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【遊休不動産活用】空き家が活用され続ける「仕組み化」とは(全3記事)

空き家は宝か“負動産”か 街の未来を変える「空き家問題」の前途

2019年2月3日、一般社団法人 熱意ある地方創生ベンチャー連合・スタートアップ都市推進協議会が主催する「地方創生ベンチャーサミット2019 ローカルテック(地域×テクノロジー)の可能性」が開催されました。「ローカルテック(地域×テクノロジー)の可能性」を全体のテーマとし、地域におけるテクノロジー活用がもたらす効果や課題について、中央省庁・自治体・民間事業者の垣根を越えて、地方創生のキーマン・有識者たちが議論を交わします。本パートでは、「空き家が活用され続ける『仕組み化』とは」のセッションをお送りします。今回は、空き家と利用者とのマッチングや街づくりについて語りました。

地方創生を進めていく人材を育てる

勝眞一郎氏(以下、勝):先ほど片山大臣からお話があったように、地方の大学を応援していこうというのと同時に、地方の創生に資する大学人を育てていこうというのがあって、奄美にも20大学くらいがフィールドワークで来ています。そこの拠点として、空き家や小学校を使うケースはかなり増えています。

伊藤明子氏(以下、伊藤):そういう意味で言うと、今の空き家はどうしても不動産関係だと定住のイメージですが、完全に定住しなくても観光や交流人口のようなところで使われていくのも、大事なのかなと思います。

ただ、おそらくお気づきのように、ここの2人はどちらかというと小さいコミュニティを中心にして回しているので、顔の見える経済の中で、公共団体との関係もうまく作られているのだと思います。

実はいま私がやっている地方創生の大学も、優等生なところは、すごく小さなところが多くて。もう少し真ん中くらいのところにもがんばってもらってはいるのですが、正直、効果がなかなか見えにくいんですね。役割分担などを理屈で考えると、渡辺さんのところみたいに、協定を結んだりということになると思います。

人材育成も含めて、公共団体の関係やワンストップの状況を、もう少し具体的に補足して説明していただけませんか?

渡辺昌宏氏(以下、渡辺):まず、どのようなことを考えているかと申し上げますと、僕たちは全国版空き家バンクという集客のシーンを、地域と連携してどんどんやっていくと。そして、それに対して、先ほどお話しさせていただいた地域の窓口業務というものは、地域コミュニティがやはり必要なので、そこに自治体さまの信用力をお借りする。

ここの連携プラス、メディアの連携というかたちで、地域と連携させていただき、インストールさせていただく中で、メインとしてのサポートができるのではないかなと考えています。

空き家問題のネックはマネタイズの難しさ

渡辺:その中で、僕たちがいろいろなパートナーを見ていったときに……例えば、これは奈良県の事例です。今まさに6年間この窓口業務をやっていらして、結果的には窓口業務はなにをやっているのかというと、いろんな悩みがあるんです。

例えば物件だけでも、相続の問題とか、物件の境界がきちんとしていないものを士業につなげないといけないとか。造設の問題で建て替えをどうするかなど、一つひとつの問題に寄り添いながら、問題を選別していって士業につないだり解決したりします。

結果的には、ここからいろんな事業が生まれていて。例えば、そこに対して移住者をつないだ時に、リフォーム会社につなぐことで手数料みたいなビジネスになったり、不動産会社に仲介してもらうことによる手数料になったり。

先ほどサブリースという話が出たように、まさしくこの業者さんも約150件の物件をサブリースとして収益化させています。このように、モデルケースとしては各地各地にきちっとしたものがあるので、ノウハウと集客をセットにして、そこに信用力もセットにして地域と連携させていただくことで、メインとしての事業化サポートが構築できるのではないかという思いでスタートしました。

伊藤:わかりました。先ほどの私の資料で1枚出したように、空き家問題で難しいのは、もともと物件が安いので、不動産会社さんからすると手数料がすごく安いんです。

実は手数料も、宅建業法の手続きの見直しをして若干とれるようにしたのですが、物件価格の何パーセントという世界だと、交通費も出ないような世界になっていました。

それよりもサブリースなりなんなりで、いろんなものでトータルしてワンストップが便利だという話と、ワンストップじゃないと正直ビジネスとして成り立たないというのもあると思います。

空き家を売却するより賃貸のほうが儲かるケースも

伊藤:あと、いろいろなところと連携しないといけないというのは、それぞれのステークホルダーのほうが、そっちのビジネスで儲けられるということもあるのだと思います。おそらく都会の場合はもう少し金融機関、信金さんとかが相続の前にいろいろご相談されるときに、この話もセットで考えることはあると思います。

(スライドを指して)ここで「住宅」と書いたのですが、住宅を住宅で使うといういわゆる中古住宅の売買みたいな世界もあれば、賃貸や、いまもサブリースという話がありました。

やはり、空き家というのは売買のほうが手離れがいいのですが、逆にちょっとハードルが高い。とにかく賃貸でもいいから、まずはステップを上がってもらうほうがいい面も出てきたりします。

あるいは田舎では、意外と賃貸のほうが実は儲かって、売ると二束三文なこともあるかもしれません。もう1つ最近多いのは、住宅としては使わず、他のちょうどいい箱として使おうという方が多いかもしれません。

それからもう1つは、(スライドの)最後に書いた「まちづくり」です。私もセーフティネット賃貸住宅というのを作っていて、それは高齢者や障がい者や子育て世帯とかに貸してくれるなら、リフォーム代を少し出しますという制度なのですが、これはなかなか伸びないんです。

実は空き家って、誰に働きかければいいかとても難しくて。そういう意味では、LIFULLさんのような「ここに相談すればいい」というところがあるのは、とても大事なのではないかと思います。

空き家を活用して地域にコミュニティをつくる

伊藤:もう1つ、コミュニティの話がありましたね。私が最近好きな空き家のプロジェクトがあって、それは空き家を活用して地域を作るというパターンです。

今(まーぐん広場のように、高齢者施設と障がい者施設と宿泊者施設が)ごちゃまぜの話をされましたけれども。高齢者っぽいものだと、輪島でカブーレというものをやっておりまして。地域が空き家を使って、子育て施設や障がい者・高齢者などのものをやっています。

商工会議所も実は協力していて、ゴルフのカートを使って、自動運転でくるくる回せないかとか、そういうことをやるところができていたり。北九州市さんだと、魚町商店街の中で空きビルをコンバージョンにするとかですね。これは北九州のリノベスクールにすることをやられています。

宿泊だと菅官房長官が気に入っていたもので、能とかをやられている篠山の街づくりとか、いろんなパターンが出ています。空き家というのは、今までは単体で捉えてどうするかと議論していたのですが、もっとコミュニティづくりとか、地域の中でどう考えていくべきなのかという議論が必要。

先ほど風景を残さなければいけないという話があったように、遊休不動産活用をするにあたって、今後どういうことが大事かというのを3人に一言ずついただきたいです。

:全国規模でやろうとすると、やはり仕組化・制度化をしないといけない。そうなるとかなり使い勝手が悪いというか、そこに大きいビジネスが入ってきたり、地域のことにならなかったり、いろいろな制限が出てきます。そこと小さい地域であり、民であるところの間くらいの使い勝手のいい仕組みを作って、調整しながら。

でも我々がやっているのは、現実化しないと意味がないので、具体的に我々から手を付けようということで伝泊をやっているところです。このごちゃまぜのところを見に行って、昔のスタイルに戻るけど、そのままでは戻らないので工夫をするという。

高齢者も障がい者も子どももいるし、いろいろな子育て世代がいる、という混ざった昔の状態を工夫して戻していく取り組みが、これから全国で始まっていくと思います。我々もごちゃまぜの展開が、地域の特性を活かしながらできてくるだろうなという気がしています。

工場や廃校などを活用する際の3つのポイント

森弘行氏(以下、森):まず、空き家の話をうかがって、個人が使う空き家と大きな施設は、分けて考えなければいけないと思いました。個人が使うぶんには渡辺さんがおっしゃったような、いかに多様なニーズに応えるかが重要だと思います。大きな施設……空いた工場や廃校を使うのにはポイントが3つあると思います。文化継承・コミュニティ・お金がかかること。

私は地域おこし協力隊に入っているので、地域活性ってなにかというところですね。私は、地域がいかに継続していくかだと思います。それは、地域の文化が新しい時代に合わせて変わりながら、いかに続いていくかが重要だと思います。

そのためには、人をつないでいくためのコミュニティ作りが大切だと思います。先ほども言いましたが、大学や地域の人などですね。いまは移住ということにあまりこだわらなくてもいいかなと思っています。月に1回、年に1回来てくれる人たちをどうやって受け入れていくか。多様なニーズをどう取りこんでいくかが大事だと思います。

3つ目はお金が回るというのが重要で、きちんとお金が回りながら施設を維持していくような仕組みが必要なのではないかと思っています。

渡辺:いろいろと1年やらせていただいて、僕たちは今、使えるところから使っていこうというところにいっています。ただし、使えないものはどうするんだという問題もでてきます。

そういうものを見てきたときに、街ぐるみというか、街の未来図ってどうなのかというところで、スーパーシティやコンパクトシティとか、いろいろな話が出ています。

そういう方向性の中で、良質な住宅団地などを整理していくと、古くからの住宅団地やまとまった農地エリアなど、無秩序に開発が進んでしまったエリアを、最終的にはどういうかたちにまとめていくかが重要になると思っています。

空き家問題は街の未来図につながっている

渡辺:例えば、空き家を1軒1軒使っていくのはものすごく大事だけど、その中でどこを残して、どこをなくしていくのかを全体像として、そろそろある程度動かしていかないと方向性が出ないのではないかと思っています。

そういったところが街ぐるみの中で、地域住民の方々や自治体、そして我々のようなプレイヤーが連携するかたちで作っていけたらベストかなと思っています。

伊藤:ありがとうございました。要するに、どうやって選ばれ続ける地域にしていったらいいのかですね。先ほど話したように、あまりに空き家の数が多くなると、残っている人が全部考えないといけないとなると大変なので、できるだけ早い時期にそういうことを考えるようにして。

そのときに、行政や地域おこし協力隊も含めて、地域に密着するNPOや大学だったり、個人的には金融が入ってないのは寂しいので、もう少し金融機関もがんばってほしいなと思います。そういうところを併せて考える必要があるのかなと思います。

そろそろQ&Aの時間にするように事務局から言われているので、「こんなことを聞きたい」などがあれば、ご質問いただければと思います。

質問者1:政府や自治体向けのITの活用で生産性を上げたり、グループ会社ではプラスワンというふるさと納税のポータルサイトを経営しています。今日はとても勉強になりまして、空き家の問題ってこんなに根深いんだなということがわかりました。

供給サイドから、こんなに発生している空き家をなんとかして活用しなければいけないという課題認識がすごくわかって、こういう解決策をもって空き家を活用していこうというのはわかりました。

その一方で、需要というか、利用者側からのニーズを拾っていく仕組みはどうなっているのかと疑問に思いました。

例えば、私が会社を経営している中で、たぶん東京だと明日くらいから花粉が飛び始めて、花粉症の社員ってほとんど機能しないんです。ですので、奄美大島はたぶん花粉症がないので、みんな送り込みたいんです(笑)。

でも、奄美大島に20人・30人の社員をすぐに受け入れて、ITの仕事ができるような事業環境や、住む環境はなさそうかなと。そういったニーズがあるところと供給サイドのマッチングって、まさにLIFULLさんがやっていると思うんです。

ニーズをどんなふうに拾いながら供給サイドとすり合わせていって、どんなプラットホームを作っていくのかが、私の質問の趣旨です。公共としてどうやって作っていくかという話と、民間としてどう作っていくかをお願いします。

空き家を求めている人と物件とのマッチング

伊藤:わかりました。全体的に個別のマッチングは、正直できていません。ただ、いろんなニーズに対応できるように売買するんだったら、こうしたら売買しやすいとか、賃貸だったらこんな制度を使えばやりやすくなるというのがあります。

最近多いのは、用途変更です。サテライトオフィスに使ったりするニーズがあって、意外と用途変更は行政は弱いです。あえて言うと、建築基準法があって、用途変更するときには改修をして、改修にあたっては確認がいるなど、いろいろとあるんです。あるいは合格地点がうるさかったりして、厳しかったりする。

そういうことがやりやすくなるように、実は建築基準法の改正をするといった構えは、正直できています。でも、意外と住宅から非住宅……とくに非住宅のものはビジネスベースのようなものですから、行政がニーズを把握してどうこうというのは、少なくとも国土交通省の行政としてはやっていません。

あえて言うと、地方創生改正があって、合宿所に使うといったニーズが把握されれば、公共団体の方はそういう構えをします。例えば、小学校の廃校をサテライトオフィスにするとか。情報のポータルサイトまではまだ至っていなくて、それぞれがポロポロとやっている段階です。

:奄美でも、そういうことをやっているところがあって。花粉は今が飛びはじめじゃないですか。夏がお客さんのハイシーズンなんです。冬はあんまりお客さんが来ないので、うちの伝泊を1ヶ月貸しでやったりします。

ランサーズさんは80名で旅行に来ましたけれども、市の施設をデーターリカバリーチームに貸し出したりとか、柔軟に貸し出しできますので。個別にはご相談に乗れるのですが、それ以外の仕組みをどうするかというのは……渡辺さん、どうでしょうか?(笑)。

今の空き家の用途は、住宅・福祉・宿泊施設

渡辺:難しいですね(笑)。今年の元旦の日経新聞に、リクルートさんがデュアルライフという考えで出されていたように、今のミレニアル世代は、まさしく自分が求める働き方や暮らし方を求めています。

その中で逆を言うと、空き家は低価格で取得できます。例えば、サーファーの人がサーフィンをやるためにそこを借りて、東京でも居住地があるというケースは、少しずつ出てきていると思います。

それとともに、僕らがそれを仕組み化するというのは、例えば空き家を定額制の中で、北海道から沖縄までどこに行っても、同じ環境とセキュリティとインターネット環境がそろって、バチッと暮らせるというのを1つ提供することもできると思いますし、そういうサービスも少しずつ出てきていると思います。

結果的に言うと、ニーズというのはどんどん天才が作っていくんだなと思っていて。僕たちはその作った天才のニーズを形にして発信していくことで、世の中にこんなことができるということを伝える。

できる環境を仕組的に作っていく。そういうかたちをサイクルとして回していけば、きっといろいろなかたちのニーズに応えることができるし、まさしくシェアという考え方の中で展開する仕組みができるのではないかと思っています。

伊藤:たぶんいまの使い方だと、住宅系とか福祉系、あとは宿泊施設系なんです。いまは長期利用宿泊施設のための使い方になっていて、それが民泊を含めて出てきて、長期利用が出てくるんだと思います。

ですので数が増えれば、空き家を出す人も「お金になるんだ!」と思いますし、相場観がわかると、安心して出す人もおそらく出てくると思います。

急いで会社としてやらなくてはいけないとすると、おそらく公共団体と地域協定を結んで、「いくらくらい出してください」というかたちで、試行的にやられる感じで回っていくと思います。おそらく宿泊系のサイトがいずれ出てくると思いますね。あとはどうですか?

空き家を“負動産”ではなく宝に変える

:いかにニーズを拾っていくかということだと思いますが、明確な回答はありません。そこはいろんな人と話すしかないと思います。最近の新しいニーズから思うのは、移住じゃなくて年1回とか、「ちょこっとそういうところに住みたい」というニーズがすごく出ていると思いますので、それをどう拾っていくかが、こちらの役目かなと思います。

伊藤:いまのような、移住じゃなくて交流人口系。観光じゃなくて、やや、「あなたとのお付き合い」みたいな決まった相手とやることも地方創生の分野で取り上げていかないと、あまり広がっていかないかなと思っているので、今のようなお話をぜひ受け止めていきたいなと思います。

司会が上手ではなくてすみません。50分では終わらないです(笑)。遊休不動産活用は、今後もいろいろなテーマがあると思います。いろんな分野の人たちがアプローチをしていくことになります。

どうしても空き家というと除却がメインになってしまって、まだ活用の部分が十分ではありません。しかし、せっかく個人がずっとローンを組んだり、代々引き継いできたものが“負動産”と書かれるようになるのはむなしいし、それぞれの人にとって寂しいなと感じます。ですので、いい宝となるように、ここにいるみなさまにも、アイデアを出して取り組んでいただければと思います。

今日はみなさんに、とても素敵なお話をいただきました。拍手をお願いします。

(会場拍手)

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