5大学連携によるQWSでのプロジェクト

稲蔭正彦氏(以下、稲蔭):それではセッションを始めたいと思います。先ほどのセッションでのはじけた4人の方々と打って変わってですね、ここでは大学人総勢6名で。一見「ん? なんでQWS(キューズ)なんだ?」というようなメンバーですけれども、「いや、そんなことはない」ということを、これからトークでご紹介していきたいと思います。

それぞれ、どんなバックグラウンドがあるのか、大学人と言ってもいろんな種類がいるので、少しそれぞれの自己紹介をしたいと思います。

今回のこのキューズは、先ほどのセッションの通り、「問いからはじまるイノベーション」ということで、この渋谷を拠点に新しい出会いから始まって、行動を共にして、社会に役立つ何かを生み出していく。そういうようなことが来年の今頃、この素晴らしい拠点で始まります。

その中で冒頭の説明にもありましたけども、5大学が連携をし、そして一緒に何かをやっていきます。そういう観点からこのメンバーで、このセッションを構成させていただきたいと思います。

それではまず、私がどんなバックグラウンドかを含めて、ちょっとスライドを使って紹介をさせていただきます。私は慶応義塾大学の大学院、メディアデザイン研究科、通称KMDと呼んでいる大学院の組織におります。(スライドを指して)実はこのスライドにありますように、ハリウッドの映画業界にいたり、世界経済フォーラムという団体に所属をしていたりします。

現在はシンガポールにも拠点がありますが、同時にプライベートコンサルティングとして、Mandaiという新しいテーマパークの国家プロジェクトにも関わるというようなコンサルティングワークもしております。

クリエイティブな社会をどうやってつくっていくか

稲蔭:私の共通している興味ですが、先ほどのセッションで林千晶さんも「クリエイティブという言葉が大好き」とおっしゃっていましたが、クリエイティブ社会をどうやってつくるかということに、長年大学の中あるいは外で活動して参りました。

みなさんそれぞれが自分のクリエイティブな力を発揮できる、心豊かな社会ができるといいなという思いで活動を続けております。

一方でWorld Economic Forumでは、第4次産業革命という言葉を使って、この現在進行中のデジタル技術による社会変革の大きな波をどう捉えて、どうやってその新しい波に対して、より心地の良い社会をつくっていくかが同時に課題となっております。

そういう観点からKMDでは、新しい来たるクリエイティブな社会の新しいタイプのリーダーを育てようということで、活動して10年間が経ちました。

(スライドを指して)現在、英語と日本語を公用語にしている観点で、60パーセントを留学生が占めていて、世界中から学生が集まっています。まさしくこのキューズと同じように、世界中からいろんな種類の学生が集まってくるところがKMDということで、キューズに興味があって、我々も参加したいという意図はこういうところにあります。

実際に我々もキューズと同じようにアイデアを生み出して、形にして社会に出していくということを指向して、実際にそこをミッションとして活動をしております。

(スライドを指して)実際にこういうクリエイティブな作品があったり、あるいは、次のスライドを。こんなことがあったり、次お願いします。こんな新しいスポーツを開発していたりします。

大学から0→1を生み出す

稲蔭:一方で活動しているミッションとしては、社会に出していくということで、社会にインパクト、貢献ができることをものすごく大切に、学生たちと共に活動しています。

例えば、塩分を実際には摂取しないけれども、塩分を使った食事のような美味しい食事、味を楽しめるようなデバイスを開発したりしています。実際にそういった活動から、0から1を生み出す。眼鏡を共同開発して市販をしたり、それから、起業することにも目を向けております。

先ほどの米良はるかさんが運営されている「Readyfor」は、KMD在籍のときから立ち上げた会社ですね。そしてテレイグジスタンス(Telexistence)という新しい遠隔ロボットを使った企業も我々の仲間であります。

そういう観点から、我々はこのキューズを使って、この5大学連携をはじめとするさまざまなみなさんと時間を共にして、我々がやってきたことをさらに、よりインパクト強いものを生み出していく拠点としてキューズを考えたい。そう願って参加をさせていただこうとしています。

それでは私からのプレゼンはこれで終わりにして、一番奥から行きます。では岡山先生、お願いいたします。

イノベーター・五島慶太翁

岡山理香氏(以下、岡山):はい。はじめまして。東京都市大学の岡山理香です。東京都市大学は、東横学園女子短期大学と2009年に武蔵工業大学が一緒になりまして、東京都市大学という名称に変わりました。

東横短大は東急電鉄の創始者である五島慶太が創った学園です。そして武蔵工業大学も五島慶太が経営を引き継いだ大学であります。ですので、そのことを今日言えば私の役は終わりなのかなという(笑)。

(会場笑)

これで終わりにしたいくらいなんですけれども(笑)。ちょっと五島慶太のことをお話したいと思います。慶太翁は、私はまさにイノベーターだと思っています。いろんな企業を合わせて大電鉄を創っていったわけですが、その中で阪急の小林一三との関係が非常に強かったんです。

小林さんはお茶人で、お好き者(数寄者)でもありました。茶の湯をたしなんでらっしゃったのですが、そこで慶太翁も、茶の湯をたしなむようになります。

(スライドを指して)私も今写っているように、学生と共にお茶室を毎年つくったりしております。大したものではないのですが、こうやって留学生も来たり、近所の子どもたちも来たり、まさにいろんな垣根を越えて(人が集まります)。

私、教養の課程におりますので、受講している学生もいろんな学科・学部です。ですので建築の学生だけではなく、いろんな学生と共に、このように茶室をつくったりしております。以上です。

稲蔭:ありがとうございます。それでは、その隣ということで、お願いします。

たくましい知性を育み、しなやかな感性を涵養する

田中愛治氏(以下、田中):早稲田大学の田中愛治です。

4週間前の11月5日に早稲田の17代総長に就任したばかりです。学長が出てくるのは場違いだと思っているのですが(笑)。

(一同笑)

とくに先ほどトークセッションを聴いて、「俺、出てくる場所間違えたな」と思っているんですが、お話を聞いていたらなんとなく共通性はけっこうあるだろうと思います。ちょっと自己紹介させていただきますと、昭和50年、1975年に早稲田の政治学部の政治学科を卒業して、そのあとすぐアメリカに行きまして、10年半留学していました。

アメリカに行った理由は、大型計算機を回して、世論、政治を計量的に見たかったからです。その頃は「日本でも早稲田でもそういうことは勉強できないよ」と言われていたため、政治1つでも計量分析する大型計算機を求めてアメリカに行きました。それと、なにか新しい出会いを求めて行ったという理由もあります。

学生時代は空手部でしたので、空手をやっていました。武道は黒帯ですけれども、アメリカでも空手をお見せすることがありまして、いくつかの出会いもありました。でも、なぜ私が早稲田の代表で出てきたか、自分でもよくわかっていないんですよ(笑)。

(一同笑)

多分、基本、担当理事たちよりも、早稲田のいろんなプロジェクトをよく知っているからだと思うんです。(スライドを指して)総長になって、今言っているのが「たくましい知性を育み、しなやかな感性を涵養する」ということです。

「たくましい知性」というのは、答えがない問題です。今回のトークショーのファーストセッションでも言っていましたね。今、我々が目にしているすべての問題には答えがない。それについて自分なりの仮説を立てて、失敗すれば一からやり直す。

そういう仮説を自分で検証する必要があるか、ということなんです。それでやり直せるような、そういうたくましさと、答えのない問題の答えを出すような知性ということですね。

「しなやかな感性」というのは、もうグローバルな社会ですから、さまざまな価値観の人に触れ合うことです。異文化、異なるジェンダー、異なる宗教、異なる言語、異なる文明に育った人と出会うこと。

まさに渋谷はそういう場所だと思います。そういう「たくましい知性、しなやかな感性」という意味では、渋谷と会った今、キャッチフレーズといいますか、目標として目指してしていくことになります。

WASEDA-EDGEで取り組む3つのプロジェクト

田中:(スライドを指して)これも氷山の一角ですが、今、WASEDA-EDGEというとこで新しいプロジェクトをいくつもやっています。その3つだけをちょっとご紹介しますが、最初の左上に見えている緑のところは、コオロギをクッキーというかクラッカーにしています。

葦苅という者がいて、かなり有名なのですが、彼はこのあとカンボジアに行って、そこに住み込んでコオロギを食材にしてクラッカーをつくる工場を建てるんです。そういう非常に新しいことをやっています。

(スライドを指して)右の上のZencoは、ロボットを使って寿司を握ります。今、精度が相当上がっていて、寿司は8年間くらい職人芸を学ばないと本当は握れないと言われていますが、ロボットがそれを真似できるようになったんです。そうすると世界中に寿司職人の技術を輸出できるので、人間がロボットから学ぶこともできることになります。

(スライドを指して)左下の3番目が、秘密計算とAIでデータの秘密をしっかり守りながら管理するものです。例えば、この間ハーバードの学長の就任式に行ったときに聞いた(ことと)、まったく同じことをこの子、今林くんが考えています。すごく新しいことを考えていまして、ハーバードのメディカルセンターでも同じことをやるらしいです。

患者の情報を10万人分ほど、ビッグデータをAIに移しておくと、例えば患者さんが婦人診療科に行って診察を受けて「あなたは循環器もアポイントを取ってデータがいる」となると、2ヶ月くらいになります。

2ヶ月後にもう1回アポイント入れ直すのですが、最初に自己診断などのデータを出したときに、「あ、この患者さんは最初から循環器と婦人診療科にアポイントメントを入れたほうがいい」ということを、AIだったら2、3秒で出せます。

そうすると2ヶ月のアポが短くなるんです。ただ、10万のデータは個人情報で秘密ですから、それをちゃんと管理しないといけない。個人レベルのデータをいかに管理しながら、そういうふうにAIを活用するかということをやっています。

そういうような者たちがいっぱいいるんです。そうすると、渋谷のようなところで彼らが出会えば、いろんなアイデアも出てくるんじゃないか。それを私なら紹介できるな、ということで参りました。

稲蔭:ありがとうございます。それでは引き続きまして、野原先生よろしくお願いします。

「10年後の東京で、人は何を着ているか?」という問い

野原佳代子氏(以下、野原):東工大の野原でございます。(スライドを指して)左上に載せましたが、東工大で翻訳学・コミュニケーション論・言語学・希望論などをやっていまして、環境・社会理工学院というところにおります。

今日はお題がこういうことですので、いろんな取り組みの中で「科学技術とデザインアートの邂逅 ENCOUNTER」ということで私たちがとくに取り組んでいます試みについて、触りをちょっとご紹介することで、自己紹介とさせていただこうかなと思います。そういうことを具体的にお話するのが一番早いかなと思う次第です。

(スライドを指して)いろんなもの(プロジェクト)を走らせているのですが、そのうちの直近の一つに「10年後の東京、ひとは何を着ているか?」というものがあります。これはいろんなところから助成をいただいて、ワンステージ終わったところです。

先ほども「問い」という言葉が出ていますが、10年後の東京を予測しつつ問い直す。(その時代に)何が起こるのか。はたまたそれでいいのか。どんな未来をつくりたいかをスペキュレート、いわゆる施策をしまして、そのためのウェアラブル、何を着ればいいかを開発し、考案し、提案しようということをやっています。

(スライドを指して)写真をいくつか用意しました。私たちはひたすら議論を重ねます。それから材料を散々ハック、叩いて調べるんですね。そしてデザインし、プロトタイプをつくります。そこからプロトタイピングをして、東京都民、一般の方たちにトライアルをしていただくということを繰り返しています。

このプロセスを、私たちはクリエイティブなプロセスと考えているのですが、何ができるかもさることながら、そのプロセスで何が起こるかを私たちは大変重視しています。

それが私の専門としている翻訳学、Translation studiesというものですが、コミュニケーション論と大きく関わるところでもあります。このあたりのお話が後から出るといいなと思っている次第です。

別々の文脈に橋を架ける翻訳の力

野原:東工大とロンドン芸大(芸術大学)セントラル・セント・マーティンズ校が協力をして「産学実験プロジェクト群」ということで、いろんなプロジェクトを走らせています。それを「DeepMode」と私たちは呼んでいます。

1校対1校ではなく、他にも武蔵美(武蔵野美術大学)さんとか芸大(東京藝術大学)さんとか、いろんな方たちと組ませていただいています。参画いただいている企業さんや、他の学校さんなどもあります。

(スライドを指して)「科学技術・アート・デザイン」の邂逅、エンカウンターということですが、邂逅するだけだと巡り会って終わってしまいますので、その先の実質的な友好はどうすればできるのか。そこが私自身と、私のチームが非常に興味を持っているところです。その鍵になるのは翻訳だと思っています。

翻訳といいますと、みなさんは直ちに英語から日本語へとか、フランス語から韓国語にとかを思い浮かべると思います。もちろんそれも大事ですが、それだけではないんです。

科学技術の持っているコンテンツ、あるいはアートが持っているコンテンツをコミュニティ外の人たちに向けて出すときに、そのままではほとんど伝わらないんです。というのは、何を言っているのかがぜんぜんわからないからです。

そのときにちょっと言い方を変えるんですね。言い換えて、また受け取るほうも読み換えをする。「こういうことなんじゃないかな」という、言い換え・読み換えが鍵だろうと思っています。私たちはそれを広い意味での翻訳と捉えて、このプロジェクトを続けております。

(スライドを指して)「歴史・社会・技術・身体感覚的コンテキスト」と書いてあります。課題という言葉が今日何点も出てきていますが、その課題すらも非常にステレオタイプ化されている。「こういう課題があるということは、こういう人たちが困っているんだろう」と人は短絡的に考えがちだと思うんです。

そのステレオタイプを乗り越えて、「そもそもどうだったのか」という歴史、「そもそもコンテキストはどうだったんだ」という社会、それに伴って必要な技術。そして「いろんな理屈もあるけれど、身体としてそれ気持ち悪いよね」や「なんだかわからないけれど、これは良いんじゃないの?」という身体的な感覚。それらを大切にしつつ、「人はそれでいいのか」ということを考えます。

オルタナティブという言葉も盛んに使われますが、選択可能な未来のことですね。放っておけば、東京とか日本とか世界はこうなっていくかもしれないけれど、本当にそれでいいのか。

そういったことを考えながら、いろんなことを提案していきたい。そういう感じのプロジェクトです。ただ、それだけではなくプロセスを重視するというのが、一つ信条です。以上です。

社会課題を問いかけていくためのデザイン

稲蔭:はい。ありがとうございます。6人もいると大変ですよね。まず、お帰りなさいということで、自己紹介をお願いします。

スプツニ子!氏:ただいまです。2分間ですか? わかりました。私、スライドがまったくないので、アドリブで行きます。私はスプツニ子!といいます。本名は尾崎マリサ優美といいまして、アーティストです。

東京大学の生産技術研究所が、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートというイギリスの芸術系の大学院と一緒に新しくデザインラボ、RCA-IISデザインラボというのをつくりました。今、私はそこに関わりながら特任准教授ということで、楽しく生研ライフを過ごさせていただいております。すごくジャパニーズな感じになっちゃいましたね(笑)。

生研に来る前は、MITのメディアラボという研究所で助教として4年間デザイン・フィクションという研究室をやっておりました。そもそも私自身は、イギリスのインペリアル・カレッジというところで数学とコンピュータサイエンスを専攻しておりました。

そのあと大学院でデザインの勉強をして、そこからMITで、デザインとエンジニアリング、アート、これはメディアアートみたいなものなんですけれど、それを教えるようになりました。私の専門分野はスペキュラティブデザインといいます。

スペキュラティブデザインは、あまり聞いたことがない方も多いかもしれませんが、これは問題提起をするデザインです。例えばデザインで機能性のあるアプローチや見た目に美しいマイクをつくろうとすることです。

デザインは問題解決のためにあると思われることが多いんですけれど、私はあえて問いを立てるためのデザイン、さまざまな社会課題を問いかけていくためのデザインをやっています。

恵まれた人の生活を便利にするテクノロジーばかりが生まれる理由

スプツニ子!氏:先ほど野原先生のスライドでも出てきましたが、未来を考えていくときに社会課題は非常に大事なんです。東京大学でもMITでも学生たちは非常に優秀ですが、私がどうしても気になってしまうのは、そういうエリートの環境にいる学生たちは恵まれた環境で育ってきた子たちがすごく多いことなんです。

(恵まれた環境の子たちは)知力があっても、課題を知らないことが非常に多い。どれだけ能力・技術力・知力があっても、世の中にある課題を知らなければ、恵まれた人たちだけがさらに便利になるようなテクノロジーばかりが出てきてしまうんですよね。

なので、この「知の出会い」も大事なんですけれど、そういう場では率先して(社会問題に目を向けなければいけない)。例えばジェンダーの問題がありますし、貧困の問題や人種差別の問題もあります。いろんな問題がテクノロジーの影に潜んでいるんです。

例えばみなさんも使っているAmazonだと、就職の採用のときに人工知能を使って採用するようになったんです。ただ、人工知能は過去のデータからラーニングして判断をするので、残念なことにAmazonの採用のAI(人工知能)は新卒の子たちに対して、女性にとって不利な判断をしていたんです。

その原因は、過去を見ると採用者たちが女性に対して不利な判断をしていて、それをAIが丸ごとラーニングしてしまっていたからなんです。幸いAmazonはそれに気づいたので、その人工知能を使うのを止めて、なんとか解決しようということになりました。

そんなふうに、私たちが便利だと思ってつくっているものに、知らず知らずのうち差別や格差の拡大、そういったものが忍び込んでしまうことがある。そういうことも意識して、学生たちがテクノロジーと関わっていければと思ってスペキュラティブデザインをやっておりますし、この場でもそういう環境になればいいなと思っております。

稲蔭:ありがとうございます。

「知の交差点」として立つSHIBUYA QWS

稲蔭:さて、キューズでは、この5大学が連携をし、来年の今頃から活動を共にさせていただきます。その発想の原点はたぶん野城先生じゃないかと思いますので、よろしくお願いします。

野城智也氏(以下、野城):東大生研(東京大学生産技術研究所)の野城と申します。私、50年前はこの場所にあった五島プラネタリウムの小学生の日曜会員だったんですけれど、まさか50年後にこうしているとは思わなかったですね。

バックグラウンドは建築です。スプツニ子!さんと尾崎先生のされた話を引き取ると、我々がRCAとデザイナーラボを始めた頃に、今日冒頭でお話しになったディレクターの野村さんと話し合って「ここで活動しませんか?」と言われたんですね。非常にもったいないお話だと思いました。

我々もがんばってるんですけれど、この場所の可能性と我々の活動の大きさがなんとなくわかってきましたので、5つの大学の先生方にそれぞれお声がけしたら「それはいい話だ!」となり、今日5大学が一緒にやるということが実現しています。

そこで議論していることを次のスライドでご案内します。これは「知の交差点」と、そこに5つの大学が窓を開けますということです。その交差点というのは、別に大学だけではありません。ここに挙げた無制限のいろいろな方々が出てますが、渋谷にはさまざまな方が集まってきます。

そういった方々と出会って、大学も窓を開けて活動をしていくということが、5つの大学と、スクランブルスクエアを運営しているみなさんと話している基本コンセプトです。

もう一つ踏み込んでいきますと、「大学って何かな」「関わるには何かな」ということなんですけれど、まず最初に、問題を持ち込むということになります。大学だけが持ち込むというかたちではなく、いろんな方にぜひ持ち込んでもらいたいという仕組みも入ります。

さらにそこでの「出会い」。これは先ほどのお話でもう出ているんですけれど、東京は今、こういう場所がたくさんできていますので、たぶん差別化はできないと思うんです。

課題を1つ投げ込まれるだけで、教員や学生の心は跳ねる

野城:その次が大事で、「育てる」。これは、ここで出会った成果を各大学のキャンパスに持ち込むことです。これは1つの大学に持ち込む場合もあるでしょうし、課題によって、また問題によっては、この中の何らかの組み合わせで、つくって、育てて、そして橋渡しをしていきます。

その問題の意識として、とくに育てるという意味ですと、私たちのささやかな経験でも、課題や夢を1つ投げ込まれると大学の教員はとても跳ねます。これは教員だけじゃなくて学生諸君もそうですね。

例えば私たちは今、飛行機関係で試作をするプロジェクトを、ボーイングや三菱重工をはじめとしたところでコンソーシアムをやっていますが、そこで若い先生方が想像もできなかったようなエンジンを加工する課題を持ち込まれる。すると「こんな面白い課題があったのか」と跳ねていくし、学生諸君もそうです。

そういう意味では、私たちは課題や夢に飢えて渋谷に出てくるという感じがあります。それはきっとここに来る人たちもそうですし、キャンパスのみなさんもきっと跳ねていくと思います。

私どもそれぞれの大学の教員が、こういうことを解決しようと思って技術をつくっているんですが、まったく違う見方をすると、「いや、そうじゃない」、「それはこういうことに使えるんじゃないか」とお宝を発見してくれるんです。

たぶん我々が窓を開けば、きっとそういうお宝を発見してくださる方と出会うチャンスがあるんじゃないかなと考えています。ですから大学のほうとしては、できるだけいろんな方と一緒にやりながら、試作して、共に学んでいきたいです。

もう1つは、それをやりながら各大学には学生諸君がたくさんいますので、こういったさまざまな方との他流試合を、大学を越えた他流試合を含めて(やっていきたい)。明日を担うイノベーター、そういったコミュニティができてきたらなと、そういった夢を語って今日ここに参っております。以上です。