車輪を再開発しているようなICO

前田恵一氏(以下、前田):お話うかがっていて、問いというものがクリエイティビティの根源になってくるというのは、まさにそうだなと思いました。一方で、みなさんが具体的にどういう働き方に変えていこうとされてるか、といったところをぜひお伝えいただきたいと思ってるんです。

たぶん「こうやったほうがいい」っていうものはみなさんの頭の中にあると思います。そこで、実際にどういう取り組みをされてらっしゃるかとか、どういうものが今どういった現象を生んでるかみたいなところを、肌感でぜんぜん構いませんので、やってらっしゃることも踏まえながらパッとご紹介いただければと思ってます。

斉藤賢爾氏(以下、斉藤):(私は)慶応大学の湘南キャンパス、SFCというところにおります。そこにはすごく起業マインドあふれる学生たち、みなさんみたいな学生がたくさんいます。すごいアイデアをたくさん持って研究会に臨んできて、「こういうことやりたいんですけど」「すばらしいね!」ということをやっています。

ところが、「でも、マネタイズの仕方が分からないんです」とか言い出すわけですよ。今何年だって話なんです。「マネタイズなんか問題じゃないだろう、お金なんか刷ればいいんだから」って言うんですよ。

(会場笑)

斉藤 : ちょっとICO(Initial Coin Offering)っぽく聞こえるかも知れませんが、ICOについては私は批判をしています。ICOって全然新しくないんです。400年くらい前からやっているので。400年前にやってたのは、ヨーロッパの人たちが「東の方にスパイスがあって、持ってくると、すごくボロ儲けしそうなんだけど、ちょっと資金がないので一口乗らない?」みたいな話なんです。東インド会社ですね。

株式のはじまりですが、その頃は、すごくワイルドだったと思うんです。それを400年くらいかけて整備してきたやつをICOでやって、またインフラ前のワイルドな状態にして、「またこれから整備しよう」「また歴史繰り返すなよ(笑)」みたいにやっているように見えるんですね。

北野唯我氏(以下、北野):車輪の再開発をしているみたいな感じですね。

斉藤:「もっとやり方考えませんか?」「コントリビューションベースに、そういうことをやった方がいいんじゃないですか?」という感じです。

Amazonは本当に営利企業なのか?

北野:これ、NPO以外はダメなんですか? 例えばメルカリとかもすごく壮大なビジョンを掲げていますけれど、別にNPOには限らないですか?

斉藤:NPOに限らないんですけれど、例えばAmazonは営利企業か? という疑問があります。

北野:ほ~。これはおもしろい問いですね。

斉藤:Amazonは株主のためになにかやっているのでしょうか?

北野:確かに。

斉藤:キャピタルゲインがあるので、株主は文句を言わないのですけれども。

北野:文句はないですもんね。

斉藤:新しいことをやるのにバーンと投資していくから、実は彼らはNPOでは? と思うんですよ。

高橋:それはそうですね。完全にNPOですね。

斉藤:フィンテックの授業で一番最初に言うのは、トヨタ対NPOなんです。「トヨタとNPOどっちが勝つと思う?」ということを言うんです。

北野:それはどういうことですか?

斉藤:要するに、トヨタは営利企業なので儲けていかないといけないのですが、そこに電気自動車や自動運転車を作って「NPOなので、どんどんばらまきます。そのためにファンドレイジングします」という人がやってきたら、どっちが勝つんだろう? ということです。

北野:おもしろいですね。これはまさに(伊藤)羊一さんが言っていたことですよね。とはいえ一方で、そのビジネスのフィールドで、上場企業の社長がやられているじゃないですか。

僕はジャフコという会社の、アジアのヘッドの渋澤さんという、伝説のベンチャーキャピタルみたいな人と話したときに、「ベンチャーブームは3回あった、今回のはガチだ、本物だ」と言っていたんですよ。

それはなぜかというと、まずその環境がぜんぜん変わってきていて、お金はもう死ぬほど世の中にあふれているから、別にお金を集めるなんて大したことないよ、みたいなことなんですね。

1億円の売り上げを立てるより、1億円集める方が簡単なんじゃないか説

北野:よく起業家の人が、「1億円の売り上げを立てるより、1億円集める方が簡単なんじゃないか」説をけっこう言うじゃないですか。そのくらいお金が集まってきている。でも、リーダーシップとか意志とかがぜんぜん足りない。

もう1つ、ベンチャーにものすごく優秀な人が適切な価格というか給料で入るようになってきていることがあります。これは今までの、いわゆる堀江貴文さんとかが作ってきたベンチャーバブルみたいなものとは明らかに違っていて、今回は本物だと思うと。そういったことを言っていたんです。

だからベンチャーって、VCの世界から見ても環境が変わってきているみたいなことをおっしゃっていて、すごくおもしろいなと思っているんです。

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