2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
第二部:サイバーエージェントの採用戦略(全1記事)
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増渕知行氏(以下、増渕):(第一部の)私の話より、ここからの時間を楽しみに来た方が多いと思いますので、私のセクションの倍の時間をとっております。宮本さんと事前に軽く打ち合わせしたのですが、「とくに資料もいらない、もう全部アドリブでいい」ということなので、なにも用意せずに来ましたが、よろしくお願いします。
宮本隆輔氏(以下、宮本):よろしくお願いします。
増渕:ちょっと宮本さん、簡単に自己紹介というか、ご経歴等を。
宮本:はい。みなさんこんにちは、はじめまして。サイバーエージェントの採用広報戦略室で採用広報の責任者をしている、宮本と申します。
僕自身は、2005年にサイバーエージェントに入社しまして、ずっと広告営業をやってきたのですが、2016年から子会社の採用をして、今は全体の採用を見ています。
組織的には僕の上に採用責任者がいるので、採用自体はその人間が見ているのですが。僕の役割としては、学生を発掘したりとか、サイバーエージェントの採用自体を学生に知ってもらったりするような役割です。
増渕:さっきの5つの力(のスパイラル)で言うと、「出会う」とか「広める」といったミッションですね。
宮本:そうですね。
増渕:ありがとうございます。さっき私の(セッションの)ほうで「採用にビジョンがない会社が多い」という話をさせていただいたのですが、サイバーエージェントさんは、採用にビジョンはあるんでしょうか?
宮本:あります。「21世紀を代表する会社を創る」というのが当社のビジョンなのですが、採用としては「21世紀を代表する人材を採用する」というのがビジョンになりますね。
増渕:なるほど。「21世紀を代表する社員」というと、どうしても抽象度が高いので、実際にこの戦略を立てたり実行・推進したりする上でいうと、なかなかブレやすいというか解釈が分かれやすい気がします。そのあたりって、どうなんですか?
宮本:まず、「21世紀を代表する会社を創る」ということ自体をもう少しわかりやすく対外的に言っているものとしては、「時価総額10兆円の会社を創る」ですね。
今、サイバーエージェントのまさにリアルタイムの時価総額は(2019年2月4日時点で)約5,000億円です。一番調子のいいときでは、去年だと8,000億円ぐらいでした。なので、藤田(晋氏)がどれだけ優秀だと言っても、まだ10分の1にしか到達していないわけです。
そのため、この10分の1の差を埋めるべく、「じゃあどのような人材を採用したら、10兆円の会社を目指せるか?」を1つの指標にしているので、将来の事業責任者とか役員になれる人材……要は、「『10兆円の会社を創れる人材』を、どれぐらい採用しないといけないのか?」というところが、採用チームに求められている具体的な目標ですね。
増渕:なるほど。そこで言うと、いわゆる新卒採用にこだわる必要もないと思うのですが、サイバーエージェントにとって新卒採用はどんな位置づけなんですか?
宮本:まず、定量的なデータでは、単純に新卒と中途でいうと、離職率はやっぱり新卒のほうが圧倒的に低いという結果が出ていますので、結果論(として)そこがありますというところと。
あと、我々は「21世紀を代表する会社を創る」というのがゴールであって、今は広告や「AbemaTV」とかゲームなどをやってますが、それ自体は手段なんですね。実は、それが目的ではないです。最初から「広告は、10年後にやっていないかもしれません」というのは説明会でも言っていますし。
なので、あくまで「能力として、このようなものができる」ということよりも、「そのビジョンに共感して、時価総額10兆円の会社を一緒に目指そうという気持ちがある人間」とか「(それを)目指したいと思っている人」自体を採用しようとしていますで。
逆に言えば、どこかの会社で働いていた人……ちょっと言葉が悪いですが、「なにか」がある人よりは、やっぱり「ゼロ」のきれいな真っ白のキャンバスの人のほうが育成もしやすいと考えているので、そのような採用をしているというのが実態です。
増渕:なるほど。そうなると、そのビジョンに共感できる人の志望度が上がっていくという、まさに「つかむ」「口説く」の部分……「共感」というキーワードが、重要になると思います。それを実現するために、なにか工夫していることやチャレンジしていることがあったら、教えていただけますか?
宮本:とにかく、サイバーエージェントのことを知っている人は、やっぱり過去に比べて圧倒的に増えてきていて。ありがたいことに当社志望の学生も増えているのですが、やっぱり「実態(として)なにをしているのか?」とか「どのような仕事なのか?」を知っている人って、ほとんどいないんですよね。
なので、結論としては、「とにかくすごく(学生に)接触する」ということに力を入れています。今は5,000人の正社員がいるのですが、リクルーター・インパクターを含め、社内に約500人ぐらいいますので、その社員が学生ととにかく接触して(当社を)たくさん知ってもらう機会は、設けています。
増渕:なるほど。いわゆる「YJC」ですね。
宮本:そうです。YJCって何かと言うと……もしよかったらお調べいただくと出てくると思うので。はい、YJCという取り組みをやらせていただいています。
増渕:「YJC」が何の略かだけ、ちょっとここで話していただいていいですか?(笑)。
宮本:それはそれで(笑)。まぁ、「社員がちゃんと自分たちで採用をする」ということですね。
増渕:「良い人材を自分たちで」……。
宮本:「良い(Yoi)人を自分(Jibun)たちでちゃんと(Chanto)採用する」というのが、YJCです。
増渕:でも、さっきも(人事・現場・経営が)「三位一体」という話をさせていただきましたが、それだけ現場の社員が重要だということですね。当然、エース級ですよね?
宮本:はい。
増渕:エース級を……500人ですか? 採用に投入するというのは、経営としてもなかなか勇気がいることだと思います。たぶん今日お越しの方々にも、「『現場の協力』と言っても、わかっているけれど、現実ではなかなか難しいよね」という方が多いんじゃないかなと思います。そのあたりって、サイバーエージェントさんとしては「採用」と「現場」というものを、どう捉えていらっしゃるんですか?
宮本:まず、新卒採用で当社の幹部がみんな口を揃えて言うのは、「採用は一丁目一番地だ」「採用が一番大事です」と言ってます。なので、もうなにがあろうが、採用が一番です。なので、「現場で(業績として)数字を取らなきゃいけないので……」と言われても「いやいや、採用のほうが大事だから」と。だから(一番大事なのは)採用ですね。
増渕:じゃあ、採用に協力した社員がそこで成果を出すと、なにか評価にも影響したりするんですか?
宮本:ないです。
増渕:それはない?
宮本:もう、完全に名誉。
増渕:なるほど。名誉は、なにかくすぐる仕組みがあったりするんですか?
宮本:いえ。ただ、やっぱり「じゃあ、どうなったら自分たちの仕事が楽になるんですか?」をひと言で言うと、「優秀な人が自分(たち)のメンバーになったり、仲間が増えてくれたりすれば楽になるし、もっと会社が大きくなったり(事業を)推進したりできます」って。
「じゃあ、自分たちで採れば?」っていうことですね。自分たちで優秀な人を採れば、結果として自分たちにも返ってくるし、そのようなものを一緒に作っていこうと。
増渕:なるほど。たぶん私に限らず、今日お越しのみなさまも、サイバーエージェントというと「採用が強いよね」というイメージがある(と思う)のですが、ずーっと昔から強かったわけじゃないだろうと思っていて。
なにかターニングポイントというか、採用力が強くなったきっかけだったり、なにかチャレンジしたことや踏み込んだことがあるんじゃないかなと思います。それがもしあるとしたら、いつぐらいの時期でどう(いうもの)だったのか、すごく興味があります。
宮本:まず、そもそも採用を始めたのが2000年。
増渕:2000年? なるほど。
宮本:具体的には1999年から始めているので、2000年の社員が新卒1期生です。そこから、ずっと新卒をやっていますね。
ここは結論として(お話しすると)「これをやってきました」というのは、たぶん真似されないほうがいいかなと思っています。なんでかというと、その時の当社の状況……例えば社員数や売上規模とか、そのようなものによって対策を決めていました。
なので、具体的に言うと(当社の採用の)前半期は、やっぱり会社自体もまだまだぜんぜん知られていなかったので、とにかく藤田が全面的に出ていました。なので、僕の1次面接(の相手)は藤田でした。なので、2004年ぐらいの採用までは、本当に藤田がガンガン前へ出るというかたちですね。
次は、いわゆるリクナビ・マイナビ(などの就活サイト)を使って、とにかく母集団をたくさん取り、とにかくたくさんの人にサイバーエージェントを知ってもらう。クロージングで、藤田が出るというかたちにしていて。
今はどちらかというと、社員が全面的に出ています。リクナビでたくさん人を採るというよりは、いわゆるリファラルと言って、「優秀な社員の後輩は、きっと優秀だろう」ということで、リファラルを強化しています。なので、その会社の今の採用の状況や大きさ、フェーズに合わせて変えてきました。
増渕:じゃあ1つ目のターニングポイントは、その2004年ぐらい?
宮本:そうですね。2004年ぐらいから変わってきてますね。
増渕:なるほど。今日はけっこう大手企業の方々が多いので、ちょっとこれは参考にならないかもしれないですが。ベンチャー企業さんなんかだと、社長が前面に出て採用していた頃にはすごく成果が出ていたけれど、いろいろな理由で引くべきタイミングがあって、現場社員が採用の主役になった時に採用力が落ちるケースがよくあるじゃないですか。そこは2004年~2005年ぐらいって……(サイバーエージェントさんでは)やっていないからわからないかもしれないですが、どんな工夫をしてたんですか?
宮本:1つ言えるのは……すごく失礼な言い方になるかもしれませんが、サイバーエージェントが他社さんとすごく違うのは、たぶん「会社のビジョン(は何ですか?)」とか「会社って、何を目的にやっているんですか?」といったら、たぶん100パーセント、「21世紀を代表する会社を創る」と社員全員が答えられると思うんですよ。
一方で、他社さんの場合は、その社長が言っていることは、たぶんすばらしいことで、未来を語って、「うちの会社って、すばらしいんです」と言っていると思います。ただ、社員に会ったときに(「御社のビジョンや目的は何ですか?」と聞くと)たぶん「あっ、社員と社長が言っていることが違うな」みたいに思う。ぜんぜんわからないですけどね。
でも、僕らのやっぱり採用が強いのは、誰に聞いてもたぶん同じことを言う(からな)んですよ。
増渕:なるほど、一貫性があるんですね。
宮本:だから、たぶんそこが採用力が落ちていない理由です。あと……究極ですよ? 究極、やっぱり学生(が聞きたいこと)って、「リアルに、どのような仕事をしてるんですか?」ということなので。魅力的に語るにはたぶん社長が強いんでしょうが、リアルにどのような社員が働いているのかは……。
増渕:まぁ、現場の社員のほうが、リアリティがありますよね。
宮本:それは(現場の社員が)強いので。だからこそ、その社長(が語る魅力)というところが補われてるのかなという感じですね。
増渕:なるほど。僕も「一貫性と連動性が重要です」という話をよくします。今の話で言うと、一貫性をずっと担保しながら、誰がどこで何の役割をするのかというストーリーは、ステージによって変えてきたということなんでしょうね。
宮本:そうですね。
増渕:今まで、「どうやって(学生を)魅了していくか」という部分について、わりと聞いてきました。「見極める」という部分も、さっきの(「21世紀を代表する会社を創る」という)ビジョンを実現するためには重要かなと思います。サイバーエージェントが「(この学生が)自社に合うか、合わないか」をジャッジするために、今はどんなやり方をされているんですか?
宮本:まず、見極めのポイントはですね……結論、わかりません。
増渕:わからない?
宮本:もちろん「どのような人材がいいか」という思いはありますし、「このような基準で採っています」「このようなことを(学生に)聞け」とは言っています。ただ、実際に「本当に、そいつが優秀か?」というのはもうわからない。
ここからは、もう採ったことに対して後悔するというより、「採ったやつをいかに育てるか?」という前向きな考え方のほうが、どちらかというと採用としては強いです。
ただ、あと1つ(の基準として)は「素直で良いやつ」と言っているので、絶対に「素直で良いやつ」しか採らない。だから、もう(例えば)東大ですごく研究してきて、地頭もすごくいいけれど、「こいつとは、ちょっと友達になれそうもないな」と思ったら、もう間違いなく落としますね。
増渕:なるほど。
宮本:逆に、「ちょっとポテンシャル(に期待)だな」「今はちょっと(戦力になるかどうか)わからないけれど、なんだかこいつと一緒に働きたいな」とか「なんだかすごく伸びそうだな」というのを、エピソードや過去の経験から感じられるのであれば、ポテンシャル採用を……そもそも新卒はポテンシャル採用なので、そのような考え方をもって採用していきますね。
増渕:どうなんですかね。「(学生に)早期接触するべきどうか?」の議論って、たぶんみなさまにもすごくあるなと思っています。「あまり早くても、結局採れねえじゃん?」というのが、やっぱり大多数だと思うんです。
そこの「採用効率」と、「優秀さ」という概念。優秀さも「早いほうが本当にいいのか?」というところがあると思うので。一般論の答えはないと思うのですが……サイバーエージェントさんが考える「今はこう考えている」というのがもしあれば、教えていただきたいです。
宮本:「21世紀を代表する人材を採用すること」が僕らのゴールなので、別に高校3年生だろうが中学3年生だろうが、「こいつは優秀だ!」と思ったら採ります。その時期とかは、関係ないんです。こっち(優秀な人材の採用)がゴールなので。
あと、「何人採る」というのは、どちらかというと……ぶっちゃけ、採ろうと思えば採れるじゃないですか? 「あと20人必要? もう呼んで(そのまま)採用」って、別にできる。ただ、「そっち(人数に依存した採用)じゃなくて、そこ(優秀な人材の採用)をちゃんとやろうね」というのが、どちらかというと大事です。
増渕:なるほど。早くからそのような(サイバーエージェントさんの採用の)場に来る子というのは、そうじゃない子と何が違うんですかね?
宮本:なにが違うかというと……例えば「今回採った子たちは、どのような子なのか?」というと、本当に売上が1億円や2億円ぐらいある会社(の代表)で。本当に(その採用した大学生が)社員を雇っているんです。
増渕:社会人!?
宮本:はい、大学生なのに。
増渕:へえ。
宮本:だから(大学生だけど)普通に給料をあげているんですよ。それぐらいのレベルの子たちですね。
増渕:なるほど。
宮本:なので、本当に優秀な人材の採用をやっています。その子は本当に単純に、「大学に行くお金がないから稼ぐ」と。でも、アルバイトをするのか自分で稼ぐのかというときに「自分で稼いだほうが稼げる」と、あるとき気づいて。
そのビジネスの延長線が、今になったときに「大学で勉強しなくたってビジネスができるんだったら、大学を辞めてもいいかな?」というところと、「おそらく、大学とビジネスは別だ」ということに気づいて、「じゃあ(大学を)辞めて(ビジネスを)やろう」というかたちですね。
ただ、その子たちが大学2年だから(ピザ会に)入るとか、3年生だから就活するかというよりは、会ったタイミングがたまたま2年生だっただけであって、たぶん「(学年によって)早期か後期か」という話でもないと思いますし。どちらかというと、その接触の機会を作っていなければ会えない人だったのに、「たまたまそいつにピザを奢ったこと」が入社のきっかけになっているというだけですね。
増渕:なるほど。とはいえ、そのような子は、全体の中でいうと数年後もまだまだ少数派なんじゃないかなと思っています。宮本さんから見たときに、「客観的に見て、採用マーケットって、マクロなレベルではこうなっていくんじゃないか?」みたいなことがもしあったら、教えてもらえますか?
宮本:けっこう起業していたり、「アプリを作ってます」とか「なにかをやってます」って言ったりする学生が、本当に多いですよ。(みなさんは)「いや、いないでしょ」ってけっこう思う(かもしれない)のですが、それは会っていないだけですね。本当にたくさんいます。なので、そのような機会を作らない限りは……リクナビとかマイナビ(などの就活サイト)じゃ、絶対に会えないですね。
ただ、「いや、うちはそのような人を採らない」という会社もあるので、そこは別に(無理に)採りにいく必要はないと思いますが。つまり、逆に言うと「機会を作らないと、会えないですよ」ということですね。
なので、そのような人に会いたいのであれば、そのような機会を作るべきだし。僕からすると、3年生のいわゆる就活時期を待って採用活動をしている会社には、いい学生はすでにいない。
僕らのように……と言うとちょっとあれですが、とにかく早い段階で優秀な学生に会おうとしている僕らのような会社が、すでにかっさらってしまっていて。とうにいないよ、という状態になっているんじゃないかなと思いますね。
増渕:今までのところで(うかがったのは)これまでのサイバーエージェントの、「今」の採用というフレームワークでした。言えることと言えないことがあるかもしれませんが、ここからの将来の構想として、「実は今、将来に向けてこんなことを仕込んでいます」とか「将来、こんな採用をやったろうかと思っています」とか。未来の構想があって、もししゃべれることがあったら、教えてもらってもいいですか?
宮本:もう、ぜんぜんしゃべれます。直近で言ったら、もう大学3年生に限らずに、1年生からインターンシップをやっていこうかなと。あと、究極……中途(採用となる方で)も、ぜんぜんインターンシップに来てもらっていいんじゃないかなと思います。来られる・来られない(という都合)はあると思うのですが、とにかく幅広い層に当たっていく。
僕は、大学に4年間通うことも大事だと思いますが、「学業(を修めて)、その学位を取る」という行為と「ビジネス」という行為は、やっぱりぜんぜん違うと考えています。学位を取ってなにかを研究したいのであれば、普通に大学に行くべきだと思いますが、働くのであれば、別に高卒であろうが大卒であろうが、それほど変わらないと思っています。あくまで「僕らのビジネスでは」ですが。
増渕:ネットビジネスという、このフィールドの中では……ということですね。
宮本:そうです。「なにかをがんばってきた」という成果の証として「〇〇大学を出た」ということは、成果(の1つ)だと思います。実際に僕らの会社でも、すごくデータを取っているんですよ。「一番活躍している(社員の出身)大学はどこか?」とか、全部のデータを取っているんですが……結論としては、やっぱり相関性がないんです。確率論としてはあります。けれど、「この学部にいって、上司がこう(いう人)でこうだと、いい(活躍ができる)」という100パーセントの(データ)は、出ていないんですよ。
であれば、むしろ早い段階でビジネスを教えたほうが、成果は早く出るんじゃないかなと思っています。さっきお伝えしたとおり、本当に1年生・2年生・3年生の人にインターンシップに来てもらって、「今大学を辞めてでも、この会社に入りたい!」と思っ(てもらえ)たら面接をして、内定を出して、即働かせる……というのは、なくはないかなと思います。
増渕:なるほど。そこでいくと(関連するものは)、さっき5つの力の「高める」というところですが。多世代の採用になってくると、まさに入社後の部分の難易度がますます上がっていくと思います。「入社後にどんなアプローチをするか?」という部分で、サイバーエージェントさんが工夫されていることが絶対あると思うのですが、そのあたりを教えてもらってもいいですか?
宮本:(早い段階で優秀な人材を採用して、即働いてもらうことがある)とはいえ、同期は作っているんですよ。ちょっと矛盾するところなのですが。仮に6月に内定を出したとしたら、1年引っ張ります。なので、働かせますし、給料も同じだけあげるのですが、必ず次の年の同期として採用させています。
増渕:それは、いわゆる一括で(採用して)入社式的に……?
宮本:そうです。なぜかというと……僕もそうですが、「同期の絆」は、やっぱり成果としてはすごく結びつきがある。僕はどちらかというと(社会人)歴も長いですし、人事をやっているので人脈もありますが、なにか依頼するとか他部署にお願いするときに、やっぱり「同期の人脈」はすごく強い。
僕らの会社では「同期」をすごく重視しているので、もう1年間引っ張ります。僕らで言うと新卒(の給与は)34万円を渡すのですが、「あくまで19卒だからね」と言って、18卒で(いったん)働かせるんですね。
増渕:なるほど。
宮本:これが(入社後のアプローチの)1つです。あと、研修はOJT・OFF-JTというところで、全体でやる研修と各事業部でやる研修が分かれています。そこは、外から見ると……僕もそう思いますが、「サイバーエージェントって、けっこう適当な会社っぽいな」とか、若い人が多いということで「研修とか、あんまりしてないんじゃないかな?」というのはあるかもしれないのですが。実は、研修がすごくびっちりとありますね。
増渕:その研修も、今までのように入社時期がみんな一緒であれば、すごく横並びでやりやすかったと思いますが、(年齢などが)多層になってくると個別化が必要になってくるじゃないですか? そのあたりも、やっぱり難易度が上がっている感じはしますか?
宮本:そうですね、難易度は上がっていますね。それでも、僕らがすごく(重視して)やっているのは、「全部楽しくやろう」としているので。
例えば、広告(部門の採用)で言うと、広告の知識のテストなどをやるんですね。例えば、「どのクリエイティブが効果的だ」や「ユーザーのクラスタ」とか、「『LINE』と『Facebook』には、どう違いがあるのか」とか、「セグメントはどこで切れるか」とか。
(その評価としては)例えば、ハンコをつけていって、「ハンコを5個もらったら、上長から豪華ランチをプレゼント!」とか「(ハンコが)10個までいくと〇〇!」とか、楽しみながらやる仕組みをすごく作っています。
そこに関しては、「上司・部下・年次(で評価など)が違う」とならないように、あくまで「これを楽しみながらやろうよ!」というのを目的としてやっていますね。
増渕:なるほど。あらためてお話をうかがうと、「YJC(良い人を自分たちでちゃんと採用する)」にしても、「同期が重要だ」という考えにしても、今のエンターテイメント的な育成にしても……すごくテクノロジーの会社なのに、デジタル寄りじゃなくて、わりとアナログ重視の採用だと見受けられます。デジタル・アナログという観点でいったときに、採用をどう捉えていらっしゃるんですか?
宮本:そうですね、やっぱり「人に会う」ということには、たぶんお金も時間もすごく使っているんじゃないかなと思います。僕らは「管理する」というところでは(イグナイトアイさんの採用管理システムの)SONARさんを使っているのですが、「(人と)会う」というところに関しては、とにかくお金と時間を使ってやっている。ここは、効率化できない。
増渕:できない……なるほど。
宮本:なによりも、僕らはさっきもあったように、「(採用は)一丁目一番地だ」と言っているので。仮に「来週、ちょっと出張に行かなくちゃいけなくなりました」と、そのYJCのメンバーが上司に言ったとしても、「行って来い」と言います。そのような文化があるのは、たぶん他社さんに比べてすごくいいことだと思いますね。
増渕:たぶん、今のお話を「うらやましい!」と思っている方々がすごく多いと思います。なかなか社内的な事情で(人事・現場・経営による)三位一体の採用が難しい方々に、なにかもしアドバイスできることがあるとすればお願いします。ちょっと、難しい質問だと思いますが。
宮本:でも、サイバーエージェントも最初は、やっぱりリファラルというか……なんていうんですかね。ずっと「(採用が)一丁目一番地」と言い続けたのですが、「やっぱり現場も大切じゃん」と。ほかの会社でもあると思いますが、「俺、営業成績が下がってもいいんですか?」みたいなのって、絶対にあると思います。
「優秀な人って、どうやって採用したんだっけ?」と言うと、「この人に口説かれました」とか「この人がいたから来ました」とかなんですよね。
「やっぱり採用はここ(人に会うこと)に(手間を)かけないと、いい人が採れないですよね」というのは、たぶん(いずれ)結果として絶対に出ると思うんですよ。
なので、1年で成果を出して、1年で上司や役員を説得することは難しいかもしれないのですが、「3年、時間をください」「3年間で、このような時間軸でアプローチをして、4年目に成果を出すのでお願いします」というアプローチであれば、たぶんいいんじゃないかなと思います。
そのなかで、リファラルなどで成果が出てくると、たぶん「やっぱり採用は、社員が時間をかければかけるだけ、いい人が採れるんだね」という話になると思います。
増渕:なるほどね。わかりました、ありがとうございます。残りの時間が短くなってきたので、最後の質問です。採用にコミットすることや現場が協力することは、関わる社員の自社に対する愛着が高まったり、自社の魅力を再認識したりというインナーブランディング効果があるなって、つくづく思います。
そのあたりって……ちょっと誘導尋問的になっていますが(笑)、どう捉えていますか?
宮本:そうですね。それはすごく(そういう効果が)あるので。さっき「(社員が採用に協力して、成果を出すことは)名誉職だ」という話をしましたが、「YJC総会」というものがあって。この間は、YJCに関わった人を400人ぐらい呼びました。表彰もしますし、今はこんな取り組みをしていると話すし、役員からのメッセージもあるんですよ。
なので、「やっぱりYJCに協力してよかった」と社員に思わせるような仕組みをちゃんと作っていますし、それが一応外にも出るような仕組みになっているので、社内でも「YJCに入って、うらやましい」となっています。
なので、なにかしらの人参をぶら下げたりとか、特別なツールを渡したりしているわけではないのですが、「YJCに関わること自体が、自分にとってすごく誇らしいものになる」ように、サイバーエージェントの中ではすごくブランディングされています。そのような「協力したい」「協力できたらうれしい」みたいな感じは、やっぱり醸成していますね。
増渕:なるほど、ありがとうございます。ほかにも、みなさんが聞きたいことがいろいろとあると思います。最後に質疑応答の時間を用意しておりますので、ぜひご質問ください。
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