2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
税理士法人三部会計事務所 長谷川敏憲 氏(全1記事)
提供:サイボウズ株式会社
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長谷川敏憲氏:みなさん、こんにちは。税理士法人三部会計事務所の長谷川と申します。今日は「現場とシステム部門が共に育てるシステム」というテーマで、kintoneの事例発表を行います。どうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
まずはじめに、自己紹介をさせてください。改めまして、税理士法人三部会計事務所の長谷川と申します。福島県から参りました。17年ほど地元のITベンダーでSEとして働いたのちに、縁あっていまの事務所でお世話になり、今年で6年目になります。
会計事務所勤務とはいっても、会計事務所職員っぽい仕事はしていません。私のミッションは「ITを使った業務改善でみんなを幸せにする」。そのために社内はもちろん社外においても、積極的に業務改善の取り組みをしています。例えば、kintone Café 福島の創立メンバーとして、地元のみなさまとkintoneの活用事例を共有しながら、業務改善について一緒に勉強しています。
趣味はダイエットです。特技はリバウンドです。ご覧のように、毎年体重を減らしたり増やしたりと、順調に活動しています。現在は次のリバウンドに向けて、ダイエットをがんばっているところです。
事例のお話に入る前に、もう少しお時間をいただき、事務所の紹介をさせてください。私の所属する組織は税理士法人三部会計事務所と申します。福島県の郡山市に事務所があります。昭和40年、現在の会長が開業し、今年で創立54年を迎えます。
従業員数はグループ全体で83名と、東北地方でも有数の規模の事務所です。私たちはそうした規模のメリットも活かしながら、経営にまつわるご支援や人にまつわるご支援といったさまざまなサービスメニューを取り揃え、中小企業の良き相談相手となるべく、日々業務に励んでいます。
とはいえ、こうしたさまざまなサービスメニューも、会計事務所の主要業務である税務・会計支援を基礎にしています。
こちらが会計事務所の主要業務です。中央の月次監査や決算申告といった税務・会計支援、年末調整や確定申告といった周辺業務、そして、それを支える基礎情報で構成されています。
私が入社した6年前は、こうした主要業務をMicrosoftのAccessやExcelを使って管理していました。
一見、何の問題もなく業務が回っているように見えたんですが、実はさまざまな課題を抱えていました。例えば、マスタ情報を業務ごとにバラバラに持っているため、内容に変更があると対応に手間がかかっていました。もちろん抜け、漏れといったミスも発生します。その結果、現場ではシステムに対する不信感が高まっていました。
例えば、長い時間をかけて、さまざまな人がさまざまなやり方でシステムを構築した結果、内容を知っている人がいなくなり、ブラックボックスと化していました。
そのため、改修の依頼をいただいても、まずはシステムの解析からといった状況で、対応に時間がかかっていました。その結果、現場では「システム改修に時間がかかる」と不満が募り、私は疲弊していきました。
例えば、AccessやExcel特有の問題として、「万が一ファイルが破損してしまったり、誤ってファイルを削除してしまったりした場合、データも一緒に消えてしまうのではないか」という不安も抱えていました。
そして、将来に関する課題も抱えています。先ほど「私たちは中小企業の良き相談相手となるべく、日々仕事をしている」と話しました。そのため、社長のお話を聞くということは、とても大事な仕事の1つです。
ですので、従業員のみなさま、日中は経営者のみなさまとお話をするために、ほとんど外出をしています。現在は会社に戻らないと仕事ができない環境ですので、従業員のみなさまからは「外出先でも仕事がしたい」という要望をいただいていました。将来的には、こうした場所に制約された環境を少しでも減らしていきたいと考えていました。
こうして見ると、「中小企業あるあるの課題かな」という感じがします。今日会場においでのみなさまの会社でも、同じような課題を抱えているところも少なくないのではないでしょうか。
こうした課題を抱えていたため、要望をいただいても対応に5日ほどかかっていました。そういった状況ですので、要望をお願いしたほうも何をお願いしていたのか忘れてしまうということもめずらしくない状況でした。とはいえ、対応しないというわけにもいきませんので、なるべく早く対応してあげようと、私の残業時間も年々増えていく一方でした。
こうした課題を「なんとかしたいな」と考えていた2015年、kintoneに出会いました。お試しでkintoneを触ったとき、直感で「これはいける」と感じましたが、どうしても導入に踏み切れない課題が1つありました。
それは、kintoneがリレーショナルデータベースではないということです。リレーショナルデータベースとは、あるアプリに登録・変更した内容が、自動的に別のアプリに連携される、そういった仕組みのことです。
いまでこそ便利なプラグインによって、こうしたリレーショナルデータベース的な動きというのはある程度カバーされていますが、当時の私にとっては大きな課題でした。いま思えば、「システムはこうあらねばならぬ」といった固定概念にとらわれていたのかもしれません。
お試しを3回ほど繰り返し、延べ1年ぐらい検討を進めるなかで、つくづくあることを実感しました。それは、kintoneの持つ圧倒的なスピード感です。中小企業の業務改善において、スピード感はとても大事な要素の1つだと私は考えています。kintoneは、この圧倒的なスピード感を手に入れるために、あえていまのようなかたちを取ったのだと確信し、2016年に導入を決定しました。
導入を決めたとはいえ、当時対応できるのは私1人という状況でしたので、月次監査や決算申告といった本丸部分に着手する度胸はありませんでした。
ですので、年末調整や確定申告といった周辺業務から、導入を進めることにしました。
導入を進めるにあたって、3つの工夫を意識しました。1つ目です。プラグインの積極的活用です。
こちらの例では、印刷プラグインとタブ表示プラグインを使っています。印刷プラグインでは、登録されたデータを定型の帳票やExcelに出力することによって、情報活用の促進を狙っています。タブ表示プラグインでは、どうしても項目の多くなってしまうお客さまの情報を、内容によってグループ化して見やすく改善しています。
こちらは、年末調整や確定申告でのプラグイン導入例です。年末調整や確定申告のみならず、税金にまつわるお仕事、つまりは会計事務所のお仕事のほとんどがそうなのですが、そうしたものは厳密に期日が定められています。
その期日を超えてしまうと、延滞税といった余計なお金が発生し、お客さまにご迷惑をおかけしてしまいます。そのため、案件の期日管理を厳密に行う必要があります。
とはいえ、確定申告の時期など、600件を超える案件を約1ヶ月という短い時間で対応しなければならず、案件の状況が一覧でパッと確認できるようになっていないと、思わぬ事故につながってしまいます。おかげさまで今年の確定申告も無事に終わり、私、今日ここに来れてホッとしております。
こういった課題をkrewSheetで解決しました。krewSheetを使うことによって、案件の状況を一覧でパッと確認できるようになり、さらには、入力のしやすさも改善しています。
2つ目です。kintoneを業務以外の楽しいことに使うことで、より親近感を持ってもらおうと考えました。
先ほど「会計事務所の職員は、日中ほとんど外出している」とお話ししました。ですので、自然とお昼ごはんも外食が多くなります。したがって職員のみなさんは、けっこうおいしいお店を知っているんですね。そういったみなさんの知見を共有できたら楽しいんじゃないかなと考え、社内用の食べログを開設しました。
私自身も知らなかったおいしいお店をいろいろ教えていただき、職員のみなさまも楽しみながらkintoneを触ることで、親近感を持ってもらったと感じています。
3つ目です。カスタマイズの活用です。予算の許すかぎりいろいろなプラグインを使って、kintoneをより便利に使ってもらおうと工夫していますが、どうしても手の届かないところが出てきてしまいます。
例えば、こういった案件ごとの進捗率を一覧で見たいといった機能は、kintoneの標準の集計機能では難しい分野の1つではないでしょうか。そうした要望については、カスタマイズで対応しています。
このように、案件の進捗状況をグラフで可視化することによって、進捗管理がよりやりやすくなったのではないかと感じています。
このようなかたちで導入を進めてまいりましたが、実はまだ現在のところ、本丸部分に着手できていない状況です。ですが、いままでの導入で確かな手ごたえを感じていますので、これからはいよいよ本丸に着手したいと考えています。
さて、ここからは導入効果についてお話しします。kintoneの導入前は、要望をいただいても対応するまでに5日かかっていました。
これが現在では、ほぼ1日です。ほとんどの要望を目の前で対応し、依頼者の方とお話をしながら微調整をして進めていく、そういったかたちで対応しています。
そうした結果、私の残業時間も月平均15時間と半減し、さらには全社的なIT環境の整備といった、いままで時間がなくて手をつけられなかった重要なお仕事、そういったものに着手できるようになりました。
導入前に感じていたとおり、圧倒的なスピード感を持って業務改善を進めることができました。そして、この圧倒的なスピード感が、会社にさらに良い効果をもたらします。
現場の方の目の前で要望をかたちにすることにより、現場の方からは「こんなことできないの?」「もっとこんなことがしたい」、果ては「自分たちの手で作りたい」。そういった自分たちの手で業務を改善していこうという意識が芽生えました。システム部門は現場の方とのコミュニケーションが密になることによって、より一体感が増しました。
この2つの相乗効果によって、「現場とシステム部門がともにシステムを育てていくんだ」という関係性が生まれました。この関係性の変化こそkintone導入の最大の効果だと、私は感じています。
現場の方もシステム部門も、もちろん経営者のみなさまも、「自分たちの仕事をより良くしたい」という思いは同じはずです。そうしたみんなの思いをつないでくれるのがkintoneだと、私は信じています。
kintoneを導入することによって、より良い仕事を共に創っていく。そういった共創社会が実現することを願って、私の事例発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
サイボウズ株式会社
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