エゴサーチは「自分探しの旅」のようなもの

山田ルイ53世氏(以下、山田):次の相談ですね。「毎晩、エゴサーチが止まりません」。これ、俺じゃねえか(笑)。

奥山晶二郎氏(以下、奥山):これはどうしたらいいですかね?

山田:それ、僕に聞いてるんですか? (エゴサーチが)止まらない僕に聞いてるんですか?

奥山:いやいやいや。けっこう同じ方もいるんじゃないんですか?

山田:ある程度、表に出る職業の方じゃないとならないんじゃないかな。この中でエゴサーチしてる人います? まあ、これは手挙げづらいか……。

奥山:例えばFacebookとかで、「何々さんと今日、会いました」というようなことを、(自分に)通知がこない感じで触れてくれていたりしたときとか、それに「いいね」を押さなかったりしたら、ちょっと悪いなと思う。そんな感じかな。

山田:(いいねが押せないと)マナー違反的なことになるんですかね。僕は、エゴサーチを「自分探しの旅」みたいなことだと思ってます。

なので、別にやめる必要はないと思いますよ。僕は楽しんで「髭男爵」で検索したり、「山田ルイ」で検索してます。あと、自分がやっているラジオの番組名で検索したりね。SNSというものをいろんな角度から、MRIのように切り取ってます。

(会場笑)

まさに自分というものを探しているということですから。

トラブルや壁は、薄目で見て「あかんな」と思ったら逃げる

山田:ただ、この本にも頻繁に出てきますけど、とくにお笑い芸人やタレントのような仕事をしていると、エゴサーチという行為は非常に自傷的でもあるんです。

つまり、自分が傷つく瞬間がある。我々で言えば「死んだ」「消えた」、そして「おもしろくない」とかね。この間、お正月に『東西ネタ合戦』という番組に出させていただいたんですが、その時もエゴサーチしました。

その結果、好評だったんですが、「久しぶりに見たらおもしろかった」とかが多くて。「久しぶりに」はいらんやろ……みたいな。「普通におもしろかった」の「普通」ってなに? みたいなね。

一番かわいそうだなと思ったのが、「私はすごく髭男爵のネタで爆笑したんだけど、みんなはどうかなあ?」みたいな。

(会場笑)

不安になっちゃってる方もいました。それはその子に対して「ごめん!」と思いましたけど、ちょっと傷つくところを見つけてしまう場合もあります。僕のそういう時の対処法ははっきりしていて、ミュートすることです。

奥山:(笑)。

山田:ちょっとでも悪く言ってたら、もうミュートします。不安なこと、今回の本で言えば不本意なことに、目をつぶっていく、薄目で見るというのはメンタルに非常にいいんですよね。

世の中の人は事あるたびに、「正面から対峙しなければならない」とか、「いろんなトラブルや人生でぶち当たった壁とは、真剣に対峙しなければならない」と言うんですが、それを薄目でぼやーっと見てみてください。ぼやーっと見て、「あかんな」と思ったら横に行く、逃げるんだという姿勢が大事だと思います。

だから、エゴサーチはやめなくてもいいので、薄目でエゴサーチすればいいんじゃないですか。

(会場笑)

奥山:直視をしない。

山田:そうです。現実を直視するなということですね。

奥山:わかりました(笑)。次です。

上司全員に誤爆メールを送信

山田:「上司へのディスりメールを、『誤爆』しました」。送っちゃったってこと?(笑)

奥山:これは送っちゃいましたね。

山田:送っちゃったんですか?

奥山:送っちゃいました(笑)。

山田:(笑)。奥山さんの体験談みたいになってますけど。

奥山:いやいや。みんなあるかなと思って。

山田:ちなみにですけど、(誤送信したメールは)どういう内容だったんですか?

奥山:内容としては……。

山田:内容によってもいろいろあると思います。

奥山:そうですね。原稿をはねられるみたいなことがあって。

山田:原稿をはねられる? 奥山さんが一生懸命書いてきた……。大丈夫ですか、もう「奥山さんの」ってなっちゃってますけど(笑)。

奥山:一般論です(笑)。

山田:一般論ね。今さら遅いですけど(笑)。

奥山:原稿を書いて送ったら、「つまんない」というか、「載せられない」というジャッジをされまして。

山田:まず、その人からしたら「つまんない」と思った。それで、「これはもう載せることはできない」と突き返された。

奥山:「つまんないのは、お前だ」みたいなメールを……。

(会場笑)

山田:えーっ(笑)。

奥山:それを全員返信で送りました。

山田:それは誤爆なの?

奥山:すごく誤爆しました。絨毯爆撃みたいな。

山田:「つまんないのは、お前だ」というメールを、本当は誰かに送ろうとしたけど、上司にいっちゃったって話じゃないの?

奥山:上司全員に送っちゃいました。

(会場笑)

山田:上司全員(笑)。とんだ問題じゃないですか。「奥山がおかしくなったぞー!」ってなりますよね。

奥山:そうですね。

誤爆メールの言い訳をメールで送るのは最大の愚行

山田:それはどうなったの? もう相談じゃなくて質問になってますが。

奥山:フォローメールを送りました。

(会場笑)

山田:いや、フォローしようがないでしょう。

奥山:たしかにないんですけど。

山田:「つまんないのは、お前だ」が先発でいってて、後からどんなやつがいっても、これはもう追いつけないですよ。ちなみにどんな内容で?

奥山:とにかく、長く(謝罪メールを)書こうと思って。

山田:はい(笑)。

奥山:長いことが気合いの表れになるかなと。

山田:それはよろしくないですね。

奥山:原稿より長いメールを送りました(笑)。

(会場笑)

山田:(笑)。原稿より長く「実はあのとき、こうこうこうで……」って?

奥山:「すごく感謝の気持ちもあるんです」みたいな。

山田:「ものすごく感謝してます」という(笑)。こういうのは言い訳すればするほど、だめですからね。もう潔くいきましょう。で、まずメールがだめです。メールで失敗してるのに、メールでフォローしようとする、というのが一番の愚行です。

メールで失敗したら、直接行かないとだめです。今のご時世だと、ちょっと古いやり口ですけど、誠意という意味では行かないとだめです。

奥山:なるほど。

山田:行ったら「本当にすんませーん!」「間違いました。僕が悪かったです」「一時の衝動で書いてしまいました」という姿勢を取るべきですよね。

(謝罪を)メールで長々とわーっと書いて、「やっぱり僕はあなたのことを尊敬してます」と言われても、「ウソつけ!」としか思わないですから。

(会場笑)

山田:気をつけてください。

奥山:わかりました。

仮病はバレたら諦めろ

山田:次の相談にいきます。「仮病がバレました」(笑)。

(会場笑)

山田:これはどういうことですか?

奥山:たぶん(会社の人に)会っちゃったんでしょうね。

山田:あなた、そもそも社会人としてどうなんですか。

奥山:僕じゃないです(笑)。

山田:あ、これは違うんですね。

奥山:すぐ僕の相談にしようとする(笑)。

山田:いや、「これは僕ですよ」みたいな感じの相談が何個かあったから。

奥山:違います。

山田:「仮病がバレた」というのは、僕も昔ありました。あと、逆に「病気がバレませんでした」というパターンもありました。

仮病を使ったということで言えば、昔、髭男爵で乾杯漫才だとか、ぜんぜん言い出す前の仕事もなにもない時のことでした。

お笑いライブとかも、オーディションを受けて、そこで通ったらライブに出られるけど、また次に出るときはもう1回オーディションを受けないといけない、みたいな時代です。20代の前半ぐらいでした。

当時の僕らにとっては非常に重要なお笑いライブがあって、オーディションも通って、もう出ることも決まってたんです。

僕とひぐち君という、大して才能もない2人組が組むとよくあることなんですけど、お笑いライブ当日になっても、ネタが1個も思いつかないという地獄のようなことがあって(笑)。

それで「やばい、あと数時間後にライブがあるぞ」「俺ら、1個もネタできてないじゃないか。このまま行ったら、無残にスベるだけだ、どうする?」となって。

髭男爵のコンビの力関係が、やや僕の方が上になってきた時期だったので、ひぐち君に「俺が肺炎になったから休む、って言いに行ってくれ」と言って。

奥山:(笑)。

山田:ひぐち君はその時、すごく忠実にやってくれたんです(笑)。でも、後から周りに聞いたら、ひぐち君は血相変えてお笑いライブの会場、楽屋にバーっと来て、「ハアハア……。すみません、山田が今、重い病で……!」と言ってたらしくて(笑)。

「重い病で」って、なんやねんっていう感じですよね。「すみません、今日来れないんで、ネタできません」と言って、本人的には「事なきを得た」と言って帰ってきたんですけど、やっぱりバレてました。以後、そこからはお声がかからなくなりましたね。

奥山:なるほど。

山田:病気がバレなかったというのは、とある番組のレギュラーが決まっていたことがあったんです。その3回目のロケぐらいの時に、熱が出たんですね。とんでもない熱が出てたんですけど、解熱剤を打って(番組側に)隠して行ったというのはありました。

(相談者が)ここで言う「仮病がバレた」ってどういうこと? 会社にバレたということ?

奥山:たぶんそうです。仮病で休んだ人が、(会社の人に)会っちゃったみたいな。

山田:まあ、バレたら、あきらめるしかないということですね。

奥山:あきらめるしかない。これはけっこう実践的ですね。次の相談にいきましょう。

ウケもスベりもしない挨拶は、とにかく小声で短く

山田:「ウケはとらなくていいけど、スベりもしない、宴会の挨拶ください」……。いや、知らないわ、こんな挨拶(笑)。宴会のときに「なんか一言、言ってください」みたいなこと?

奥山:そうです。

山田:でも、(ウケはとらないということは)とくに反応がないってことでしょ?

奥山:これは知り合いの話になるんですが、そんなに関係性がない人の結婚式に呼ばれて、挨拶を頼まれちゃったと。悪目立ちもしたくないけど、場も乱したくないですよね。そういうときの挨拶ですかね。

山田:まじめな話をすると、そういう場ならやっぱり短くいくことでしょうね。悪目立ちというのもそうですけど、人間はどこか、自分を良く見せたい、爪痕を残したい、って気持ちが出てしまう。

そういう気持ちがある言葉は、その雰囲気が出ちゃうんですよね。「なんかいいこと言ってやろう」というような。なので、まったくそういうことを含まないほうがいいでしょう。

「なになにさん、なになに君。ご結婚おめでとうございます」。もうこれで終わってもいいぐらいです。ウケもしないんですよね? スベりもしなきゃいいんですよね?

なにやったかわかんない、みたいな感じのがいいんじゃないですか。今からやることはウソですけど、バーッと出て行って、あんまり声も張らずに「オッス、オラ悟空」……。

(会場笑)

あ、これウケちゃいました。これはだめですね。1人爆笑しちゃいましたから。

あんまり声を張らないのもいいと思いますよ。もはや、出ていって「……本当にね……今日は……」。もう挨拶してるって気づかれないぐらいの小声でいいんじゃないですか。

「……今日は本当に……おめでとうございます。新郎とはですね……おめでとうございました!」みたいなぐらいの感じでいいんじゃないですか(笑)。

(会場笑)

すみません、なるべくウケたいと思って仕事をしてきたもんですから。たしかに、これは死角です。盲点をつかれました。なるべく声を小さく短くいきましょう。

芸人の世界の上下関係は完全に実力社会

奥山:次の相談。

山田:「自分より年下なのに、タメ口になってしまった関係は、もう直りませんか?」。これはなんのことを言ってるのかわからない。「自分より年下なのに、タメ口になってしまった」?

奥山:これ、けっこうあるあるなんですよ。

山田:そうなんですか。

奥山:社会人になって、年齢がわからないまま挨拶したりするので。ちょっと風貌が似た感じだと……。

山田:「だいたい同い歳くらいやな」みたいなことをぱっと見で思う。

奥山:あるいは(風貌が)ちょっと若めだったら、年下だと思いこんでタメ口になっちゃう。

山田:なるほど。

奥山:それで、(相手が年上だと)後からわかっても、その関係性が逆転しにくい。(上下関係を)無視されたほうは、けっこう根に持ってる。

山田:年齢だけで、先輩だ後輩だとか、タメ口だとどうこうと考えているところに、僕はもう愕然としました。我々の業界は、少なくとも僕は、売れているか売れていないかで考えてます。

僕は今、カズレーザーに会ったら敬語でしゃべりますよ(笑)。

(会場笑)

ちょうどこの間、何日か前にテレビ朝日さんに行ったんです。僕は『AbemaPrime』というニュース番組に、コメンテーターみたいなかたちで呼ばれたんですよ。

それで、「楽屋です」と言われて、自分の楽屋に入ろうとしたら、隣の隣ぐらいの楽屋に「『お願い!ランキング』カズレーザー」と書いてあって。僕はめちゃめちゃ先輩なんですけど、挨拶に行こうと思いましたもんね(笑)。

「あ、いらっしゃらないんですか?」とスタッフさんにちょっと聞いて、「あ、今、カズいないんだ。じゃあ、大丈夫ですー」と言って帰りましたけど、僕は行こうと思いました。だからもう、年上だとか年下だとか関係ないです。実力です。実力社会。

奥山:わかりました、そう伝えます。

山田:誰に伝えるんですか……(笑)。

(会場笑)