「どこにでも住める」が可能にする世界

武井浩三氏(以下、武井):4つ目の問いにいきたいと思います。テクノロジーに繋がりますけど、この「LIVINGTECH」という領域で、これからいろんな社会課題は同時多発的に生まれてきています。

人口減少・少子高齢・過剰供給・価値観の多様化などの社会課題に対して、LIVINGTECHが解決策となり得るのか。すでに解決策みたいな話がけっこう出ていましたけど、他のいろんな社会課題もちょっと頭に置いて、お話していただきたいなと思います。

山口周氏(以下、山口):これ僕は全部プラスだと思っていて、東京はみんな子どもを産むのも大変で。なぜかというと、東京では、子ども1人のためのスペースを作るのがすげー高いんですよ。うちは子どもが3人いるんですけど、端的に言って、子ども3人に個室を与えて、マンションに住もうとすると、むちゃくちゃ高いんですよね。

それがテクノロジーの力でどこにでも住めるとなると、スペースの制約が飛躍的に少なくなるので。少子化や人口減少の問題もそうですが、コミュニティをすごく作りやすくなるので。鎌倉もそうだけど、葉山は老人のコミュニティがすごく活発なんですよね。パブリックスペースはすごくあるので。

スペース代が高いとパブリックはできない。全部プライベートになるわけで、できるだけプライベートの空間がほしくなる。そうすると土地の安い地域にある程度行くと、パブリックスペースも大きくなって、コミュニティみたいなものも出てくるので、いろいろなところで実は効いてくるんじゃないかと、直感的には思いますけどね。

「孤独」が一番の課題である

石川善樹氏(以下、石川):僕が思うことですけども、LIVINGTECHがどういうことなのか、わかっていないんですけど。これまではどちらかというと、会社にしろ、家にしろ、その中でいろいろ完結するようにするということで、発達してきたと思うんですね。

例えば、外でやっていた洗濯を家の中でやる。外でやっていた買い物を家に届くように、家の中で完結するようになってきた。あるいは、さっきは「4つのしごと」みたいな話をしましたけど、会社の中で完結するようにするということだったと思うんですけど。

でも、今何が起きているかというと、社会課題ということで、やっぱり孤独なんだと思うんですよね。家の中で完結してもらっちゃ困ると。寂しいんですよ。だから、家の中でやっていたことを逆に外でやるようになっていますよね。

ランドリーカフェみたいな話もそうですし、若い人はジムでお風呂に入りたいとか。これってどういう課題かというと、人口減少とか少子高齢化とか言われても、ちょっとよくわからないですけど「大人になってから友だちって作れますか?」ということだと思うんですよね。

今までは会社の中とか地域で友だちを作っていたのが、転職前提だったり、地元というものがない中で「あれ? 大人になってから友だちってどう作るんでしたっけ?」というのが、たぶん一番の課題なんだと思うんですよ。

それに対して、「テックは何かできますか」ということだと思うんですけどね。ちょっとした寂しさを埋めるのは、テックではできます。エンタメみたいなものがあったりとか。電話みたいなものはちょっとした寂しさを埋めるものですけど、大きな寂しさですよね。

今後は地域の「二極化」が進んでいく

林宏昌氏(以下、林):深いですね。この話もそうなんですけど、どちらかというと、スライドに書いてあるテーマは偏在、偏ったあり方の問題だと思っていて。人口減少も、日本で捉えると減っているんだけども、グローバルで捉えると増えているし、少子高齢化というと日本はそうだけど、アジアで言うと、ものすごく若い国が勃興してきています。過剰供給も、僕らは余っているけど、国によっては足りていないという問題がある。

これは中で閉じて……日本中でも結局、東京で言うと人は多いみたいなことになっていて。僕はこのへんのテーマだと二極化していくと思うんですね。結局、どこでも住めるようになっていく時に、葉山とか鎌倉はこういうような問題がどんどん解決されていくかもしれないんですけど、何の特徴もない地域は、どんどんそういう問題になっていく。

いま僕は地域の人たちとお仕事をしていくんですけど、彼ら側で今後起こってくるのは何かというと、地域にそもそも住んでいた人たち、地元の仕事をしていた人たちが、もはや東京の仕事をするようになる構造にもなるわけで。そうすると地域に住んでいて、労働力だった人たちが、もはや労働力ではなくなることが加速する可能性もけっこうあります。

そうなると、何かプラス面を捉えがちなんですね。移住してきてくれて、こっち側が仕事をしてくれたらいいなということは、みんな考えるんだけど、逆に地域の人たちが、東京の仕事をするようになるとか、僕の会社のロゴデザインをやった徳島の人が、クラウドソーシングで出してくれているみたいなことになってくると、地元の人が地元の仕事をしない構図になっていったりすると。

そうなってきた時の働き手の問題が、もっと深刻になる地域がある地域もあれば、外からもっと人が来てくれて、潤っていく地域も出てくるということで、実は二極化がもっと進むんじゃないかなというのが僕の感覚ですね。

だから働く場所や時間とかが自由になる分、偏在の問題がより深刻化していくんじゃないかなということで、ある部分が感想で、ある部分はより深刻になるんじゃないかという感覚ですかね。ちょっとポジティブな話をしたいですけど。

孤独はタバコと同じくらい健康に悪い

武井:会場のQ&Aを1つだけでも扱いましょうか。Sli.do にこちらから2つ質問を立てたので、できたら今お答えいただきたいのですけども、「2つ以上の組織に属して仕事をしている」という方がいらっしゃったら、ぜひこれにお答えください。

働くにしても、いろいろ重なり合い始めて、それを「融合」と言っていましたけど、それの実態をちょっと聞いてみたいなという意図だったんです。やっぱりこんな感じで、たぶん、ここからあまり差は出てこない気はしますけども。はい、ありがとうございます。

次はもう1個質問があります。「どちらかというと、仕事とプライベートの境目があやふやだ」。あやふやな質問で、すみませんね。意外とこの会場に来ている人たちは、いわゆる意識高い系が多いんですかね。

(スライドの回答を見て)なるほど。おお、こんな感じ。ありがとうございます。これで何ということはないんですけども、ちょっとコメントのしようがなかった。ありがとうございます。

次は、「仕事を全うする環境でも人と人の関係性というものは、いつの時代も解消されない。未来的に3時間しか働かないと人は暇に耐えられないだろうと話していたが、暇を感じる前に考えることはたくさんあるだろう」。

これは質問じゃなくて意見じゃない?(笑)。人と人の関係性が解消されない、ということで。石川さんの話で孤独というのが、つまり繋がりがない状態だと。これに対して、たぶんここにいる方々のお考えやすでに実践されていることがあると思うんですけども、いかがですか?

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