「やるかやられるか」それがPMだ!

仲井裕紀氏:「現状維持なんてない、『やるかやられるか』それがPMだ!」について、FROSK 仲井裕紀がお話させていただきます。

簡単に自己紹介させていただくと、もともと大学では素粒子物理学ってのを研究していまして、筑波山のふもとで研究してました。

その後、新卒でリクルートに入りまして、新規事業のPM(プロダクトマネージャー)を務めたあと、現在ではFROSKっていう会社で、スマホアプリのエラー検知とか解析ツールの「SmartBeat」のPMを務めてます。

ちょっと、関(関満徳氏)さんにゴマすっとこうと思ったんですけど(笑)、PMカンファレンスに行くことが毎年の楽しみですので、今年の開催も引き続き楽しみにしてます。

「SmartBeat」について簡単にご紹介させていただきます。スマホでアプリを利用してると、たまに落ちたりすると思うんですよ。そのアプリが落ちるのを検知して、Web上の管理画面に表示するサービスです。

ユーザーは、スマホアプリ事業者様でして、アプリの品質管理、レビュー改善などを目的にご利用いただいています。特に、大手アプリディベロッパー様とか有名ゲームデベロッパー様にご好評いただいておりまして、1日あたりのエラー取得数で言うと2,000万件とか、莫大なデータを扱ってるプロダクトになってます。

ゲームを上手にプレイしている気になって、変化に適応できなくならないように

ここから本題なんですけど、今日はちょっと授業っぽく話そうかなと思ってます。「ゲームを上手にプレイしている気になって、変化に適応できなくならないための授業」です。この写真は、撮ってもらった当時、ゲームをマスターしているんじゃないかと思って、見事にサービスを説明している気になっている仲井氏です。(笑)

かの有名なアルベルト・アインシュタイン先生も言ってるんですけど、「ゲームのルールを知ることが大事だ」と。そして、「ルールを学んだあとは、誰よりも上手にプレイするだけだ」と言ってるんです。そのため、僕自身もゲームのルールをまず最初に学びました。 その中で行き詰って、さらにそこからどうしたかというお話を今日はできればと思ってます。

最初にルールを学びました。PMのみなさんだったら読まれた方もいらっしゃると思うんですけど、まず『リーンスタートアップ The Lean Startup』(by Eric Rie, Currency, 2011)のシリーズを全部読んだりとか、その手法を顧客、開発、ビジネスに対して適用してみました。世の中で言われているサービスの成長に必要なことをまず全部やった、そんな感じです。

その結果、学んだルール通りにPMを進めていくと、会員登録数が2倍になったりとか売上4倍になったりと、新規事業のPMをやってたときには、なんかいっぱい成果出たんですよね。

その後、転職しました。プロダクトドリブンの会社で、やってみたいなと思って、FROSKって会社に入りました。同じように、顧客にヒアリングしに行くと、「すごく助かってます!」って言ってもらえました。

ゲームのルールをはき違えていることに気づく

でも、さらに詳しく聞いてみると、「このエラーはどうやって直せばいいんです?」って不安そうに言われちゃうんです。

助かってるって言われるのに、なぜかヒアリングの最後はいつもなんだか不安そうなんですよね。「あれ、なんかおかしいぞ」と。ここでつまずくんです。さらに、プロダクトについて聞いてみると、例えば「その画面見たことなかったです!」とか。僕らのWeb画面って3タブくらいしかないのに、見られてない画面があったりしました。また、要望されたから開発してるのに、「その機能、もう追加していただいていたんですね!」って言われて、要望した顧客自身が機能追加されたことを知らなかったんです。

また、いろんな役割の顧客が増えた結果、「私にはその機能、必要ないですね」と言われることが増えてきました。いわゆる「立ち上げ期からブレない価値」っていうのを、僕らずっとがんばって検証していました。

ここまできて、ゲームのルールをはき違えてることに気付きます。さっき言った「その画面、見たことなかったです!」っていうのはユーザーの課題を想定できてないってことなんですよ。立ち返って機能を深く考えてみると、ユーザーの課題が想定できていない機能も多かったんです。「そんな機能、顧客は使えないですよね」

また、2つ目「そんな機能、もう追加していただいていたんですね」と言われる件は、既存顧客とのコミュニケーションは、請求作業と契約に関してのみで、プロダクトに関するコミュニケーションをできてなかったことが原因でした。顧客とのコミュニケーションは、顧客拡大のために、新規顧客のサポートが中心になっていました。

プロダクトの「今」のファンはどこにいる?

さらに、もう一つのつまずきである3点目なんですけど、いろんな役割の顧客が増えたにも関わらず、プロダクトが安定すると、検証自体がおろそかになってました。プロダクトの初期は、がんばって仮説検証して、要望対応とかをやると思うんですよ。安定すると、それができてなかったんです。

ここで見えてきた課題は、プロダクトの「今」のファンってどこにいるんだろう? ってことです。ヒアリングしていると、入社して社内で聞いた話とヒアリングした結果は異なっていました。「顧客は誰なのか、もう分っていないのかもしれない」ということを思い始めました。

社内で聞いた顧客は、いわゆるアーリーアダプターな顧客でして、専門的な用語や機能が多くても、使っていただけたのですが、いろんな役割の顧客が増えた今では、そうじゃない顧客もたくさんいらっしゃるんですよね。

ここでもう一度ルールに立ち戻ってみました。学んだリーンのプロセスってそもそも、あくまで検証のプロセスでしかないんです。検証って、そもそも「何をすべきか」というのが重要だと思います。さらに検証は、「止めないこと」「常に検証し続けること」っていうのが、僕自身は重要だと思ってます。

また、本気で顧客に目を向けました。本当のことを顧客は知ってんじゃないかってことで、顧客にもっとたくさん会いにいくことにしました。

実際にヒアリングで顧客に会いまくると、みなさんから「すごく助かってます!」って言ってもらえるんですよ。その後、「どうやって直せばいいです?」って言う方が、実はたくさんいらっしゃいました(笑)。つまり、その不安にさせている課題自体が1ユーザーの課題じゃなくて、多くの顧客の課題だったんです。

プロダクトの枠を超えて、いかに考え続けられるか

ユーザー数が伸びてくると、各社ごとの業務プロセスは、会社ごとに様々でした。「データを抽出したいです」って言われたりとか、利用者の権限管理機能とかBtoBサービスに当たり前かもしれないですけど、「そういう機能が欲しい!」みたいな今まで聞けてなかった要望をたくさん頂くことができました。

もう1回ゼロからプロダクトの価値を整理してやろうと思いました。まずは、カスタマージャーニーから考えたんです。カスタマージャーニーって、プロダクトの今ある機能で制約をつけがちだと思うんですけど、プロダクトのUXを超えたところってどうなってんだろうっというのを考えてみることが重要だったんです。自身のプロダクトで言えば、本質的な解決策は、エラーの不具合を修正するという行為を効率化することでした。

今まで頑張って仮説検証と機能追加を繰り返してきたのに、1番使うエンジニアの1番の課題を、解消できてなかったんじゃないかということに気づき、そこにも僕らの価値は適用できるんじゃないかということを、まさに今、検証し始めてます。

つまり、やり方を抜本的に変更しましたよっていうことです。リーンはあくまで検証のプロセスだなと僕は思ってます。そのため「何を検証するか」が重要だと思っています。

さらに、自分たちは、自分たちのプロダクトを理解してるだけに、思考の範囲に対して制約つけがちだと思うんですよ。そのため進化のためにプロダクトの枠を超えていかに考え続けられるかということが重要だと思っています。

例えば、最近は機械学習とか分かりやすくすごい速度で進化している分野もあると思うんですけど、実は、顧客の状況、プロダクトの状況もそれぞれすごい速さで変化し続けてます。それらをずっと調べ尽くし続けるってことも重要だと僕自身は思ってます。

「さぁ、次の世界へ出発だ! 冒険はまだまだ続く……」ということで検証の旅はずっと続いてます(笑)。最初に言い忘れたんですけど、これ一応ゲームテイストでやってます(笑)。

未知のことにチャレンジするほうが楽しいし、うまくいくかも

僕らは検証を繰り返して、「SmartBeat」を品質改善に最も貢献できるツールにしたいなと思ってます。今、国内でオンリーワン。国内でエラー検知ツールっていうのをやってる会社さんってあんまりいらっしゃらないと思っています。そのため、現時点で国内ナンバーワン。さらに、国内ナンバーワンにはおさまらず、今後は世界ナンバーワンを目指していきたいと思ってます。

最初にお話したように、アインシュタインさんは、「ゲームのルールを知ることが大事だ。そしてルールを学んだあとは誰よりも上手にプレイするだけだ」と言ってます。さらに実はそのアインシュタインさんは、こんなことも言っていました。「重要なのは疑問を持ち続けることで、知的好奇心はそれ自体に存在意義がある」と。

結局、未知のものにチャレンジしてみるほうが、楽しいしうまくいくかも!、っていうお話をさせていただきました。

最後に「Hello World!」ということで、締めさせていただければなと思ってます(笑)、ありがとうございました。

(会場拍手)