2年越しでkintoneを導入した経緯

加藤傑氏:みなさん、こんにちは。弘前市薬剤師薬局の加藤と申します。今朝5時の電車で来たんですけれども。ちょっと津軽弁が抜けていないかもしれませんが、仙台はホームみたいなものかなと、アウェイではないと思っていましたので、どうぞよろしくお願いします。

まずは弘前ですね。みなさん、ご存じの方も多いかもしれません。来月の4月には「さくらまつり」があります。200万人を超える方がいらっしゃって、とても盛り上がっておりますので、もしお越しになったことがない方は、ぜひお越しください。8月は「ねぷた」もあります。

当薬局は3店舗ございまして、私は真ん中のほうの津軽店におります。年中無休でして、大晦日も元旦も開けていますし、ゴールデンウィークは残念ながら10連休とならず、全部開けます。夜22時半まで開けていますが、地域の夜間・祝日の救急に対応している薬局でございます。

申し遅れました、私の自己紹介です。麻雀が大好きで、中学校からずっとやっています。近くの雀荘が閉まってしまったので、そろそろ全自動卓を買わなきゃなと考えているくらい大好きです。

(会場笑)

専門としましては、喘息やCOPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器の分野に力を入れております。

では、前置きはこのへんにしておきまして。

当薬局は、ずっと「サイボウズLive」を活用しておりました。さまざまな事例を共有する上でとても便利で、現在も使っております。2012年に日本薬剤師会学術大会というところで発表したところ、ケーススタディとして取り上げていただくこともありました。

kintoneの採用は2015年で、まずは2〜3人で始めております。5アカウントという制限はあるんですけれども、みんなでお金を出しあって、一生懸命やっていたら「これはいいものだ。会社にぜひ入れよう」ということでプレゼンをしました。

残念ながら不採用ということで、1年間ちょっとお休みしていた経緯もあるのですが、2017年に「サイボウズLiveが(2019年4月15日に)いよいよ終了」という発表があり、これはもう一度行こうとプレゼンをしたところ、kintoneが採用になりました。

薬局でのkintoneの3つの活用事例

採用後、さまざまな苦労がありました。まず職員からすると、「Liveとぜんぜんレイアウトが違うやん」と。「イベントもどっちを見ればいいの?」とか、無料から有料になったりということで、FAXを減らしたり、在庫をうまく活用したりするという面で、なんとかみんなを納得させました。

また属人化ということで、私だけができるとなればやはり問題です。そこで、中学校の後輩の櫻田という薬剤師と、2人で毎日話し合いながら作って、メンテナンスをしております。1年経ってようやく地に足がついてきたかなというところですので、導入したあとも焦らないのがいいのかなと思います。

では、当薬局におけるkintoneの活用事例として、3つご紹介したいと思います。業務効率化、医薬品データベース、アプリの進化です。

まず、今までは各店舗が動かない薬の(在庫)情報を紙媒体で見ています。「うーん、これ使えるかな。これ使えないかな」と、主に管理薬剤師というものがそういう情報を確認しておりましたが、やはり漏れもありますし、なによりも時間がかかってしまいます。

そこで、各店舗の薬品情報をkintoneに集約してみました。薬の動き、在庫不動、どの問屋から買ったか。そういった情報をkintoneに共有しました。ただ、「これだったら別に、サイボウズLiveでもできるじゃん?」となるのですが、その関連レコードがすごくぴったりはまったんです。

(スライドを指して)レコードの一部ですね。あの緑のところ。フルナーゼは、花粉症のシーズンによく出る薬の1つです。国立前という本社のほうで7個不動。4月23日以降動きがありません。

チェックリストで見ますと、「あっ、津軽店というところで10月から12月に動きがあるじゃん。じゃあ、これ(薬の在庫)を動かせばいいんじゃない?」と。こういう判断が、管理薬剤師以外でもできるというのがとても便利になりました。

その結果、今まで各店舗で(薬を)出し入れするわけですけれども、kintoneを導入したら(出入件数が)30パーセントもアップしました。

じゃあ、紙媒体は使っていないかと言えば、そうではありません。紙媒体は便利です。なので、紙媒体も使いながらkintoneで補足というところで、今後も続けていきたいと思っております。

医薬品の情報や専門家の知識を共有

次に医薬品のデータベースです。 薬がめちゃくちゃ多いです。もう「なんでこんなにあるんだろう?」というくらいなんですけれども。新しい薬もどんどん出ますし、せっかく覚えてもずっと触らなければ忘れてしまいます。そういった情報をうまくデータベースで集約できたらということで、専用のスペースを作りました。

そこに事例や知見などを集約させていくわけですけれども、これがまたすごく便利でして。調べたことやメーカーに聞いたことをどんどん蓄積していきます。それとは別に、「今日こんなことがあったよ」といった事例をどんどん集約させていきます。

そこの関連レコードを結びつけることで、「あっ、これは前に調べたよね」「こういった事例は、前にこうしたよ」とか、そういうことが判断できるようになりました。ここはサイボウズLiveではできなかったところで、とても便利です。

また、医師もそうですけれども、薬剤師はさまざまな専門資格がございます。1人で全部を継続維持するのはまず無理です。お金もかかります。例えば私が漢方の専門だとしても、すべての処方の漢方薬に携わることはできませんので、薬局全体でその知識を共有できないかなということで、アプリがありますよね。

私は吸入療法のステップアップをめざす会に所属しており、吸入薬に関する研修会の支援で、全国に行く機会をいただけました。吸入薬関連の知識は多少あるため、吸入アプリを作ってしまいました。

そうすると、Googleで調べるより……一応Googleのほうに深い知識もありますけれども、それなりに調べたものが吸入薬アプリにございますので、それをみんなが利用できる。そうすると、初めて吸入薬を触る人でも、もしかしたら患者さんに対して良い指導ができるかもしれない。そういった活用をしております。

kintoneに集めた情報を新人教育にも活用

また、先ほどもありました、懇親会や外食情報はとても大事です。各分野の情報を集約させたりとか。あと薬局は、いろいろ調べるにあたって、例えば、輪番のドクターの傾向が事前にわかれば、薬をあらかじめ用意できます。これは薬剤師の櫻田が作ってくれたんですけれども、すごく便利です。

また、インフルエンザなどの対応もございますので、2019年の3〜5週目に、だいたい500人患者さんが来ていたということがわかったり。

こういった情報は今までなんとなくやっていたんですけれども、見える化によって、「いやいや、うちらの薬局やっぱりやばいよね」とか「その地域に対してけっこうがんばってるほうだよね」ということで、自分たちで慰め合ったりしてやっております。

こういったアプリを使いながらも、また他店舗からこんな活用方法を聞きました。

先日、ある薬に発がん性物質があるというテレビの放映を見て、不安に思った方から電話がありました。そこの薬剤師が「いや、ちょっと薬局に戻らないとわからないなぁ」と思ったとき、「あっ、kintoneあるじゃん!」と思ってkintoneで調べたようです。「薬局に戻らなくてもちゃんと患者さんに答えることができたよ」「kintoneがあって助かったよ」と。「あー、そっかそっか、そういう使い方もあるんだよね」とか。

あとは事例や知見。まだ(情報を)ためて1年なので、まだまだこれからですけれども、「それを振り返るときに、例えば二択・四択・◯✕の問題を作っていけばいいんじゃない? そうすれば新人の教育ツールにもなるよね」ということで、また薬剤師の櫻田のほうでせっせと問題を作ってくれていまして、それもすごく楽しいんです。

(kintoneではなく)ほかのサービスになりますけれども、「learningBOX」というサービスを活用しながら。個人でやると点数が低いと「うわー」「ショックだな」となるんですが、これは匿名でやっていますので、誰でも何回でもできるということで活用しております。

在庫の薬を地元で使い切れるメリット

また、これは私の課題なんですけれども、薬剤師会で2ヶ月に1回、エクセルで(薬の情報を)集めて配布しています。これは当薬局3店舗以外の約150薬局が参加しております。

薬局間での「不動品が出ました」「そこを買いました」といった情報が消し込みできないのが、やはりエクセルの弱点でして。何回も事務局で配布すればいいんでしょうけれども、そうすれば負担が大きくなってしまいます。そういう消し込みができなかったりとか、同じ名前でも薬の色が違ったりするので、画像が使えると便利なんです。

こういった分野でもしkintoneが導入できれば、コミュニケーションもよくできますし、消し込みもできる。地産地消ということで、地元でできた不動品をみんなでちゃんと消していくことができるかもしれません。

ただ、エクセルからkintoneに移ったからといって、やはり薬を買うのは対薬剤師なので、顔の見えない関係は進まないと思っています。便利なものがあっても、やっぱり一番大事なのはコミュニケーションです。「あそこの薬剤師さん、困ってるんだ。よし、じゃあ不動品を買ってあげよう」。そういった関係性を地域で作っていく。もしかしたらkintoneがそういう役割を果たすのかなと考えております。

私も先週、「地元の薬剤師で飲もうよ」とちょっとやったんですけど、35人集まってくれて。ただ飲むだけなんですけれども、お酒もすごく大好きなので、顔の見える関係がまた1個できたし、「また2回目、3回目をやろうね」とつながっていくことが、やはり地元でも大事なのかなと。

よって、kintoneというオンラインでつながりながらも、懇親会のようにオフラインでしっかりつながっていくことが、やっぱり地元にとって大事なのかなと考えております。

kintoneを通して地元でのつながりを育んでいく

これが最後のスライドです。

2018年はサイボウズLiveからの引越し、スタッフへの定着、データベースの構築というところでやってきました。

今年は、データベースの振り返りをしながらどんどん活用していこうというのと、もう地元の薬局の何社かには声をかけたんですけども、「ゲストスペースを一緒にやっていきませんか?」ということで、これも4月か5月、ゴールデンウィークが終わってからやりたいなと思っております。

来年は、やったことに対してはしっかり成果物を発表するということで、学術大会や薬局に関係なくkintoneを使っているところとノウハウを共有していければすごくうれしいなと。今日もみなさんの登壇者の発表を聞きまして、写真をいっぱい撮らせてもらったんですけれども、すごくいいアイデアをもらえたので、そういった関係を地元でも作れたらと思います。

「地域にひとつのkintone」ということで、我々薬剤師の業界はICTで遅れているところもあるんですけれども、優れた部分をどんどん取り入れていきたいなと思っております。

また、私はドラゴンボール世代なので、カリン様の「筋斗雲やーい!」というのがすごい好きなんです。あのでっかい筋斗雲覚えてます? 筋斗雲は、不純な人は乗れないんですよ。まぁ、それはそれですけれども(笑)。

でも、地元のみんなでつながり続けていくような未来が、弘前からできるのであれば、次につながっていくのかなあと思います。

早口でしゃべりすぎましたね。ちょっと時間を残しちゃいましたけれど、私からの発表は以上です。ありがとうございました。

(会場拍手)