2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
エストニア移住と教育(全1記事)
リンクをコピー
記事をブックマーク
齋藤侑里子氏:ご紹介にあずかりました、筑波大学4年の齋藤と申します。移住というほどではなく、半年の留学でした。その中でいろいろな人たちと出会い、いろいろな機会をいただいて、今はエストニア生まれの「Robotex」という団体の日本支部の立ち上げを行なっています。10分しかないので、足早ですがお話しさせていただきます。
1996年生まれの22歳です。人文系で、もともとは大学2年生のときに「日本からシリコンバレーへ行ってみよう」と思い、そのまま帰ってきてから、日本マイクロソフト(のスタートアップ支援チーム)やインバウンド系のスタートアップでインターンをしていました。
それこそAMPさんではないですけれども、メディアで見た「エストニアが、ブロックチェーンですごいらしいぞ」という記事の情報を、勝手に鵜呑みにしまして。それで留学に行ってきました。
現地では、エストニアのアントレプレナーシップの授業を1個だけとっていました。授業を取ることが目的ではなく、現地のスタートアップや多くの資源、人に触れるための留学でした。基本的には興味の赴くままにいろいろなスタートアップのインターンへ参加したり、自分でスタートアップイベントを企画したりしていました。
スタートアップイベントは日本人では初の企画でしたが、エストニア最大のスタートアップカンファレンスの正式イベントとして採用頂き、当日は会場にSkypeのファウンダーや福岡市の方々、世界6カ国から100名以上の方に参加いただきました。
今回は移住についてフォーカスしていますが、さっきのセッション1で、木村和貴さんがお話をしていたみたいに、「エストニアは電子国家制度で起業がしやすかったり、登記ができたりして新しいビジネスチャンスが生まれるんだったら、電子国民になればいいんじゃないか?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
スタートアップビザやデジタルノマドビザを検討したり、「そもそも向こうのスタートアップでいろいろな雇用があるから、転職してしまえばいいんじゃないか?」という方々や、「電子国民になれば(それが)『移住』なんじゃないか?」みたいな話もあったりすると思います。いろいろな情報がすごく錯綜しているので、一つひとつ話していけたらいいなと思います。
スタートアップビザは、エストニアにスタートアップを登記する方々のために、エストニア政府がすでに始めているビザの制度です。デジタルノマドビザとはまったく別物なんですけれども、非常に審査が厳しくて……。エストニアにしっかりとキャッシュを落とせるようなスタートアップでないと、基本的には通過できません。私の日本人や外国人の友人も申請していましたが、通過率は約半分。友人は落ちてしまったと言っていました。ノマドビザは、今政府が構想している段階だけで、正式発表されていません。
「スタートアップに転職してみるか」という話もあると思います。エストニアに開発拠点を置くスイスの不動産ブロックチェーンのスタートアップにいただいていた内定が実はあったのですが、給料は月収14万ユーロで、日本円で約17万円でした。
エストニアそのものの雇用の平均年収は非常に低いものの、その平均値をぐっと引き上げているのが、IT雇用人材の給料です。それ以外の人たちは、本当に10万円台というような給料水準の中で生きているので、けっこう国内格差が大きいのが現実なのかもしれません。結論としては「電子国民で『移住』というのはできません」というかたちになります。
では、「e-Residentは何ができるんだろう?」というと、先ほど木村和貴さんもお話ししていたとおりで、「法人登記、電子署名がそのままオンラインでできてしまうよ」というところです。「形式上(会社を)作ったんだけど、やり方がわからない。だって、ここにいても何もできないから」というような、会社を立てているだけの人たちもけっこういます。私もその一人です。
「ビザを取得するためにe-Residencyを取っていたら、ちょっと有利になるんじゃないか?」と思うかもしれません。でも、実は関係ありません。移住は理由があればできるんですけど、EUは90日しか滞在できないので、e-Residencyではできません。
電子投票もできません。なぜなら、「電子国民」であって「国民」ではないからです。エストニアでは、交通機関が国民に無料で開放されているんですけれども、こちらも電子国民でしかないので「外国人はエストニアに行ったらしっかりお金を払って、乗り物に乗りましょう」ということになります。
e-Residencyを使った法人登記には、いろいろなメリット・デメリットがあると思うんですけれども、今日の登壇者のハッラステ・ポールさんがそのような会社をされていますので、エストニアの法人登記に関しては、ポールさんに問い合わせてはいかがでしょうか(笑)。「日本からEU市場にアクセスしたい」という方には非常に有意義だと思いますが、ただ「会社を立てよう」くらいだ正直なところメリットはないと聞きました。
続いて「移住について」。治安は非常に良いです。例えば、パソコンを置いたままふらーっと(席を離れて)行くのもぜんぜん大丈夫で、私もよくやっていました。
また、もともとロシアに占領されていた国だったので、ロシア語の話者がまだまだいるものの、第一言語はエストニア語で、英語はみんな喋れてしまいますね。とくに若い人たちは英語ペラペラです。
不便だったのは、Amazonがエストニアにはないので、配送に輸送料がかかったりとか、冬は寒すぎて日光があたらないのでビタミンDを取らなきゃいけなかったりとか、そういうこともありました。日本人は150人以下の非常にクローズなコミュニティがあるので、おかげさまで私もいろいろ助けられました。
教育についてですけれども、エストニアがロシアから1991年に独立して「さあ、国を担う人材をどう作ろうか?」というときに、もともとロシアのIT開発の拠点あったため、多くの技術者やノウハウがあったんですね。
また、ゼロから教育を作るときにカリキュラムもなかった中で、先にちょっと進んでいた、お隣のフィンランド型教育を真似するのが容易であったとか、いろいろな観点がありました。そういったところから最先端の「STREAM教育」……Science・Technology・Robotics・Engineering・Arts・Mathematicsというような、理科系教育への投資する方向性にシフトしまして、IT人材が育つ土壌が作られたとのことです。
移住がテーマだったので、語学についてもお話ししますと、日本人学校はありません。私の友だちもインターナショナルスクールか現地校に通っています。
私はエストニアで産学連携教育をしている「Robotex」の日本支部立ち上げを行なっています。政府の支援のもと、「ロボットフェスティバル」が1年に1回行われます。その他には、公立学校の教員のみなさんの教員養成カリキュラムを作っていたり、起業家スタートアップトレーニングを国と大中小さまざまな規模の企業や起業家とともに行っていたり、ロボットスクールをやっていたりします。
Robotexは「年齢に関係なく、誰でも主体性を発揮できる環境や、子どもたちが小さい頃からいろいろな大人やツールと関わって、アントレプレナーシップやクリエイティビティを伸ばせるような環境を作っていこう」という取り組みをしています。いろいろなスポンサーに支えられて、今は15ヶ国で展開しており、50を超える国からの参加者が関わるような教育団体になるまで、毎年成長してきました。
トークテーマも、非常にさまざまです。子ども向けの団体とは言っても、社会人や大企業の方々、スタートアップなど、いろいろな方々と一緒に、これからの社会を考えていけるようなコミュニティを作っています。AMPさんにもいろいろとご協力いただいて、2019年の日本での初めての活動に向けて、仲間や支えてくれる企業のみなさんを今探しているところです。
詳しいところは、あとでホームページをご覧いただければ幸いです。駆け足ですが、移住と教育というところでお話しさせていただきました。ありがとうございました。
(会場拍手)
関連タグ:
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.21
40代〜50代の管理職が「部下を承認する」のに苦戦するわけ 職場での「傷つき」をこじらせた世代に必要なこと
2024.11.20
成果が目立つ「攻めのタイプ」ばかり採用しがちな職場 「優秀な人材」を求める人がスルーしているもの
2024.11.20
「元エースの管理職」が若手営業を育てる時に陥りがちな罠 順調なチーム・苦戦するチームの違いから見る、育成のポイント
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.19
がんばっているのに伸び悩む営業・成果を出す営業の違い 『無敗営業』著者が教える、つい陥りがちな「思い込み」の罠
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.11
「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは