2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:株式会社ネットプロテクションズ
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酒居潤平氏(以下、酒居):では第2部のパネルセッションを始めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
もうすでにご登壇いただくパネリストの方々には座っていただいていますので、一人ずつ簡単に自己紹介していただければと思います。まず橘さんから、よろしくお願いします。
橘大地氏(以下、橘):みなさん、はじめまして。弁護士ドットコムの執行役員で、クラウド上で契約を締結するサービス「クラウドサイン」の事業責任者もやっております、橘です。
月額1万円という安価なSaaS事業をやっておりまして、電子契約サービスは私たちクラウドサインが先駆的にやっているようなイメージをお持ちかもしれませんけれども、日本のトライアンドエラーでいくと、実は10年前から10サービス以上がやっています。
とはいえ、自社では良いと思ったサービスでも、相手方がハンコを導入していると躊躇するような仕様が特徴だったんです。これをプロモーションとかUI・UXを加味してトライしていったのが私たちで、今では利用いただいている会社が、だいたい4万を突破しています。我々の進捗としても、良いグロースペースになってきているというような段階でおります。以上でございます。
酒居:よろしくお願いします、ありがとうございます。
(会場拍手)
橘さんとは、打ち合わせさせていただいた段階から衝撃的なことをいろいろと聞いていて、すごく勉強になりました。あとで、詳しくお話をうかがいたいなと思います。よろしくお願いします。
酒居:続いて中原さん、よろしくお願いします。
中原雄一氏(以下、中原):はじめまして、ネットプロテクションズの中原と申します。ネットプロテクションズは決済の会社なんですが、なかでもBtoBに特化した決済事業の責任者をしております。
今日の話においての特徴が2つあるんですけど、1つがSaaS的な感じでサブスクでやってはいるものの、決済で請求業務をすべて任せていただくという事業をやっていることです。他のSaaSと比べて、年間コンテントでいくと90万くらいなんですが、トランザクションがめちゃくちゃ多いです。
そこに対するオペレーションと、あと未回収のリスクも負っています。リスクコントロールも領域として入ってきてるので、若干複雑性が高いところが特徴です。
もう1つは、ティール組織っていうものも講じています。ホラクラシーとけっこう近いんですけれども、それを事業志向ではあるもののボトムアップでやろうとしていると。カンパニー制度よりはティールというか、フラットなかたちでやっているのが特徴だったりします。
そのあたりでどういうカルチャーを目標設定しているのかといったところについて、今日はお話しできればと思っております。
酒居:ありがとうございます。よろしくお願いします。
(会場拍手)
ネットプロテクションズさんは組織づくりやチームの雰囲気づくりにすごく力を入れられてて、すごくおもしろいなと思うところがお話を聞いていてあったので、ぜひそういったところを聞ければと思います。よろしくお願いします。
酒居:では鈴木さん、よろしくお願いします。
鈴木大貴氏(以下、鈴木):みなさん、はじめまして。HiCustomerの鈴木と申します。
よろしくお願いします。我々はカスタマーサクセスの管理プラットフォームを提供している会社で、プロダクトはこの前の12月に正式リリースしたばかりです。国内でカスタマーサクセスにすごく力を入れている企業に活用していただいておりまして、今日お話をされている橘さんの、クラウドサインさまでも導入いただいています。
我々のプロダクトで具体的にどんなことができるかというと、ユーザーがあまり使っていなければ「退会リスクがあるんじゃないか」「このお客さま、クロスセルの機会があるんじゃないか」といったスコアリングを行うことで、カスタマーサクセスチームのパフォーマンスを最大化するものとなっています。
HiCustomerは、セットアップを行うと半自動的にCSチームのオペレーションのルールを決めることができたりするので、カスタマーサクセスチーム立ち上げのタイミングでご相談いただくことが結構多くなっています。
会社はまだまだシード・アーリーのフェーズではあるんですけど、どんな感じで会社のメンバーが増え、チームができ、その後の目標管理のマネジメントをどんな感じでしてきたかというところについて、まだまだフェーズの浅い会社なんですけれども、お話ができればなと思っております。よろしくお願いします。
酒居:ありがとうございます。
(拍手)
鈴木さんは我々FORCASと同様に、今まさに事業の立ち上げをやっていらっしゃるというところです。そういった立ち上げ期における目標設定みたいなお話も、ぜひうかがえればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
酒居:最後に、私は株式会社FORCAS マーケティング&ブランディングチームの酒居と申します。今回は僭越ながらモデレーターを務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
それではさっそく、お話を進めていきたいと思います。今回のパネルセッションは「B2Bサブスクリプション組織の目標設定」というテーマで、いろいろとお話を聞いていきたいなと思います。
事前に(参加者の)みなさんにおうかがいしたいんですが、この中でSaaS企業の方ってどれくらいいらっしゃるんですか?
(会場挙手)
あっ、けっこう多いですね。ありがとうございます。半分以上ですかね。じゃあその中で、そういった組織を作られている経営者の方であったり、事業責任者の方であったり、マネジメントサイドの方ってどれくらいいらっしゃるんでしょうか?
(会場挙手)
こちらも多いですね、やっぱりテーマ的にそうですね。3~4割くらいでしょうか。ありがとうございます。
この組織の目標設定に関しては、営業やマーケだけの話だけじゃなくて、プロダクトにも関わってくるお話だと思います。そういった全体的なお話ができればと思いますので、よろしくお願いいたします。
まず、目標設定ってそもそもどう考えるのか。OKRを実践されてるのは鈴木さんのところですよね。
鈴木:はい。登壇3社のうち、僕たちのチームしかOKRを導入していないと。控室で聞いて超びっくりしたんですけど。今日のセッション、どういうテーマだったっけって思うんですが(笑)。うちはOKRを導入しております。
(会場笑)
鈴木:あとの2社はOKRは入れていないですけれども、ではそういった目標設定についてどう捉えられていて、組織をどう動かされてるのかについておうかがいしたいと思います。まずは橘さんから、そのあたりについていかがでしょうか。
橘:弁護士ドットコムでは、全社統一仕様の評価制度というのがございまして。まず目標設定って、目標の達成度に応じて人を評価し、昇格・昇給、降格・降給の基準にするという、やっぱり平等性の評価値設定というものがあります。給与決定の評価制度というのはもともと全社的にやって、それに倣っています。
OKRってどちらかというと、そういう評価制度というよりは、より大きなチャレンジングな目標設定をして、その進捗度を管理するというものですよね。それでいうならば、クラウドサインという事業部においてはあえてあんまり目標設定をしていません。
それがなぜかというと……もしかしたら今日のセッションの話を聞いて、明日には違うことを言っているかもしれないですけど。
(会場笑)
少なくとも今日までは、目標設定って「なにかを設定しないと人は努力をしない」とか、インセンティブとかを付けて「お金が動機じゃないと人は動かない」みたいな、根底にある人への信頼があんまりない気がしています。
僕たちは「ユーザーのために何ができるか」ということしか考えていなくて、あんまり数値目標は頭にない感じですね。
酒居:なるほど。極論「目標設定っているのか?」というお話ですよね。でも結論としては、組織の一人ひとりがお客さんの方を向いて走っていれば、結局ちゃんとみんなが同じところへ行くから、「目標なんていらないんじゃない?」ということですよね。
橘:はい。人はお客さまのためにモチベーションも保ちますし努力もするっていう。やっぱりそこは根底にあるんじゃないでしょうか。
酒居:なるほど、たしかに。ただ、そうは言うものの、やっぱりお客さまと直に接してるかどうかの差はあると思います。例えば営業やカスタマーサクセスの人だったら、ユーザーと直接触れ合える機会が多いと思いますけれど、マーケとかそれこそプロダクトを開発する方とかって、どうしても直接の接点を持ちづらいのかなと思います。そうすると、ちょっとイメージが沸きづらいところもあるんじゃないでしょうか。
橘:そこはけっこう透明性重視でやっていて。Slackのオープンチャネルで情報は共有しています。目標設定をしていないと言うわりには、数字はめちゃくちゃ毎日ウォッチしていて。それこそエンジニアもマーケも、全組織が見ているんですけど。ただ、それを必達目標みたいに数値管理をしていないだけです。みんなが数字を見て、お客さまの情報を見て、エンジニアも日々顧客がどう思っているかをすごくウォッチしています。
酒居:その「数字はきっちり見ているけど目標がない」っていうのが、僕にはあまりイメージできていないんですが。それってどんな感じなんですかね? その数字って目標じゃないんですか?
橘:一応数字としての目標を立ててはいるんですけど、結局ブレるし。みんな、毎日がんばっているじゃないですか。それを月ごとに切って、例えば「とりあえず何千のリードを目指そう」とか、そういうのにあんまりまだピンときてない。
酒居:短期的な数字だけ、定量的なデータだけですべてを見るというのはどうなのか、ということですか?
橘:仮に月1,500を目標にしたとして、「2,000いきました」となったら次は2,100を目指すべきだし、季節性の理由とか外部環境で1,000しかいかなかったのなら、次は1,100を目指すべき。だとしたら、1,500というバーを設定する意味って何かあるんだろうかと思います。目安っちゃ目安なんですけど、そのために事業をやっているわけではないっていう。
酒居:なるほど。組織的な義務感というか、組織的な理由で作る数字には意味がないんじゃないかってことですね。
橘:今のところそうなりますね。今日のセッションを通して、この考えを覆すかもしれません……FacebookとかGoogleとかはOKRをやっているんで。たぶん自分が間違ってるんだろうなと思いながら。
でも、納得できない他人のフレームワークをいきなり導入できるような性格じゃないんで、今のところはまだなんともいえないです。
(会場笑)
酒居:ありがとうございます。ちょっとそこもどんどん、みなさんで深堀っていきたいですね(笑)。
酒居:では、次は中原さん。どういう目標設定をしているのかとか、組織としての取り組みについてお願いします。
中原:今の流れ的にアレなんですけど、僕も完全に橘さんとカブリなんで……。
酒居:すごいですよね(笑)。
(会場笑)
中原:数値目標を置いてそこに向かうことを絶対とするのって、ユーザーさんのために事業をやってないなって思っちゃう派なんです。組織全体としてやっているのはさっきの話と通ずる部分があるんですけど、カルチャーとしてというか概念として、OKRとかなり近い考え方でやっています。
一人ひとりが事業へ何のために向かっていて、例えばこの1年ではどんな方向性で向かっているのかと、最終的に目の前の仕事を何のためにやっているかと紐づけることであったりとか、チャレンジするようなアプローチをしようねということについては、同じ考え方でやっています。ただ、それをOKRってかたちではやっていないです。
その理由は先ほどの話と同じなんですけど、やっぱり数字とか制度として置くと、そのHowとか具体的な数字に引っ張られちゃって、そっちを正として動いちゃうみたいな。それは本質的にやりたかったことじゃない、って思うんですよね。なので、あえてそういう制度とかには則っていないって感じではあります。
酒居:なるほど。極論の話ですけど……営業が「私はもう今月150パーセント達成しましたのでもういいですよね?」みたいになると、おかしくないか、と。やっぱり数字の引力ってすごく強いというのは、この間もおっしゃられていましたね。
酒居:数字を設定すると、逆に評価とか目標に納得しづらくなるということなんですかね。
中原:そうですね。例えばなんですけど、我々のビジネスモデルだと、とあるすごく大きなクライアントさんに導入してもらえると、仮に目標数字・営業的なノルマがあったとすると、それ1発でほぼ年間の目標を達成しちゃうんですよね。
対して、たまたま取った案件が小さかったけれど、きちんとアプローチをしていて、正しい行動ができていて、マーケの人たちに良い情報をあげて、より次の展開につながることを一緒に取り組んだ人と、どっちを評価するのかと。
それを目標管理ってかたちで数字があると、「これ、達成しましたよね? これじゃ、なんでダメなんですか?」っていうコミュニケーションが終わらないと思うんですよね。納得感が生まれないと思うので。だったら、そもそもないほうが良いよねという考え方は、けっこうあると思っています。
酒居:人事評価というか、自分の評価と目標数字の紐づきが気になるし、そこへの納得感というところでも、定量だけだとフェアじゃない気がしてしまうってことですよね。
中原:そうですね、数字はけっこういじれちゃったりもするので。全体のバランスを崩してでも数字を取るっていう、ネガティブなインセンティブを働かせちゃうので、あえて置かないようにしていますね。
酒居:なるほど、ありがとうございます。ということで、中原さんも「目標設定はいらないんじゃないか」ということですね。
(会場笑)
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