数字に囚われた広告は人を動かせない
「血の通ったプランニング」をする方法

②数字だけで広告を考えて大丈夫?ユーザー行動から考える、マーケティングの本質 #2/2

2019年2月15日、「U-35限定デジタルマーケティングイベント デジマ下剋上」が開催されました。本イベントでは、若手デジタルマーケターらが集い、ディスカッションを行います。本パートでは、「数字だけで広告を考えて大丈夫? ユーザー行動から考える、マーケティングの本質」と題し、購買行動やメディア行動が複雑化する中で、デジタルマーケティングについてどう考えていくべきかをディスカッションしました。今回は、4名の登壇者が、ユーザーに喜ばれることで成果がついてくる広告作りをテーマに語りました。

ユーザーに喜ばれるかどうかを考え抜いているか

平田慎乃輔氏(以下、平田):難しいなと思うのは、例えばメディアさん同士や我々みたいなメディア側のコンサル的な立場で、メディアさんの記事の枠を集めていくと、最終的に自動車系パッケージとか○○パッケージみたいになってしまうと思います。

そうすると、プラットフォーマーさんたちが作っているPMP(Private Market Place:参加できる広告主とメディアが限定されたプログラマティックな広告取引市場)パッケージとなにが違うのか、みたいな話になってしまうのが課題だと思うんです。

それこそ、自分で見て選んだけど、プランニング側からしたら、他人が見て選んだものになります。そこはどうやっていけばいいんでしょうか?

羽片一人氏(以下、羽片):たぶん、「枠モノ」という前提で考えてしまうからそうなると思うんです。要は、コンテンツだと思うんですよね。記事だと、PMP化はしないじゃないですか。最近はONE MEDIAさんなど(が手がけたコンテンツ)がすごく流れていますけど、彼らが作る動画はスマホに向けて作られているので、とてもいいコンテンツだと思っています。

メディアがコンテンツにちゃんと投資できるような状況を作れると良いと思っているので、情熱を持って作られているコンテンツを広告主様に提案することを加速させたいと思っています。そのようなコンテンツは広告効果もついてくると思います。なので「枠モノ」として捉えないほうがいいのかもしれないです。

髙柳裕行氏(以下、髙柳):そうですね。うまくいった案件だと、我々の商材や、商材をプロモーションするためのメッセージ・コンテンツがメディアネイティブになっているというか、ちゃんとそのメディアの読者に伝わるかたちに設計されていますね。

それがリッチだとかリッチじゃないとか、そういう問題ではなくて、読者がそれを喜んでくれるかどうか。そこまで考え抜かれてプランニングされている時は、ちゃんと効果を実感できるし、一番反響がある。

反響があると、しっかり数字もついてくるので、その時はすごく説明しやすいんですよね。「これはよかったよ」と堂々と言えるので、すごくいいんです。「枠モノ」のプランニングは、どうしても数字だけしかないので。

羽片:そうですね。

数字しか見ない広告は人を動かせなくなっていく

髙柳:「数字で達成しました」ぐらいしか報告できないんですよ。そのように、反響があると「デジタルはどうなの? あんなに数字が高かったのに」みたいに、変な見られ方をされて、いろんな人が不幸になる感じがします。広告主もそこは手を抜かずに、ちゃんと考える必要があるのかなと思いますね。

羽片:「アンダー35」(の世代)が、ここをがんばらないといけない感じがしているんです。デジタルを正しく理解していて、そのデジタルメディアを自分で使っている人たちが、「浸透圧」みたいなものをどう理解してやっていくか。

これから、インターネットに繋がったものが全部メディアになると思うと、例えはなんでもいいんですけど、「スマートスピーカーでなにを言う?」というところも、全部コミュニケーションの領域になると思うんです。

いろんなものがインターネットに繋がった瞬間に、例えばキリンの「一番搾り」だったら、一番搾りはスマートスピーカーを使ってなんと言わなければいけないかというブランドと消費者のコミュニケーションを作っていかないといけないと思うんですよ。

それを僕らがやらなければいけないレイヤーにもかかわらず、数字でしか見ていないのは、けっこう危ないというか、人を動かすのがどんどん難しくなってくると思います。あとは「今までのデモグラ(デモグラフィック:人口統計学的属性)ではユーザーが特定できない」という話がしたいです。

(一同笑)

澤田洋平氏(以下、澤田):それもお願いします。

羽片:消費者を今までのデモグラでくくるのが難しくなってきていると思うんですよ。どちらかというと、この登壇者の4人は、M1層に入ると思います。でも、好きなものはぜんぜん違うし、M1にタイプ分けすることにはなんの意味もなかったりするんです。

そのあたりはユーザーをちゃんと見て、ユーザーを感じてコミュニケーションをとらないといけないと常に思っていますね。

澤田:メディアさん側から見て、収益化の手法がいろいろありつつ、コンテンツやそこにかける熱量など……いろんなメディアがあると思うんですけれど、平田さんから見て、ビジネスとコンテンツに対する熱量がうまくマッチして、いい感じで回っているような状況は、けっこう見られるんですか?

広告主とメディアが一緒に企画を作っていく利点

平田:とくに我々のプロダクトを使っていただいているメディアさんだと、メディアさんによってはSEO対策でひたすら記事を書いてPVがすごくあるとか、出張して体験したことを書いているとか、さまざまなメディアさんがたくさんあると思います。

澤田:たまたまそういう話をしている時に、髙柳さんがそこのメディアさんを、それこそマス的に捉えるというよりは、メディアさんの態度と、そこのユーザーさんの態度とをマッチさせて、企画を練られているんですよね。

髙柳:プレイライフさんというメディアなんですけど、たまたまご紹介いただいて出稿するようになりました。「お出かけ」みたいなことをテーマにして、お出かけから地方創生まで、広いミッションを掲げているメディアです。

書き手の方や掲載する情報などについて、直接メディアとお話ししました。僕は代理店の時も、メディアさんとがっつり話をする機会がなかったんです。どちらかというとプラットフォーマーのロジックを解析してうんぬん、みたいな話が多かったですね。

そこで、しっかりメディアさんとお話ししたら、このメディアさんはちゃんと読者のことを考えて、自分たちも読者として楽しめるメディアを作りたいという雰囲気も伝わってきて。コンテンツを作る時も、「これはどうやって伝えたらいいんですか?」と聞いたら、「やっぱりデートのマンネリ解消でしょう」みたいな話が出てくるんですよ。

「カンパイ展」というイベントをやった時も、「この時期は、意外と女子もビアガーデンが好きなんですよ。これ、ビアガーデンに見せることはできないですかね?」みたいな相談をしながら一緒に作っていきました。

実際に取材にも立ち会いましたし、ライターの方もすごく楽しんでいて、「これはきっと、ちゃんと読者に伝わるだろうな」というかたちでやって、数字もついてきている案件だったんですよ。たまたま平田さんが「プレイライフといういいメディアがあるんですよ」みたいにおっしゃっていたので、ちょうど繋がって。

平田:ここのメディアさんにカカクコムの同期が入っていたので、それで知ったんです。僕は家でゲームをやっているインドア派なんですけど、おもしろいのでけっこう見ていたんですよ。

あとは、実際にメディアさんに行った時も、書いている方がけっこう熱いんですよね。今日会場にいらっしゃっていただいているんですけど、広告担当の方もすごく熱いんです。担当の方のTwitterを見てもそう思います。もしよければ、後ほどご紹介させていただきます。

(一同笑)

メディアはユーザーに一番近い存在

澤田:髙柳さんは直接会話されたという感じなんですか?

髙柳:そうですね。

澤田:代理店さんも?

髙柳:代理店さんを挟まずに、メディアと直接会話しました。これがいいか悪いかは賛否両論あると思うんですけど、実際に話を聞きに行きました。メディアは一番ユーザーに近いので、ユーザーの生の情報や、「こういうコンテンツが、こういうふうに人気なんですよ」といったことなどが聞けるんです。

なので、実際に広告の仕事にならなくても、かなりヒントをもらえるし、応援したい気持ちになるんですよね。こういうのが、広告主とメディアの関係性なのかなと思ったりもしました。プレイライフさん以外にも、メディアにはちょこちょこ会ってお話を聞くように心がけていますね。

澤田:中間の代理店さんやベンダーはひとくくりにしても、実はベンダーの間にも(企業が)いっぱい入っているんですよね。それを乗り越えて、メディアさんと広告主さんを繋ごうと思ったら、結局数字が共通言語になってしまうのも背景にあるのかな。広告主さんとメディアさんが話せる機会があるなら、いいかもしれないですね。

髙柳:そうですね。コンテンツを作るには、先ほどの話のようなかたちが一番いいと思います。「この商材をどうコンテンツにしたら、買ってもらいたい・届けたい人に届くんだろうか」をちゃんと考えられると、きっと枠だけの話にはならないと思います。

「浸透圧」というキーワードがビビッときて、熱量が大事なんだなとあらためて思いました。そうすれば代理店さんもユーザーのほうを向くので、すごくいい仕事ができるなという感覚はありますね。

平田:メディアさんは、どういうアプローチをすればいいですか? 例えば、メディアさんはいっぱいあると思うんですけど、プレイライフさんみたいな取り組みを広告主さんが知る機会は、どういうところにあるんだろう? いろいろあるとは思うんですけど……。

髙柳:1つは発信することだと思います。Twitterなりnoteなり、いろんなメディアがあるので、そこで発信して、実際に中の人やメディアの運営などが「こういうふうにやっているんだな」と外から見えると、「この人と仕事してみたい」と思うきっかけになります。

一番ユーザーのことを知っているのがメディアなので、「そこは俺たちが一番のエキスパートなんだよ」という姿勢でいていただけると、広告主も「そんなにエキスパートなら、この人たちに話を聞いたほうがいいかな」となると思います。

いまは変にへりくだらずに、ちゃんとユーザーさんとメディアの関係性を作っていって、そこで得たノウハウを発信することが一番大事なのかな。とくに広告主のデジタル担当は情報もチェックするので、そこで候補として挙がってくると、アポが来ても不自然じゃないし、逆にこちらからアプローチしたくなるのかなと思います。

メディア発のマーケットを作っていくべき

羽片:最近、儲かっているメディアはどういうところですか?

(一同笑)

平田:結局、人のコストを考えると、SEO(対策)で記事をばんばん書いて、広告をばんばん貼って……。これは私も言いづらいですけど、あまり子どもに見せたくないようなクリエイティブがバンバン載っているようなメディアさんは、儲かります。ただ、タイアップとかではなく、どちらかというとアドネットワークになりますね。

羽片:アドネットワークですね。SEOをがんばってユーザー数を集めてるんですね。

平田:広告バナーを含めてメディアの世界観かなと思うので、僕としては、そういったところも「もうちょっと、こうしたほうがいいですよ」という話はしているんですけどね。ほかに儲かっているところは……。

羽片:「オリジナルのコンテンツを作っているところが儲かっていればといいな」と思っただけなんですよ。広告主様はある程度の規模を求められるわけですよね。

ある程度大きいメディアで、そのメディアの熱量があって、そこにブランドをこうやって伝えればいい、みたいなことはどんどん提案したいと思っています。プラットフォームの使い方とはまた違う提案になると思っています。

平田:そうですね。僕もオリジナルのメディアさんが儲かるようにと思っています。

いまの日本では、PMPが出稿の1つの手段になっていますけど、もうちょっとメディアさんがまとまって「こういうメディアを書いている人たちがいるよ」みたいに押し出せる場所、本当の意味でのマーケット的なところをしっかり作れればいいのかなと思っているんです。メディア発というか……。

羽片:それをビジネスにすればいいと思います。

平田:けっこう難しいんですよ。

羽片:ネスレの村岡さんなど、メディアの方を呼んで直接メディアデーみたいなものをやっています。純粋にそうしたほうがいいなと思いますね。

ユーザーも関係者もハッピーになれる広告とは

平田:私は最近、ある程度までプラットフォームでどうにかできないかなと考えていて。いま、メディアさんにプロダクトを提供している中でも、自分たちのプロダクトを使ってもらうためにメディアさんを集めて、それこそ羽片さんのところに持っていけないかな、みたいなことを考えています。

そして、その中で実際にどういうものかを見ていただいて……というのをイメージしていたんですよ。確かに、直接会ってみれば早いですよね。

髙柳:それでよさそうな気がします。

澤田:ひとしきり話しましたけど、大丈夫ですか?

髙柳:すごくいい話を聞けた。

(一同笑)

澤田:もう時間があまりないので、質問があればと思ってTwitterを見ていたんですけど、あまり見つからず……。僕ら側で、いまの話のまとめをしていきたいなと思います。

いまの話は、広告主さん・メディアさんがそれぞれ、インターネットをマス的に捉えるのはやめて、ユーザーに向き合っているメディアさんにちゃんとお金が流れるような、いい循環が生まれるようにしていきましょうという話だったと思います。

そうなってくれば、代理店さんや僕らみたいなベンダー・プラットフォーマーも、ユーザーさんのほうを向いた提案や事業の展開などを考えられるようになるかもしれない。それで、トータルでハッピーな感じになれるのかなと思います。

とはいえ、ビジネスとしてリーチ規模を取っていかないといけない中で、先ほどおっしゃていたような「大きいプラットフォーマーを使わない」という選択肢は、ほぼないかなと思うんです。

髙柳:そうですよね。

数字だけではなく「血の通ったプランニング」を考えていく

羽片:使い方ですよね。役割が違うのかなと思っています。数字だけではなく「浸透圧」も意識し、血の通ったプランニングのほうがいいかなと思っているだけなんですけどね。

広告は投資なので、「人を動かさないと、投資している意味がない」と考えると、ユーザーを動かすためにはそれをやらなきゃいけない。

ブランドは体験や経験で作られているものなので、よりそこに集中しないといけない。それができないと、僕らはただの算数屋で終わってしまうので、そういう世界に持っていきたいなと思っています。

髙柳:私もアナログを含めて、デジタルだけで閉じずに考えることが大事なのかなと思っています。とくに飲み物は、飲んでもらってなんぼなので、そこまでの体験を設計しているのかを、常に自分に問うてやっていくのが大事なのかなと思います。

逆算なのかもしれないですが、そこにデジタルの広告が寄与することも考えて、それこそ、代理店さんやメディアさんなど、みんなで血の通ったプランニングを考えていきたいですね。

平田:プランナーさんに1割でも2割でも、おもしろい広告に投資していただけるようになれば……私も個人的にメディアさんの収益化のお手伝いをしていますけど、そういったところでお使いいただけるような準備をしていきたいなと思いますね。

澤田:ありがとうございます。まとめに入ったのに、最後は怒涛のいい言葉が連発みたいな感じでした。「血の通ったプランニング」……「いいですね」という声がたくさん挙がっています。そこも含めて、(広告業界の)各所のみなさんでユーザーのほうを向いていきましょう。

ここで締めたいなと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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デジマ下剋上

▼デジマ下剋上とは? U-35限定のデジタルマーケターイベントです。 若手デジタルマーケターが集い一方通行ではないセッションを交わし 現場から上に突き上げるアイデアの種を発見することや 同業界で互いを高め合うネットワークの形成を約束します。

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