リクルートキャリア女性部長とメスライオンの出会い

――同じ人材業界で活躍する、お二人の出会いのきっかけは?

植村友恵氏(以下、植村):私は前から、メンバー経由の話で宇田さん(宇田川氏の愛称)を知っていたんです。通常の人事って、あんまりバイネームで社内で話題になる人はいないんですよ。

例えば「A社さんに行ってきます」と社名で言うことが多いんですけど、宇田さんの場合、どの会社にいても「宇田さん」という名称で出てきて。「植村さん、今日も宇田さんがマジやばかったです」とか。

宇田川奈津紀氏(以下、宇田川):やばいって、良い意味?(笑)。

植村:「こんなにバイネームで出てくる人事ってどんな人なのかな?」って、ずっと興味があって。メンバーに聞いたら、メスライオンの記事が送られてきて「これです」と。

うちのアシスタントさんまで、宇田さんとすごく仲が良くて。宇田さんが3社目に行った会社も、また私のメンバーが担当していて、「植村さん、メスライオンがついにサウス(グラントウキョウサウスタワー)にやって来ます」と。うちの会社のビルにやって来るという話があったので、ぜひお目にかかりたいということで。

メスライオンの記事でもすごいエネルギーだし、武士みたいな人じゃないかと思って、けっこうドキドキしてたんですけど。会ってみたら第一印象がすごく……お世辞じゃないんですけど、女性らしい愛情があるなと思ったんですよ。

仕事に対する愛情というか、自社をどう伝えればいいのかなと思っているところとか。第一印象は、愛情にあふれたとても女性らしい人で、あんまりメスライオンという感じがしなかったです。

宇田川:ありがとう。それ太字でお願いします(笑)。

(飲み物を注文)

植村・宇田川:乾杯ー!

メスライオンのスカウト文の極意は文豪譲り?

宇田川:最初に私たちが意気投合したところが、キャリアの話じゃなくて太宰治なんですよ。「スカウトの文章でどんなことを書いているか?」という話になって。コーディネーターや紹介会社でもスカウトを打ったりするから、いろいろ話をしていました。それで、「結局ひらめきじゃない? センスがないからひらめきが必要なんだ」という話をして。

そのときに「文豪がめっちゃ好きで……」って言ったら、(植村氏の)目がキラっとして。太宰治とか芥川龍之介とかめちゃくちゃ好きだし、文豪から得た知識でスカウトを書いていると言ったら、「私もめっちゃ好き!」って。

植村:最初に2人で飲んだときに、確か5~6時間くらい飲んでいるんですけど、ほとんどが宇田さんの文章とスカウトの話でした(笑)。

宇田川:「なんなの、その驚異的な返信率は!?」という。

植村:そうそうそう。「文章にはその人の思考や考えが出るから、私はそこにこだわっている」という話で、太宰治の話で意気投合したんですよね。

宇田川:あと、彼女は飾らないんですよ。

植村:私はあんまりキラキラ系ではなくて、スーツももはやのび太とかサザエさんみたいに定番のものが一番いいみたいな(笑)。地味ながらこだわりが強いところが、たぶん宇田さんと気が合う部分かもしれない。仕事の話もそうなんですけど、けっこうプライベートでも意気投合する感じですかね。

生涯営業、マネージャーはやりたくない

――植村さんはリクルートキャリアの女性部長、宇田川さんはメスライオンかつネオキャリア中途採用部の部長としてご活躍されていますが、どんなふうにキャリアを積んでこられたんでしょうか?

植村:私はあまり人の参考にならないタイプなんですけど。もともと母親が専業主婦で、小さいときから「お父さんに聞いてみないとダメ」と言われていたのがすごく嫌で。「お母さんの意志はないの!?」と常に問い詰めていたんですよ。

なので、小さいころから、大人になったら絶対自活して、だいたい年収1,000万くらいでゴリゴリに稼げる女になりたいと思っていました。

宇田川:あ、いいね。

植村:幼稚園の時も将来の夢は、手に職で稼げそうだから、大工。就活のときも、男女の差がまったく関係ない業界に行きたいと思っていたので、新しい産業じゃないと絶対無理だと思って。

2005年当時は、情報系のITか人材が若い産業だなとその時は思って。情報にはあまり興味がなかったので、前職の人材系の会社に入ったのがキャリアの始まりです。前職に2年くらいいて、リクルートは今年で13年目くらい。

宇田川:へぇ~。部長に任命されたのはいつ? 何歳で部長になったの?

植村:今年の4月で部長になって3年目です。ちょうど30歳くらいでマネージャーを3年半くらいやって、部長になったのが34歳ですかね。

宇田川:すごーい!

植村:もともとマネージャーすら、ぜんぜんなる気がなくて。私、営業がすごく好きで、営業で稼いでいこうと意思決定していたんですよ。リクルートって「Will Can Must」というものがあるんですけど、2~3年後に何がしたいか? というWillのところに「マネージャーはやりたくない」って書き続けてたんです。

宇田川:(笑)。

「絶対にやりたくない仕事」に向き合った転機

植村:私はプレーヤーがいいと。だから新人が入ってきて、「植村、教育担当やってくれ」と言われても、冷静に「お断りします」って言って。その代わり、「私に売上の目標数字をどれだけ乗せてくれてもいいので、教育担当はやりたくない」ってずっと言い続けてきました。

ずっと営業プロフェッショナルでいこう、と思っていたんですけど、たぶん当時は人材不足で、いきなりマネージャーの辞令が来ました。「マジか!?」という感じで、やりたくなくて3ヶ月くらいグレてましたね(笑)。

宇田川:それで改心したのは、何があって? もう逃げられないなって思ったの? 

植村:きっかけが2つあって。1つは、マネージャーになると決めたとき。お客さんですごく仲良くしてくれていた役員の方に、「すごく悩んでるんですよね」という話をしたんです。そのときに「俺は営業担当の植村ちゃんに言うことと、管理職の植村ちゃんに対して言うことはぜんぜん違うよ」と言われて。

「その世界を知らないって営業としてどうなの?」と言われて。確かにそれって(知ることが)必要だなと思ったのが、マネージャーを真剣にやろうと思ったときです。

もう1つは、メンバーがどんどん育ってきたこと。よく考えたら、自分が介在して対象が良くなることがすごく好きだから、営業が好きだったんですよね。メンバーにも同じことが起きてきて、私に向いてるのかなと思い始めて、3ヶ月経ってから本腰を入れ始めました。

宇田川:彼女のいいところは、拗ねていないんですよ。腹黒くないんですよ。要求されたものを受け入れるところがあって。私は「経営者の言うことにノーはありません!」「イエス! やります! できます! がんばります!」というタイプなんですけど。

彼女はそうじゃなくて、ちゃんと自分で腹落ちさせる。迷うけど、腹落ちしたらそれをやり切るところがすごくあります。

植村:あ~、あります。私、小さいころから意志が強くて頑固で。だから逆に自分にこだわっていると世界が広がらないし、自分なんて基本たいしたことない人間だという前提から始まっているので(笑)。

人様が言ってくれたことは素直に受け取って、それなりに腹に落としてやっていけば世界が広がるんじゃないか、という哲学があります。

10年本気で生きたら、人生は変えられる

宇田川:素直だよね。それはすごく思う。私は彼女からすると、ぜんぜんエリートじゃないわけですよ。寝ずに努力してトップ営業になって、私の人生これから花開く!と思っていたら27歳で会社が東証一部から没落して。

どん底にいたとき、うちの祖父の「お前はそんなにいいお家柄に産んでやれていないけど、お前の人生10年本気で生きたら、自分の人生変わるんじゃないか?」と言ってくれて。その言葉だけを信じて、「向こう10年独身で仕事貫いてやる」と思って走ってきましたね。

崖っぷちの人生を立て直す時間が10年。本気でやってみたら、37歳でありがたいことに世間様が「メスライオン」と呼んでくれたから、祖父が言っていたことは合っていたなって。自分の人生を立て直す、強い会社を作る、自分の介入価値(を高めること)が本当に(実現)できたから。

私も小さい頃から自立した女になると思っていました。私は私で、独立した生活を送れば、欲しいものは自分の力で手に入れられる感覚があって、それはすごく共感できる。

逆に言うと、自分の中ではすごく遅咲きだなって。メスライオンになるまでは敗者復活戦みたいだったから、ずっとエリートで来た人たちは輝かしくて気が合わないんじゃないかなと思ってた。

植村:あ~、なるほど。

宇田川:あなたが女性部長と言われているのと、私がメスライオンと言われているのは、たぶん最初に先行しちゃうイメージがあって。でも、会って話してみたらすごく違ったね。

植村:確かに。私は基本的にネガティブギャップをうまく使う術を常に考えていまして。たぶん女性部長という肩書も、普通に生きているとツンツンして見えたりすると思うんですよね。 相手がどう思うんだろうというところで、ちょっと柔らかい雰囲気でいくと「あ、なんかいい人なんじゃないか?」という。

足軽からのし上がった「戦国武将」と戦わずして勝つ「職人」

宇田川:それ、プライベートで活用してるの?

植村:プライベートはひた隠しですよ(笑)。本当に。私、バレエとフラメンコ習ってるんですけど、「植村ちゃんって何やってるの?」とか言われたときに、 「あ、普通にせこせこ営業やってます」みたいな。

宇田川:(笑)。

植村:30代女性のキャリアの共通点としては、小さいころから自活したいと思っていた部分。

宇田川:私も典型的な江戸っ子なので、男性が強い家系で育っていて。

植村:私も広島ですからね。

(飲み物を注文)

宇田さんのキャリアの築き方って、戦国武将的なところがあると思うんです。それこそ足軽で始めて(笑)。

宇田川:そうそう! 足軽(笑)。

植村:何人くらいの軍を見てという。

宇田川:いいお家(上場企業)で育ったのにお家断絶になり、足軽からリスタート(笑)。

植村:宇田さんはそういうキャリアの築き方で。私が昔から大工になりたかったのって、 職人になりたかったんですよ。そういうところから、今はマネージャーになって、マネジメントがおもしろいなと言ってるので。

たぶん、キャリアの築き方のパターンはぜんぜん違うんですけど、そこに持ってきたエネルギー量が大きいことは共通しているかもしれないですね。

私は「戦わずして勝つ」がポリシーなので(笑)。女性で自活となったときに、いかにマイノリティになるかをすごく考えています。だから、職種で言うとマーケや事務じゃなくて営業。マネジメントはさらに人が少ない。そうしたほうが最終的にずっと稼ぎ続けられたり、自活に近いと思っているので。

宇田川:彼女が言っている「戦わずして勝つ」というのは、敵を作らずに巻き込みながら前進する。私は「攻撃に勝る防御なし」みたいな感じの人間だから(笑)。

植村:そこが違いますよね。

宇田川:お互いに違うから、自分の戦いが間違ってるのかなって。「今マネジメントに悩んでいるよ。植村ちゃんだったらどう軍を率いる? どう思う?」という。言い方がやらしいですけど、正直この階級になれば、政治力というのもあったりするじゃない。女性はまだまだ少なくて、肩を並べている人たちはみんな男性だし。敵視しているわけじゃなくて。

植村:そうですね。

宇田川:仕事をしているときにいつも、私はこう思っているけど、植村ちゃんだったらどう思うのかな? って思う。

植村:うんうん。いい意味で違うから相談し合えるというか。わりとポジション的にも一緒なので、そこが関係性としてすごくいいですよね。

より大きく多くを変えられるのがマネージャーの醍醐味

――植村さんは最初、マネジメントに抵抗があったとおっしゃっていて。宇田川さんはどうだったんでしょうか? 

(植村氏が肉を焼き始める)

宇田川:ごめんね。いつも焼いてくれる。

私はどちらかと言うと、マネジメントをやりたかったタイプなんですよ。マネジメントをするにもメンバーを黙らせるくらいの営業成績を築いた人間じゃないとたぶんついてきてくれないな、というのがあって。

植村:ほんとに武士だなぁ(笑)。

宇田川:それこそ自分より年上の人をマネジメントするときには、この人だったらこの砦を守ってくれると思ったら、「戦に勝つにはあなたの持っている能力が必要です」と伝えるようにしていて。

植村:確かに。さっきから言っているんですけど、宇田さんの発言って、本当に武士感がすごくあって。「自分の砦を守れるか」とか(笑)。

宇田川:言ってる、言ってる(笑)。

植村:私はそのエネルギーにすごく元気をもらうところがあります。

宇田川:ずいぶん戦国武将の話をしてるもんね。マネジメントをやりたかったのは、大きく、多くを変えられるから。たぶん自分がプレーヤーをやる(ことで積み重なる)数字よりも、全体の意識が統一されて、大きく多くを変えられたほうが影響力がある。自分が戦術をやってみて、それをマネジメントという戦略で動かすってどういうことなのかな、というのにすごく憧れがあって。

植村:へ~! すごいなぁ。

宇田川:トップ営業マンで部長の給料を抜く人はいるかもしれないですけど、トップ営業マンのその先は? というのがあって。一生できないだろうし、というのもありました。

植村:私はぜんぜん、そういうのはなかったなぁ。父親がサラリーマンをしながら絵を描いてたから、小さいころから価値観において、「世間でいいと思われることよりも、自分がいいと思うことをやる」という気持ちがあったんですよ。

わりと世間的な出世云々には興味がなくて、自分がいいとか、人生経験になるものをどう積み重ねるかということだけにすごく専念していました。自分を使い切って死ぬという目的以外は、あまり宇田さんみたいに設定していなかったですね。宇田さんのその考え方自体が、すごくなるほどと思います。

宇田川:(お肉を食べて)めっちゃおいしいよ、これ! 

植村:よかった、よかった。確かに、めっちゃマネジメントをやりたかった人と、そんなにやりたくなかった人という対比でも、ぜんぜん違っておもしろいですね。

自分の見積もりが高すぎる人ほど自信が持てない

――世間一般では自信がなかったり、管理職になりたがらない人も多いですよね。

宇田川:私はたぶん、承認欲求がすごく強いんだと思います。兄2人と私の3人兄妹で、父が兄2人にはキャッチボールを教えるのに、私には「お母さんの手伝いをしていなさい」と言うところがあって。男性だ女性だ、と制限されたことへの反発がすごくあったと思う。

(お肉をお皿に入れてもらって)ありがとう。

植村:ちなみに私は、めっちゃ自信があるんですよ(笑)。自信がないと思ったことがなくて。「できなかったらどうしよう」と思う人は、自分の見積もりが高すぎるんだと思っているんです。

だって、できるかどうかわからないじゃないですか。「できる」と思って取り組むから、できないことに失望するというか。「できないものがあるだろう」と思って取り組むことが自信なんじゃないかと思っているところがあります。

宇田川:名言出したね。

植村:私が管理職をやりたくなかったのは、自信がなかったというより、一番反抗的な部下として、ずっと上司とぶつかってきたからなんですよ。押さえつけて「お前はこれをしろ」と言うのも嫌だったし、人の上に立っているくせに部下の将来を考えないとか。

私はそういうことがいちいち気に障るタイプで、転職したばかりなのにマネージャーを部屋に呼び出して、「あなたのマネジメントはここがイケてないと思います」って言ったり(笑)。

宇田川:え~!

植村:すごく扱いづらいと言われていて。管理する側になると脳みそが減退するから、管理職はやりたくないとずっと思ってて。だからアンチでした。

宇田川:私は逆に、グーっとKPIや圧力で押さえつけられたときに、「管理されなくても絶対達成するから私を管理しないで」と思っていて。私がマネジメントをしたらこのやり方はしないという反発がありました。

もちろん、言われないと動けない人は管理されるのかもしれない。でも「こうやって目標を立てて自分で追ってくものなんだ」って伝えてその本人が理解できたらやる気につながるかもしれないじゃない? 今ってそうじゃない?

植村:今はそう思ってます。マネジメントをそういうふうに(ネガティブに)解釈していたので、やりたくなかった。マネジメントに対する解釈の仕方があるかもしれないですね。

宇田川:自分が受けてきたものを「これだ!」と思ってマネジメントする人と、自分が受けて「なんでこんなやり方するんだろう」って思って……。

植村:そうそう、違うやり方をする人と。反面教師にするかどうかですよね。

自分が見つけてきた部下を「どこまでも信じる」

宇田川:私は自分がされたことを人にはしたくない、という気持ちがすごくあったなって。例えば上司に月末に「ドカンと成績を上げろ」と言われるより、なぜ上がらないかの理由を聞いてほしいと思っていたし。

自分が担当しているクライアントは、この売上はもう限界なのかもしれないし。そういうことを建設的に話せる上司がいたら、たぶん違う戦い方ができる。この間、男性の部下をどうマネジメントするかで意気投合したことがあったよね。

植村:ありましたね。

宇田川:男性は(自分が)何歳になっても(相手が)何歳年下であっても、きっと「俺は男だ」というのはあるよねって。そうしたときに、上司だから頭ごなしに上から押さえつけるんじゃなく、基本褒めて伸ばそうという。

植村:そうそう! そうです。自分がされてすごく嫌だった高圧的なマネジメントをする必要はまったくなくて。変な負の遺産を受け継ぐんじゃなくて、女性的な感性を活かしてマネジメントを捉えたときに、人に対する愛情が深く持てますよね、という話をしていました。

そこから、さっきの(男性の部下の)話にいきましたね。マウント感覚も全然ないし、純粋にすごいと思ったら褒める。いい気持ちなって成長してくれたらいいよね、という。

宇田川:「そのアイデアすごいじゃん! やってみなよ!」というところが言えると。別に男性を手の平で転がしているわけじゃないですけど、その人が褒められてやりがいを感じたときの爆発的なパワーというものがあるよね。

――褒めて伸ばすところなど、お二人のマネジメントの考え方も近いんでしょうか?

宇田川:私は自分が見つけてきた部下なので、どこまでも信じているんですよ。信じているから、「これやるって言ったのに、なんでやらなかったの!?」という言い方は極力避けていて。今日も「私、あなたはできるって信じてるよ。やれるのになぜやらなかったの?」という話をしたんですよ。

「これでいいや」って手を抜いたら、自分の人生のチャンスを逃すことになっちゃうんだよ、って。この仕事に挑戦したことで、私はあなたにもっと大きい仕事を渡すかもしれない。あなたよりスキルが高い人がやっていることを教えるかもしれない。

「私も最初は何にもできなかったの。でもね、自分の人生のステージを面倒くさいとかで捨てたり諦めたりしないで、私は、あなたの能力を信じるよ」ということをけっこう情熱的に伝える感じですね。でも、彼女はたぶん違うやり方をすると思います。

「本人が気づかない良さを引き出す」という責任

植村:私は、メンバーは預かりものだと思ってるので(笑)。預かっている責任があるときに、私が彼・彼女たちのキャリアに関わってなにを残すのか、ということをすごく考えてるから。けっこう育成観点が強いんですよ。

こういうふうに成長してください、というモデルもないし。私の感覚では盆栽に近いんです(笑)。この枝はあなたにとってすごくいい枝だからこれは残して、この辺は剪定するとすごく見栄えが良くなるよ、とか。この辺がすごくコアだから、ここはすごくいいと思うよ、という。

自分のことは自分で気付けないから。すごく立派な盆栽になりたいと思っていても、「あなたにとって、たぶんこの枝はすごくいい枝だよ 」と言われて初めて気づく部分がある。そこへの向き合い方はすごく大事にしてるんですね。

――マネージャーというよりメンターのような感じですね。

植村:あ、メンターにすごく近いと思いますね。メンターなんだけど、仮説をぶつけながらじわじわと深く気持ちに入っていく感じが好きなんですよ(笑)。気付いたら、言われたことが頭の中でリフレインしているような状態が私の中で理想(笑)。

宇田川:マネジメントの仕方も違うんですよね。私のメンバーはすごく情熱、熱血というメンバーが集まってくるんですよ。「宇田川さんすみません! 自分が悪かったっす! もう1回チャンスください!」みたいな。

「よっしゃー!わかった!!」「やるぞー!」という感じなんですよね。情熱! パッション! という感じなので。そのやる気さえあればやっていけるし、戦える。

私は今、3,000人を超えるネオキャリアで中途採用を担当していて、会社の成長にどう並走するか、日々PDCAを回していて不安なこともすごくあるんですよ。メンバーは人事経験がすごくあるわけでもない。だけど、努力家で闘争本能はすごく強くて。

できるかできないかで迷う自分もいながら、「やらない」という選択肢がないだけなんですよ。例えば、私が42、43歳になった時、プロダクトを作りにいく、お金を作りにいくのか、それとも自分で独立するのか、部長としてもっと高いことをやり切るのか。

四十路の私にいくつもの選択肢があったなら、20代の人たちに「あのオバハン、なんかぶっ飛んでてハンパないことやってるな!」って。私にはそれを見せることしかできなくて。歳を取ったらどんどん選択肢がなくなっていくじゃない? でも、自分が会社や世の中から必要とされるチャンスはいくつでもあるよ、ということを見せられたらって思う。