石川善樹氏「働くことが生きがいの人は本当に少数」
“生きる”と“働く”が融合する時代の生存戦略

Work as life #1/4

LivingTech カンファレンス 2018
に開催

テクノロジーによる「暮らし」の変革を志す、第一線の経営者・クリエイターが集う「LivingTechカンファレンス2018」が開催されました。2020年から5年後の社会のあり方を考える「POST2020」をテーマに、10以上のセッションを実施。その中のセッション「Work as life」では、「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」の著者・山口周氏、面白法人カヤック・柳澤大輔氏、リデザインワーク・林宏昌氏、Campus for H・石川善樹氏、ダイヤモンドメディア・武井浩三氏が登壇し、現代人の働き方の“これまで”と“これから”をディスカッションしました。

変わりゆく「Work as life」を見つける

武井浩三氏(以下、武井):それでは、僕がすごく尊敬する4名の方々を紹介させていただきたいと思います。面白法人カヤック代表、柳澤さん。

ご存知の方が多いと思うのですけども、鎌倉に本社を置く唯一の上場企業として、ITのサービスやスマートフォンのゲームなどを作っていらっしゃる会社を、ちょうど20年やっていらっしゃるということです。有名なのが、サイコロで給料を決めるという「サイコロ給」。これは僕もすごく好きな制度で、まさに面白法人という感じですね。

柳澤大輔氏(以下、柳澤):ありがとうございます。

武井:どうしましょう。ご自身のことをもうちょっとお話します? 

柳澤:とくにはないですね。サイコロ給は、外国の方が来ると「お前らクレイジーだ」ってみんなびっくりしますね。

武井:ありがとうございます。それではお二人目、コーン・フェリー・ヘイグループ、シニアクライアント・パートナーの山口周さんでございます。山口さんは最近、著書の『劣化するオッサン社会の処方箋』という本がめちゃくちゃ売れていて。

劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか (光文社新書)

その前の書籍が『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』という本。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)

これは僕も読ませていただきましたけど、むちゃくちゃ面白くて、アートが今世界から失われていると。

そういったかなり独特な切り口というか、歯に衣着せぬ語り口調が僕はすごく好きで、本日お声がけさせていただきました。よろしくお願いいたします。

そして3人目が林さん。リデザインワーク代表の林さんで、もともとリクリートの中で、働き方変革推室長をされていた。まさに働き方のプロフェッショナル。今はそれを事業化して、会社を立ち上げて事業を行っていらっしゃると。楽しみにしております。よろしくお願いします。

そして最後に予防医学研究者の石川善樹さん。健康に関する書籍などをたくさん書かれていらっしゃるので、ご存知の方も多いかと思うのですけども、働くというか生きるというか、人間とは何なのかとか。掘っていくと哲学みたいになってしまうのかもしれないですけど、そういった領域の第一人者だと僕は思っております。本日はよろしくお願いします。

ということで、僕自身の紹介を簡単にさせていただきます。ダイヤモンドメディア株式会社の武井と申します。この「Work as life」のセッション。僕がなぜモデレーターとしてやらせていただいているかと言いますと、去年「ホワイト企業大賞」という賞を会社でいただきまして。これは働いている人か関わっている人が、いかに幸せに生きるかという、経済的な指標ではない指標で選ばれているホワイト企業の賞です。

自分たちでいうのも恥ずかしいですけどね。うちの会社は働く時間、場所、休み自由。給料全部オープン。上司部下なし。そんなことを10年以上やっている会社でございます。ということで、この豪華な4名と私とで「Work as life」のセッションを始めてまいりたいと思います。改めまして、よろしくお願いします。

(会場拍手)

「生きる」と「働く」が融合するのはなぜ?

武井:ではさっそく問1。全体で4つの問いがあります。1つの問いがだいたい15分ぐらい。みなさんで、好き勝手に言いたいことを言っていただきたいなと思っております。問い1「『生きる』と『働く』を区別する時代から、融合する時代に変わるのはなぜか?」。

「Work as life」のワークライフバランスって、今まではそう言われていたのですけども、バランスをとるのではなくて、そもそもこれは1つではないかって。そんな考え方に近づいている昨今だと思うのですけども、このあたりどなたに口火を切っていただくのがよいかな。ぜひ林さん、よろしくお願いします。

林宏昌氏(以下、林):まず口火を切らせていただこうと思うのですけど。まず、僕が思っているのは、働くということが、色や形や重さみたいなものが、本当にバラバラになってきているから、こういうことになっているのだと思いますと。

具体的にどういうことかというと、働くことの場所や時間、どれぐらいの量働くといういことが、これまではわりと一律的だったものが、それをバラバラに設計していける社会になってきたなと思っていまして。

そうすると、まずどう生きていきたいのか、というのが本質的にあって。どう生きていきたいのかということの中で、どれぐらい働くのかとか、どこで働くのかとか、そういうことを自分の中で決めていくことになると思うんですね。

だから報酬をとにかく上げていきたいという考え方もあるでしょうし、いやいや地域で生きていくんだということでいけば、もっと生活コストも下がるので、そんなにがんばって働かなくてもいいじゃないかとか。あるいは一時期、今は思いっきり働くんだけど、将来的にはもっと子育てしながら働くとか。あるいは大学に行って学び直すとか。

そういうことを自分の人生デザインの中で、働くということの量、バランス、時間、どこでやるのかみたいなことを含めて、じゃあどこで働くのかということを描いていくというか。区分するというよりは、そういうことになるのかなと。

これまではわりと一律だったと思うので。朝行って夜帰ってきて、仕事以外の時間がライフみたいなかたちだったので。土日、あるいは平日の夜、だいたい夜遅くまで働いていると、飯・風呂・寝るみたいなことしかなかったという生活から、どういう生活をしたいのかというのがまずあって。

じゃあ、どれぐらい働くの、どこで働くのみたいなことを考えられるぐらい、働くということが流動的で、自分で選択できるような社会になってきたんじゃないかな、というのが僕の感覚です。

武井:はい。ありがとうございます。口火を切っていただきました。

人生100年時代の到来が関係している

武井:続いて今のお話に被せたい方いらっしゃいますか? 共感なのか、はたまた違う切り口なのか。

石川善樹氏(以下、石川):違うかどうかわからないですけど、そもそも、ほとんどの人は働きたくないと思うんですよ。働くことが生きがいであり、やりがいである人って、意識高いって言うのかわからないですけど、本当に少数だと思うんですよね。ただ、そういう人を含めてみんなで「Work as life」の時代になってくるのかということを考えると、おそらく、それは人生100年時代が到来していることと関係しているんだろうなと思うわけです。

すべての人が、転職をするという前提で生きなければいけない時代だと思うんですね。1つの会社に勤め上げるということが、もう難しい。人生100年時代だと、70歳とか75歳まで働かないといけないので、そうなると転職を何度かしないといけないと。

つまり、どういうことかというと、日中働いているということに加えて、転職先を探さないといけないという、辛い時代が到来しているんじゃないかなというのが、普通の人の普通の感覚がどうなのかなと思うと、僕はそういうふうに思いますね。

「Work as life」という意識が高くて、ジーンズはいているわれわれのような、そういう人の話でもあるし。そうでない人にとっても、本業とは別のいわゆる余暇の時間も、副業というか転職先を探さねばならないという、そういう天国と地獄が両方混じっているということじゃないですか(笑)。

武井:すばらしい。

貨幣を稼ぐことだけが「働くこと」なのか?

柳澤:みなさんが考えてないようなことを言ったほうがよいだろうなと思っていたんだけど、何も思いつかなかったので、似たようなことしか言えなさそうなので、ちょっと違う観点で話したいのですが。鎌倉に「まちの社員食堂」といって、市内で働く人だけが利用できる食堂を共同で作ったんですよ。市役所とか鎌倉の会社で。

でも「働く」という形態がそもそも多様化しているなと改めて気づいたんです。きっと、働くことの定義を捉え直さなければいけないんだろうなと思ったんですね。

一生懸命、職を突き詰めるというのは誰でもやったほうがよいと思っているんです。ニートなら、ニートを突き詰めるとか。突き詰めることで、何か人間が昇華されていくというか。僕はそういう本が大好きで、図書館の本を盗み続けた男の本とか、馬券の偽装を続けた人の本を勧めたことがありますけど、あれすごくおもしろかったでしょ。

馬券の印刷会社の社長が、ずっと馬券の偽装を続けるノンフィクションがあるんですよ。20年間ぐらいやったのかな。馬券が電子化されるまで。

月から金まで、朝から晩まで、規則正しく馬券を偽造し続けて。偽造した当たり馬券を使って、土日に換金して、また競馬に突っ込むんですよ。それを延々とやっているんですよ。その繰り返しの本を読んだ時に「ああ、これも1つの職業だな」と。

武井:もう完全にフロー状態ですからね。

柳澤:何かを突き詰めるというのは、おそらくやったほうがいいんですけど。働くという定義を変えなければいけない時代になったというより、そのほうがおもしろいと思っているだけなんですけどね。そういうことなのかなみたいな感じ。

武井:なるほど。確かに貨幣を稼ぐことだけが、働くことなのかっていう話ですかね。

石川:ちょっとまた別のことを話していいですか? 仕事って何だろうってことを今、柳澤さんの話を聞いていて思ったんですけど。これはダジャレのような言葉遊びのような話ですけど、仕事って僕は4つあると思うんですね。事に仕えるという意味での仕事。私の事という意味での私事。志と事と書いて志事。そして死ぬということ。

人生には4つの「しごと」があるとした時に、たぶんこれ一部重要だと思うんですけど、一昔前までは、そういう事に使えたり、私事であったり、志の事というのは、自分の職場で全部満足できたと思うんですよ。今の時代は事に仕えるという意味の仕事はしているけど、私事であったり、志の事というのが、会社で充足できないから「Work as life」なんじゃないかなという投げ込みです(笑)。

武井:スイッチ入ってきましたね(笑)。山口さん、いかがですか?

ケインズが提唱した「1日3時間労働」の真意

山口周氏(以下、山口):働くということなんですが、みなさんご存知かと思いますけど、20世紀の初頭にケインズという経済学者がいたんですよ。彼は1930年に、世界恐慌の真っ只中なんですけど、公演をやっていて、孫の世代つまり僕らのことなんですね。

孫の世代の経済的可能性という公演をやっていて。どういうことを言っているかというと、「今から100年後には、1日3時間しか働かなくてよい社会が来るだろう」って言っているんです。

当たり前のことなんですけど、生産性がどんどん上っていって、世の中に必要なものが満たされる労働投入量が減っていけば、今の労働量の半分で充分ニーズは満たされるという予言をしているんですね。その予言は、経済学者の人たちは外れたという評価をしているんですけど、僕は「ちょっと待って」と思っているんですね。

ケインズはその公演で何を言っているかというと、3時間になるのは、もう当たり前の話なので、それを前提にしていろいろなことを言っているんですけど、大きな社会問題が起こると言っているんです。それは何かというと、暇に耐えられない人が出てくると言っているんですね。ケインズの言っていることの行間を噛むようにして読んでいくと、ケインズの言いたかった結論は、行間に書いてあるんです。

それは「論理的に言ったら3時間になるだろう」「ただ、恐らくならないだろう」と。なぜなら人は余った時間に耐えられずに、世の中に必要ないような余計な仕事をやっちゃうだろうという結論なんです。世の中にとって意味のない仕事にはやりがいが感じられないので、意味のない仕事に携わる大勢の人が、仕事を通じて心を病むことになるだろう、ということの含みを言っているんですね。

僕はこれ予言が当ったって、むしろ言ったほうがいいかなと思っていて。世の中に必要なものがもう満たされた状態で、しかもそれを更新していく。無理に捨てさせるとかしないで、普通に更新していくということをやるんだったら、恐らくケインズの言ったとおり、1日3時間とか2時間とか働けば、充分維持できるはずの社会において、そっちのほうに行くのか。あるいは、そっちに行って、6時間とか7時間とか余った時間は遊ぶのか。

そうすると遊びが恐らく仕事になるはずなんです。例えば、今は貴族が狩りとかやるわけですけど、昔は狩りを仕事でやっていたわけです。あるいはガーデニングって遊びでやっているけども、昔は畑を耕すというのは仕事でやっていた。

さっきの柳澤さんが言っているのと近いポイントなんだけど、恐らく世の中に必要なニーズというのは、基本的に2時間とか3時間で満たされるとなった時に、遊びと仕事が融合していくということで。

そこで世の中にどう関わっていくかということが、むちゃくちゃ大きいテーマになってきて。そこがちゃんと作れない人というのは、やっぱり心が病んじゃうんだと思うんですよね。というのがちょっと思っていたことなんです。

武井:なるほど。

生きることは夜這うこと?

石川:また投げこんでいいですか?(笑)。100年前のケインズという話で、ちょっとピンと思い出したのが、100年前の日本人にとって生きることはなんだったのかというのを、すごく端的に示している民俗学者の宮本常一さんの『忘れられた日本人』という本があって。

忘れられた日本人 (岩波文庫)

これは百数十年前の日本人の普通の人たちの普通の暮らしを、丹念に記述している本なんですよ。例えば、田植えの時に女たちは何を話しているのかとか。すごくおもしろいんですね。例えば、どうして農家の人は娘を売るときどんな気持ちなのかとか。

柳澤:100年前に書かれたんですか? 

石川:いや、書かれたのはもうちょっと後で、昭和の中ごろに書かれた本なんですけど。そのころ生きているおじいちゃんや、おばあちゃんに話を聞いているという。

例えば、農家の人がどうして娘を売っちゃうのかというと、本当は売りたくはないんです。でも、食うものがなくてひもじい思いをしているのを目の前で見るのが何よりも辛いと。だったら売ってでも、ご飯を食べさせてもらったほうがよい。そういった苦渋の決断になるという話なんです。読んでもらったらおもしろくて、そういうふうなのがいっぱいあるんですけど、基本的には、夜這いの話が中心です(笑)。

(会場笑)

石川:みんなの関心事は夜這うことなんですよ。「夜這うas life」なんですよ。「生きることは夜這うこと(笑)」。田植えの最中、女たちは夜這いの話をし、男たちは急いで飯を食って、山を越えて夜這いに行くわけですよ。だから、昔の人は働いていてヘトヘトかというイメージがあったんですけど違うんですよ。頭の中はもう夜這いでいっぱい(笑)。

武井:すごいのを投げこんできましたね(笑)。

石川:「夜這うas life」から「Work as life」へと。100年経つといろいろありますねという(笑)。

武井:じゃあ、そういったところで、次の問いに強制的にいきたいと思います(笑)。

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