「最少人数でイベント運営するコツ」を伝授

鈴木亜希子氏:サイボウズの鈴木と申します。「Cybozu Days」という自社イベントや展示会を担当しております。私からは「最少人数でイベント運営するコツ」というところをお話しさせていただきます。資料は「#サイボウズマーケ」でTwitterにアップいたします。

まず簡単に自己紹介ですが、私は2006年にサイボウズに中途入社しました。前職はサイボウズの販売パートナーで、サイボウズの担当窓口をやっておりまして、マーケティングはまったくの素人で入社しました。

サイボウズ Office、kintoneなどのプロモーションをいろいろやって、いまは自社イベントや展示会をやっております。好きなのはヤバそうなプロジェクトで、ちょっとワクワクします(笑)。

やっている仕事としては、いま言った自社イベント「Cybozu Days」だったり、リードさんなどのイベントの展示会への出展、あとは変わったところでいうと、今日来ていただいているサイボウズのオフィスの来客エリアのエントランス部分の企画・実施などを担当していたり、あとたまにサービスの障害のお詫び告知などもやっております。

私のチームは3人いまして、正社員は私1人で、ほかは渋谷という者がいまして、契約社員で講演などのエバンジェリスト活動をしています。

週3、4日ぐらい出社するか、リモートで働いているかで、私もいつ働いているかよく知らないんですけれど(笑)。一応、同じチームです。4社で複業している4児の父です。

もう1人、もともと新卒でサイボウズに入社して、1回転職して、出戻りでいま複業している吉田です。彼は業務委託です。週1日ぐらい出社していて、2社で複業している2児の父。みんな、子どもが増えるごとに複業の会社が増えるチームみたいです。私は独身なので、サイボウズだけで複業はしていないです。

「強力な独立遊軍」のようなチームを目指して

勝手に思っているチームスローガンは「強力な独立遊軍」。みんなそれぞれが自立していて、好き勝手にがんばってくれたらいいなと思っておりまして、私はまったく管理しておりません。

こんなチームの中で、私は「Cybozu Days」という自社カンファレンスイベントを担当しておりまして、去年は「楽しいは正義」をテーマに開催しました。

このイベントは、もともとは前任者が「cybozu.com カンファレンス」という名前で2012年に始めまして、私は2016年から担当しております。スライドにムービーを貼ったんですけど、ちょっと時間がないので飛ばそうと思います。

うちは一部のセッションの内容を、ログミーというサイトで全文公開しておりまして、さっき話していた大槻のセッションなどもありますので、もしお時間がありましたら、ぜひログミーさんを見ていただければと思います。

前任者の時代からの変遷についてです。だいたい500人ぐらいのイベントから始まりまして、去年が全会場合わせて実来場9,000人ぐらいのイベントになりました。

協賛いただいているパートナーさんの数も、最初は30社から始まって、去年は70社。会場も東京ドームホテルからニューオータニになり、いまは幕張メッセでやっております。今年で9回目になるイベントです。

サイボウズイベントのコンセプトを変更した理由

ここからは、私が(前任者から)引き継いだ時に変えたことについてご紹介します。 まずはコンセプトを変更しました。もともと「cybozu.com カンファレンス」は自社クラウド開始と同時に立ち上げたイベントで、そこから4年経っていて、だいぶ状況も変わっているので変更しております。

もともとサイボウズはオンプレミスという、自社のサーバーにインストールするタイプの製品を出していたんですが、そこからクラウド中心に切り替えようというタイミングが2012年でした。クラウドはお客さまのデータを預かるので、オンプレミスの時よりも信用が大切になるんです。

この会社にデータを預けて大丈夫なのかというところが見られるようになってくるので、新規の見込み客である役職者や経営層の方に「サイボウズ、信頼して大丈夫ですよ」ということを伝えるようなブランディングイベントとして始まりました。

私が引き継ぐタイミングで(スライドの「After」を指して)ここをちょっと変えております。いままでは新規向けのブランディングというところでしたが、だいぶユーザーさんもパートナーさんも増えてきましたので、見込みのお客さま、既存のお客さま、パートナーさま、採用候補になる方、サイボウズ社員のそれぞれが相互に作用することで、次のステップに進んでいくための機会と捉えております。

ちょっとわかりづらいと思いますけど、図を描きました。図を書いたらもっとわかりづらくなってしまいまったんですけど(笑)。何を表しているかというと、マーケティングとは、そもそもサイボウズのことを知らない人に対して、まずは知ってもらって、好きになってもらって、理解してもらって、買ってもらうというような流れで、製品のプロモーションは、基本的にはここのラインだと思います。

しかし「Cybozu Days」の場合、ちょっと好きというところから、製品だけではなく「どんな会社なのかな?」「あっ、なんかこの会社、いい会社だな」(と思ってもらうことで)、そこから製品を好きになってくれるかもしれないですし。

もしかしたら、うちで働きたいと思ってくれるかもしれないし、もしくは、転職を考えて悩んでいる人がいたら「ああ、そういえばサイボウズよさそうだったよ」と勧めてくれるかもしれないといったようなラインもあるなということを考えて実施しています。

クラウドサービスは初期投資が安く、どんどん継続していくというものになるので、使い続けて満足していただかないと、うちも儲からないということで、買っていただいた後に、お客さまが使いこなしているか、あるいは、もっと使いこなしていただいて、他人にも勧めてしまうぐらいになっていただく。

あとは、パートナーとしてサイボウズのビジネスに関わりたいと思っていただいたり、もしくはもうパートナーになっているお客さまが儲かる、そんな商売にしたいと思っています。

こうしたいろんな状態の人が、それぞれ次に進んでもらえるような場所。サイボウズとお客さまとの一方的なコミュニケーションではなく、例えば既存ユーザーさんの活用事例を見て、見込みのお客さまが次に進んだり、パートナーさんから説明を受けて、新規の人が次に進んだりなど、作用し合えるような場になるといいなと思っております。スライドの図を見てもまったくわからないと思いますけれど、そんなところになります。

そして、「Cybozu Days」が誕生

もう1つ、強化したのは展示エリアです。前の図のように、サイボウズの象徴はいろんな方が関わっているということで、展示エリアはサイボウズだけではなく、パートナーさまもすごくたくさん集まっていただいている場です。これをセッションと同じように重視したいと思いました。

私のタイミングで「cybozu.com カンファレンス」から「Cybozu Days」に名前を変更したんですが、これはカンファレンスという語感がセッションを想起させる言葉だなと思ったので、もっと全体を楽しんでほしいというところで名前を変えています。

さらに、会場のど真ん中に展示エリアを設置したりして、出展パートナーさんとのコミュニケーションをどんどん強化したいなと思っております。ただ場所を提供するだけではなくて、どんな目的で出展されているのかなど、どうなったら成功と思っていただけるかについて、できるだけ多くのパートナーさまとコミュニケーションをとりたいなと思っております。

具体的な会場についてです。(スライドを指して)これは去年の東京会場で、これは幕張メッセの2ホール分の会場なんですが、ど真ん中に展示エリアを置いて、「中心は展示エリアなんです」という表現をしております。

また、これは当日お配りするパンフレットなんですが、基本的に私がヒアリングをして書き起こしておりまして、パートナーさまが何を出展したいのかというところをできるだけ理解したいなと思っております。これをヒアリングした内容を社長などにもシェアしており、それを基に社長自らブースツアーを開催したりもしております。

サイボウズらしい空間をつくりたい

3つ目ですが、大きく変えたのが会場と雰囲気です。ここは私が一番こだわったところです。それまではホテルで開催していたんですが、自社イベントがすごくブームになってきまして、IT企業のカンファレンスイベントはどこも雰囲気が似ているなというのが私の印象でした。

見た目からしてサイボウズらしい、記憶に残るような空間が作りたいなというところと、1フロアで完結できる広い会場を作りたいなというところで。

あと、弊社のイベントなどでもお弁当を配るんですけど、ホテルは狭いため食べる場所がなくて、すごく立派なスーツを着たおじさまがホテルの階段などに座ってお弁当を食べていて、普段だったら絶対にそんなことをしないような方にこんな思いをさせているということで、申し訳ない気持ちになりました。

1日中、ストレスなく過ごしていただけるようにしたいなというところで、会場をホテルから幕張メッセに変更しました。

これは「cybozu.com カンファレンス」時代のクリエイティブイメージなんですが、経営層なども意識して、少し落ち着いたクリエイティブにしておりました。

「Cybozu Days」になって、わりと賑やかな感じの楽しい会場で、1フロア完結するかたちで変更しております。

スライドの真ん中にいるのが青野なんですけども、無駄に歩き回っていたりします。

また、休憩エリアは各所に点在させたり、ステージ名を「A会場」などではなく、「ライオンステージ」「キリンステージ」というふうにしました。これは単におもしろくしたかっただけではありません。

A会場やB会場というのは、「えっ、Bですか、Dですか?」みたいな感じで、聞き間違えやすいんです。ライオン、マンドリルなどだと絶対に聞き間違えないので、これはすごくおすすめです。ちょっとふざけた感じはするんですけれども。

あとは、お子様連れでも来ていただけるようにキッズスペースも用意しました。育休中の社員も子ども連れで来たりします。

最後に、海浜幕張駅でお帰りになる方に「ありがとうございました」みたいな広告も出しまして、こんな感じでイベントをやっております。

青野社長は「幕張いいね!」

こういうプランにしたいと青野にいった時に、「一番いいね」と言ってもらったところは幕張のところです。「幕張いいね!」といわれましたが、これは青野がどういうことを言いたいかというと、都心から離れているからこそ、すぐに帰るのではなくて、滞在型のイベントができるかもしれないと。

「一時的に集客が落ちるかもしれないけど、ぜひチャレンジしてくれ」という反応でした。それを青野から言われた時に、私の本音としては、本当は同じ広さがあれば都心がよかったんです。幕張メッセではなく、東京ビッグサイトが空いていればそっちのほうがよかった。でも、妙なところに青野がハマってくれてよかったなという感じでした。これで利害が一致しまして、幕張メッセに決まりました。

これはイベントをやる方しかあまり興味がないところかもしれないですけど、私が(前任者から)引き継いで初開催までのスケジュールですが、だいたい開催の1年半ぐらい前に担当になることが決定しました。

その翌月ぐらいに企画を立てて、承認を得ました。余談ですが、それと並行してオフィスが移転して、それがちょっと落ち着いた後に4社でコンペを実施しました。コンペ期間はだいたい2ヶ月弱ぐらいとりまして、各社さまから最新のご提案をいただいて決定しました。

その後は忙しくなりそうだったので、2ヶ月ぐらいはゆっくり過ごしました。ちょっと失敗したのは、私はこの年展示会をけっこうやっていて、その後の半年で展示会を12本以上やっていたんですね。これは本当にやめておけばよかったです(笑)。

Cybozu Daysは開催が11月なので、4ヶ月前ぐらいから協賛者さまの募集を開始して、8月末ぐらいにWebサイトをオープンしました。

そして11月に東京開催、12月に大阪開催というようなスケジュール感です。ちなみに、本格的な集客開始はを2ヶ月前くらいからにしていまして、これは前任の担当者からのアドバイスでした。以前、3ヶ月ぐらい前に集客を開始したら、かなり歩留まりが下がったと。

なので、わりと2ヶ月前ぐらい……ちょっと短いので不安になるかもしれないけど、それぐらいのほうが安定するよというアドバイスをもらい、2ヶ月間にしております。

KPIやリード目的について

また、「KPIはどうしていますか?」とよく聞かれるんですけど、結論からいうと、コンセプトを網羅するようなKPIはあまり表現できていません。個人的には満足はしていないですが、購入者アンケートとして、購入いただいた方に対して、「どこで製品を知りましたか」という認知の寄与率や、来場者の方の総合満足度と展示満足度、来場者数あたりを見ております。

認知の寄与率でいうと、ちょっとずつ上がっているんですけど、カンファレンス時代の3、4パーセントぐらいから始まって、製品にもよるんですけど、去年は6、7パーセントぐらいでした。展示会に関しては、kintoneは10パーセント近くの方が展示会で認知しており、新規に関しては費用対効果でいうと展示会のほうが高い状況です。

スタートアップなど、わりと小さく始めたいという方は、自社イベントよりも展示会のほうが効率はいいのかなと個人的には思います。ただ、目指したいところは、新規の方に買っていただくだけではなく、エコシステムが循環して次のステップに進んでいただく場として「Cybozu Days」が貢献できればと思うので、認知の寄与率は上げていきたいなと思っております。

また、よく聞かれるのは「リードはどうしていますか?」というところです。ごく一部を除いて、うちはプッシュのアプローチは一切行っていません。お客さまが自発的に次のステップに進んでいただくというところを目指しており、厳重なアクセス権管理のもと、ほとんど私1人しかアクセスできない場所に来場者さまの情報を大切に保管しております(笑)。

その背景として、サイボウズはプッシュ型のインサイドセールス部隊を持っていないんです。なので、あまりリードの情報があり過ぎても対応しきれないというところと、うちのマーケティングオートメーションの対象に関しては、お客さまが何かしら自発的にアクションを起こしてからとしております。

もし、うちの営業部がインサイドセールスをやりますよということであれば、ここは変えていきたいなとは思っております。

クリエイティブな時間をどう増やすか

今回のセミナーのメインテーマは「クリエイティブな時間をどう増やす?」で、業務効率化のところがテーマになっているんですが、一番効率化が必要だなと思った瞬間が、2016年10月の頭にあった、電通の方の過労による自殺の報道です。

サイボウズは電通さんとはとくにお取引はないので、関わりがあったわけではないですけれど、このニュースを見て真っ先に思ったのは、電通さんだけが悪いわけではなく、おそらくその先にいるクライアントの無茶振りなどもかなりあっただろうなというところで、そこにも責任があるのではないかということです。

2016年10月は、1ヶ月後に初めての「Cybozu Days」を控えていて、他人事ではないような多忙なプロジェクトの状況になっていたため、自分の身に何かあるだけならまだしも、お取引先の方に何かあったらとんでもないことになるなと思いました。

ましてやサイボウズは働き方を訴えている会社ですので、真剣に考えなければと感じました。具体的に見直したのは、まずは体制変更で、あとはITによる効率化を行いました。

これもちょっと汚い図なんですが、「Cybozu Days」は、どのような体制でやっているかという図です。真ん中の「す」は私です。ZEOさんが総合運営会社さんですが、広告代理店さんではありません。よって、広告部分に関してはADEX(日本経済広告社)さんという代理店さんに入っていただいて。

さらにデザインなどの部分でフリーランスの江渡さん……サイボウズ社員の旦那さんなんですが、その方に入っていただき、連携しながらやっておりました。

初年度はZEOさんが全体運営に加えて協賛社さんのスポンサー事務局をやっていたのですけども、スポンサー事務局にかなり負担が掛かっていて、ここにボトルネックがありそうだなと思いました。

そこで体制変更し、日経BPさんにも入っていただきました。協賛スポンサー事務局を私、ZEOさん、日経BPさんの3社連合のようなかたちで、複数社に分散する体制に切り替えました。

これはだいぶ機能したなと思っております。もともと日経BPさんは、こういう仕事をする会社さんではないですが、私が展示会によく出ていて、日経BPさんの自社イベントの事務局は一番しっかりしているなと思っていたので、うちのイベントを一緒にやってくれないかとお願いしました。こんなかたちで、まずは体制から手を付けました。

業務効率化はプロジェクト成功のカギ

ほかにもこまごまとITによる業務効率化を行ったんですが、かなりマニアックなところなので、今日はちょっと割愛させていただきます。

何か汎用的な業務効率化のお話をしたほうがいいかなと思って、ちょっと考えたんですが、「Cybozu Days」のプロジェクトとしての特徴は、まず第一に予算が社内最大規模で、予算が多いと社内の注目度は高くなりがちかなと思います。あとは、関わる社員やお取引先が多いです。

あとは、泣いてもわめいても絶対にデッドラインが動かない。このあたりがプロジェクトとしての特徴かなと思っております。

こういうプロジェクトで業務効率のネックになりそうなものは何かなというのを挙げてみましたが、(スライドを指して)今日はこの青く引いている企画や意思決定のところ、あとは取引先とのコミュニケーションのところと、制作ディレクションのところをご紹介したいなと思っております。

まずは企画などの意思決定です。これは社内注目度が高いプロジェクトにありがちだなと思っているんですが、承認がなかなかおりなくて実行フェーズに進めないとか、定例会議を待たないと決められないなどがあります。

また、偉い人が突然(想定外のことを)要求してきて手戻りが発生したり、ドンデン返しで現場が振り回されるなどもあります。ステークホルダーの承認が得られないというのは、他社の方と話していても悩んでいる方が多いなと思っております。

ここは業務効率だけではなく、この部分でつまずくとおもしろくない企画になってしまったり、みんなが疲れてしまったりして、そもそもプロジェクトが失敗するような、かなり重要な部分かなと思っております。

私が思っている対策は、自分が決定できる範囲を広げて意思決定スピードを上げることが業務効率を上げるポイントかなと思っております。

「こんなにがんばっているのに…」

ここで、私が20代のころの話をご紹介します。私が入社して最初に担当した大きなプロジェクトが、サイボウズ Office 7というグループウェアのメジャーリリースです。

この時は価格案からマーケティングプラン、広告宣伝、制作と、要はPMのような役割をやっていたんですが、その時の私はまだ社会人3年目で、職種を変えてマーケティング素人として転職して半年ちょっとでした。

サイボウズ Office 7が当時の主力製品で、さらに4年ぶりのバージョンアップで、社内注目度は絶対に高いプロジェクトで、さらに当時のサイボウズの離職率は28パーセントだったため、(前のバージョンがリリースされた)4年前のことを知っている人がかなり少ないという、とても辛い状況でした。

何が起きたかというと、プランがぜんぜん承認されず、何度も何度も資料作りを繰り返して、でも決まらない。それによって、後工程はどんどん遅れてしまう。

とくに若かった私には販売開始ができる体制を整えるだけでも精一杯で、広告宣伝にあまり思考を投資できず、広告代理店さんに丸投げになっていた部分もあるなと思っていました。さらに残業続きで、毎日10分ぐらい遅刻して怒られるんです。これがお給料の査定にも響きまして、ぜんぜんお給料も上がりませんでした。

当時の私が思っていたことは、「何でこんなにがんばっているのに怒られるのか?」「根回しなんてダサいのに、そんな社内向けの仕事ばかりをしていて嫌だな」などといったこと。そもそも偉い人は、前回指摘したことを忘れて違うことをいうんですよ。

毎回同じ説明をしているのに、指摘されることは毎回違って、不毛なことを繰り返さないといけなくて、若かった私は「バカなんじゃないか」と(笑)。……これはTwitterには書かないでほしいですけれども(笑)。ただ、そこから30歳前後になって、少し大人になりまして。

どうやらそういうことが起きるのは、私が信用されてないからと、やっと気付きまして、各ステークホルダーから自分自身が信用されることが自由への近道だなと、ちょっと大人になりました。

「やるべきこと」「やりたいこと」「できること」の中心を意識

マーケティングプランは基本的には予測値で、こうやればこうなるんじゃないかという仮説の企画になるので、それが成功するのか、この予測値が当たるのかは100パーセントではないわけですよね。

その成功確率がどのぐらいあるのかというところは、担当者個人に依存しているのかなと思って、「コイツに任せれば上手くいくかもしれない」と信用されることが近道じゃないかと思いました。いま、私の上司が後ろにいることに初めて気付きまして、ちょっと気まずいです(笑)。

(会場笑)

信用されるために私が心掛けたこととしては、まずは嘘をつかずに正直であることです。あとは、「自分のやるべきこと」「やりたいこと」「できること」の中心を意識すること。とくにやるべきことですね。

自分がどれだけやりたいと思っても、これはサイボウズとしてやるべきことなのかというところと重ね合わせることを意識しました。あと、わりとテクニック的なところですが、ステークホルダーのやりたいことや、気にするポイントを把握したり、ステークホルダーの先にいるステークホルダーまで意識してコミュニケーションをとったり。これはちょっといいづらいですけれど、直属の上司はいい意味で利用したり。

(会場笑)

(社内で)偉くなっているということは社内調整が上手なはずだと思いまして、わりと上司には「こういうことを起案したいんだけど、どういうルートで誰に承認をとればいいですか?」というようなことをアドバイスしてもらうようにしました。すると、けっこううまくいきまして、「そうか、上司にはこういうことを聞けばいいんだ」と気付きました。それで私は市民権を得ました。

(スライドを指して)これはちょうど、さっきのTwitterでのやり取りです。副社長の山田という者がいまして、うちはいま、かなり自由な働き方なのに、山田が「まだ通勤ラッシュから卒業できない」といっているので、「ああ、まだまだですね」と返したら、「(遅刻魔である私の)偉大さを垣間見た気がします」といわれて。ちょっと調子に乗って「副社長に遅刻を褒められた」といったら「いや、遅刻を褒めているのではなくて、遅刻をコツコツ継続して、ついにサイボウズから遅刻という概念をなくした」と(笑)。

(会場笑)

副社長から褒めていただきまして、ずいぶん私も市民権を得たなと先ほど思いました。本当に、昔は遅刻を怒られたんですよ。「年間遅刻ランキング」というExcelが配られて、私は何年も連続でNo.1だったんですが、やっとそれが許されるようになりました。

「社内炎上」の案件も乗り越えてきた

もう1個、番外編なんですが、ステークホルダーでもわりと上層部のほうからの理解は得られたのだけれど、社内からは賛否両論という場合があるんですね。サイボウズ社内では「社内炎上」と呼んでいるんですけども、「何だこのクリエイティブは!」「こんなものを出したら恥ずかしい!」などといったものです。

そんなかたちで社内が若干炎上していても、青野が賛成している場合、私の経験則的には、むしろ普通よりうまくいくケースが多いんですね。

これは私のプロジェクトだけではなくて、他の人のプロジェクトを見ていてもこういうケースがあります。社内で批判があっても、「これは大丈夫」という信念があれば、心を強く持って進めてみてもいいのかなと思っています。(一方で)「何でそういう時ってうまくいくのかな?」とも思っていました。

最近、『転職の思考法』という書籍を書いた北野唯我さんという方のブログに「創造性は直接観測できないが、「反発の量」で間接的に測ることができる」ということが書かれていました。

いままで見たこともないことに対して、直感的に「これはなんだろう?」という怖さみたいなものを感じるケースがあるのかなと思って、こういう状態の時、もしかしたらいままでになくうまくいくケースがあるんじゃないかなと思っています。

ただ、相当心を強く持たないとしんどいですし、私も何度も経験があります。例えば、(スライドを指して)このエントランスの時もだいぶ炎上しましたし、会場を幕張メッセに移動する時もそうでしたし、去年の「Cybozu Days」のテーマの「楽しいは正義」の時も賛否両論ありました。

だいぶいろいろあり、おかげさまで円形脱毛症もずいぶんできましたが、心を強く持つと、その先にいいことがあるのかなと思っています。

kintoneでタスク管理とコミュニケーション

次に、お取引先とのコミュニケーションです。業務効率を下げるものとして、「メールが多過ぎる」「打ち合わせが多過ぎる」「ファイル管理が煩雑過ぎる」などがあり、私は不要なコンペも業務効率を下げているんじゃないかなと思っております。

ここでの対策としては、PRを入れさせていただきますが、私はkintoneを使っております。私のプロジェクト管理としてのkintoneの使い方は、「チャット+データベース+ファイルストレージ+まとめサイト」的なものです。例えば、(スライドを指して)これが制作会社さんとのkintoneの画面なんですが、ここによく使う情報をまとめておきます。このスレッドがチャット代わりなんですが、いろいろとテーマごとに議論しております。

あとは「こういうふうにやってほしい」という業務フロー的な情報がある時は、スライドを指してこういうかたちで、こういうステップで、こういう業務をやってくださいねという依頼を書いておきます。

また、こちらはチャット的な画面ですが、メールのようにいちいち「お世話になっております」と書かなくてよく、議論のテーマごとにスレッドでやり取りできるため、だいぶスムーズかなと思っております。

ファイル管理も、kintoneのファイル管理アプリを作りまして、それぞれ最新版を管理できるようにしております。

これは少しカスタマイズで入れているんですが、スケジュール管理もやっております。イベントのスケジュールだけではなくて、ちょっと私が動けない時間など……例えば、私がこの日は松山に出張していることや、逆に制作会社さんが別案件でここの期間は身動きが取れないなどの情報を管理しています。

そういう情報を共有することで「じゃあ、その前にちょっとこういうタスクをやっておこうか」などといったことができるかなと思っております。

社外のスタッフとの強固な絆

次はちょっと小ネタなんですけど、不要なコンペについてです。イベント業界はけっこうコンペが多いと思いますが、いいコンペとやめたほうがいいコンペがあるかなと思っております。やめたほうがいいと思うのは、とりあえず慣習でやる(コンペです)。

あとは、コンペをしないと「アイツら不正するんじゃないか」「馴れ合いになるんじゃないか」などと上の人が漠然とした不安を持ったり、もしくは、もっといいところがあるんじゃないかといった漠然とした期待などもあるかもしれません。

現場もやってる身からすると、とくに大きなプロジェクトになる場合、プロジェクトによって業者さんが総入れ替えになるというのは、ものすごく業務効率が下がるなと思っております。

もちろん、メリットがある場合は(コンペを)やったほうがいいかなと思いますけど、メリットが少なくて業務効率の低下が大きい場合には、私は不要ではないかと思っております。

このあたりの対策として私がやっているのは、いつでも替えが効く業者さんではなくて、プロジェクトチームだということを社内に発信するようにしています。細かいことなんですが、社内であっても「ZEOはさぁ」のように、絶対に呼び捨てしなかったり。ほかにも「代理店さん」とはいわず、固有名詞で情報発信したり。そういうPR活動をしております。

サイボウズでは、全社投票で「Cybozu of the Year」というMVP的なものが決まるんですが、PR活動の甲斐あってか、Cybozu Daysは3年連続でチーム賞を受賞しました。 「Cybozu of the Year」は社外の方も投票対象になっておりまして、一昨年はZEOさん、去年はZEOさんと日経BPさんとデザイナーさんを加えた総合チームで受賞しました。

制作のディレクションも円滑に

マーケティング部門の方は、制作系のディレクションをやられてる方も多いと思いますが、ここはコミュニケーションコストが業務効率を下げているかなと思います。

原因としては、ディレクションスキルの不足だったり、最低限の知識不足があるかなと思います。ここは話すと長くなるので、自分が若いころに教えてもらいたかったなと思った内容をまとめた社内資料をスライドに貼っておきますので、もしよろしければご覧ください。ただ、少し初歩的な内容なので、詳しい方はぜんぜんいらないと思います。

もちろん、kintoneは制作ディレクションにも便利でして、例えばイベントになるとパネルなどを大量に作りますが、お直しなど、制作物ごとにどんどんやり取りが発生します。

それで情報の把握が煩雑になってしまうのですが、kintoneの場合には、それぞれ制作物ごとにデータベース化して、制作物ごとにお戻しなどのやり取りをコメント欄で行っています。

スプレッドシートとSlackがくっついているような感じですかね。かなり情報が整理されて、すっきりします。あとはちょっとおまけですが、ITが好きな方向けに、こんなツールを使っていることで資料に貼っていますので、ご覧いただければと思います。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)