ダライ・ラマ法王「私自身は楽観主義」
すべてのことをより良く進めていくための哲学

ダライ・ラマ法王14世トークセッション 「ONE - we are one family -」 #4/4

2018年11月17日、日比谷公園大音楽堂にて、チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ法王14世と、カルチャーやアートの分野で活躍するイノベーター/アーティストによるトークセッションが開催されました。『ONE - we are one family - 』をテーマに、「70億人の人間が一つの存在である」と世界中でメッセージを送り続けるダライ・ラマ法王14世とゲストが語り合い、日本の未来を考えます。本パートでは、イベントに登壇した冨永愛氏・小橋賢児氏のコメントと、ダライ・ラマ法王のメッセージをお届けします。

ファッション業界で起こっている「エゴよりエコ」のムーブメント

丸山智恵子氏(以下、丸山):私たちがやるべきさまざまなことや、1つの家族として今後どういうことを学んでいき、何をしていったらいいかという、ダライ・ラマ法王猊下の教えに感謝申し上げます。

まずは2人のゲストスピーカーの方に、今のお話を聞かれてどのように考えられたか、思っていることなどをコメントいただけますでしょうか。では、冨永さんからお願いいたします。

冨永愛氏(以下、冨永):はい。非常にありがたいお話だったと思います。最初の方に、人間の欲望というお話がありましたけれども、私がいるファッション業界というのは、ある意味欲望が成している世界だと思います。

この服が欲しい、今流行っているこの服が着たい、そういう欲望がやはり私たちを動かしているというのもあるんですけれども、最近のファッション業界では「エゴよりエコ」という言葉が聞こえ始めたり、自分が着る服、新しいコレクションの服でもリサイクルされた素材を使ったり。

やはり人権問題、労働問題、環境問題というのも付随してくることなので、そういったことを考え始めているデザイナーさんが、非常に多くいらっしゃいます。やはり、これから先続いていく歴史のなかで、自分たちが何を後世に残していくのか。

今自分たちが何をするべきかということとしては、ファッション業界で起きている、この1つのムーブメントを続けていくこと。そしてみなさまがもう少し、私たちがもう少し、それに目を向けること。そういうことを発信していくべきなんだなというのを、今強く感じました。ありがとうございます。

丸山:ありがとうございます。エゴよりエコということで、お話しいただきました。小橋さんはいかがでしょうか。

日本人は「have to」ではなく「want to」に目を向けるべき

小橋賢児氏(以下、小橋):はい。僕自身は普段、自分のイベントを通じて、そうした気付きのきっかけの場作りに取り組んでいます。そもそも日本人って、良くも悪くもすごく気を使うという文化があるなかで、日本の教育のなどによって、同調圧力という、本来の自分の考えではなく、他者から見られる自分というものを、子どもの頃から知らず知らず作ってしまっています。

そのせいで、本来の自分がやるべきこと、本来自分がやりたいという「want to」ではなく、何かにならなければならないという「have to」ということが、多いと思うんですね。例えばいい会社に入るために、いい学校に入らなければならない。want toではなく、しなければならないという、have toがすごく多い。

僕は、そういうことをまずは楽しむというところから(始めています)。何かしたい、これがしたいと言って、何も考えずに何かにチャレンジすることが、子どものときはできていたのに、大人になるとなかなかできないと。

そういうきっかけのなかで、やっぱり自分が何かをした行動によって愛を知るとか。本来の自分とつながるという愛を知らなければ、なかなか他人に愛を向けられないというのが、今の日本の状況なんじゃないかなと思います。

僕自身、山登りで本当に死に直面するほどの危険な目にあったり、あとは深い瞑想(に入る)道場に行って、2週間誰とも話さないで(外の)情報も取らないで、自分の内側のエネルギーを観察して、すべてのものとつながるような経験をしたことがあるんです。

そのときに、自分という我が外れて、この世はすべて一緒なんだと。すべての生物、生命体、すべてのここにある物質は一緒なんだという感覚が得られたんです。なかなか今の日本において、そういう感覚を味わったことがない方が、すごく多いんじゃないかなと思うんですね。

なので、やっぱり一人ひとりが、まずはそれぞれの宇宙というものを作れるはずなんです。自分のwant toから始まる自分の宇宙というのを、どうやったら(作れるか)。僕はイベントをきっかけとして、そういうものを作りたいなと思っているんですけれども。

幸せも苦しみもすべて、自らの行いから生じる

小橋:法王だったら、今のこの日本の現状に対して、どうやったらそういう自分の人生をクリエイトできるのか、そして大いなる愛に包まれているという感覚が、瞑想や宗教に入らずとも感じられるとお考えでしょうか。ショートアドバイスのようなものをいただければ。

ダライ・ラマ法王14世(日本語訳):もうすでにそのことについては、愛と慈悲の心が大切だとお話しいたしました。

小橋:そうですね。

ダライ・ラマ法王14世(日本語訳):「この世の中におけるすべての幸せは、自分の成した良き行いから生じる。そして、すべての苦しみというものは、自分の成した悪い行いから生じる」というような言葉があります。

そのように、自分と他者の立場を入れ替えて考えるような利他の思いを持たない限り、この輪廻においても幸せを得ることはないと。これは仏教の偈頌(げじゅ)というか、四行詩のかたちで説かれた教えです。

丸山:ありがとうございました。

(会場拍手)

では、今度は会場からご質問を受けたいと思います。みなさまからご質問のある方、手を挙げていただけますか?

内なる世界と外なる世界を結びつけていくことが大切

質問者1:お話ありがとうございます。日本のNGO、親を亡くした子どものための「あしなが基金」で仕事をしています。リーダーシップの大切さについておうかがいしたいと思います。単に政治的、宗教的なリーダーシップではなくて、どうしてもマイナスなこと、悲観的な話ばかりしますけれども、どうしたら楽観的になれるでしょうか。

例えば、第一次世界大戦、第二次世界大戦については話されても、第一次(世界大戦後)の平和、第二次(世界大戦後)の平和というような話はされませんけれども、どうしたらいいでしょうか。

通訳:(大量のメモを見返しながら)どこから言っていいか、わからなくなっちゃった(笑)。

(会場笑)

丸山:(法王が)一節でよろしいのでとおっしゃっていますが、では日本語でお願いします。

ダライ・ラマ法王14世(日本語訳):このNGOというようなものが、非常に効果のあるやり方だと思います。政府というものを後ろ盾にするなど、きちんとしたベースがあるならば、たとえどのようなことをやっても、すべてのことが効果的に進むのではないかと思います。

つまり、すでにある、この「物思考」の生き方を変えていく必要があります。教育がそうであるから、すべてが「物思考」になってきてしまったわけです。私たち人間は常に、外の世界ばかりを見るような傾向になってしまい、科学者たちも外界のもの、物質的なものばかりを分析してきました。

しかし、20世紀の末あたりから、科学者たちも私たちの内なる世界、心というものを分析し始めるようになったわけです。ですからこのように、内なる世界、外なる世界というものを、ともに合わせて結びつけていくことが大切だと考えています。

しかし、私たちは、今までの教育システムに文句を言うだけではなく、これからそういったものを、どんどん変えていくことができます。すべての人たちが自分自身に自信を持って、例えば一国が戦争をやるというような宣言をした場合、以前の時代であるならば、すべての人が自信を持ってそれ(戦争)に参加してきた状況にありましたが、今ではそれが完全に変わってきているわけです。

敵対関係を乗り越え、隣人になったフランスとドイツ

例えばベトナム戦争、イラク危機、そしてそういったものが起きてきた状況下において、たくさんの国がそういった暴力に対する抗議を行ってきたわけです。

例えばフランスとドイツ。そういった国は、第二次世界大戦以前の時代には、敵同士であったわけですが、それが現在ではまったくそのようなことがなく、隣人の国であるという認識を、みなさま方が持っているようです。これはとても素晴らしいことだと思います。

そのようななかから、ヨーロッパ連合、EUが作られてきました。そして、ドイツの首相であった方が量子力学の物理学者であったということで、私も量子力学に対する知識を教えていただきました。そのようなこと(国境を越えた交流)がいろいろありました。

そして、1990年代に入ると、フランス、ドイツ、そういったものが敵同士であるというような認識がまったくなくなっていったわけです。そのような国々がこの世界、ヨーロッパを指導的な立場に立って、このEUという素晴らしいものを作り出していきました。私は心からEUの在り方を讃えていますが、本当によいものだと考えています。

そのようなことと共に、これから私たちはより楽観的なものの考え方をしていくことも、すべてのことをよりよく転がしていくためのきっかけとするために、非常に役に立つことだと思います。

一人ひとりが資源は限りあるものという認識を持つべき

さらに環境問題について、私たち人間たちはあまり十分にケアをしておりません。天然資源は限られているという認識も足りていなかったと思います。この地球温暖化などの結果によって、苦しむ方々が増えています。

例えば、私が住んでいるインドのダラムサラでは、1960年代においては非常にたくさんの雪が降っていました。しかし最近では、ほとんど雪が降ることもないという状況に変わってきています。

アフガニスタンなども、広い湖が砂漠化していくというような状況もあります。チベットでも雪の降雨量が、非常に減ってきています。今、エコロジーが非常にシリアスな問題となってきています。

みなさま方の国、日本であっても、台風や津波などがありますけれども、そういったもので苦しまれていることが、より多くなってきたのではないかと思われます。

温暖化に関しては、本当に私たち人間たちがシリアスに捉えて、地球環境に対するケアをしていくことを、個人のレベルの認識から始めなければなりません。

日本におきましては島国ですので、水の問題というのはないかもしれませんけれども、例えばインドなどにおいては、本当に10年ごとに使える水の量がどんどん減ってきているわけです。

環境のケアをすることを、本当に個人のレベルで、みなさま方一人ひとりの心のなかで、認識を高めていっていただきたいと私は考えています。環境問題というものを、私自身のこの人生における使命として、私は非常に重要視しております。

古代インドで育まれた心理学・知恵の復興

そしてさらに、古代インドのなかにおきましては、感情面における、古代インド哲学などに基づく心理学とか、さまざまな部分が存在していました。しかし現代における心理学というものと、何千年にもわたるインドの心理学を比べてみると、古代において育まれたそういった心理学や古代の知恵というものは、本当に計り知れない素晴らしいものがあります。

現代におけるものが、あたかも幼稚園のレベルのように見えるくらい、優れたものであるわけです。そこでもう1つの私の使命としまして、最近ではこの古代インドで育まれてきた知恵、知識、こういったものをリバイバルさせよう、再復興させようと、私は最近とくに力を入れて行っています。

そういったプログラムが、インドの政府関係の学校において、すでに始まっているわけです。ですから中国においても、日本においても、同じ仏教国でもあるわけで、自分自身の文化を土台として、そういったものを進めていくことも考えられると私は思っています。

さらに、中国とインドがもし、少しでも歩み寄り手を組むことができたならば、約25憶人の人口を抱えるこの大国2つが、おそらく世界全体に関係する、素晴らしい貢献ができるのではないかと思うわけです。

そのような時代において、私たちは21世紀をよりよい世界にするために、手に手を取ってワークアウトするべきだと思います。私たちがこのすべてのことができるかどうかは、われわれ一人ひとりの努力にかかっています。

私自身は楽観主義ですので、みなさま方もおそらくペシミズム(悲観主義)に従うのではなく、より楽観的な態度で過ごしていかれるならば、よいかと思われます。

文句ばかり言ってペシミズムに陥るということではなく、自らの心のなかで決意をして、確かなヴィジョンを持ってみなさまご自身の力によってすべてを変えて、よりよい世界に変えていけるのだということを、みなさまも忘れないで、心においていただきたいと思います。

(会場拍手)

人々が文化・宗教・国籍を越えて一つの家族になる日

丸山:本日はみなさまありがとうございました。貴重なご質問を行っていただき、とても有意義な時間になりましたことを、心より御礼申し上げます。以上を持ちまして、本日のプログラムを終了させていただきます。

最後に主催である一般社団法人知恵ゲツェ・リン文化交流代表取締役、博文索羅氏より一言ご挨拶を頂戴いたします。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

博文索羅氏:こんにちは。私は、一般社団法人知恵ゲツェ・リン文化交流の博文索羅(ひろふみさくら)と申します。法王様、本日は貴重なお時間を頂きまして、本当にありがとうございます。冨永さん、小橋さんも本当にありがとうございます。

寒いなかご来場いただきましたみなさま、本当にありがとうございました。法王様のご活動をより多くの人に伝え、文化、宗教、国籍を越え、「We are one family」と心から言える日を望んでおります。

このような機会を通じて、みなさまにも新たな気付きや可能性を感じていただける場となっていれば幸せです。この度は本当にありがとうございました。

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