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ミレニアル世代の「働く」を考える ―誰がためにミレニアルズは働く?―(全7記事)

極限状態でがんばるのは3ヶ月が限界 本当にやりたいことを見つける“逆張りの法則”

2019年2月13日、WASEDA NEOにて、「ミレニアル世代の『働く』を考える -誰がためにミレニアルズは働く?-」が開催されました。本イベントでは、ミレニアルズの“枠にはまらない働き方”を代表するトップランナー3名に、いかに「好き」を積み上げ、会社や社会に認められる自分をつくっていくのか、これからのキャリアをどう創り上げていくべきなのかなどをテーマに語ってもらいます。今回は、自己実現をテーマに、やりたいことを見つける方法や、集中して何かを成し遂げるために必要なことについて意見を交わしました。

集中力のある人は、自分がやりたいことを分かっている人

木村和貴氏(以下、木村):次のテーマに移りたいと思います。今の話を聞いていくとおそらく、自分がどういう人間で何がやりたいかが必要であるということ。「自己実現」がキーワードになるということから、どのような状態が自己実現できている状態で、どのような状態であれば自己実現ができていないという状態なのか。

自己実現の定義や、何が自己実現なのかといった話を聞きたいと思いますが、自己実現というのはどうですか? 自己実現をするためにはとか、それは何なのかといったところで。

1つはおそらく、自己実現というためには「自己が何か」ということを、まず知らなければいけないのではないかと。ステップで言えば、自己認識から始まるのだろうかと。自分が何に興味があって、何をやりたいのか、何をやっていれば楽しいのか。そこの自己認識の仕方などはいかがですか?

井上一鷹氏(以下、井上):僕的にこの話をしたほうがいいと思ったのですが。僕はざっくり言うと、集中を測っている人間です。どんな人が集中するのかというと、先ほどお昼ご飯の食べ方などいろいろ言ったのですが、人ベースで言うと、「俺は何をしたい」とはっきり言えるやつは、集中が高いんですよ。

「また面倒くさいややこしいやつだ……」と思わないでほしいのですが、入山ではありませんが、一昨年高野山に行ってきたんです。「集中力を上げたい」といったら、「日本人で言うと、最初に集中で悩んだのは空海だ」ということを言い張っている。別に言い張る理由はないんですよ(笑)。

高野山に行って、住職に「どうすれば人は集中できますか?」という質問をプレーンに投げかけたときに「如実知自心」(にょじつちじしん)という仏教用語を教えてくれたんです。「如実に自分の心を知る」と書くのですが、1,200年前か、もっと前かもしれません。

彼は答えを持っていて、「集中できるやつは、自分が何をしたいかを知っている人間だ」という言い方をしています。

やりたくないことでがんばれるのは3ヶ月が限界

井上:脳神経科学をやっている人と話をしたときも、同じようなことを聞きました。ホルモンの話が一番わかりやすいのですが、「レポートをあと2時間で出さないといけない」というような、まるで「殺される」かのように考える状況。こうした状況で人間がアドレナリンを出してがんばれるのは、絶対に3ヶ月しか保たないらしいですよ。

3ヶ月までは精神病になる直前までがんばれるんですが、4年かけてそれに取り組めるというのは、ドーパミンというホルモンが出ている状態なんですね。もっともっと長く中長期に自分の人生をかけられるというのは、セロトニンという穏やかな状態になれるホルモンも出ている状態なのだそうです。

そうなると、自分が何をしたいかわからない人は、自分がしたいことに自分のリソースを張れていないので、結局納期のために仕事をしたり、「誰かが」「会社が、こう言っているからやらなければいけない」「社会要請上、給料をもらわなければいけないからこうしなければいけない」となると3ヶ月しか保たないし、長期的には集中できないんですね。

自己実現の話からかけ離れているかもしれませんが、やっぱり自分を知るということは、もっと細かく言えば、自分が何をしたいのかをちゃんと語れるようになって、それに自分のリソースを張るために、他のことを無理矢理にでも他の人に任す。「俺、もう経費計算は絶対にできないので」ということをちゃんと周りに言って、自分がやりたいことだけに注力するという、周りの環境を整えていくことが大事なのだと。

それによって、自分がしたいことに100パーセントのリソースを割けるようになって、2~3年から10年、20年とかかって、自己実現するんだと思っていますね。大丈夫ですか、嫌なやつじゃないですか。変なやつです(笑)。

木村:なるほど、いや素晴らしいです。

井上:お坊さんのようなことを言っていますね。

木村:集中力というのは、すごく短期的なことに使っていたイメージでしたので、4年間も集中するような長期的な尺度での使い方が、すごく興味深かったです。

「嫌いなこと」の逆張りから、本当にやりたいことが見つかる

井上:恋が4年しかもたないのも、ドーパミンのせいらしいですよ。こんな言い方をすると、『ホンマでっか!?TV』みたいになるんですが(笑)。

木村:まずは自己認識をして、自分がやりたいことをやれば長期的にパフォーマンスが上がると。その先に自己実現が待っているということですよね。

中郡さんは、編集の道にかなり突っ走ったわけじゃないですか。そうするとかなり自己認識ができていたのではないかと思うのですが、迷わずにそこに行けたのはなぜなのだろうかと。自分はそうなんだと思えたきっかけや、どういった考え方をするとそうなるのかというお話があれば。

中郡暖菜氏(以下、中郡):私の場合は、自分の嫌いなものや苦手なものというのを、「どうして自分はそれが苦手なのか?」「どうしてこれが嫌いなのか?」ということを、突き詰めていった感じですね。嫌いなものが世の中に多すぎて、冷静になるとやばいんですよ。

「横断歩道が嫌だ」「そこに貼ってあるwi-fiと書いてある貼り紙が嫌だ」といったように、小さなことがすごく気に食わないタイプなので。

木村:あの貼り紙の何が嫌なんですか?(笑)。

中郡:四隅の3点が押さえられているのに、最後の1点が押さえられていないじゃないですか。耐えきれない。

嫌いなことが多すぎるので冷静になってしまうと、生きていくのが辛い。「この床の青が嫌だ」といったように、いろいろなことがすべて嫌になってしまうから、「自分の嫌なことや苦手なことというのが、ものすごくたくさんある」ということをまず把握して、「でもこれだったら嫌じゃない」「これだったら許せる」というようなことを、探し出す方向に行ったという感じですね。

井上:ぜんぜん勝手な話をしてしまいますが、心理学をかじっている人事の人という特殊なカテゴリと仲が良くて、よく似たようなことをお話しされています。今の話は、すごくプレーンに聞くと、「あの人は嫌なことを避けてきたんだ」というように聞こえますが、実は違って。

人は何をしたいかを本気で考えるときには、「何がマジで嫌なのか」の逆張りをしたほうが、自分の本質に近づけるという研究結果があるらしいですよ。

なぜかというと、感情の中で怒りは一番ピークが立つので、自分の特徴を捉える怒りから逆算したほうが早いというのが、人事系のトレーナーの話です。僕はどちらかというと、何に対してもどうでもいいやというタイプなので、怒りのピークにちゃんと気付いて、その逆を言うというのはすごく大事らしいですよ。

クリエイティブとビジネスのバランス

中郡:私はモノを作っているから、モノって思想やWebのバーチャルとは違うじゃないですか。立体として目の前に現れているものだから。なので、嫌なものを全部外して、自分が逃避できる世界を現実の世界に作り出せれば、それを見ている間は絶対に嫌なことが出てこないわけですよ。

「この色が嫌いだ」ということがあっても、自分が作った本を読んでいる間はその色に出会わなくて済むわけです。だから、結局苦手なものは自分が得意なものや作れるものに、深く関係していきます。画家でも嫌いな人が二人いるんですが(笑)。

(会場笑)

井上:それを今発表してもらうことはできませんか?

中郡:バスキアとクリムト。それを自己分析的に言えば、まずバスキアというのは、私の中では偽物感がすごくあるんですよ。絵が下手というわけではなくて。

井上:特徴がない?

中郡:特徴はあるんですよ。

井上:真似っぽい?

中郡:特徴はあるし、真似っぽいわけでもないんですよ。なんていうか、アウトプットがビジネスライクなんですよね。本当に自分の中から湧き出た素直なものを描いているというよりは、自分がこう描けばイケているとわかって考えて描いている感じを受けるというか。

井上:ウケにいっているというか、「このへんを描けば喜ぶんでしょ」という打算感があるんですかね。

中郡:すごく器用な人だと思っていて、その器用さが苦手なんです。でも、それは自分に近いものがあるからだと思っているんですけどね。

100パーセント素直な心のままにというよりも、考えて作ってしまっている部分があるし、自分はギャルだけれども今はギャルがウケないから、もうちょっとまろやかにして……というように考えて作っているから。きっと必要なことではあるけれども、クリエイティブとビジネスのバランスは永遠にせめぎ合っていて、ビジネスが勝ってしまう自分ではありたくないと思っている。

自分が絶対に嫌なことを冷静に分析すべき

井上:バスキアを通じて、自分の中の自分の嫌いな部分を見つけたということなんですか?

中郡:そうですね。

井上:それを削ぎ落として、また。

中郡:削ぎ落とすわけではなく、反復する自己実現のためには、自己認識をすることが大事なので。自分が絶対に嫌だということを、冷静に分析する必要があると思うんです。自分が心の底から「無理」と思うことには、なにかしら自分に近い部分があったりするものだと思うんですよね。

井上:同族嫌悪ですよね。

中郡:そうなんですよね。自分にすごく近い関係……例えば家族と肌が触れ合うのは嫌じゃないですか。

井上:特別、そうではありませんが(笑)。

中郡:あっ、本当ですか?(笑)。

井上:そんなに嫌ではないでしょ(笑)。

中郡:そういう感じで、自分が苦手だなと思うからこそ、本当の自分を、案外見出してしまうというか。

井上:みなさんも、嫌いなものをイメージして聞いていただけるといいですよね。

木村:みんな嫌いなところばかりを考えて、会場の雰囲気がすごく悪くなってしまいそうですが(笑)。なるほど。でも確かに大事ですよね。

自己実現している人はたぶん満足度が高く、できていない人は、絶対どこかに不満があって、嫌いな部分や自分がやりたくないことをやっているということがあるんじゃないかと。

中郡:やりたくないことは、「どうしてこれがやりたくないのか?」ということを、冷静に第三者的な視点で考える必要があると思うんです。それは絵に置き換えて考えてみると冷静に見られたりするじゃないですか。だから、バスキアのこういうところが自分は嫌なんだってわかったり。

木村:なるほど。

選択肢が多い時代だからこそ、自分に向き合うことが大切

中郡:バスキアの本も読んだし、映画も見ているんですよ。苦手だなと思うからこそ「自分がなにが嫌なのか?」ということを認識したくて。

木村:そういうことですよね。無関心は何もないけど、嫌いはやっぱり興味がある側ということですよね。

井上:「大卒や高卒で入社した企業に最後までいます」みたいな時代では、自分の嫌いなものに気付いたところで当て込まないといけなかったわけじゃないですか。そこが僕らの時代は、嫌いな自分を演じずに済むんだから、そうした象徴として、何が嫌なのかを認識していかなければいけないですよね。

木村:そうですね、確かに。そこは昔とはぜんぜん環境が違いますよね。これまでは1社に入ってどれだけ出世していくかという戦いでしたが、今は本当に多様性が求められていて、ぜんぜん転職してもいいし、フリーランスでもいいし、いかに自分のやりたいことに近づいていくか。価値観と環境の変化がありますよね。諦めなくていいという時代です。

中郡:今ここに出版社に行きたいと思っている方がいるのかどうかはわかりませんが、大手出版社は本当に離職率が低くて、ほとんど辞めません。入ったらずっとその会社にいるという人たちが大量発生しているんですね。そういう人たちは、あまり活き活きしていなかったりします(笑)。

(会場笑)

中郡:仕事を楽しんでいる感じはないけれども、辞める必要もないからいるような。

木村:そうすると、もしかしたら仕事で自分のやりたいことを成し遂げようではなく、仕事は生きるためにしていて、プライベートの時間を楽しみたい、そういう発想もあるのかと思っていると。

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