、好きと仕事をつなげる方法

③衝動を信じて、仕事をつくる。 #1/3

2019年2月15日、「U-35限定デジタルマーケティングイベント デジマ下剋上」が開催されました。本イベントでは、若手デジタルマーケターらが集い、ディスカッションを行います。本パートでは、「衝動を信じて、仕事をつくる。」と題し、電通コピーライターの阿部氏が登壇しました。今回は、言葉の力を軸に活躍の場を広げてきた同氏が、好きを仕事にするまでの道のりを語りました。

違う畑の人の話を聞くことで視野を広げるためのイベント

諸石真吾氏(以下、諸石):みなさん、ありがとうございます。本当はこのまま休憩に入る予定だったんですけれども、時間が押し押しなんで、そのままいっちゃいたいなと思っています。

普通のマーケティングイベントと比べると、マーケティング手法の話が少ないなとか、すぐ実践できる話じゃないというのが、みなさんにとってどういう感じなのかわからないですけど。

結局、主催している僕たちが議論したい話をやっていたりするので、こうして何か新しいことだったり、目先のその先のことだったり、割と基礎的なところだったりを問題提起をして、それをこの場で壁打ちして、みなさんも壁打ちの中にバーチャルな世界を通して入ることができれば、けっこうおもしろいなと思っています。

僕も、初めてお会いする人たちとこのイベントをやるのがすごく楽しいので、その空間をさまざまな場で拡張できればいいなと思っています。

前回の僕のセッションは大阪で、TENGAの西野さんを呼んでお話ししてもらいました。「デジタルマーケティングのイベントに、なぜTENGAを呼んだんだ?」とけっこう思われていたんですけど、どうしてもデジタルマーケティングのイベントは、ビジネスの中のマーケティングで、さらにマーケティングの中でもデジタルマーケティングで、僕らも視野が狭まりがちだと思うんです。

そこで、違う畑の人を呼んで、我々の視野を広げたいなと言うのもありつつ、僕が会いたい人を呼んで、話を聞きたいなということで、やらせてもらっています。

自分のイベントで、自分がトリで出るという、けっこうしょうもないことをしているんですけど、お付き合いいただければなと思っております。

コピーライターの阿部広太郎氏が登壇

諸石:今日は阿部さんにお話しいただきます。阿部さんは電通に所属して、コピーライターをされているんですけど、社外の様々な仕事をされていて、Wikipediaにお名前が載っているような方です。

好きなことを仕事にできているかというところで、前も話題になったりしたんですけど、実際にみなさんは、今の仕事は好きなことをやっているなという感じなんですかね。僕自身は昔「バンドで飯食いてぇな」とか思ったりしていたんですけど、今はWEB広告代理業をしてたりします。広告が好きなのでいいんですけど。

阿部さんは、電通でコピーライターをしていて。コピーライターはすごく好きなことなんだと思うんですけど、それだけじゃなくて、どんどんやりたいことをやり続けて、やっていることの幅がすごく広がっているんですよね。

今の阿部さんの状況だけを見て、「なんでこの人はこんなことになってるの?」みたいなことをすごく疑問に思っているんです。今回、なぜ阿部広太郎という人がこういう状態になっているのかというストーリーを、この場で共有できたらと思っています。

阿部広太郎氏(以下、阿部):ご紹介にあずかりました、電通でコピーライターをしております阿部広太郎と申します。よろしくお願いします。今日は、短い時間なんですけど、お話をさせていただければと思います。

好きを仕事にしたくてもがいていた20代

阿部:「衝動を信じて、仕事をつくる」をテーマに、諸石さんと一緒にお届けしていきたいと思います。私のプロフィールなんですけど、ちょっと赤字にしているところですね。

僕はコピーライター出身なので、自分の仕事を「言葉を企画する」と捉えて、音楽であれば作詞をすることもあれば、番組や映画の企画をすることもあります。言葉の力を味方につけて、コンテンツを企画開発することを主にやっています。

映画のプロデューサーとして2017年から映画の製作を始めていて、74分ワンカットの『アイスと雨音』という映画と、池松壮亮さん主演の『君が君で君だ』という映画をつくっております。

今日、このイベントの告知のときに書かせていただいた文章なんですけど、ここに書いてある、特にこれですね。「好きを仕事にする」ができたらいいよなと本当は思う。本当はやりたいこともあるけど、どうしたらいいかがわからなくて、もやもやしているということを書きました。それが紛れもない、20代初めの僕だったんですよ。

今日は、そういう方がもしいらっしゃったら、その方に届けばいいなという思いで話させていただきます。阿部という人が言っていた言葉がずっと忘れられない言葉になるといいな、お土産として持ち帰ってもらえたらいいなと思っています。心に火をつけることが、やっぱりコピーライターの役割なので。

この45分後に、何かが変わっているということを目指しながら、真剣勝負でやらせていただこうと思いますので、一生懸命聞いてもらえたらうれしいなと思います。よろしくお願いします。

東進ハイスクールの「今でしょ!」で感じた言葉のすごさ

阿部:20代の半ばまで、僕は埼玉県の三郷市というところに住んでいたんですけど、朝早くから夜遅くまで働いて、終電で帰るような生活をしていました。

クライアントさん……花王さん、キッコーマンさん、サントリーさんなど、他にもたくさんの企業のみなさんと仕事をさせていただきながら、コマーシャルをつくり、とにかくがむしゃらに働いて、師匠に食らいつくように仕事をしていました。私の師匠が東進ハイスクールさんの仕事をしていて、クリエイティブのチームに私も入らせていただいたんですね。

東進の先生たちが登場するコマーシャルをご覧になった方もいるかと思うんですけど、先生たちのリアルな講義を、70~80時間分と、けっこうな時間見続けました。コピーライターがセリフをつくるわけじゃなくて、編集者のように、人生訓にもつながる先生たちのセリフをピックアップして、コマーシャルにつなげていくという企画だったんですね。

師匠と一緒にその仕事をやらせていただいて、2010年に「今でしょ!」という言葉がCMで流れはじめて、3年後に流行語大賞を受賞するまでの過程を目撃させていただいて。その時に、「言葉ってほんとうにすごい」って思ったんですよ。

「言葉ってすごい」「広告ってすごい」って思えたこと。自分がおもしろいなと思っていた「今でしょ!」という言葉が、みんなが知ることになっていくのを体感できたことは自分にとって本当に大きな経験でした。

その頃、仕事の充実感はすごくあったんですけど、ふと思ったことがあって。当時、本当に朝早くに起きて、夜遅くまで会社にいて。コマーシャルを見てくれた人がいて、反応してくれる人がいる。当時はもうTwitterもあったので、反応してくれる人がいるな、うれしいなと思うんですけど、本当にこれでいいのかなと思うことがあって。

すべてのビジネス書の共通点は「動け・考えろ・続けろ」

阿部:広告業界だと、賞やアワードみたいなものがあります。会社に山ほどいるコピーライターの中で、ちょっとだけ目立ったりして、自分は大丈夫なんだという安心感を抱いたりして、そして会社の大御所みたいな人に呼ばれて、このチームに入らないかみたいなことを言われて、結果を出すかどうかという環境の中で、自分はというと、壮大な順番待ちの列に並んでいるような感覚になったんですね。

できあがったレールがあって、その中で自分は誰かを追い越すとうれしいし、ちょっと後ろに行けば悔しいし、みたいなことになっているなと思って。いい仕事来ないかなと……すごく跳ねそうな話というか、賞が取れそうな話が来ないかなと、受け身の自分がいたんですよ。

そのときが、27歳くらいです。何がしたくてこの仕事を一生懸命がんばっているのかなというのを改めて考えた時に、人から「人生を変えるものは3つある、それが人と出会うことと、本と出会うことと、旅に出ることだ」ということを聞いて。本当にこの言葉のとおりだなと思うんですけど、僕は本をたくさん読みました。

読書が大好きで、中学生の頃は友人もいなくて本ばっかり読んでました。仕事のビジネス本は、本屋さんに行けばたくさんあるじゃないですか。そこで読み漁って。でも、結局すべての本が言っていることは、「動け」「考えろ」「続けろ」、この3つだったんですよ。それしか言っていないことに気づいて、自分は待っていてはだめなんだなと思いました。

また、道しるべになった言葉があります。広告業界の先輩で、箭内道彦さんという金髪のクリエイティブ・ディレクターさんがいるんですけど、あの方が、「広告とは応援である」とおっしゃっていて。

ちょっと赤枠のところだけ読み上げますと、「広告というメッセージは応援である。自分の好きなこと、好きなもの、好きな会社を心から応援したい、その気持ちを広告に託して自分は仕事をしています」と。箭内さんは故郷の福島を応援しているとおっしゃっていたんです。

自分の打席を作るために「働く」から「働きかける」へ

阿部:次に、放送作家で『おくりびと』の脚本もされている小山薫堂さんという方の言葉です。その方が本の中で、「勝手にテコ入れする」とおっしゃっていて、「もっとこうしたら効率よくできるんだよとか、あの空間はもったいないとか、一工夫加えないともったいないであふれている」とおっしゃっていました。いかに工夫しておもしろくするかということで、なるほどと思いました。

そういう目指すべき先輩たちの背中を見て、広告を応援と捉える人もいるし、アイデアや企画を考えることをテコ入れと捉えている人もいるんだなということに気づきました。

その時に思ったのは、会社に同じような仕事をしている人が500~600人もいて、自分は「500人分の1人」と思って、誰かと比べてしまう。他者と比べてしまう時は、何かに負けてしまう時で、弱っている時だと思うんですね。

そうじゃなくて、まずやらなければならないのは「1人分の1人」と考えること。つまり自分が何をしたくてここにいて……なんでこうして話しているかもそうなんですけど、自分が誰かとどうのこうのではなくて、自分が自分のことをもっと知らなくちゃいけないということに気づきました。まわりから見てどうこうではなくて、自分が何をしたいと思うのかを、まず考えなくちゃいけない。

人は、環境に適応する達人だと思っています。反応して、反応して、順応していくんですけど、反応して順応だけしてればいいのかというと、そうじゃない。今、仕事でがっつり5~6年やってきて思っているのが、Reactionの次はActionが大事ということ。働くのは、みんながしていることですけど、「働く」を「働きかける」に変えていかなきゃいけないと考えました。

よく、仕事では打席に立ちましょうと言われるんですけど、立つ打席がなけりゃ自ら打席をつくればいいんです。自分からもっと働きかけるように変えていこうと思いました。自分が5~6年培ってきた、コピーを考える力、物事をどうすればよくなるかと考える力を、社会に活かしていこうと思ったんです。

座右の銘は「待っていても、はじまらない」

阿部:そこから、(スライドを指して)こういうふうに、よく図に置き換えるんですけど、現状がありつつ、目的と手段を考えるようにしています。目的として、コピーライターとして目立つための手段として、コピーライターとして賞を取るなんて話、ちゃんちゃらおかしくて、これでいいはずがない。

僕はかつてアメリカンフットボールをやっていて、そこで感じる一体感が好きなんですが、実現したいことは、広告でそういう一体感をつくりたいと思って、この仕事に就いたんです。「世の中に一体感をつくる」「人と気持ちで繋がりたい」という思いがあって、それを実現する手段として働いているんだと、あらためて整理して、気づいたんです。

自分が出会う人、物、事に、もっと何かおもしろいことができるんじゃないかと思いました。自分ができることを提供して、一体感の「一」をつくることができるんじゃないかなって思ったんです。

自分の思いを起点にして、世の中に一体感をつくろうという気持ちになりました。自分の座右の銘が、本のタイトルにもした「待っていても、はじまらない」なのは、いつまでも待っていてもはじまらないし、自分がはじめるためには動かなきゃいけないということに気づいたからなんです。

待っていても、はじまらない。―潔く前に進め

それから、平日に会社の仕事をやりつつ、休日や自分が自由に動ける日に、自分の仕事をはじめました。もちろん会社では、上司に仕事を振られるので、それは熱心に取り組みます。

やりたいことだけをやることもすごく大事なんですけど、挑むような気持ちで、普段の振られた仕事をするし、自分の空いた時間には、やりたいことをやる。まず、やるべきことをやってから、自分のできることをやっていこうと整理をしました。

(さきほどお話しした)順番待ちの列を1歩はみ出していくんですけど、先輩から、「仕事って分類できるよ」と教えてもらったことがあるんです。その分類の仕方が、僕には目から鱗だったので、共有させていただきます。

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デジマ下剋上

▼デジマ下剋上とは? U-35限定のデジタルマーケターイベントです。 若手デジタルマーケターが集い一方通行ではないセッションを交わし 現場から上に突き上げるアイデアの種を発見することや 同業界で互いを高め合うネットワークの形成を約束します。

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