体温と気温にまつわるサイエンス

ステファン・チン氏:一般的に人間の体温は37℃付近です。ですから、もし気温が同じくらいであった場合、寒くも暑くもなく、ちょうど良く感じるべきではないかと思われるかもしれません。しかし、よく晴れた日のビーチで過ごしたことのある人に言わせれば、そんなはずはないというでしょう。

実際、動植物分類上の種として言えば、人間は自分の体温よりずっと低い温度を好みます。それにはいくつかのはっきりとした理由があります。その理由は、体全体が同じ温度でないからです。体幹には内臓が入っているため、37℃という温度に保たれなければいけません。

しかし、身体の他の部位、例えば腕や足などは、体感より何度か低くなる傾向があります。そして、皮膚は何度か冷たくなり、一般的には32℃くらいになっています。ですから、その4~5℃の違いを感じるはずです。

しかし、それは私たちが体温と同じ気温を熱いと感じる理由にはなりません。32℃の気温はかなり暖かいと言えるでしょう。なぜなら、人間は保温運転を常にしているためです。コンピューターが、空気の流動がない環境でずっと稼働していると熱くなるのと同じです。

人間の細胞も日々の営みをする上で、オーバーヒートしてしまいます。代謝のプロセスにおいて、副産物として熱がたくさん生じます。ですから、身体は常に余分な熱を放出する方法を探しています。こうした理由から、低めの18℃~21℃が心地よいと感じるのです。

周りの気温より皮膚の温度の方が高い場合、熱が対流でかき混ぜられます。空気中の気体が皮膚で温められ、飛んで行きます。そうして冷たい分子がまたやってきます。

しかし気温が皮膚と同じか、高い温度の場合、余分な熱を排除するために身体は余分に働かなくてはならなくなります。血流の量を増やし、皮膚の温度を上昇させることで、気温より皮膚の温度が高くなるようにします。しかし、上手くいかない場合、発汗して皮膚上の水分を蒸発させることでクールダウンしようとします。

空気中の湿度が高いと、空気中の蒸気が、皮膚上の水分が蒸発する速度を遅くしてしまいます。汗の水分分子が飛んでいくはずの空間を、湿度が埋めてしまうためです。そのため、高温多湿の状況を息苦しく感じるのです。

その代わり、外気がかなり低くても人間は生きていけます。身体は発熱の作用があるので、断熱機能のある服を何枚か重ねて着るだけで、外が寒くても人間は心地よく暖かく過ごすことができるのです。