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あの著者と語る、『開運文禄堂』 ~なぜ日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛されるのか?~(全4記事)

任天堂と特許を争ったフィンガースポーツ実現の夢 46歳で「包帯パンツ」をヒットさせた男のチャレンジは続く

2019年2月8日、文禄堂 高円寺店にて「あの著者と語る、『開運文禄堂』 ~なぜ日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛されるのか?~」が開催されました。バラエティプロデューサーの角田陽一郎氏がヒット本の著者を招き、“人生と本の醍醐味”を聞き出すトークイベント第2回のゲストは、『日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由(ワケ)』を刊行したばかりの野木志郎氏。俳優のロバート・デ・ニーロや歌手のビリー・ジョエルなど、国内外の著名人にも多くのファンを持つ「包帯パンツ」の生誕秘話を語りました。最終回となる本記事では、「包帯パンツ」のような強いコンテンツを見つけるにはどうすればいいかを語った野木氏のエピソードを中心にお送りします。

ずっと続けていけるものがあるなら、それが最高のコンテンツになる

質問者2:野木さんへの質問なのですが、いろんな人に愛されるためにはコンテンツがないとダメなんでしょうか。野木さんには包帯パンツという最高級のコンテンツがあったから(愛されたの)で、コンテンツを持たない人には応用が利かないのでしょうか?

角田陽一郎氏(以下、角田):いい質問ですね。

野木志郎氏(以下、野木):僕にはこの「包帯パンツ」というコンテンツがあったこと自体がすごくラッキーで、これが一人歩きをしてくれたんですね。本にもそういうことを書きましたが、僕は誰でもそういったものを見つけだすことができると思っています。探し方ひとつで見つかるものだと思うんですね。

自分が10年とか20年、ずっと続けられるかどうか。もし続けているものがあるのであれば、僕はなんでもいいと思っているんです。それを研ぎ澄ましていく力というのは、やはり自分1人でどれだけ磨けるかですね。それを本当に自分のコンテンツにしたいのであれば、自分で磨けばいいと思うんですね。

いろんな条件が重なってきて、今はそれをやめているということは、本当の自分のコンテンツじゃかったんだと思うんですよ。だから、それ自体はどんなことでもいいと思うんですね。

なにかの本で読んだのですが、牛乳瓶の蓋が好きな男の子がいて、ずっとそれを集めていたそうなんですね。お母さんには「牛乳の蓋なんか集めるのはもうやめなさい」と言われているんだけど。

角田:あれ、乾くと臭くなったりしますからね。

野木:そうそう。ほんで、グニュグニュになったりする。だけど、それを集めている男の子は、どこの牛乳会社のは紙質がよくて、別の会社のはすぐにふやけてグジョグジョになるなんてことが全部わかるんですよ。しかも、それを語れるんですね。牛乳の蓋だけで。だから、好きになるということは絶対大切やと。それを徹底的に好きになっていったら、絶対になにか自分で磨けるものが出てくるということが、僕の考えなのです。

46歳で「包帯パンツ」を見出すまで

野木:コンテンツというのは、他人に「あなたはこれがいいんじゃない?」と言われたり、「これが儲かるんちゃうかな」なんてことはどうでもよくて。極端な話、死ぬまで続けてもいくぞと思えるくらいのものがあれば、たぶんそれは磨けるコンテンツなんだと思う。

角田:いいことを言いますね。

野木:あ、いや、本に書いています(笑)。エッセンスだけやけどね。

角田:たしかにそうですよね。質問を受け継いでさらに質問すると、野木さんは包帯パンツを何歳のときにみつけたの?

野木:46歳かな。

角田:僕がTBSを辞めた歳だ(笑)。じゃあ、45歳まではみつかっていなかったんですか? 探していたのか、あるいはあったけど変えたんですか?

野木:その当時はどれがいいかわからへんかったので。4つありました。

角田:4つ。それを聞いてもいいですか?

野木:1つ、絶対に極めようと思っていたのはパペットです。

角田:パペット。「パペットマペット」のパペット。

野木:パペットが僕、大好きで、あっちこっちのパペットを買って、ここのは使いやすいな、ここのは使いにくいなと。

角田:使うということは、パペットで形態(模写)をやるんですか?

野木:オペラのマネを。

角田:今、あると思ってちょっと・・・・・・。

野木:それはようやらんわ(笑)。それで、もう1つは紙芝居です。紙芝居を極めたい。

角田:やっぱりいいですね、野木さんはおもしろい。パペットやら紙芝居やら、普通の人が極めようとするものじゃありませんよね。着眼点がいいですよね。

野木:なんかそうなんですよ。

一番やりたかったのは、実はフィンガースポーツだった

野木:紙芝居と、あともう1つあったような気がする。そうだ、フィンガースポーツといって、指でするスポーツを考えていたんですよ。

角田:フィンガースポーツというスポーツを発明しようと思った?

野木:そうそう、ほぼ発明できて、特許の申請もしました。フィンガースポーツは、FIFAという国際バスケット連盟の理事のところまでプレゼンに行って、「おもしろいから国際特許取りなさい」と言われました。

角田:それって、おはじきのようなことをやったりするんですか?

野木:もっとかっこいいんですけどね。僕の場合は。

角田:すいません、ごめんなさい。

野木:そういうものを考えていて、全部で4つくらいあったんです。

角田:4つめが聞きたいよ。今。

野木:あ、いや、それと包帯パンツです。

角田:なるほど、4つめが包帯パンツか。

野木:この4つでスタートさせました。実は僕、この包帯パンツが一番おもろなかったんですよ。

角田:包帯パンツがね。たしかに今3つ聞いた中では、フィンガースポーツが一番やりたいですよ。

野木:でしょう? めっちゃおもろいですよ。

角田:めっちゃおもしろいでしょう!(笑)。

野木:ユニフォームについて、NBAまで話をしに行きましたもん。指にユニフォームを着せて、バスケットボールを指で挟むんですよ。ミニチュアのゴールに向かってこうやってヒューンと飛ばすんです。

角田:なるほど、それで戦うわけだ。

野木:戦うというんじゃなしに、フリースローコンテストのようなもんです。

角田:あー、はいはい、なるほど。たしかにおもしろいわ。ダーツの指版だ。バーなんかでもできるから、そんなに面積もいらない。大人たちが遊べそうですもんね。頭いいですね。

野木:おもしろいでしょ?

角田:おもしろい。

(会場笑)

フィンガースポーツで特許を取ったんですか?

野木:あのね、実は任天堂とぶつかったんです。任天堂がよく似たやつを先に出されていたんです。こんな分厚い特許のやつ。僕はこれが一番やりたかったんですよ。

角田:これ、おもしろそうですもんね。

野木:今でも諦めてはいませんが。

角田:なんか、嘉納治五郎のような感じで、「野木志郎がフィンガースポーツを作った」ということになるかもしれないじゃないですか。2050年くらいのオリンピック競技になるかもしれない。NHKの大河ドラマ「いだてん」みたい。どうでしょう?

野木:フィンガーサッカーっちゅうのもあるんです。iPadなんかをゴールにすれば、センサーでできる。

角田:iPadがあればできますね。

子どもの情操教育に使えるパペット

野木:えっと、なんの話でしたっけ?

角田:4つやりたいことがあって、実は包帯パンツが一番興味がなかったという話です。なのにどうして、包帯パンツにいっちゃったんですか?

野木:他のが全部特許を取られへんかったんです。紙芝居も『バガボンド』の井上雄彦さんにお願いしたり、『ウンココロ』の寄藤文平さんにお願いしてみたり、いろんな人に手紙を書いて「紙芝居がやりたいです。やってもらえませんか?」と言ってみんなに断られて、道が塞がれたんですよ。これしかなかったんです。

角田:そうして包帯パンツだけがロバート・デ・ニーロまでいっちゃうわけですね。やはり、最初に1個と決めなくてもいいんですね。

野木:そう思いますね。平行にいくつか走らしておくと、そのうちどこか壁にぶつかってくるんですよ。諦めるというのは、それはそこまでだと思いますので。それでもまだやりたいということだったらやればいい。本当はこれ(包帯パンツ)じゃありませんが。

角田:(笑)。本当は包帯パンツじゃないの?

野木:僕、まだ諦めていませんもん。フィンガースポーツ。フィンガーサッカーは半分諦めてんねんけど、フィンガーバスケットと紙芝居はまだ諦めてはいません。

角田:パペットも諦めてない?

野木:そうそう。パペット、いいっすよ。パペットは、例えばパバロッティやドミンゴといった肖像権の問題になるんです。

角田:そういうオペラの方を使うと、ですよね。

野木:そんなこと言うたら怒られるんですけど、大御所の演歌の人などのパペットを作るとかも。

角田:『与作』なんか歌っちゃったりする。

野木:そうそうそうそう。音楽をかけるでしょ? うちの娘がそうやったんですけど、オペラなんて聴かせようとしても聴かないでしょう、普通は。

角田:まあ、そうですね。

野木:でも、口パクでそれをやったら聴くんですよ。それで、オペラを覚えさせたんですよ。だからこれは情操教育に絶対いいはずやと思って。

角田:パペットってオリジナルのキャラクターを作るんですか?

野木:違います。セサミストリートのあれです。あれが一番完成度が高いので。

角田:セサミストリートの人形はよくできていますもんね。

野木:完璧ですね。あの赤いやつね。

角田:はいはいはいはい。へぇ-、おもしろいですね。

野木:まだ返事が返ってきていませんが、亡くなったパバロッティのパペットを作らせてくれと僕はポリグラムにお願いしていて。そのパペットとパバロッティのCDをセットにして売りたい。

角田:あー、情操教育にいいですね。

野木:というのを出しているんですが、まだ返事が来ませんね。

角田:まだ諦めていないと。

野木:まだ諦めてない。

角田:もしかしたらガーンといく可能性がありますね。

野木:ありますね。

角田:YouTubeで公開しているから、イタリアの関係者がみているかもしれないですよ(笑)。

ボクサーブリーフが少子化の原因に!?

角田:それでは最後にひとつくらい質問どうぞ。

質問者3:(私は)パンツにこだわりがあって、今回野木さんがパンツ屋さんということで、興味を持って来ました。包帯のパンツだとぜんぜん知らずに来て、非常に興味を持ったのですが。パンツというのは大切なところを守りますよね。男性の場合、その器官を冷やさなきゃいけない。体にくっついてしまうと体温が伝わってしまって、機能が低下します。

角田:低下するんですか?

野木:そうです。

質問者3:らしいです。

角田:みなさん、気をつけましょう。

質問者3:今人気のブリーフトランクスのようなものは、私はダメだと思っています。くっつけちゃっていますから。フラフラでシワシワな状態がいいんです。

角田:フラフラ&シワシワがいいと。

質問者3:冷却しなきゃいけないということで、私はトランクス派なんですよ。ただ、たしかにゴムが食い込むと痛いということがあるんで、包帯パンツにはすごく惹かれるんですが、これも要するに体にくっついてしまうんじゃないかと。それが私の唯一の懸念で、それがクリアされれば穿いてみたいと思うのですが。

野木:おっしゃるとおりで、これは世界のいろんなところの学会でも発表されているのです。世界中のみんながボクサーブリーフを穿くようになってから、精子の数が3分の1に減っているんですって。それくらいめちゃくちゃ減っているんですよ。

角田:少子化の影響はそのせいかもしんない。

野木:あちこちで発表されていて、論文としてはスイスでも発表されているし、アメリカでも発表されている。アンダーウェア業界の研究をしている人は誰でも知っていることなんですよ。

角田:ちゃんとしたデータがあるわけですもんね。

野木:データがあります。

角田:でも、今ボクサーブリーフの市場がなくなったら、業界的にはえらい打撃なんですよ。だから、こんなん言うたらみんなを敵に回しますよ。

(会場笑)

角田:「かもしれません」ぐらいにしたらいい。

風に揺られてブラブラパンツ

野木:本当に一番いいのは、風に揺られてブラブラしている状態なんです。

質問者3:私はふんどしにいきたいなと思ってますよ。

野木:でも、ふんどしも結局は……。

角田:接触しちゃいますよね。

野木:今うちが開発中で、まだ完成していませんが、風に揺られてブラブラパンツというのがあります。

(会場笑)

質問者3:ぜひうちを第1号に。

野木:もうちょっとでできます。

角田:ネーミングいいですね。風に揺られてブラブラパンツね。

野木:うちね、けっこうネーミングにはこだわっている。

角田:なにかほかにもあります?

野木:寝るとき専用のパンツがあるんですが、腹巻きとパンツが一緒になっていて、ちょっとゆったりしたやつ。「ネルネル」という。あと、尿漏れ防止というか軽失禁用のパンツで「チョロッと」っていいます。

角田:(笑)。

野木:これ、全部商標取っていますからね。あともう1つ、マラソンをやっている人から股擦れするから作ってくれと言われたのが「股擦れーぬ」です。

質問者3:小林製薬じゃないんだから(笑)。

野木:パンツ界の小林製薬と言われる。

(会場笑)

角田:こだわっていますね。一発でわかりますもんね。

野木:わかりますでしょ。

角田:「風にブラブラ」は、なにか構造を変えるということですか? グリップ&キーピングじゃないということでしょ?

野木:今回の場合はグリップ&キーピングはなくなります。

角田:なくなりますよね。なるほどね。そっかそっか、わかりました。という感じで、あっという間でしょ? まだぜんぜん話したりないくらいですけどね。じゃあ、ちょっと10分くらい休憩をさせていただいて、YouTube動画の撮影に移りたいと思います。

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