イノベーションの芽を摘む、メンタリングとお金の問題
「SHIBUYA QWS」をエコシステム化するのに必要なこと

トークセッション(2):「知的邂逅からはじまるイノベーション」 #3/3

2018年12月2日、渋谷ヒカリエにて「SHIBUYA QWS SYMPOSIUM(渋谷キューズ シンポジウム)~INNOVATION DISTRICT シブヤ~」が開催されました。本イベントは、2019年秋に開業を控えた渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)の15Fで展開される、イノベーション創出拠点「SHIBUYA QWS」のコンセプト紹介を兼ねて行われたシンポジウム。SHIBUYA QWSでは、大切にしている価値である「問いの感性(Question with Sensibility)」を磨き、多様なバックグラウンドを持つ人たちが混じり合うことでイノベーションを起こす、クリエイティブ人材の育成を目指しています。「渋谷だから生まれるイノベーション」をテーマとしたトークセッションの内、本記事では「知的邂逅からはじまるイノベーション」の後半の模様をお送りします。

課題は資金繰りとメンタリング

スプツニ子!氏(以下、スプツニ子!):あと、保健室にやってきてズル休みをする子に、お小遣いを渡してくれる人が大事だと思うんです。

(会場笑)

それは、学生たちのスポンサーをしてくれる企業さんとかベンチャーキャピタルとか。「なにかプロジェクトをやりたい」というときに、資金は非常に大事だと思うんですよね。なので、この場に集まったプロジェクトに、そういった企業やベンチャーがアクセスしやすいようにすることはすごく大事だなと思います。

稲蔭正彦氏(以下、稲蔭):今日集まっていただいている趣旨は、そういう方々を募る会なのかもしれないですね。今日のシンポジウムの冒頭にもエコシステムという言葉が出てきて、アクセラレーター、インキュベーター、投資家、あるいはエンジェルみたいな話がありましたね。

やっぱりやんちゃな人たちがおもしろいことをやって盛り上がって、「じゃあ社会のためにこんなことをやろう」となったときに、次に必要になるのはなんらかのかたちのメンタリングと資金です。この2つのハードルがありますね。

我々がどうやってこのキューズのプラットフォームをエコシステム化するかというときにも、必ずこの2つは必要だと思うんです。スライドには両方入ってるんですが、書くのは簡単でも、実体として誰がどうやって、というところがあります。

そういう観点で、地域と一緒にやられるときは、一緒になにかをやる、巻き込むということがすごく大事です。実際商店街を含んで、本当に生活圏内の活動をされていると思いますが、岡山先生はそういうところでどんなことをされていますか?

出会うのはあくまで「人」と「人」

岡山理香氏(以下、岡山):すみません、ちょっと地域のことじゃなくてもいいですか? 私の経験なんです。某大企業、先ほど野城先生の口からも出ました某M……まぁ駅でわかるんですけれども……。私、そこのデザイン部門で東京都市大学としてうかがったんです。

それでいろいろお話をしたのですが、最後に「いやぁ、あなたがた民間が」と言われたんですよ。我々のことを「民間」と言われまして。そのときにカッっと私のシャッターが下りてしまったんですね。

それはそこで終わるんですけれど、そのあとご飯を食べに行きまして。その企業のデザイナーさんと個人的に話をすると、これはすごく楽しくて、どんどんお話が進んでいくんです。なので、私が言いたいのは、企業対大学・大学対大学となると、どうしてもこんなふうになってしまうんです。

なので、出会いは人と人。大学と企業が出会うというのは、文法的にもおかしいんです。人と人とが出会う、そしてその場をつくるのがここだと私は思っています。企業や大学(の肩書き)を外して、人と人として自分はなにができるか。あなたはなにができるか。そういう場に15階(この場所)がなればいいなと思います。

稲蔭:まさしく保健室は普通の場所とは違う特別な場所ですよね。国的でいうとちょっとかもしれませんが、そういう場だと思います。そんなユニークな場をつくる意味がそこにあると思うんですよね。

今までの組織の延長線上でできればいいんだけれど、そうではない場があるのは、その場の魅力なり価値をそういうふうに提示する。おっしゃる通りだと思います。

研究者が研究室から飛び出してイノベーションを起こす

田中愛治氏(以下、田中):今、学生とベンチャーとよく言われますけど、ベンチャーとの出会いのスポンサーということですね。たぶん我々(大学側)が「うちの学生はこんなアイデアがあります」と言うのは、なかなか説得力が弱いんですよね。

そこで、学生たちが渋谷に来て、いろんな方と出会うことでいろんなアイデアが出るのかもしれないですね。まさに保健室で、大学の堅いところから飛び出してくる場がある。

先ほどお話ししたコオロギでクッキーをつくろうとしている大学院生の話ですが、今朝のヤフーニュースに彼が出ていたんです。彼がシリコンバレー行ったときにびっくりしたのは、(研究者が)研究室から外に出て行くことでした。

研究室に閉じこもって研究していなくて、研究室からそういったベンチャーに出るんです。だからイノベーションと言うと、「経営が目的だ」とか言われているけれど、アカデミックな研究室からイノベーションで社会とつながるのを見て、彼は「すごいな、負けまいと思った」と言ってるんですよ。

そうすると、やっぱりいろんな研究室が厳しいルールから飛び出して、保健室である渋谷に来ていろんな人と出会う。そこに来ている企業の人も、「これはおもしろい、こんなことをやる学生がいるなら、ぜひ出資してみよう」と思う。

1大学でやるのと、こういう場でやるのとはぜんぜん違うと思います。そういう自由な場をつくることは、すごく夢があると思います。

渋谷を中心としたアーバンリビングラボという発想

稲蔭:ありがとうございます。野城先生はこのプロジェクトの出発点でいらっしゃると思います。今「保健室」という、みんなが集う1人1人の場と言いましたけれど、我々のコミュニティで集うことは、意味があることだと思うんです。

今日いらしているみなさんをはじめとする、東京中や渋谷中、そして世界中の人たちを、どうつないでプロジェクトを動かしていくかという視点に立ったときに、このSHIBUYA QWSの可能性はどんなものがありますでしょうか?

野城智也氏(以下、野城):もちろん非常にすばらしいスペースなんですけれど、そこだけだとおさまりきらないので、やっぱり試しにつくってみて使ってみる。つくるところは多少、大学もお手伝いできるし、もしかしたらこの主旨に賛同いただける企業の方がつくってみる(のもいいかもしれない)。

あと、この中心になっている東急電鉄さんは、郊外にたくさんラボというか、実際の生活者のラボをたくさん持っていらっしゃいます。(ここで)つくったものを今度はそこで試してみるというように、実際につくって試しに使ってみて、それで失敗したときはまた考えていく、ということも一緒にできたらいいですね。

そのためには今おっしゃられたように大学のキャンパスでの活動も大事だし、企業でうけるために、企業での試作も大事です。また、実際にこの渋谷を中心にアクセスできるところは、さまざまなアーバンリビングラボといえると思います。

そういったところで使っていただけるような、こういうことをおもしろがっていただけるようなユーザーの方々まで一緒にすると、「育てていく」ところが動いていくと思います。

稲蔭:そうですね。ファーストタッチポイントは我々のコミュニティの外、というところに、みなさん関心を持っていただければと思います。

「おもしろい人がいる場所」にならないと、人は行きたくならない

稲蔭:みなさん、今日はせっかくの日曜日を返上して来ていただいていると思います。もしご意見や、あるいは我々に向けた質問、こんなふうにしたらいいんじゃないかというご要望などがありましたら、ぜひご意見を頂戴したいです。手を挙げていただければ、周りのスタッフがマイクを持って参ります。いかがでしょうか?

(会場挙手なし)

そうなんです。日本は、こういう状態でシーーーーーンとなってしまうので、ファーストペンギンをどうやって探すかがめちゃくちゃ難しいんですが。あ、手を挙げている人が壇上に1人いますね(笑)。

スプツニ子!:意見があります! あと、私がこういうときによくやるのが、「一番最初に意見や手を挙げた人には、ものすごいラッキーが起きますよ」と言うんです。そうすると、みんな恐る恐る手を挙げるんですよ。

(会場笑)

稲蔭:ちょっとやってみてくださいよ。

スプツニ子!:え!? 私、意見あるのに?(笑)。じゃあみなさん、手を挙げたら、めっちゃラッキーな年末になると思いますよ!

(会場笑)

みんな、なにか期待していることがあったら、手を挙げてみてください。

(会場挙手なし)

じゃあみんなが考えている間に、意見いいですか? 場をつくっても、やっぱり誰が使っているかという、キュレーションがすごく大事だなと思っているんです。

今、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーというものがあって、毎年世界中から100人だけ、リーダーシップがある人やおもしろい人がダボス会議から選ばれるんです。そうすると、「きっとおもしろいやつがいるんだろうな」というセレクティブな感じが出るんです。

TEDというスピーカーカンファレンスも、TED Fellowsというのをやっていて、あれは毎年15人だけが選ばれるんです。

「TEDが選んだ15人だったら会いに行きたいな」と思うので、こういう場をつくるのもいいんですが、ある種のセレクション、先着何名とかでVIPな感じで始めると、もっと行きたくなるんじゃないかなと思うんです。ガチな意見ですみません(笑)。

稲蔭:たしかに(笑)。

お金の相談をしたくても、どこに窓口があるのかわからない問題

スプツニ子!:では、ほかに誰かいらっしゃいますか?

稲蔭:ラッキーな方。

スプツニ子!:(手を挙げた人を指して)ほら! ラッキーになりたい方が。

稲蔭:しかもKMD生ですね。

質問者A:今、大学院の博士課程で研究をさせてもらっていて、つい2ヶ月前に会社を起てたんです。目的としては、もうちょっと自由に動けるようにするためです。会社を起てたはいいのですが、やっぱり詰まっているのがお金の話なんですよ。

各大学さんが、スタートアップやベンチャーに対する支援を進めていると思うのですが、正直言って窓口が誰かがわからないんです。だから僕も、未だにそれ(支援)に対して、豊富にあると知りながらも手を出せていない状況があるんです。

それこそ保健室があれば話が早いんですよ。保健室に行っちゃえばいいわけですから。でも、どこが保健室かがわかっていないんです。

稲蔭:ここですよ。

質問者A:ここですね。

(会場笑)

ありがとうございます。そんなものがあります。ありがとうございました。

稲蔭:他にどなたかいらっしゃいますか。2人目もまたKMD生ですね。サクラを用意したわけではないですよ。

(会場笑)

KMD生は「手を挙げないと落第だ!」というくらいの修羅場をくぐっているので、手を挙げやすくなっているのかもしれない。はい、どうぞ。

研究を事業化しないといけないような空気への違和感

質問者B:私も大学院の博士課程です。今、スタートアップの話が出ていますが、(研究を)事業化しなきゃいけないのかな? という思いが少しあります。

(スタートアップは)会社や企業として運営をすることでアイデアを実現することですが、例えば研究機関とかでアカデミックに貢献しようとしてやることや、プロジェクトとして本質的に課題ややりたいことを実現しようとしてやることもあります。

でも、それぞれ指標が違うので、やらなければいけないこともそれぞれ違う。とくに大学のみなさま方のセッションで、「スタートアップ」という言葉が主に出ていたことが少し気になりました。研究やプロジェクトとして実現する方向で、みなさんがなにかやってくれたら嬉しいのになあと思いました。

稲蔭:はい。ありがとうございました。

野原:先にコメントと言いますか、リアクションです。それはとても大切なポイントで、正直言ってスタートアップのために実際に行動に出る、あるいはそれを念頭に置いている学生は、絶対数を考えると非常に少ないわけです。例えば、東工大の場合は、研究室でいい研究をしようとしていて、むしろそれしか考えていない学生のほうが圧倒的に多い。

じゃあ、このキューズでなにができるのか。1つはおもしろい研究をそこで閉じずに、キューズに出すことです。先ほど私が言い換え・読み替えという提案をしたのですが、例えば小さな世界の中で閉じこもって書く論文を、いろんな方々に見ていただいてご意見をいただく。

そしてあわよくば「おもしろいね」と言っていただく。なにかしらの知見を交換して育てて、研究すらも育てていければ、それは大学がキューズに関わる価値として、本質的なところでとても高いだろうと私は思っているんですね。

大学でできることと、SHIBUYA QWSでできることの違い

野原:最初に私がスライドをお見せしましたが、「10年後の東京で、ひとは何を着ているか」ということに取り組んでいます。ここで私が期待していることの1つに、おもしろいウェアラブルが出てくればいいなというのはもちろんあります。

ただ、そこから一体いくつの修士論文、あるいは博士論文が出ていってくれるだろうか。というのが私が非常に期待しているところです。

さらに、東工大とセントマーさん(セントラル・セント・マーティンズ校)が組むことで、実験、研究、果ては論文の方法論すらも変わっていき、新しくておもしろい研究を生み出せれば、それは大学としても本望なのではないかと思います。なので、二輪というと極端に聞こえますが、いろんなかたちがキューズには可能なのではないかなと私は思っております。

野城:ちょっと誤解を与えてしまったかもしれないのですが、スタートアップといっても、各大学にものすごく強いサイエンスや技術があって、サイエンスプッシュ型に、相撲で言えば押し相撲のように一気に行くものがあれば、大学のほうでたぶんやると思うんです。

ここにあるのは、アライアンスを組んでいろいろな役者が力を出し合わないといけないものです。企業という形態をとっていたり、地域の問題だったりしますと、第1セッションでコミュニティビジネスというものが出てきていましたね。

もちろんビジネスとしては成立するんだけれど、僕らが想像するような、やがてユニコーンになるような作品をというよりは、地域のコミュニティビジネスをつくるようなアウトプットになるかもしれません。

たぶんそれは、この場で生まれてくるプロジェクトの性格によっていろいろなアウトカムというか、橋渡しの先があるんじゃないかなと思っています。そういった気持ちで、準備をしているこの5大学の先生方の中では話しています。非常にきらびやかなスタートアップだけ、という印象を与えてしまいましたね。

実証実験の場として使うSHIBUYA QWS

稲蔭:スプツニ子!さんがスペキュラティブデザインでおっしゃっているように、「我々は10年後、こんな社会をつくりたい。それをお見せします」ということです。

それが次のビジネスになるかどうかはまったくわからないですが、「一緒に夢を見ましょう」というような、「一緒に」のところがポイントになってくると思います。

かつ、このキューズは冒頭のシンポジウムの紹介でもありました通り、実証実験ができる場所です。この渋谷という、世界的に注目されているフィールドを自分たちの壮大な夢の実験の場に使えることはものすごく魅力です。

これは滅多に与えられないチャンス、オポチュニティだと思います。そういう観点からも、そのためには我々だけじゃなくてみなさんとご一緒にさせていただいて、さまざまなかたちでのコラボレーションが実現できるといいなと思います。

先ほどからいろいろ(終了の合図の)紙が見えたり消えたりしているんですけれども、私の時計だとあと3分あります。このキューズが来年の今頃オープンするに向けて、みなさんに対してメッセージなり、ご自身のキューズへの思いを、一言ずつ簡単に短く。

じゃあ岡山さんからお願いします。

実現可能かは後回し、とにかくアイデアを出してほしい

岡山:キューズはたぶん15階に位置するので、15階までどうやって人を導くかをぜひ工夫していただきたいと思います。

稲蔭:たしかに。

田中:実現可能かは考えないで、とにかく「とんでもないけど、こういうことをやったら」というのを言っていただいたら、若い学生のアイデアが活きるんじゃないかと思います。制限を設けないで、どんどんアイデアを出していただければと思います。

稲蔭:ありがとうございます。

野原佳代子氏:サッカーで「空間解釈」という言葉があるのですが、よくミッドフィールダーが攻めたり守ったりするときに壁をつくるじゃないですか。ほんの5秒くらいだけど、そのボールが保てるかどうかで、そのチームが強いかどうかが決まるようなことがあるので、そういう空間になればいいなと思います。

研究であろうとスタートアップであろうと、「さあ、これをどうしようかな」と考えたときに、1人じゃなくてみんなで壁をつくるような空間になるといいなと思っています。

スプツニ子!:今日渋谷区の区民プールで泳いでいたんですよ。

(会場笑)

渋谷区民なので(笑)。「ちがいを ちからに 変える街 渋谷」と書いてありました。私はものすごく違いながら日本で生まれ育って、そのあとイギリスの大学に逃げたので、いいスローガンだなと思ったんです。ぜひキューズで、違っている子たちが安心できて、楽しんで、いろんなプロジェクトを起こせるところをつくってほしいなと思います。

野城:お聞きになっていらっしゃる方の中には、「ちょっと風呂敷広げすぎてるんじゃないか」と思っている方もいるかもしれません。ですが、今日言ったことが本当に具体化するように、仲間の大学の先生方と小さなプロジェクトでもいいから、具体的なトライアルを、来年の秋を待たずにやっていこうと思います。このキューズから、またいろんなかたちで発信してお誘いすると思いますので、ぜひよろしくお願いします。

稲蔭:ということで、あと5秒で時間いっぱいです。みなさんありがとうございました。

(会場拍手)

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