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パネルセッション(全3記事)

2019.08.23

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OKRは、ビジョン達成を盛り上げる“お祭り”のようなもの 数字ではなく、ユーザーを見つめて行う目標設定

提供:株式会社ネットプロテクションズ

2019年3月15日、株式会社ネットプロテクションズと株式会社FORCASの共催にて「『SaaS TEAM OKR』- B2Bサブスクリプション組織の目標設定 -」が開催されました。サブスクリプションモデルが登場したことで、これまでのオンプレミス型販売から、顧客と長期的な関係性を築くことが重要になるモデルへと、サービスは移り変わってきています。とはいえ、こうしたサブスクリプションを前提としたSaaSならではの組織づくりや、それにふさわしい目標設定の仕方について語られる機会はあまりありません。このイベントでは、近年注目を集める「OKR」による目標設定や組織づくりについて、有識者がその考え方を語り合いました。本記事では、その後半の模様をお送りします。

採用基準は「やれ」と言われたことをやらない人

酒居潤平氏(以下、酒居):みなさんは本当に、一人ひとりのメンバーとコミュニケーションの機会を作って、一緒に考えていくってことを、すごく徹底されてるんじゃないかなと思います。

その手前の、採用の段階ではどうやって人を見極めているんでしょうか。最初からある程度育っているシニアで、「この人は自走してくれるな」というイメージが沸く人を採用しているのか、即戦力的な感じなのか。それとも、長期的に育てていきながら、そういう人になってくれるポテンシャルを意識されてるのか。どんな感じなんでしょうか?

橘大地氏(以下、橘):ポテンシャルでいくと、思考が独立している人を採用基準の1つにしています。昔は体育会系の人が営業に向いていると言われていましたけど、それって上が言ったことをやってくれるからですよね。日本の企業って、採用基準の一つとしてそういったものが浸透していると思うんですけど。

別に体育会系が悪いという意味ではないんですが、それってやっぱり真逆の採用基準で。「やれ」って言われたことをやらない人っていうのは、採用基準の1つにしてますね。

酒居:「やれ」って言われたことをやらない人……それってすっごく難しいなと思うんですけど(笑)。

(会場笑)

具体的にもう少し。自律性ってすごく難しいと思うんですよ。自走できる人って素晴らしいと思うんですけど、逆に言うと、方向を間違うととんでもない方向に進んじゃうじゃないですか。

:それは「違う」って言います。

(会場笑)

合っていると思ったら「合ってますよ」って言いますし、自分が間違っていたのなら別に意見を変えればいいですし。

酒居:なるほど、そこを徹底的に語り合えるから、それが成り立つってことなんですか。

:そうですね。ただ「人が多いと成り立たない」という意見はあります。あと、今後200人くらいの組織になっていくと、「総論としてこっちが正しいっぽいぞ」みたいなことを経営者が言って、それに下は従うというかたちになっていくと思っています。

SaaS企業においては、そこまでの規模の組織ってfreeeさんやマネーフォワードさん、Sansanさんくらいだと思います。自分たちのフェーズだと、まだまだガチ議論フェーズだと思っていて。総論を経営者が言って「あとは任せろ」みたいな、そういう目標設定・組織のあり方はまだちょっと早いかなと思ってます。

新卒にすら自律性を求める以上、耐え忍ぶことも大事に

酒居:ありがとうございます。中原さんのところでは、自律性についてどう考えていらっしゃるんですか?「ティール組織」を体現していらっしゃってすごいなと思うんですけど、一方で「任せる」って……変な言い方をすると、みんながどういう方向に行くかってどうしてもわからなくて、だからってそれを口を出し始めると、それって統制になって……ぜんぜん任せてないよね、っていう。そこの矛盾というか、そのあたりってどう考えられていますか。

中原雄一氏(以下、中原):さっき「ハードとしては2つある」ってお話をしたんですけど、自律性として大事なのは、最終的にはソフトしてのマネージャーとか責任者の人が耐えることかと思っていて。

酒居:耐える?

中原:2つあるんですけど、1つは判断したもののミスをしたり、ぜんぜん未達だったってことは普通にあり得るんですよね。とくに最初のほうは。弊社は新卒が7割くらいの会社なんですけど、それでも自律性を求めちゃうんです。だから本当に動けないとか、ザラにあるんですよね。それでも許すというか、耐えることが大事で。

それでも全体としては、目標というか中計的なものに関してはちゃんと良い数字を出せるように、他のレバレッジを効かせてがんばると。そういったことはやっぱり大事だと思います。マネージャーが自分の評価を気にして「がんばれ、がんばれ!」ってやっちゃうと、なかなか自律性は育たないかなというところがあります。

方向性がずれてきたら、議論ではなく対話を行う

中原:もう1つは、やっぱりずれてくるものなので、めちゃくちゃ対話するって感じですね。たぶん方向感としてはAの方向がいいんだけど、めちゃくちゃBをやりたいと。そうなったときに「なんでBって思うの?」という話をひたすらやるという。長いときは、普通に1時間とか2時間とか話します。ミーティングをスキップしてでも、ものによっては対応したりします。

長期的に見て、判断がすり合いそうなイシューであれば、徹底的に対話をしますね。議論ではなく、対話をする。「なぜそう思ったのか」「自分はこう思ったけど、それってどう思う?」といった話をひたすらやるって感じですね。

酒居:対話の時間をちゃんとつくるっていうことが、すごいアナログですけど、結局は組織を作る意味ですごく重要ってことですよね。

中原:はい、めちゃくちゃ大事だと思いますね。

酒居:ありがとうございます、次は鈴木さんに聞きたいんですが。

鈴木大貴氏(以下、鈴木):はい、なんか雑なボールが来そうな(笑)。

酒居:違います(笑)。でも、なんかずっと頼っちゃってるんですけど。

(会場笑)

目標設定と採用の兼ね合い

酒居:鈴木さんに聞きたいのは、目標設定と人の採用の兼ね合いって、経営者としてはどう考えてられているのかなということで。すごく抽象的なことを聞いてしまうんですけど、目標設定ありきで人を採用していくのか、もしくは今いる人たちを前提にして、その人たちが加速できるような目標のあり方を模索していくのか。どっちが先っていう言い方はおかしいかもしれないですけど、どう捉えていらっしゃいますか?

鈴木:プライオリティで言うと前者ですね。やっぱり達成していかないといけない目標、追わなければいけない成長角度があるので。それに対してビジネスサイドであれば、「絶対このタイミングまでにマーケターがいないとしんどいな」とか、マーケターがいたときに想定されるリードの件数から「営業はこのくらいいないといけないな」といったことを考える。

もちろん人数的なところ、質的なところには重きを置きながら、ですが。それをベースに採用は進めています。もちろん、今いるメンバーとうまくやっていけるかってところもありますし、みんなが大事にしている価値観にどれだけ沿うことができるのかというところも、当然ですが、もちろん見ながら採用していますね。

酒居:なるほど、ありがとうございます。今、社員さんは6名でしたっけ?

鈴木:はい、フルタイムは6人ですね。

酒居:採用について先ほど自律性というお話がありましたが、そういった自走できる人を選考して採用されていらっしゃるんですか?

鈴木:そうですね。今日お集まりの方の会社のフェーズとか、事業の状態によっても異なるかなと思っているんですけど、我々のような組織の規模だと、マネジメントにコストをかけられないんですね。ある程度がばっと、私たちの課題や目標に対してやってくれるメンバーが必要で。今できなかったとしても、自分で外に情報を取りに行って、成長のスピードを速くしていきながら、1日でも早く一人前になれるような人であれば、やっぱりプライオリティとしては高くなりますね。

「オープンなカルチャー」という側面だけをコピーするリスク

酒居:ありがとうございます。フェーズによって、どういう人を求めるかが変わってきますよね。もちろん組織の考え方というのもありますけど。

鈴木:そうですね。とはいえ、ある程度組織が大きくなってきたときに、マネージャー層ばっかり入れてもそれはそれでしんどいので。ジュニアメンバーを入れていかないといけないフェーズもあると思っています。

自律というテーマでお話をするのであれば、今出た話にも近いんですけど、やっぱりその人たちが自分で走り出すことができるように情報は開示してあげるべきだと思います。

試行錯誤が必要なのに、チャレンジした結果が咎められるような会社の空気・風土だったら、誰も挑戦しなくなるので。安全性というか、そういう場をちゃんと提供するのはすごく大事かなと思ってます。

ただ、会社にとってメンバーにいろんな情報をあけすけにするのって、リスクとして捉えられてしまうケースもあると思っています。だから「こいつだったら絶対大丈夫だ」みたいな人を採るのが、すごく重要かなと思っているので。そのあたりをケアしながら採用を進めていくほうがいいと思います。

最近では、スタートアップでもオープンなカルチャーというか、いろんな情報を出していくのが流行っていて。「うちはこういうレポートを出す」とか、情報を出すみたいなところをいろんな会社がやっているんですけど、それを表面的に真似てしまうのは、けっこうリスクだなと思っていますね。

入口でオープンな会社を掲げて、情報をめちゃくちゃ出しているけれども、ちょっと怪しそうな人が入ってしまうと一気にキュッと締めてしまったりするので。そこに気を付けないと、カルチャーの継続性が微妙になってくると思ってるので。バランスを見ながらやるところが大事かなと思います。

ワクワクする目標設定ができるかは、リーダーのセンス次第

酒居:ありがとうございます。それぞれの会社さんごとに、色というか考え方ってまったく違うんですけど、結局、目標設定やOKRは組織の文化と密接に関わっているということですよね。

そこから自分たちのあり方というか、目標に向かって進んでいくための道をつくっていかないといけないと。そして、それが起点じゃないとダメだっていうことですね。

それでは時間もあと少しなので、質疑応答にいきたいと思います。時間が少ないのでどれだけ答えられるかわからないんですが。じゃあまず1つ目からですね。「ワクワクするような目標の設定をできるかどうかは、経営者やチームリーダーのセンスですか?」っていうご質問をいただいてるんですけど。これについて、どなたかお願いします。

あっ、鈴木さんがすごい頷いてくださってるんですけど(笑)。

鈴木:いやぁ、正直に言うとセンスですね。

(会場笑)

私はセンスが大事かなと思います。数値的なところは大前提としてあると思うんですけど、大きなゴールを達成するための道順を作ったり、メンバーが熱狂する言葉の選び方みたいなものは、センスが大きいかなと思っています。でも、センスって経験で磨かれるので。努力すればちゃんとできるようになるかな、とか。

中原:次は私から。僕はセンスがない側なんで、それを言われちゃうとちょっと困ってしまうんですけど……。

(会場笑)

うちがやっているのは、基本的に全体目標というか目指していきたい方針は、合宿なんかで全員で議論してから決めるんですよ。なので、みんながそのコンテクストはわかっています。最後にセンスのありそうなやつにお願いしてやってもらうと。だから、僕にセンスがなくてもできるっていうのはありますね。

「プロジェクト花形」という名前の謎

酒居:なるほど。もし仮にセンスがなかったとしても、その目標自体はセンスがあるものじゃないとダメだから、背景をみんなで共有して、そこで一番良い言葉というかフレーズを模索するということですかね。

中原:そうですね。最悪、言葉にしなくても、コンテクストでわかっているので。そこですり合ってるので、下手に自分のセンスを出すよりは、「みんなわかってるよね」という感じでいい。「あとは自分たちで言葉にしといて」って言ったほうが早いなって。

酒居:ありがとうございます。橘さん、そのあたりいかがですか?

:僕はもともとサイバーエージェントで法務をしていました。サイバーエージェントではよく曽山(哲人)さんという人事部長がイベントに登壇されていて、プロジェクトの名前を決めるのにめちゃくちゃ時間をかけるという有名な話があります。

自分もやっぱり、プロジェクトの名前を決めるのにめちゃくちゃ時間をかけていて。例えば「もうちょっと発信を強めないといけないね」「プロダクトマーケティングが弱いね」みたいな課題があったときに、プロジェクトの名前を「プロジェクト花形」にしたんです。消える魔球を星飛雄馬が投げるんですが、その消えたボールに砂埃をかけて見える化し、ホームランを打つ花形満っていう人が『巨人の星』にいるんです。

酒居:そこから来たんですね(笑)。

鈴木:平成生まれの人は、ぜんぜんわからないんじゃないですか?

中原:僕、わかんなかったです(笑)。

人の心を躍らせるプロジェクトのネーミング

:そういった名前で人がついてくるみたいなセンスを問われていて。これは、サイバーエージェントが社内活性化がすごい理由の1つとよく言われているものです。うちもそこは意識していて、ワードセンスとかにはちゃんと時間をかけているんですね。

酒居:それはどういう効果があるんですか?

:ワクワクしたいメンバーのモチベーションがまず上がることですね。レアルマドリードをペレス会長が再建するとき、「銀河系軍団(Galaxy Team)」みたいな言葉にしたんですが、やっぱりワクワクして投資したくなりますし。そういうのってありますよね。「月面着陸いくぞ!」とか、そういった夢に人の心は躍るんです。

酒居:この間どなたかのTwitterで見たんですけど、なにか大変な仕事とか大きな課題があったら、それをプロジェクト化すればいいと。プロジェクト化してやっていけば、急にワクワクしてきてすごくおもしろくなっていく、みたいな。あとはそこにネーミングセンスが加わったら、みんながワクワクしだすってことですよね。

:そうですね。プロダクトマーケティングという課題で言うと、「じゃあ毎月2本noteを書こう」みたいな目標にしてしまうと、タスク化してつまらないnoteを量産していくことになります。

(会場笑)

せっかくならホームランを打とうという感じがないと、やっぱりただのタスク化しちゃうんでね。

酒居:ありがとうございます。ちょっと時間を過ぎちゃっているので、あと一つだけ。どうしてもこれだけは聞きたいという人はいらっしゃいます?

追求するのは「ユーザーにとって、これが一番いいかたちなんだっけ?」

鈴木:あっ、いました。

酒居:あっ、まさかの佐久間さん(前の講演での登壇者・株式会社FORCAS 代表取締役 佐久間衡氏)。

佐久間衡氏:質問じゃなくて、橘さんの考えを変えたくて(笑)。

OKRって、別に売上と結びついている必要はまったくなくて。OKRって"お祭”なんですよね。会社って何のためにあるかっていったら、ビジョンを掲げて、そこに集まった人たちで達成しようっていう集団のはずですよね。そのビジョンに従って、その時々でどういう祭を興して、盛り上げて楽しくやっていくかというのがOKRだと思っています。

例えば我々FORCASでは直近、「最高の仲間を集める」というObjectを置いているんですね。ユーザー価値をどんどんつくっていくために仲間が足りなくて、みんなの身近にいる人の中から最高の仲間をどんどん集めていこう、みたいな感じで始めました。

なので、ウィークリーのミーティングで話すときも、それがメインなんですよね。「どうやって最高の仲間を集めていくんだ?」みたいな祭なんですよ。だから別に売上とか細かい数値に結びついている必要がなくて、ビジョンに紐づいた祭を定期的に興していく、みたいなものがOKRじゃないかなと思っているので。ぜひ、OKRをやりましょう。

(会場笑)

酒居:いかがですか、橘さん。

:でもそれで言うと、OKRのフレームワークを導入していないだけで、似たようなことはやっていますね。佐久間さんの今おっしゃったことともすごく似てますし。

鈴木:「プロジェクト花形」って、完全に同じオーラを感じますし。

:フレームワークは、僕もけっこう重要視しています。THE MODELとかユニットエコノミクスとか、そういうSaaS特有のフレームワークってやっぱり大事です。理解した上でやるかやらないかは、その会社とかカルチャーとか、運用コストとかその時々の判断によります。でも、フレームワークをちゃんと勉強するというのは重要だと思っています。

酒居:そうですよね。ぜひこれを機会に(笑)。本当に、みなさんが根底で考えていらっしゃることは実はけっこう近くて。自社のビジョンであったり、ユーザーさんに向かって何が一番良いかたちなんだっけというところから、目標設定を考えることができているのかということですね。

事業のフェーズによって、いろいろと変わってくることはあると思うんですけど、そこはみなさんはずっと変わらずに持たれているのかなと。それが結論なのかなと思ったんですけど……大丈夫ですか?

鈴木:大丈夫です(笑)。

酒居:では、お時間がきましたので、このパネルセッションに関してはこちらで終了させていただきます。御三方、どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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