藤原和博氏「AI社会に生き残るのはヒューマンケアの仕事」
医師より看護職が求められる時代の教育論

新しい教育 #1/4

前田塾5周年記念パーティー
に開催

2018年12月8日、合同会社DMM.comにて「前田塾5周年記念パーティー」が開催されました。大学1年生〜20代前半のメンバーが2,500名以上参加する前田塾が創立5周年を記念して開いたこのイベントには、合同会社DMM.comの亀山敬司氏、教育改革実践家の藤原和博氏、Yahoo!アカデミア学長の伊藤羊一氏など多数の豪華なゲストが招かれ、「教育」「働き方」「経済圏」をテーマにトークセッションが行われました。今回は最初のセッション「新しい教育」の模様を4回に分けて公開します。本記事では、「これからの時代にはどういった教育が求められるのか」を中心にゲストが語った冒頭のパートをお送りします。

伊藤羊一 × 藤原和博 × 亀山敬司 による「新しい教育」論

前田恵一氏(以下、前田):それではパネラーの方々をご紹介差し上げたいと思います。まず、(伊藤氏は)ヤフーの企業内大学「ヤフーアカデミア」の学長をされていらっしゃいます。これまでグロービス やその他の場所で、3,000人規模のリーダーシップ開発を行っていらっしゃって、現在は、ヤフーアカデミアの責任者をされています。

もともと興銀で金融支援などをやっていた方なのですが、そこからプラスに転職し、物流系・流通系に入ったご経験をお持ちです。そこから事業全般をされるようになったのが2012年の執行役員の時からで、2015年からヤフーに転職され、ヤフーアカデミアの学長を務められていらっしゃいます。

続きまして、藤原和博さんですね。メディアにもけっこう出ていらっしゃる方なので、ご存知の方も多いかと思います。東大経済学部を出られて、リクルートに入社されております。

有名なのは和田中学校の校長先生をやっていらっしゃったことですね。教育に関するかなりのご知見をお持ちで、「よのなか科」を作ったり、義務教育の改革自体を率先してやったりされていましたので、今回「新しい教育」の中にご招待いたしました。

最後に、亀山会長です。みなさんはまだ、お顔を見られたことがない方もいらっしゃるかもしれませんね。私も先日まではお顔がわからず、「亀山さん、こんな感じの方なんだな」という印象を持たせていただいています。

最近では、非常に教育に関して力を入れていらっしゃっていて、直近でいうとハッシャダイという、いわゆる新卒、第0新卒という会社を推薦している会社さんのご支援もされています。

ということで、今回はこのお三方をさっそくお迎えしまして、今後どういう教育が必要になってくるのかをテーマに、僭越ながらモデレートさせていただきたいと思っております。それでは拍手でお迎えください。

(会場拍手)

これからの時代に求められる教育のかたち

前田:今回お話をさせていただきたいと思っていることは、そもそもまず世の中がどういう教育を必要としているのか。どんな社会になっているのかというところですね。

社会がどういうかたちになっていて、まず必要な素養は何なのか。そこを最初にお話ししていきたいと思っております。

そのあとに、どういう教育が求められるかという話と、お三方は教育に関して実践をされていらっしゃる方々なので、ズバリご自身でどのような教育を今後広げていこうとしていらっしゃるのか、それに関してご示唆いただければなと思っております。今日はよろしくお願いします。

登壇者一同:よろしくお願いします。

前田:早速ですが、どういう教育・教養が求められているかに関して、よろしければまず伊藤さんからお伝えいただけませんか。

伊藤羊一氏(以下、伊藤):はい、どうも。伊藤でございます。ふだん僕は若い人たちと出ることが多いんですよ。今回はベテランのお二人と出るので、1ヶ月前ぐらいからちょっと憂鬱でした。

(会場笑)

ほんとですよ。大先輩で、よく存じ上げているんですけれど、今は頭の中が真っ白なんです。なので、なんでしたっけ!?(笑)。

(会場笑)

あの、真っ白になりますよね!?

亀山敬司氏(以下、亀山):さっき「出した本が20万部いった」とか言って嬉しそうに自慢してたじゃん。

(会場笑)

伊藤:いやいや、雑談するならいいんですよ。このね、(ここに座ると緊張するため)みんな座ってごらんなさいよ! 本当に!

(会場笑)

そういう状況です。(話す内容は)要するに世の中がどうなってくかという感じです。

2010年〜2020年の間に、流通するデータ量は40倍になる

前田:素養については、どういうふうに考えていらっしゃいますか?

伊藤:それはもう、本当に当たり前の話なんですけれど、これからIOTで、世の中のことが全部繋がってきます。そしてデータが溜まってきます。2010年から2020年まで、世の中に流通するデータ量は40倍になると言われているんですよ。

まあそれはそうですよね。今までスクリーンの中だけにあったものが、スクリーンの外に出てくるようになるわけです。例えばこの照明と空調と、僕のこの感覚とマイク、これらが全部インターネットに繋がるということなので、データは増えていきます。

(データが溜まるので)AIが賢くなっていくんですね。AIは(正式には)知能ではないんですけれど、データが溜まっていくと賢くなっていきます。そうするとAIが得意な仕事は、世の中で言われているとおり無くなっていくし、不得意なものは、やっぱり人間がやることになります。それは3つあると思っていて、1つ目は……、今緊張して汗ダラダラです(笑)。

(会場笑)

まともなことを言おうと思ってやっているんですけれど、腹の中で(藤原氏、亀山氏に)笑われながら話をしていると思うと……。

藤原和博氏(以下、藤原):笑ってない。大丈夫。

亀山:俺は笑ってる。

伊藤:まじっすか。

亀山:「なに言ってんの」みたいに(笑)。

(会場笑)

伊藤:そうですよね。要するにAIが賢いことはみなさんも承知だと思います。

人間の強みは、抽象的なこと・曖昧なこと・数式で表せないこと

伊藤:(今日の登壇者の中では)下っ端として改めて申し上げると、ルールが決まっている世界ではAIが強いです。同質なデータがたくさん溜まっていく世界でもAIが強いんです。

それから数式で表せることもAIが強いですよね。それができないところでは人間が強い。つまり、ルールが決まっていない世界では、人間のほうが強いんです。今よく言われていますけれど、「意思を自分で立てられるか」がすごく大事なんです。これが1点目です。

2点目は、ちゃんと正確なデータが溜まっていくということが賢いわけです。AIはこれから賢くなって、相手にわかるような明朗な日本語でのコミュニケーションができるようになっていくわけですが、僕ら(人間ができるのは)明朗なコミュニケーションだけではないんです。

例えば、すれ違いざまに挨拶をしますよね。その時に、「ちーっす」と言う。「ちーっす」だったらまだちゃんとした挨拶なんです。けれどでも、人によっては、僕がそうなんですけれど、会社の人とすれ違いざまにする挨拶が、「スーーー」で終わるんですよ。

(会場笑)

わかります? 「ちーっす」も言わなくて「スーーー」。お互いに「スーーー」。たぶん、AIはこれを挨拶だと認識しないと思います。でも、「スーーー」と言うことによって、「私はあなたを認識していますよ」みたいなことを人間はやっているわけです。そういう曖昧なコミュニケーションでは、やっぱり人間が強いんです。

3点目は数式で表せないことです。当たり前なんですけれど、AIは今この瞬間の僕の心境みたいなものを数式で表せないんですよ。こんな中(大先輩に見られながら)、「チッ」とか「ケケッ」とか思われながら、みなさんの方だけを見つめて(話している)。まだお2二人が話をしていないから、僕が輝けるのは今この瞬間だけなんですよ。

(会場笑)

「この瞬間だけちゃんとしたことを言おう」とか、こういう部分は人間にしかできないことなんです。要は、抽象的なこと・曖昧なこと・数式で表せないことです。

だから、意思を自分で立てること、曖昧なコミュニケーション、そしてアートの世界や抽象化するなどのところは、やっぱり人間にしかできないんです。

でもこれは、よくよく考えてみたら、わりと前々から言われている話なんです。そうすると、やっぱり僕らが考える「人間しかできないよね」「人間が強いよね」というところを鍛えていけばいい。当たり前すぎますが、「人間ならでは」のところを鍛えてくことが重要かなと思います。

曖昧さに効く職種は、経営者とキャバ嬢?

亀山:最後に「1分で話せ」と突っ込まなくていいの?

藤原:けっこう長かったよねえ?

(会場笑)

亀山:1分で話してないよ。今5分だったよね?

伊藤:もう本当にすみません。

(会場笑)

前田:ありがとうございます。データが溜まって、ルール化できるものは基本的にAIに取り替わっていく、という文脈のお話だったと思います。とくに、具体的にどういう職種が曖昧さが非常に効きやすいものなのか、というところが気になります。

一旦、そのあたりの話も含めながら、ご知見があればお話を進めていきたいと思います。あまり堅苦しい感じの場にしたいとは思っていませんので(そういうトーンでお願いします)。

亀山:曖昧さに一番力を発揮するのは、キャバクラとかですね。キャバ嬢は腕がないとやっていけないですからね。

前田:ありがとうございます(笑)。

(会場笑)

藤原:素敵な解説ですね。

(会場笑)

伊藤:もう、先輩たちにお任せします。

(会場笑)

前田:他になにか思い当たるところはございますか? たぶん(会場のみなさんは)キャバクラに勤めるわけではないと思いますし……。

(会場笑)

伊藤:やっぱり一番わかりやすいのは経営者ですね。

亀山:そうそう、経営者。適当なことを言って曖昧にしながら、ごまかしながらやってるからね(笑)。

(会場笑)

伊藤:そんなこと言ってないですよ(笑)。でも経営者はやっぱりアートの世界というか、もともと自分でルールを作っているようなところがあるんですよね。

医師より看護師のほうが人間の職として残る

藤原:あとは、ロボット・AI社会が進めば進むほど、人間の人間らしさがクローズアップされていきます。だからヒューマンケア、要するに非常にヒューマンケアのレベルが高いサービスをやっている分野は残ると思いますね。

例えば介護はもちろんそうですよね。医者よりもむしろ看護師(のほうが人間の職として残る)。それから保育もそうです。撫でるとなんだか落ち着くとか、その人がいると癒されるみたいな話とか、そういうものが改めて力を持つんじゃないかなと思います。

伊藤:それはロボットだとダメなんですか?

藤原:それは好みだと思うけれど、ちょっとこう……こういうふうにやるじゃない?(藤原氏が伊藤氏の頭を撫でる)「いい子ね〜」って。これをロボットにやられて癒されるかどうかですね。

伊藤:癒されないですよね(笑)。

藤原:癒されないでしょう。

(会場笑)

ということかなと思います。僕は首に問題があって、指圧を毎週1 回、2回受けないといけないんだけれど、あれもどんなに「達人の技を記憶させたAIマッサージチェアです」とか言ってもダメなんですよ。

やっぱりあの変な穴の開いたところに寝かせられて、上からぐいっと押されるのがいいんです。そしてツボにクッと入るじゃないですか。あの痛気持ちいいのがいいんです。

さらにどんどんやっていくと、マッサージしている人の指が温まっていくんですよ。この温かさみたいなものも含めて(人間がやったほうがいい)。だから20年経っても30年経っても、マッサージ師は残ると思うんです。今、若い人もけっこう整体の業界に入っているでしょう。

伊藤:なるほど。(マッサージ師)増えているらしいですよね。

亀山:もうちょっと儲かりそうなこと(の話)をお願いします。

藤原:やっぱりキャバクラの……。

亀山:キャバ嬢もマッサージ師も、ちょっと彼ら(会場のみなさん)は、なる気なさそうです。

前田:まあ、キャバクラの経営者は……。

藤原:でも、ここで「起業家でしょう」と言うと、あまりにもハードルが高くなってしまいますよね。

AIにできない仕事を見つけるなら、先にAIについて勉強しないといけない

前田:どんな会社を起業する流れがいいんでしょうか? 今ヒューマンケアがかなり当たりやすそうだという話が出ましたが、かつ自分でその会社の経営者をするという話であれば、いよいよ自分の立場が「曖昧オブ曖昧」みたいな感じになりますよね。

今は会計士、弁護士、医師、そういう方々が高所得者として世の中で認識されていますよね。経営コンサルタントみたいなものもそうでしょう。ただ、どんどんそこのルール化がスタートしていますよね。IBD(投資銀行部門)の資金調達ですらルール化がスタートし始めているという話をよく友人から聞くんですよ。そのあたりはどう思われますか?

亀山:結局は、何がAI・ロボットにできて、何ができないかということですが、マッサージのくだりで、じゃあ押すことはどこまでできるのかというと、技術が進めばマッサージロボットの指の温度が温まるようにできるようにもなると思うんです。

だから、AI・ITができない仕事を人間がやろうということになると、まずは先にAIを勉強をしないといけない。AIを作れなくても概要は理解していって、今現在AIはなにが得意なのかを学ぶ。

AIを敵にするか味方にするかは、そのあとで考えればいいんだよ。味方にするなら取り入れながらやればいいんです。人間はこの場所をやって、ここはAIにやらせようみたいにする。

そういう住み分けのためには、やっぱり最初に勉強をしないといけない。俺たち人間が「AIがどこまでできるのか」をまだわかっていないし、それも毎年のようにどこまでできるかが変わってきている。

藤原さんもマッサージに行って、「うわ、気持ちいいわー」と思ってパッと見たらロボットだった、という日も来るかもしれない。キャバクラでも自分がベロベロに酔っぱらった時に、いきなりキャバ嬢の首が落ちて、実はロボットだった。これはあり得る話だと思うんです。

何が起きるかはわからないけど、ただそれがいきなりくるとは思わないし、そのトレンドというか技術自体を常にウォッチする。そこがやっぱり必要かなと思います。

AI知識について、ビジネスで求められる水準

伊藤:亀山さんは「亀チョク」というかたちで、いろんな事業の提案を受けて出資されたり、新しい事業として始められたりされています。今この瞬間、亀山さんの頭の中で「(これから来るのは)ここだろう!」というジャンルはありますか?

亀山:それはぜんぜんないね。正直、俺ももうついていけない。偉そうなことを言っているけれど、「考えろよ!」とみんなに言っているだけ。「お前たちAIを勉強しろ」とか「これからVRをちゃんとやれよ」とか唆しているけれど、俺自身はまったくわかっていないからね。それでいうと、みんなが「やりたい」と言うことに、「ま、いっか」と予算をつけるのが今のやり方です。

伊藤:「勉強しろ」と言うテーマは、やっぱりAIやブロックチェーンでしょうか?

亀山:「今時のもの」という感じだね。太陽光の時は「ソーラーの発電効率を勉強しろ」と言っていたし、今からだとプログラム教育、学校教育が変わるなら「この分野に対して勉強しろ」と言ってる。まあ流行りものだね。俺に聞くより『クローズアップ現代』を見ていれば、だいたいわかるよ。(笑)

「今からはこれですよ!」とか書いてあるからね。『クローズアップ現代』を見て、翌日そのまま同じことを言えばいいんだから。

(会場笑)

理解しないままで言ってしまうので、まあ楽なものだね。

前田:とくに人工知能とか、数学の知識がかなり必要になってくる分野ですよね。どこまで理解するかによってもだいぶ違うと思うんですけれども、ビジネスしてやる上で、どの水準まで求められるとかはありますか? 

とくにAIに関しては機械学習、とくに強化学習の仕組みですね。あとはディープラーニングの話になってくると、線形回帰モデルをちゃんと理解してとか、隠れ層の意味合いがどうこうとか。そういった細かい話になってくると、概念レベルではけっこう数学が入ってくるんですよ。

伊藤:なるほど。僕らもそこをどこまでやったらいいのかについては、けっこう悩んでいるんですよ。

前田:本当に仕組みを理解するレベルになってくると、「そこがわからないと辛いだろうな」と思ってます。

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