集中力のある人は、自分がやりたいことを分かっている人

木村和貴氏(以下、木村):次のテーマに移りたいと思います。今の話を聞いていくとおそらく、自分がどういう人間で何がやりたいかが必要であるということ。「自己実現」がキーワードになるということから、どのような状態が自己実現できている状態で、どのような状態であれば自己実現ができていないという状態なのか。

自己実現の定義や、何が自己実現なのかといった話を聞きたいと思いますが、自己実現というのはどうですか? 自己実現をするためにはとか、それは何なのかといったところで。

1つはおそらく、自己実現というためには「自己が何か」ということを、まず知らなければいけないのではないかと。ステップで言えば、自己認識から始まるのだろうかと。自分が何に興味があって、何をやりたいのか、何をやっていれば楽しいのか。そこの自己認識の仕方などはいかがですか?

井上一鷹氏(以下、井上):僕的にこの話をしたほうがいいと思ったのですが。僕はざっくり言うと、集中を測っている人間です。どんな人が集中するのかというと、先ほどお昼ご飯の食べ方などいろいろ言ったのですが、人ベースで言うと、「俺は何をしたい」とはっきり言えるやつは、集中が高いんですよ。

「また面倒くさいややこしいやつだ……」と思わないでほしいのですが、入山ではありませんが、一昨年高野山に行ってきたんです。「集中力を上げたい」といったら、「日本人で言うと、最初に集中で悩んだのは空海だ」ということを言い張っている。別に言い張る理由はないんですよ(笑)。

高野山に行って、住職に「どうすれば人は集中できますか?」という質問をプレーンに投げかけたときに「如実知自心」(にょじつちじしん)という仏教用語を教えてくれたんです。「如実に自分の心を知る」と書くのですが、1,200年前か、もっと前かもしれません。

彼は答えを持っていて、「集中できるやつは、自分が何をしたいかを知っている人間だ」という言い方をしています。

やりたくないことでがんばれるのは3ヶ月が限界

井上:脳神経科学をやっている人と話をしたときも、同じようなことを聞きました。ホルモンの話が一番わかりやすいのですが、「レポートをあと2時間で出さないといけない」というような、まるで「殺される」かのように考える状況。こうした状況で人間がアドレナリンを出してがんばれるのは、絶対に3ヶ月しか保たないらしいですよ。

3ヶ月までは精神病になる直前までがんばれるんですが、4年かけてそれに取り組めるというのは、ドーパミンというホルモンが出ている状態なんですね。もっともっと長く中長期に自分の人生をかけられるというのは、セロトニンという穏やかな状態になれるホルモンも出ている状態なのだそうです。

そうなると、自分が何をしたいかわからない人は、自分がしたいことに自分のリソースを張れていないので、結局納期のために仕事をしたり、「誰かが」「会社が、こう言っているからやらなければいけない」「社会要請上、給料をもらわなければいけないからこうしなければいけない」となると3ヶ月しか保たないし、長期的には集中できないんですね。

自己実現の話からかけ離れているかもしれませんが、やっぱり自分を知るということは、もっと細かく言えば、自分が何をしたいのかをちゃんと語れるようになって、それに自分のリソースを張るために、他のことを無理矢理にでも他の人に任す。「俺、もう経費計算は絶対にできないので」ということをちゃんと周りに言って、自分がやりたいことだけに注力するという、周りの環境を整えていくことが大事なのだと。

それによって、自分がしたいことに100パーセントのリソースを割けるようになって、2~3年から10年、20年とかかって、自己実現するんだと思っていますね。大丈夫ですか、嫌なやつじゃないですか。変なやつです(笑)。

木村:なるほど、いや素晴らしいです。

井上:お坊さんのようなことを言っていますね。

木村:集中力というのは、すごく短期的なことに使っていたイメージでしたので、4年間も集中するような長期的な尺度での使い方が、すごく興味深かったです。

「嫌いなこと」の逆張りから、本当にやりたいことが見つかる

井上:恋が4年しかもたないのも、ドーパミンのせいらしいですよ。こんな言い方をすると、『ホンマでっか!?TV』みたいになるんですが(笑)。

木村:まずは自己認識をして、自分がやりたいことをやれば長期的にパフォーマンスが上がると。その先に自己実現が待っているということですよね。

中郡さんは、編集の道にかなり突っ走ったわけじゃないですか。そうするとかなり自己認識ができていたのではないかと思うのですが、迷わずにそこに行けたのはなぜなのだろうかと。自分はそうなんだと思えたきっかけや、どういった考え方をするとそうなるのかというお話があれば。

中郡暖菜氏(以下、中郡):私の場合は、自分の嫌いなものや苦手なものというのを、「どうして自分はそれが苦手なのか?」「どうしてこれが嫌いなのか?」ということを、突き詰めていった感じですね。嫌いなものが世の中に多すぎて、冷静になるとやばいんですよ。

「横断歩道が嫌だ」「そこに貼ってあるwi-fiと書いてある貼り紙が嫌だ」といったように、小さなことがすごく気に食わないタイプなので。

木村:あの貼り紙の何が嫌なんですか?(笑)。

中郡:四隅の3点が押さえられているのに、最後の1点が押さえられていないじゃないですか。耐えきれない。

嫌いなことが多すぎるので冷静になってしまうと、生きていくのが辛い。「この床の青が嫌だ」といったように、いろいろなことがすべて嫌になってしまうから、「自分の嫌なことや苦手なことというのが、ものすごくたくさんある」ということをまず把握して、「でもこれだったら嫌じゃない」「これだったら許せる」というようなことを、探し出す方向に行ったという感じですね。

井上:ぜんぜん勝手な話をしてしまいますが、心理学をかじっている人事の人という特殊なカテゴリと仲が良くて、よく似たようなことをお話しされています。今の話は、すごくプレーンに聞くと、「あの人は嫌なことを避けてきたんだ」というように聞こえますが、実は違って。

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