芸能界に向かない芸人とお笑いに向かない芸人のコンビ
山田ルイ53世氏(以下、山田):「仕事ができない相棒と、仲良くするコツはありますか?」。
コツはいろいろありますよ。「友達だと思う」とかね。ビジネスパートナーだと思うから腹が立つんです。友達だと思ってたら、腹も立たない。僕はそうしてます。
奥山晶二郎氏(以下、奥山):そうしてる?
山田:僕の相方のひぐち君。世間の方はどう思ってらっしゃるかわかりませんけど、僕は別に仕事できないとは思ってませんが、やっぱり、あんまり向いてない。
僕も向いてないですけどね。僕は芸能界に向いてない。ひぐち君はお笑いに向いてない。うちはコンビ揃って(この仕事に)向いてないですけど、仕事の相手だと思うから腹が立つってことはあるでしょうね。
髭男爵はもう本当に平和ですよ。この間もえらいことがあって……僕ら、髭男爵以外に「髭島三郎」というキャラクターを持ってることはご存じですか?
去年の年末に「一発屋紅白歌合戦」ってイベントがあったんですよ。新宿ルミネで、レイザーラモンHGさんの音頭の元、いろんな一発屋が集まって歌を歌うという。そのときに「歌ネタやから、髭島三郎やろう」ということになったんです。
僕が大御所演歌歌手の髭島三郎で、ひぐち君は緑のジャージを着て「ひぐっちゃん」という付き人っていう設定のネタ。
フリの会話があって、最後に僕が「なんとかやないかー!」ってツッコんで歌って「よっ、先生!」と(ひぐち君が)言う。それで、紙吹雪をバーッてまいて「どうもありがとうございます」って言って、そのあと、ノリツッコミのくだりがあるんです。
「ひぐっちゃん、お前としゃべってると涙が出てくるね。ハンカチもってこい、ハンカチー!」っていうたら、ひぐっちゃんがバーッて袖にはけて、トンカチをもってきて僕に渡す。「おいおいおい、お前がもってきたの、トンカチやないかーい!」ってセリフがキッカケで曲が流れて、それに乗せてノリツッコミの歌を歌うというネタ。
人にハードルを課す前に自分に課せ
山田:めっちゃ簡単でしょ。今ぱっと聞いただけのお客さんでも仕組みがわかると思います。誰でもできる。正直、今ここで2回くらい説明すれば、一緒に舞台に上がってすぐできると思うんですよ。というか、そういうふうに作ったんです。
「ハンカチもってこい、ハンカチ」っていうたら、はけていってトンカチをもってきて、渡して「お前、これトンカチやないかーい!」ダダダ……と、音楽が流れる。それだけなんですよ。でも(ひぐち君は)それがわからないんですよね。
「ハンカチもってこいハンカチ」って僕が言わないとはけられないのに、「本当にもうひぐっちゃん、なにしてるんだ」って言ったとたん、ひぐっちゃんがダダダって走り出して「あぁ、違う違う」と(戻ってくる)。ダダダっと。
ノリツッコミのくだりで、なにも言ってないのに走り出す、その心理がわからない(笑)。そういうことがあっても、僕は(仕事相手というより)友達やと思ってますから「コイツ、すげーなー」って思うだけで、腹とかは立ちません。
だからこれは、やっぱり人にハードルを課す前に自分に課せということです。結局、自分なんです。ひぐち君がそうなったときに、うまくフォローして笑いにできない自分を責めるべきだと、そういうことなんです。
奥山:なるほど。次もけっこう深いですね。
40歳を過ぎると、人を妬むのは贅沢な余暇
山田:「後輩がどんどん出世して死にたくなります」。この質問、なんなんですか、僕をいじるんですか?(笑) 一般の方でそんなことあります?