「デザイン経営宣言」の概略を語る

田川欣哉氏:みなさん、こんばんは。今日は本当に、僕もこの場にいることをうれしく思っています。

後で特許庁の宗像長官もご登壇されますが、今日は経営者の方々もすごく多いことから、“デザイン経営”というキーワードをみなさんとシェアして、ディスカッションができることを楽しみにしています。よろしくお願いします。

僕の方は簡単に自己紹介をさせていただいた後に、デザイン経営宣言の概略のところだけ、5分くらいでさらっていきたいと思います。

僕はTakramというデザインファームの経営をしています。デザイナーたちが40人くらいいて、いろんな仕事をやっています。ソフトウェアやハードウェアの仕事。サービスやビジネスモデルを考える仕事。基本的には新規特化型で、新しいプロダクトやサービス・事業などを垂直的に立ち上げるということをやっている、ちょっと変わったデザインファームです。

今日はもう時間がないので、事例の詳細はお話しません。ビジュアルでこんなことをやっているということを、なんとなく掴んでいただければ良いかと思います。

デザインのBTCトライアングル

最近出たものでは、もうご覧になっていただけた方もいるかもしれませんが、メルカリのリブランディングもやっています。

実は“デザイン経営宣言”が出た直後ぐらいから、メルカリの山田くんから相談をされました。メルカリのデザイン組織をキチッとしたいということで、僕の方から組織設計のアイディアを言ったら、それでいこうという話になって。現在は、メルカリのデザインチームの家庭教師のような役割で、毎週行って打ち合わせしてます。メルカリの人たちと一緒に、世界最強のデザインチームになるぞという意気込みでやっています。

そのチームの最初のアウトプットが、メルカリのリブランドです。これはメルカリがフリマアプリから、よりオープンにプラットフォーム化していくときに、昔は蓋付きの箱だったシンボル自体を抽象化して、それが車になったり、お金になったり、服になったりと展開性を帯びるというストーリーで行いました。

後で少し出てくるかもしれませんが、デザインと言ったときには3つがあります。昔からのデザインであるクラシカルデザインと、ビジネスとデザインを繋ぐビジネスデザインと、テクノロジーとデザインを繋ぐデザインエンジニアリングの3つ。ビジネス・デザイン・テクノロジーの3つが協力して仕事をすると、良い仕事になるよというダイアグラムで、BTCトライアングルと言うこともあります。

「デザイン経営」という言葉の誕生

では、自己紹介はこれぐらいにしておいて、デザイン経営のPDFのファイルが経済産業省にあるので、ぜひ興味がある方はダウンロードしていただけると、うれしいです。Googleで調べてもらえれば、PDFが出てきます。

いろんなフィールドのデザイナーと、経済産業省と特許庁の方々が集まって、デザインが企業経営に対してどのような影響力を持ち得るのかということを、1年くらいかけてディスカッションをしてきた中で、デザイン経営という言葉が出てきました。

今、世界の潮流は、第四次産業革命に入っています。平たく言えば、インターネットテクノロジーが、物理世界に染み出し始めて、いろんなものがインターネット型のビジネスにシフトしていっている時代です。こうした中で、産業自体がシフトして行くべきキーワードがいくつかあるんですね。

1つは、当然「デジタル化」がきますよね。ただ、デジタル化しただけだと、この時代で戦っていけるようなプロダクトサービスにはならない。そこには大事な観点があって、それがデザインじゃないかと。

そこで、できるだけたくさんの経営者の方にデザインの役割というものをわかりやすく伝えていきたいということで、デザインと経営をつなぐため、インターフェースする言葉として2つの言葉をこのレポートの中では挙げています。

ブランドの構築とイノベーション

その1つが「ブランド」ですね。先ほどのメルカリの事例は、メルカリのブランドをデザインの力で上げることによって、企業とその顧客の間がよりよい関係になるということなんですが、こうしたことにデザインは非常に効きますよというのが1つ目。

2つ目は、「イノベーション」ということですね。これは、プロダクトやサービスというものが、ユーザーにできるだけきちんと使われることを実現するためには、ヒューマンファクターとも言いますが、人間がどういった感情を持っているのかを見ていくこと。

例えば、ターゲットとする顧客、ユーザーが、例えば自宅でどのような生活をしているのか、その生活にどういった文脈があるのか、例えば子どもがいるのか、介護をしているのか。そういういったことを詳しく見ていくことで、本当に求められているものを掴み出すという観察の力や、プロトタイプを実際のユーザーにあててみて、現場現物できちんと考えていく。

こういったデザインプロセスをテクノロジーの現場に入れていくことで、イノベーションの確度が上がっていくのではないかと思います。

デザイン経営の効果とここに書いてありますが、効果は2つに分かれます。1つはブランド力が上がること、2つ目がイノベーションの力が上がること。ここに、ベン図で赤の円と青の円が書いてありますが、企業によって、この円の大きさ、赤の円が大きい会社、青の方が大きい会社、あと重なり具合も様々です。

ですから、デザイン資源をイノベーションの方に統括するのか、ブランドの方に統括するのかということは、企業のキャラクターでいろいろと出てきます。

デザインへの投資が生む効果

みなさんがよくご存知の無印良品という会社がありますよね。無印良品はこの赤の輪っかの方が大きい会社です。ほとんどプロダクトイノベーションがありませんが、デザイン駆動型でブランドというものをグローバルブランドというところまで育て上げています。

それで、これは海外の調査でいくつかあるんですが、このページはできるだけファクトとして、デザインを使ったときに、どのような企業がパフォーマンスを上げているのかということを示したものです。

真ん中のグラフが、これはアメリカのS&P500の株価パフォーマンスです。10年間追いかけていったときに、デザインを重視する企業の株価と、そうではない一般の会社を比べてみたときに、10年間で200%。なんと2倍の差が出てきています。

みなさんから見て右側のグラフがヨーロッパのグラフです。これも同じような感じですね。デザインに注力している会社と一般平均を比べると、2倍の開きがある。

欧と米と全然違った調査なのですが、ほぼ同じ割合、つまり2倍ぐらいと出てきているところが、似ていますね。

左側の4倍の利益と書いてあるところ、これはイギリス国内の調査です。1のデザインの投資に対して、営業利益ベースで、1のインプットに対して4倍の営業利益が出てきている。そういった調査も出てきています。

そういったことから、実は効きが良いのですよということ。ここら辺はまだ経営の方々にとっては、知らされていない情報なのです。これを見て、あぁそうなの!? と思われる方も結構いらっしゃるようなことになっています。