英米では「プログラミング教育」という言葉がない理由
猪熊真理子氏(以下、猪熊):プログラミング教育と聞くと、どうしてもプログラミング言語を覚えていくようなことを想像するんですけど、そういうものだけではないんですよね? 実際にプログラミング教育というものに含まれるのは、どういったことなんでしょう。
水野雄介氏(以下、水野):結局、プログラミングを学ぶのはツールでしかない。なんのためにやっているかというと、社会を変えるために学んでいるから、社会を変えるために、例えば産業を興したり、なにかのプロモーションをしたりと。そのためにプログラミングを学んで、アプリを作ったりするわけですよね。
だから、プログラミングのスキルが横軸で上がっていくとするなら、縦軸では僕らはアンビシャスと呼んでいるんですけど、つまり志やビジョンといったもので、課題を立てる力、課題を見つける力、仲間を巻き込む力もすごく重要になってくるんですね。
その両方がないと、プログラミング教育をしても、「プログラミング的思考ができるようになりました」となるだけで、なにも変わらないわけです。目的は、社会を変えられる人材を作るというところから、プログラミング教育を考えるべきなんじゃないかなと思っています。
佐藤昌宏氏(以下、佐藤):プログラミング教育が2020年から必修化されるんですけど、海外にプログラミング教育という言葉があるかというと、ないんですよ。
例えばアメリカだったらコンピューターサイエンス。「プログラミング・フォー・オール」という言葉は使っていなくて、「コンピューターサイエンス・フォー・オール」と言っているんですよ。イギリスに関しても、コンピューティングと言っていますが、いわゆるコンピューターサイエンスみたいな科目、教科が先にあるんですよ。
そのコンピューティングの中に、デジタルテクノロジー、ITリテラシー、コンピューターサイエンスが入っていて、コンピューターサイエンスのプラクティカル枠にプログラミングが必修化されている。つまり、プログラミングは最上位じゃないんですね。
日本だけ、プログラミングが最上位になってきちゃったんです。高度IT人材を育成しましょうという流れから、どうもプログラミングという言葉が先行して、コンピューターサイエンスよりプログラミングが上位にきてしまった。それが、学校現場を混乱させている原因の1つで、ミスリードの原因の1つだと思います。
プログラミングができるだけでは高度IT人材とは呼べない
佐藤:つまり、IPアドレスもわからずに現場で学んでいる子がたくさんいる。だから掲示板とかLINEで、言葉は悪いですけれども、匿名だったら殺人予告とかできる、みたいな子がまだまだ出てきちゃうんです。
GoogleやFacebookのアカウントは13歳から取れますし、LINEはもっと早くから取れますから、そのために備えることの方を必修化するべきではないかなと思います。
それから先は、プログラミングでも映像編集でもCGでも、高度IT人材の道はたくさんあるんです。最終的には、プログラミングは確かに共通するんです。ただ、もうちょっと下の土台の部分を必修化すべきじゃないかなと思いますね。
猪熊:実際、かなり基礎的なリテラシーも絶対に必要で、かつスキルがあったり、水野さんがお話しされたように、かなりアントレプレナーシップに近い素養があって、社会に対して活動していける部分があるんだなと思います。
山口さん、実際に地域の中で地方自治体とも取り組みをされているとお聞きしましたが、実現していく中での課題についてはいかがですか。