「新しい働き方」がテーマのセッションがスタート
前田恵一氏(以下、前田):それでは、今から第2セッションの「新しい働き方」というテーマで、この4名でいろんなセッションをさせていただきたいと思っております。まずは登壇者の皆様を紹介させていただきます。
お一人目は斉藤賢爾さんで、慶應義塾大学 環境情報学部で研究員をされております。インターネットと社会をテーマにした研究者です。
2000年からはSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)の方で、デジタル通貨やP2Pに関する研究をされていらっしゃいます。とくにブロックチェーン、AIに関する技術の動向にお詳しい方でございます。
お二方目は北野唯我さんです。この方は最近、みなさんのお目に留まることが多いかなと思います。とくに『転職の思考法』という本を出されて、これが2ヶ月で10万部のベストセラーになっている本でございます。私も読ませていただきましたけれど、転職エージェントも勉強になるような、そういう内容になっております。
お三方目ですけれども、高橋知道様です。一橋大学をご卒業されて、アンダーセン・コンサルティング、今のアクセンチュアにご入社されております。その後ソフトバンクにご入社されて、2000年から今の事業を始めていらっしゃいます。
もともとオープンアソシエイツという会社の名前で知られていらっしゃいますが、今はRPAを積極的にいろんな産業に導入する第一人者でございまして、今回はどんなふうに世の中が変わっていくかという観点でお迎えしております。
最後は石川聡彦さんです。実は彼はもともと前田塾生でして、選抜コースの8期に参加してくれていました。時期でいうと、4年前ぐらいになります。
当時は大学生でしたが、そこからご自身で会社を立ち上げて、人工知能を学ぶ、具体的に言うとPythonを使ってディープラーニングの仕組みを学ぶなど、そういうものに関するオンラインスクールの日本最大級のプラットフォームを運営しております。
数でいうと、公開100日でまずユーザー登録が1万人を越えています。100万回再生されるような非常にわかりやすい講義で、コスパもいい感じですので、みなさんもPythonや人工知能を学ぼうと思ったときには、ちょっとアクセスしてみてください。
以上4名の方を今回お招きして、「新しい働き方」をテーマとしたセッションを始めさせていただきます。それでは4名の方、ご登場よろしくお願いいたします。拍手でお迎えください。
(会場拍手)
これからの社会で求められる働き方
前田:それでは第1部同様、今後社会がどのように変わっていきうるのかという話を、最初のトピックにさせていただきたいと思っております。
先ほどのセッションでは、人工知能がどんどん世の中を侵食していく、もしくはデータを溜める、そのルールに従ったものはどんどんそちらに移っていくんだよ、みたいなテーマの話がメインでした。
4名が今見えていらっしゃる世界観の中で、今からどのように社会に、なにが必要なのか、そして我々がどういうことをそこから吸収して、どんな働き方が必要とされるかという文脈でセッションをしていければと思っております。
どなたからでもかまいませんので、(意見が)浮かんだ方から、「こういうふうに社会は変わっていき、こういうことが必要なんじゃなかろうか」ということをお話しいただければと思います。
(斉藤氏挙手)
前田:斉藤さん、いきますか(笑)。
斉藤賢爾氏(以下、斉藤):最初に喋るという訓練を受けているんですよ。
(会場笑)
この30年で、お金の世界は終わらせないといけない
斉藤:お金の世界の研究をずっとしてきているのですが、「お金はなくなるんじゃないか」「なくさなきゃいけないんじゃないか」と思っています。それはなぜかというと働き方と関係があって、(現在は)働いてお金をもらう、というかたちで人は生きているわけなんですね。
そういった不自由な生き方をしているわけですが、人はだんだん働けなくなるわけです。頼んでも働けなくなるような時代がおそらくやってくる。それはAIやロボットによって、今まで仕事だと思われていた部分が自動的に行われるような社会がやってくるからなんです。
そうした時にお金の世界を続けていると、よくあるベーシックインカムの議論みたいに「中央からお金が降ってくるので、それを使って生活してください」となると、その限られた予算の中でしか人は生きられなくなるんですよ。
「それは大丈夫なのか? それって奴隷ですよね?」という考え方があるので、貨幣経済ごと終わらせる必要があると思っています。「そのときに人の働き方はどうなるのか?」というと、お金が関係なくなります。
今もうすでに、お金と関係のない働き方をしている人たちがいて、非営利組織で働いている。NPOで働いている人たちなんですね。(人類)全体がNPOで働いているみたいな感覚になっていくんじゃないかなというのが、私の考え方です。
前田:ありがとうございます。冒頭からいきなりパラダイムシフトが起きるような……(笑)。なるほど。お金はいらない、みたいな話になってまいりました。ちなみに何年後ぐらいの未来を想定されてお話しされたのでしょうか?
斉藤:ゴールとしては、30年以内にお金の世界は終わらせないといけないと思っています。これはオートメーションの進化に呼応していて、そうしないといけないという考え方です。
前田:ということは2050年前後ですか?
斉藤:そうですね、2050年前後です。
技術的に可能でも、社会に浸透するまでには時間がかかる
前田:ありがとうございます。それでは(斉藤氏が一番奥だったので)順番にいきましょうか?
北野唯我氏(以下、北野):質問していいですか? 30年って、「けっこうかかるな」という印象を受けたんですけれど。そのボトルネックになっているものはどういうものなんですか? その30年を、15年とか10年とかにするために「ここが一番のキーポイントだよ」みたいなことがあるとしたら、それはどういうところなんでしょうか?
斉藤:お金がいらない社会のインフラみたいなものを、技術的にどれくらいで作れるかというと、3年以内にやらなきゃいけないと思っています。技術の準備としてはそのくらいでできるのですが、やっぱり社会自体の動きというと長い話になってくると思うんです。
あとはオートメーションのゴールですね。30年というゴールは、オートメーションがどのくらい浸透していくか、ということを考えた時のゴールなんです。それと関係がないのであれば、技術的なことに関して言うなら、たぶん3年以内ですね。例えば日本のどこかで3年以内に特区でやってみる、みたいなことは可能性としてはあると思います。
北野:なるほど。じゃあテクノロジーは先に行くけれど、それに対応する人の価値観みたいなものにけっこう時間がかかってしまうと。印象でいうとそんな感じでしょうか?
斉藤:そこも、変わる時はあっという間に変わると思うんですよね。日本の人なんかとくに打算的なところがあるので、一瞬で変わる可能性もあるとは思っています。
北野:なるほど。すみません、僕はいつもいろんな人と対談しているので、すぐ質問しちゃうクセがあるんです(笑)。
前田:どうぞどうぞ、助かります。
資本主義社会で勝つには、労働者から投資家に変わるしかない
北野:ありがとうございます(笑)。じゃあ次に僕の話をしますね。他のお三方はテクノロジーに強い方々だと思います。僕は働き方というか価値観みたいなところでというと、今の世の中の価値観はやっぱり、消費から生産というのがポイントかなと思っています。
そもそもこの資本主義の中で勝つための方法は、僕は2つしかないと思っているんです。1つは、よく言われると思うんですけれど、労働者から投資家になること。
要は資本主義の中で、資本家階級になるということです。もう1つは、生産する娯楽を持つこと。これが、この資本主義のラットレースから抜け出す方法の1つだなと思っています。