仕事じゃなくてもずっとやっていたいことはあるか

仲山進也氏(以下、仲山):アウェイに行くと弱みに気付きやすいというのはありますね。

大嶋祥誉氏(以下、大嶋):体験としてなにかありますか?

仲山:例えば、ネットショップのできる人は、楽天のなかにいればいっぱいいるじゃないですか。ページを作れる人、メルマガが書ける人などはたくさんいるけど、そういった人がだれもいないところに自分だけがいれば、それは強みになりますよね。

大嶋:それはちなみにお好きですか?

仲山:はい。好きっちゃ好きですね。でもネットショップを運営するのはそんなに好きじゃないかな。

大嶋:今、ネットショップの運営のことを話しているときは、なんだか、エネルギーが低くなっている感じがしますもの。みなさんも感じません?

仲山:モノが好きじゃないんですよ、別に。

大嶋:じゃあなにが好きなんだろう?

仲山:モノを扱うことにはそんなに興味ない。物欲があまりないし、買い物にも興味がない。買うことに興味がないから売ることにもそんなに興味がないという感じですね。そういった感じで「なにが好みでなにが好みじゃないのか」というようなことを、ちょっと解像度高めに見られるようにすることが大事だと思います。

大嶋:そうですよね。

仲山:ざっくり見るとまぁ好きなんだけど、細かく見ると「こっちの方が好きでこっちはそうでもない」ということはありますよね。仕事じゃなかったとしても、ずっとやっていたいかどうかというのは、強みを見つける問いとしてはあるかと。

大嶋:思わず無邪気に夢中になって、気づくと朝までやっちゃうようことはありますか?

伊藤羊一氏(以下、伊藤):僕はないんですよね。夢中になってやる仕事がここ数年ではありますが、20代とか30代のころは苦行でしかなかった。だから好きなことを仕事にするという感覚はまったくわかりませんでした。

強みというのはまた別の話で、人から求められたからやっちゃうという話なんですよね。最近になってからやっとわかってきたのですが、そこらへんが難しいような気はしています。

大嶋:それはある。

仕事でうつになった自分が、仕事でうつを治した

仲山:まさに先ほど出てきた、羊一さんによる「東大からの興銀」のような。世の中的にいうと、いわゆるエリートレールを順調に歩むような。

伊藤:そうなんですよ。世間的にいうと「スゲー」などと言われるのですが、思考停止になっているんですよね。

仲山:レールがあるからただ進んでいるだけという。でも、ちゃんと進めるだけのスペックが整っているから。

伊藤:全部ゲームでやっている。勉強してできると「スゲー」と言われるからそうなんだなという。どんどん思考停止になっていったというのが正直なところですね。なにが好きかわからないまま仕事をやって、でもうつになっちゃうわけでしょ。

うつが治ってから、なにが生まれたかと言うと、解き放たれたんじゃないということで。なんで治ったかという話をすると、要するに会社には行けるようになったけど全然ダメダメだったというときに、ある案件を取引先から「これをやってみてよ」と言われるわけですよ。それで「いや、俺、それは自信がないです」と言ったんですけど、「でも、伊藤さんしかいないんだ」と頼られたのがめっちゃ嬉しかったんですよね。

それを会社に持って帰ってみたら、上司が社内中を回って案件を通してくれると。周囲の先輩たちも「お前のサポートしてやるよ」と、おせっかいを焼きまくってくれたんですよ。その結果、その案件はうまくいった。うまくいったから「自分は仕事をやっていていいんだ」と思ったのが芽生えです。

大嶋:違ったら違ったって言ってほしいんですが、羊一さんにとって好きなことというのは、人から喜ばれることですか?

伊藤:あるマンションデベロッパーさんの案件を、その当時バブルが崩壊して市況が全然ダメダメだったときに、僕がやったら案件が成立して社長と一緒に泣きながら喜んだ、というのが原体験だから、やっぱり人に貢献するというのがベースにあるんですね。

その瞬間に、そこでうつから脱却できたので。逆に言うと、仕事がなくなっちゃうと僕はダメダメになっちゃうんですよね。仕事が自分を助けてくれたようなところがあるから。結局、好きなことより求められていることをやっているような、そういう感じでした。

人に求められて、喜ばれる状態自体が好き

大嶋:そうすると、こういっていいのかしら。人から求められるなど、やってもらって、本当に良かったと人に言われること、それが好きだということですか?

伊藤:それはそうかもしれない。なんでプレゼンテーションとインキュベーションとリーダーシップを仕事にしているのかというと、インキュベーションはプラスで新規事業をやっていたんですよ。この経験を「KDDI ∞ Labo」というアクセラレータープログラムにメンターとして参加させてもらってやってみたら、良いサービスが生まれて。それがよかったからか、他のプログラムからもいろいろ呼ばれるようになって、インキュベーションのサポートがやれるようになったと。

プレゼンテーションも、プラスの社内でプレゼンの稽古をつけていたら、それもアクセラレータープログラムでスタートアップに稽古をしてみたら、みんなのプレゼンレベルが急に上がって。そこからいろいろなところに呼ばれるようになって、本になっていったと。

そんな感じなんですよ。人に呼ばれているうちに、だんだん得意になっていったという。好きか嫌いかというと、別に好きでも嫌いでもなくて。求められたからやったというところはあります。

大嶋:でも、それが楽しいんだよね

伊藤:そうそう。それでいうと、人に求められるのはすごく嬉しい。だって仕事で求められなくて、もうダメダメだったのがうつのときで、それが求められるようになったんだから。「俺、これで社会とつながれてるわ」というような気持ちになれているから嬉しいんです。

大嶋:それもすごくヒントになって、自分はなにが好きかと考えたとき、ある状態も好きのなかに入りますからね。例えば、羊一さんの今の話だと、求められて喜ばれる状態を作ることが好きというやつですね。

伊藤:そう。僕は今、こうやって人前でお話をしているのがすごく好きなんですけど、なんで好きかと言えば、僕バンドをやっていたんですよ。ミュージシャンになりたいと思っていて。こうして話しているのは、ある意味ステージに立っているようなものじゃないかと。忌野清志郎が「愛し合ってるかい?」「イェーイ」と言ってるような状態であると考えると、もうたまらなくアドレナリンが出るし、それが好きですね。

「価値観志向型(being)」と「目標達成志向型 (doing)」の違い

大嶋:beingとdoingのどちらが好きかという視点なんですが、beingというのは、自分がワクワクするような状態にある、あるいはそういう状態を作っている状態が好きということですよね。

伊藤:beingが好きというのは明確にあるんですよ。

大嶋:doingと言われるとピンとこない。

伊藤:わからないし、えらい人がが「ことをなす」などと言っているから、doじゃないと偉くないのではないかという思いがかなりあって。そこが自分の足かせになっていましたね。

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