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ミレニアル世代の「働く」を考える ―誰がためにミレニアルズは働く?―(全7記事)

脳には「攻めるための休み」が必要 仕事で成果を出す人が実践していること

2019年2月13日、WASEDA NEOにて、「ミレニアル世代の『働く』を考える -誰がためにミレニアルズは働く?-」が開催されました。本イベントでは、ミレニアルズの“枠にはまらない働き方”を代表するトップランナー3名に、いかに「好き」を積み上げ、会社や社会に認められる自分をつくっていくのか、これからのキャリアをどう創り上げていくべきなのかを語ってもらいます。今回は、仕事とプライベートを切り口に、新しい発想を生んだり、自分にしかできない仕事をする方法についてディスカッションしました。

仕事が楽しければプライベートと分ける必要がない

木村和貴氏(以下、木村):次のテーマは仕事とプライベートということで、これもたぶん、みなさん的にはかなり興味があることではないかと思います。よくオンとオフで語られたり、あとは本当に定時で上がって趣味を楽しみたいとか。そのへんについておうかがいしたいと思いますが、先に中郡さんから、仕事とプライベートというとどうでしょうか?

中郡暖菜氏(以下、中郡):私はまったく分けないタイプなので、プライベートと仕事は一緒ですね。

木村:仕事を楽しんでやっているというところですかね。

中郡:好きなことなので楽しいですね。

井上一鷹氏(以下、井上):趣味は何ですか?

中郡:本を読むこと。

井上:ほう。ある意味、僕より上ですね(笑)。

中郡:仕事とプライベートを、まったく分けていません。

井上:それで例えば、「月〜金」と「土日」のようなことも、ぜんぜん意識はしていないんですか?

中郡:意識しませんね。「土日で混んでいるから外に出たくない」というのはありますが。

木村:そういう時間で分けているわけでもなく、過ごしているということなんですね。

中郡:まったく分けていません。

木村:へえ、すごい。井上さんどうですか?

アイデアを出すために休息をとる「攻めの休み」

井上:僕も中郡さんほどではありませんが、ほぼそれに近くて、本当に恥ずかしながら趣味がないので、プライベートという感覚の時間があまりないですよね。

もう少し言うと、オンとオフという考え方をやめたほうがいいと、僕は勝手に思っていて。これもまた『ホンマでっか!?TV』みたいな話をするのですが、脳の活動に関して研究をしている人は、脳にオンとオフはないといいます。全部オンなんですよ。

論理思考をするというのは、仕事も生き方も……いわゆる集中のような論理系の思考と、直感系のアイデアを出すための思考と、大局観的にざっと見て「このへんが正しい」という思考。

この3つの脳のモードがあって、これは全部活動としてはオンなんですよ。寝ているときでも、レム睡眠と言われる夢を見ているような時間帯は、むしろ直感が活性化しているんですね。

ですから、リラックスしてソファで寝ているような状態は、実はアイデアを出すためだけで考えたら、そっちのほうが脳の活動としてはポジティブなんですよ。

そういうと、いわゆる昔からオンと言われていた論理思考をする、仕事にガーッと向き合うようなモードだけで仕事ができるわけないので、直感系の思考のために、土日に無理やり休みまくる。でも、それは「攻めのための休み」なんですよね。

わりと、そのように考えていて。僕は会社自体、テレワークは別に容認されていないけど勝手にやっているので、どの時間に会社に行くかは、もう会議だけで決まっていて、あとは自分がやりたいところで仕事をするようにはしていますね。

中郡:今後は、そういう会社がすごく増えると思います。私はフリーランスで編集長をしながら本を作ったりアパレルをやったりイベントをやったり。どれが軸かというよりも、全部をミックスさせるのが案外一番よかったりします。

ミックスすることで自分が楽しかったり、みんなに喜んでもらえたり、クライアントさんに喜んでもらえたりすることがすごく多いので、会社や仕事という縦割りのタスクで考えるのではなくて、どれだけ自分らしさをそこで出せるのかという、自分が「お願い」と言えばやってくれる人をどれだけ作れるかといったことが大事ですね。

仕事の垣根を越え、人とのつながりを作っていく

井上:それは超大事ですね。諦めてもらって任せる力というのは、超大事ですね。

中郡:自分だからミックスできる、人と人とのつながりや、仕事と仕事の組み合わせなど、それをどれだけ作っていけるかということが、大事だと思います。

井上:前に聞いた話でおもしろかったのは、オリコンチャート研究をしている人がいて、「誰がミリオンセラーを出しているのか」という研究がありました。ミリオンセラーを出すようなミュージシャンや音楽をする人には、作詞・作曲・ボーカル・ギター・ベースなど、こうした機能が1つずつあるじゃないですか。これをできるだけ多く数を経験する人が、ミリオンセラーを出しているらしいんですね。

ボーカルだけをやっている人はなかなかキツくて、それをインターダイバーシティというのかな、イントレダイバーシティというのかな。今は、自分の中に多様性を持つことで、新しいものを生み出せるということは、研究でもかなり論拠が出ている。

1つの仕事をずっと50年間もやっていくような世界観では、やっぱり出がらしになるし、それだけでは新しい発想が出ないので、「日曜日にはこういう仕事をしてみよう」とか。仕事でなくてもいいから、そういった多様性を持って、自分の中に引き出しをいっぱい持って、そのかけ算をしたときにアイデアが出る。そうした働き方をしたほうがいい。

変な話、昔の成功モデルは、1社から3,000万円もらうような人が、すごく成功をしている人というものだったと思いますが、そうじゃなくて、4社や5社から500万円をもらっているような世界のほうが、おそらく永続性もあるし、むちゃくちゃ良い仕事をしている。そのようになっていかなければいけないと思っていたりはしますね。

木村:なるほど。

井上:この話を会社の人に聞かれたら嫌ですけどね(笑)。

(会場笑)

そこが、すごく大事だと思っています。複数の自分を持っておかないと、やっぱり出がらしになるという。

好きなものが多すぎて選べない悩み

木村:お二人のお話を聞いていると、僕はすごく汗が出てくるんですが。趣味がめちゃめちゃ多くて、スポーツも音楽も旅行もなんでもやるんですが、土日がいつも趣味のトーナメントのような感覚で。仕事もすごく好きなんですが、プライベートというか趣味もめちゃめちゃ好きというような。

先ほどの自己認識の話題でも、嫌いなものを削っていくといった話があって「いやあ、なるほどな」と思ったのですが、僕はだいたい全部好きなんですよね。だから向いていないと思って。

井上:自分を複数持っているわけですよね?

木村:そうですね。

井上:根暗からしたら、それは辛いですよ。リア充だから。そういった意味でも、複数の自分があると思いますよ。絶対。

木村:そういうことなんですかね。例えば、本当に恋愛などでも、好きなタイプというものがあったりすると思いますが、だいたいけっこうみんな好きなんですよ(笑)。男も問わず人間好きというような。趣味もなんでも好きで、仕事も好きなことが多くて、逆に選ぶのが難しいようなことがあって、話を聞きながら「これはどうしたらいいのかな?」という。言い出せずにいたのですが、今言っちゃったという感じです。

井上:どっちのほうが多いんですかね? 今日まで、ミレニアルというくくりで物事を考えたことがなかったんですが、ミレニアル世代というのは、どっちが多いのでしょうか?

木村:聞いてみましょうか。

井上:正直、どっちのタイプか?

木村:そうですね。

井上:「基本的にはモノが好き」「基本的にはモノが嫌い」というと、どっちのほうなんだろう?

木村:前者のほうがという人?

(会場挙手)

井上:答えにくいかな。

木村:ちょいちょいですかね。じゃあ、中郡さんのタイプのほう(基本的にはモノが嫌い)だという人?

(会場挙手)

木村:どちらかというと、嫌いのほうが多いという感じですね。僕は何かすごく愉快なやつなんだということが、今すごくわかりました。

やらされ感ではなく、自ら選んでいるという感覚が大切

木村:もう1回、仕事とプライベートのような話でいくと、プライベートが好きな人は仕事があまり好きじゃないようなイメージがあると思うんですよ。趣味を楽しんでいる人は、月曜日に会社に行くのが嫌だというような。でも、僕はそうではないんですよね。

仕事には、部活のように仕事をする人と、授業のように仕事をする人がいるのだと思っていて。これは「授業が、受け身でやりたくない」前提の話ではありますが、部活の場合はどんなにキツくても、やっぱり自分がやりたくてやっている。自主練などもしているじゃないですか。言われてもいないのに、遅くまでやっているようなものじゃないですか。

授業はやらないと単位がもらえない、卒業できないというものがあって、絶対にやらなければならない時間ですよね。授業のように仕事をしている人は、やらなければいけないから、「仕事が早く終われ」とか「会社に行くのが嫌だ」と思う。

でも、部活のようにやっている人は逆に、残業をしてでも自分の時間を使ってでも、目指す方向に行きたいというようなことがあると思っていて、そこの感覚がすごく大事なのだと。部活のようにできる仕事を選ぶという感じじゃないかと思うんですよね。

井上:「自分で選んでいる」という感覚を持って、仕事をするということですよね。

木村:そうですね。

井上:「やらされている」と思っている時点で、やっぱり辛いと思いますからね。

木村:そういうことですね。二人とも自分のやりたいことに向かっているというところでは、それも趣味という区別がないというか、自分の興味があるという領域ということなのだろうと思いましたね。

プロジェクトの成功のカギは、人を巻き込む力

井上:自分の中で、悩みながら話したいということが今出てきたのですが。僕はやりたいことを勝手にコンセプトワーク化して、「これ、ワークスペース作ったら熱くない?」というような。「計算書つくろうよ」というようなことを、勝手に言うじゃないですか。

そうすると仕事が発生するので、チームメンバーからすると「あいつが何かああやって嬉々としてしゃべっていると、俺の仕事が増えるんだよな」と思っているはずなんですよ。

だから、能動性のある人ががんばり過ぎると、受動側が絶対に発生するので。このときに僕が大事だと思うのは、自分ができていないことを含めて言えることは「何か、これができたらむっちゃおもしろくない?」という巻き込む力です。

なんとなくこの世界は、「おもしろいと思わせる力」がすごく足りない時代だと思っていて。能動的であれば、本当は受動的に仕事をお願いしている人に対しても「僕、これがやりたいことなので」と言ってくれる人がいるんですよね。

その感じを見て、僕は最近「枠ではなく軸」という言い方をよくしていて。昔から言うマネジメントというのは、「この中でがんばってください」という目標設定をして動くのが基本なんですが、これはマネジメントという管理系のマネジメント。

最近はティール組織など、ちゃんとアイデアを持った人が軸を提示して、その軸に対する共感でチームビルディングをするとプロジェクトが上手くいく、ということを言っている人がいて。

枠組みを決めて「この中でがんばって」ではなくて「これ、超おもしろくない? みんな、がんばってついてきて」というような、この巻き込む力を作らないと、意外と自分がしたいことは途中で止まるので。これが、自分の中での今のチャレンジですね。

自分の中ではワクワクしているんだけど、周りは目が死んでいるんだということも多々あるので(笑)。ここをクリアできるような人間になりたいというのが、僕の35歳の悩みというか、本当のところですね。

木村:自分がやりたいことをやるために、周りをどうポジティブに巻き込んでいくかという感じですね。

井上:もう、明らかに嫌な顔をしていたりもしますからね。

プロジェクトベースで仕事をする方が問題は起きにくい

木村:話がズレるんですが、個人のやりたいことと会社がやって欲しいことは、必ずしも一致しないのかと思っていて。個人がみんなやりたいことをやりたいと言っていたら、収集がつかなくなると思うんですよね。そうならないために、とりあえずはハッピーな状態でいられるような会社のあり方というのは、どういう状態なのかと思いまして。

今の話に出たティール組織というか、軸に集まってくるというのは、会社がやってほしいことと自分がやりたいことの根幹がつながっていて、あとは自由に……というのがいいかたちだと思ったのですが。個人のやりたいことと、それを受ける会社側の管理というか、どう接するかというところで、お話を聞ければと思います。

井上:絶対に簡単なことではありませんが、会社とプロジェクトが1対1になるのが一番正しいと思っています。JINSという会社があって、メガネ事業をやっていたり、JINS MEMEをやっていたり、いろんなことをやっていると、会社全体の目的と一事業の目的が非常にずれたりします。

そうではなくて、「わからないけど、メガネを5,000円ぐらいで買える世界を作りたいよね」というプロジェクトに対して乗ってきた人が、そのプロジェクトが上手くいった途端に解散というぐらい、シンプルに1つの目的を果たすための組織に分化していけば、今の問題のほとんどは起きなかったんですよ。

個人のミッションが長期間変わらないことの問題点

井上:だけど、「going concern(会社が将来に渡って事業を継続していくという前提)」などと言って、10年後も生き延びたいというような理屈で組織が運営されていくと、どうしたってやりたくないプロジェクトが生まれて、社員がそこにアサインされる。だから、できるだけ組織とプロジェクトは1対1。それで「解散!」となれば最高。それぐらいのギルドのような世界になるのが、本当は個人としては絶対にいいんですよ。

それが、お金がプールされちゃって、これ自体が上手く回り始めてしまったりすると、そうはいかなくなるので。プロジェクト1つに対してだけコミットすれば、その会社との関係……会社と個人がくっつくのではなくて、「僕はこのプロジェクトを2、3年やります」というような雇用形態にしないと、やっぱりどこかでやりたくないことをしなければいけないんですよね。

そこをちゃんと切っていく。切っていった会社にみんなが行けば、そうじゃない旧態依然とした会社に人が集まらなくなるので、そのようにしていくしかないという気がしますね。これは難しいですが、みんながそういう会社を選べばいいんですよ。

中郡:あるんですか?

井上:うちの会社はわりとそうです。うちの会社は本当に変な会社です。オーナーが全部一つひとつのプロジェクトを見ていて、この方法だと言っている人と会う。それで上手くいかなかったら解散する、という感覚で仕事をしていますね。

木村:会場には学生の方もいらっしゃいましたが、会社を選ぶ段階で、そういうことを見極める方法はありませんか? 働いている人の話を聞いてという感じなんでしょうか?

井上:うーん。でも、絶対いいことを言いますからね。

木村:確かに(笑)。

井上:少なくとも数年ごとには、先ほどのドーパミンの話ですが、4年に1回は個人のミッションが変わっているかどうか。それが担保されていなければ、普通に考えて、おそらくきついんですよ。

それがきつくないと思っている人もいるとは思いますが、僕なんかは「4年前に何をやっていましたか?」と聞かれたときに、「あっ、同じですか」となると辛いと思いますね。そこの回転率が高ければ、4年に1回はフレッシュな瞬間を迎えているので、変なことが起きにくいという気がします。

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