好きではじめた瞑想が、いつの間にか仕事になっていた

大嶋祥誉氏(以下、大嶋):それを言えば、私は瞑想がそうなんですね。みなさん、TM瞑想や超越瞑想って聞いたことありますか? 日本人だったら長谷川潤さんや、ATカーニーの会長でワールドビジネスサテライトのコメンテーターもされている梅澤高明さんとかの著名人が実践している瞑想なんですけど。

私がマッキンゼーにいた時に、先輩がTM瞑想を実践されていて知ったんです。当時、(その人が瞑想をやる前は)仕事が大変そうで、心身ともにストレスでボロボロな印象だったんですよね

そころが、3ヶ月後に、久しぶりに、オフィスにひょこっと入ってきた時に、ツヤピカに。それこそ、目に星が入ってたんですね。で「なにをやったんですか?」って聞いたら「瞑想だ」って。直感的に、この先輩がやってるならやってみようと思って。習って、結局好きが高じて、今じゃ教える立場になりました。

伊藤羊一氏(以下、伊藤):なるほど。僕も教わりました。

大嶋:ねぇ。おかげさまで有名な編集者の方や経営者の方にも指導させていただきました。気づいたら、好きでやっている瞑想が仕事になってしまったという感じなんです。

伊藤:なるほどね。

大嶋:気づくとエグゼクティブから瞑想を教えてほしいというオーダーが入ってくるようになったり、社員に瞑想プログラムを導入したいっていう相談もくるようになり、どんどんそんな話が増えているんです。

伊藤:やってるうちに、なんとなく。だから趣味とか、やってるうちにそういうことに積み重なってくるということですよね。

大嶋:そうそうそう

伊藤:そこはちょっと、また後で詳しく話せると思うんですけど。

拡散と収束の繰り返しと、加減乗除の関係性

仲山進也氏(以下、仲山):あと僕、大嶋さんの本を読んでいて、「拡散と収束を繰り返しながらキャリアって進んでいく」っていうの、あるじゃないですか。これはまさに加減乗除で、増やす、減らす、増やす、減らす、の繰り返しなんですよ。

伊藤:なるほど!

大嶋:思いました。

仲山進也氏(以下、仲山):収束の方が難しいんですよね、たぶん。増やすのは簡単で。

大嶋:ここの2ステージ、実はけっこう減らすステージ。やるかやらないかを、ちゃんと選択することが難しいですよね。

仲山:上司に褒められることを手放す、とか。

大嶋:手放す。実はこれ、簡単なようで難しいんですよ。つい私たちって、やりたくなっちゃう。あれもこれもやっておかないとダメなんじゃないかって気分になり易い。なにをやってなにをやらないのか、なにがしたくてなにをしたくないのか。ちゃんと峻別することができるのって、大切なスキルです。

仲山:それって、振り子というか螺旋というか、周期があるものなので。「今、自分はどっちかな?」って、ちゃんと自覚することが大事ですよね。

大嶋:大事です。

伊藤:なるほどね。

大嶋:なんか聞いてみたい。今自分が、「どちらかというと広げてるほうだな」と思う人、どうですか? これ、いいも悪いもないですよ。

(会場挙手)

じゃあ、「そろそろ今絞り込むところかな」っていう方?

(会場挙手)

ほうほう。

伊藤:少なくとも「量子コンピューターとかに触れちゃいけないんだ」というのは、ここ1週間の本当に気づきです。

(会場笑)

日本や世界を股に“かけない”人になりたい

大嶋:「収束するには」の時になにが大事かを決める必要があって、そのためになにが大事かを判断する基準が必要になるんだけど、ちなみにお二人は、今の時点での判断基準ってなにかしら?

仲山:増え始めた時って、楽しいじゃないですか。いろんな人が「遊ぼう」とか言ってくれるので。それでホイホイ「やりましょう、やりましょう」と言ってると、だんだんスケジュールがいっぱいになって、「なんか忙しい……」となっちゃう。僕、人生の目標はあんまり持たないんですけど、「日本とか世界を股にかけない人になりたい」っていう目標があって。

(会場笑)

大嶋:すばらしい!

仲山:鎌倉に住んでるんですけど、大仏みたいに鎌倉で座ってると、みんながお参りしに来てくれるような存在になれればいいなと思ってるんです(笑)。移動はあんまり好きじゃないし、出張だと満員電車に乗らざるを得なかったりするから。

なので、ホイホイいろんなところへ行っていると、だんだん疲れてくるので。なんにもない休みの日とか、寝て終わったみたいな日が、なんとなく最近出てきつつあるんです。

そうすると、減らしたいなって思うようになってくる、という感じですね。だから、自然になってくる感じ。

大嶋:こういう感覚ってすごく大事かなって、今聞いてて思いました。ちなみに羊一さんは?

伊藤:僕はね、22歳で会社に入って、26歳ぐらいの時に……なんかね、順調にうつになっていくんですよね、3年間で。

(会場笑)

大嶋:順調にうつ……(笑)。

伊藤:「ライク・ア・ローリングストーン」で、下りていくわけですよ。3年ぐらいやばいやばいって言って、そこから復活するのにまた数ヶ月かかってるから、4年ぐらい。暗いつらい時期があって、それがスタートで、今はわりと解き放たれてるんですよね。

伊藤氏と仲山氏に共通しているのは自分軸の確立

伊藤:この変化は、自分が働く上でのすごく大事な価値観と信念を形作っていて。例えば「人は変われる」っていう思いとか、「フラットである」というのがすごい大事な、譲れない思いとしてあって。

だから、僕がやっているのは、実体験に基づいて、やる気はあるけどなにか悶々としてる人をサポートして解き放つというようなことをするというのが、やっぱり自分の仕事なんだなって。自分の実体験に基づいたことをやっていきたい。

つまり、自分が触れたいろんな人の経験で「こうなったよ」「だからこうなるのね」っていうことを仕事にしていきたいし、それから「人が解き放たれる」っていうここを仕事にしたいなぁっていうのは、改めて強く感じますよね。

この自分の本(『1分で話せ』)も、「表現力があんまりない人が表現力をつけたら、世の中もっと幸せじゃん」っていうことでやってるんですけどね。

そういうこととか、例えばイベントをやる時も、イベントに出てくれた人が、「もう、元気になったよ」って言って、「だから明日からがんばるぞ」ってね。それが明日だけで終わっちゃダメなんだけど、解き放たれるきっかけになったらうれしいなっていう、そういう仕事をやっていきたいですよね。

大嶋:今、お二人の話を聞いて、表面的には違うことをおっしゃってるんだけど、1つ共通のものを感じたんです。なにか気づいた人います? ここはすごい判断基準ですよ。なにをやるかやらないか、取捨選択する時に、明らかにお二人とも「ある○○」っていう共通点があるなぁって感じた。

伊藤:そうなんだ。

大嶋:違ったらごめんね。なにか(会場の中で)どなたでも(気づいた方いますか?)。「あっ、こういう共通点あるなぁ」って。

伊藤:わからん。

大嶋:たぶん、自分軸。私は「自分軸」って言うんだけど。

仲山:これ(「感情で物事を考える」)じゃない?

大嶋:それもそうですね。「感情で物事を考える」もそうだし、これはたぶん、自分の軸なんですよ。言葉を変えれば、自分が大事にしたいもの。

この時代に「グローバルってナンセンス」と言えるくらいの、譲れない価値観がある

大嶋:極端な例だけど、これだけグローバルって言われる時代に、「私はグローバルなんてナンセンス」って潔く言えるとか。でもそれって、突き詰めると、極めてグローバルにつながっていくんだけど。話を戻すと、つまり譲れない価値観を持っているということなんです。

今の羊一さんの「人に感動を与える」「自分の体験・経験から感じたことを伝えていきたい」、それで「人を変容できたらいいな」「(人に)変容してもらえたらうれしいな」っていうのって、たぶんお二人がすごく大事にしている価値観なんですよね。仲山さんにも同じ価値観を感じました。

伊藤:そうですね。

大嶋:おそらくそれが取捨選択の基準になっている気がする。ではみなさん、ご自分の軸、人生においてなにを大事にしたいのかっていうことを考えてほしい。これは、変わるかもしれないし、変わってもいいなと思うんですね。

伊藤:そうですね。

大嶋:それがなんなのかなぁって。お二人の話って、そこがすごくしっかりしているから、感動もするし、グッと心に響くんじゃないか、という気がする。

伊藤:それは完全にそうですね、僕は。仲山さんもたぶんそうですよね?

大嶋:なんかね、そこが共通点かなって感じがしたんです。

伊藤:僕はもともと銀行員だったし、その後も、文房具とオフィス家具のメーカーのプラス(株式会社)の流通カンパニーで働いていました。割と保守的な職場で「上からの命令はまず聞く!」という中で育ってきたので、自分の思いを仕事に出すとかって、ぜんぜん別のものだと思っていたんですよね。

それが「そうじゃないんだ」って解き放たれたのは、ヤフーに移ってからですよね。プラスの中でも、「自由にやろう」と思ってやっていたんだけど、最終的に解き放たれたのはヤフーで。

仲山さんが書いてるけど、上のステージは「自由」って。3.0のところには自由ってたぶんあると思うんですけど、自由ってなんだっていうと、組織に属してるので、組織がやることを別に無視をするわけじゃないけど、それは大切にしつつ、最後の最後にやっぱり重要なのは、自分の価値観や信念だということに気づいたのは、本当にここ3年ぐらいですよね。

休憩中に行なう3つのミッション

仲山:そろそろ、ちょうど前半が終わるぐらいの時間帯ですよね。

大嶋:一旦ブレイクしましょうか?

仲山:テーブルにポストイットが置いてあると思うんですけど、ここにみなさんからお題、おしゃべりのお題になりそうな質問なり、問題意識なりを書いていただいて、こちらのホワイトボードにペタッと貼ってもらいましょうか。

伊藤:ここまでの1時間ぐらいをある程度消化して、「あっ、そういうことだよね」って、他の人の意識を聞いた上で書いたほうがいいかもしれないですね。

じゃあ、人見知りでない方も、人見知りな方もいらっしゃると思うんですけど、まぁ同じテーブル同士で「こんにちは」とかをしていただきながらやってみましょう。ちなみに、ここの3人は全員実は……。

大嶋:実は人見知り。

仲山:人見知りで。

(会場笑)

大嶋:ほんまかいなと思ったかな。でも本当なんです。

仲山:10分ぐらい時間あったほうがいいですよね? じゃあ、休憩も含めて(15時)40分までに、こんにちはの挨拶と、お題をポストイットに書くのと、トイレ休憩のミッションを全部遂行していただく感じで。

(会場笑)

15時40分にはこのホワイトボードに、バーッとポストイットが貼ってある状態で始められる感じになっていると助かります。

じゃあ、どうぞ。

(会場笑)

ひたすら質問を繰り返す「質問対話」というコミュニケーション

(休憩時間終了)

伊藤:(ボードに貼られた「質問力」という言葉を見て)やっぱり質問力は大事だと思います。ずっと質問し続けられるかということですね。今日はなんか調子良いね、この間なにか気づきあった? それってそうなんだ! 次はどうしようと思ってるの? といったフレーズをひたすら聞ける人というのは、やっぱりマネージャーとしてできるやつだと思いますよね。だから、質問する力が大事だと思います。

大嶋:もし明日オフィスに行くのであれば、「質問だけで関わってみる」ということをやってみてほしいですね。「質問対話」というコミュニケーションの方法です。自分からなにも言わない。なにか言われたら、全部質問で返す。相手が答えたらまた質問で返すということをやってみてほしいんですよ。

腕の良い人は、それで30分くらいやってみると、かなり良い感じで相手が「すっごく気づきがあってよかった。」となる。こちらが相手を自分の持ってきたい方向に誘導したり、コントロールしないで質問対話ができればたいしたもんです。それをちょっとやってみて欲しいと思います。

仲山:僕、ウェブの連載で対談をやっているのですが、実際に一時間半ぐらい「へー」と「おー」しか言っていなくて、後から原稿で、僕が質問したことにするフレーズを足したりする作業がかなりあります。

伊藤:あります、あります!

仲山:それ、一番良いですよね。

伊藤:しかも、へーとかほーの言い方に、結構気を使うんですよね。「ヘーーー!」というときもあれば、「あーー」ともいう。「うんうんうん」ともいう。

仲山:そのまま話してというメッセージに見えると。

伊藤:そうそうそう。あれはすごく考えますよね。

大嶋:あと、ちなみに私は「で?」というのを使いますね。

伊藤:「So what?」 ね、「So what」。

大嶋:それの、優しくいうやつ。怖いからね。「だからなに!?」って言うと高飛車になっちゃうし。

伊藤:そうだね。質問力が大事ということでした。

伊藤:一番多かったのは……。

大嶋:強み系ですね。

伊藤:強み系。価値観系、自分軸系などですね。

仲山:強みの見つけ方ってことですか?

伊藤:他者評価からの解脱といった、そういうところですかね。

「才能」と「強み・得意」の違い

大嶋:はい。強みというのは厳密に言うと、得意なことなんではないかと思っているんです。さらに、才能と得意なことというのは、実は違うものなんじゃないかと思い始めています。

才能というのは、おそらく自分では極めて当たり前にやっているから、実はすごいことだとは思っていないこと。でも、ついやっちゃう。人から「あんたはおせっかいだ」と言われても、ついやっちゃうようなこと。

そして、強みや得意なことというのは、本当は苦しいからやりたくはないんだけど、組織にいて「やれ」と言われたから一生懸命頑張っちゃって、気付いたらすごく得意になっていて、評価されるからまたやっちゃうようなこと。でも、実は好きでもなかったりするから、苦しくなっちゃうことがあるのかなと思います。

だから、強みや得意という、本当は好きじゃないんだけど、他者が評価しているからやっていることをやらなくなっていく、あるいは、それが好きな人にお願いをするようになっていくのかなと思っています。

もちろん、これがオーバーラップする部分もあったりはしますが、やっぱり仲山さんの4のレベル、私でいうと3.0のレベル、一番最後のレベルですよね。仲山さんのいうところの序のステージだと、わりと好きや才能で生きている。もちろん得意な部分もあるんだけど、好きなことが多くなっていくのかなと思っているんですけど、どうでしょう?

仲山:引き算をするときに、この三つにかぶる真ん中の三角形以外は手放せるのかなと。まさに今のやりたいと得意がかぶっていなくて、得意だから頼まれることというのはあるよね。

大嶋:あるある。

仲山:僕の強みの定義は、同じ作業をやるのに、他の人がやるよりも自分がやった方が低コストで出来て、かつ楽しいと思えることということなんですよね。「コスト」というのはお金だけじゃなくて、短時間でできるか、手間なども他の人が工数がかかるところを自分はチャッチャッとやってしまうなど、あとは他の人がウンウンと考えないといけないところをなにも考えなくてもできちゃいますよといったように。

あとは、他の人が我慢しながらやらなきゃいけないところを、自分はワクワクウキウキしながら「至福」なんて言いながら作業できるような、そういうものが才能であると。それをポジティブに発揮することを強みのように言うのかという感じです。ですから、強みの見つけ方は、今言った視点で探していけば良いのかと。

ライフラインチャートでわかる、自分が本当に大切にしていること

大嶋:私がよくおすすめするのが、幼少期から始まって自分が本当にワクワクした「あれ楽しかったな」ということを、知り合いや友達とおしゃべりしながら見つけていくと、それがヒントになるということで。「実は本とか読んで分類するのが好きだな」とか。

例えば、話していたら、プラモデルが大好きだったことを思い出した。そこから、物事を整理分類することが実は好きだよなということがわかってくる。だから、仕事でも情報を整理したりフレームワークでまとめるのが好きなんだなと気づく。

伊藤:そうですね。僕が「リード・ザ・セルフ」ってYahoo!アカデミアでやっているのがそれで。ライフラインチャートという、生まれてから今に至るまでの時間軸で、モチベーションが上がっているときはプラスになるし、モチベーションが下がっているときはマイナスになってというカーブを描いてみて、カーブが上がっているときになにがあったんだろう、下がったときにはなんで下がったんだろうと、この変化が起きたときにどうしてだったのだろうということを、まず書いてみるんです。

書いて、人に話すんですよ。そうすると言語化できる。言語化できたうえで、「そのときになにがあったの?」「そのときはどんな気分だった?」と聞かれて「あー、このときはこんな気分だった」と普段なら自分では考えないようなことを、質問によって答えているうちに、よくよく考えてみると「自分の人生はこうだったかもしれない」という気づきが出てくるんです。

僕自身、何回もこのカーブを書いて人に説明しているのですが、質問されるたびに新しい気づきがあります。過去に自分がこういう経験をしてきたから、自分の大事な想いというのはこういうことなんだということを、明確に認識することができる。みなさんもそういう自分の大事な想いは必ず持っているのですが、それを認識できるということなんです。

ライザップの社長と伊藤氏の共通点は「人は変われる」という想い

大嶋:例えば「本当にワクワクしたことや楽しかったことはなんですか?」と自問して、好きの棚卸しをしてみるといいです。一人でやっても良いんだけど、人は書くと頭のスイッチがオンになって、つい考えちゃうんですね。だから、無邪気におしゃべりしながら、棚卸しすることをおすすめします。喋っていると無邪気にどんどん言葉が出てくるから。幼少期や学生時代、社会人の共通の傾向などが見えてくる。

伊藤:ちなみに、これはワクワクや楽しいというポジティブなことなのですが、ネガティブなことが自分の原動力になっていることもある。

大嶋:そうそう。それもあるある。

伊藤:自分の人生全てが、自分の価値観に影響を与えています。ここにいらっしゃる全員一人ひとりの価値観は違います。ちなみに、僕が一番大事にしているのが「人は変われる」という想いなんです。そんなことが一番大事だという方は一人もいないと思っていましたが、先日同じことを仰っている人を見つけて。それはライザップの瀬戸社長でした。

大嶋:すごい。

仲山:納得感がすごい。

伊藤:そうでしょ? ライザップの社長と僕だけなんですよ、知っているなかでは。ライザップの社長は「人は変われる」という思いがあるから、その仕事に命を張っているんですよ。「変われる」を保証するんですよね。そして僕は「人は変われる」と思っているからYahoo!アカデミアというものをやって、「変われるから大丈夫大丈夫!」と言っているという。

自分の強みであったりやりたいことというのは、そうした自分の大事な想いを探ることによって浮かび上がってくるのだと思います。リアルに毎日やっていることを振り返ってみると、最初はズレているように思えるんだけど、だんだん何回もやっていくうちにつながって見えてくることがある。

自分のケアをしてあげられるのは自分だけ

大嶋:それ、すごく大事だと思う。同様に、幼少期・学生期・社会人それぞれの年代の好きなことを一つひとつ見つけていくと、一見バラバラのように見える好きなことが、遠くから俯瞰して見ると「なんとなくこういう傾向があるんじゃないの」と、共通点が見えてくる。

好きなことは才能のカケラを見せてくれるし、好きのなかに才能のヒントがある。嫌いなことという視点でやっていても良いんだけど、これをやると、才能を見つけることにつながると思います。

伊藤:一人ひとり絶対に違うんですよね。なぜなら、自分の好きは、自分の人生経験からくるわけなんです。全員が違う人生を歩んでいるからこそ、その結果として思うことも全員が違うという。ここで自分なりの軸ということをちゃんと見つめて考えるということが必要なんです。

ワークショップをやってみると、驚くほどみんな「自分のことを初めて考えた」と言うわけですよ。やっぱり、あまり真正面から向き合おうとしていない。

それは、「羅針盤がないのに船に乗りますか?」ということなんです。羅針盤がない船には怖くて乗らないのに、自分のことになると別に見つめなくて良いんだと、なんとなく生きている。みんな本当に、自分のことをケアしてあげてない。でも、別に誰かがケアしてくれるわけでもない。自分がそれをやるしかない。

大嶋:そうですよね。つい他人と比較してしまい、自分じゃないものになろうとして、自分の好きなことや才能を大事にしないんですよね。実は才能を使ってなにかをやる時って、あまりにも簡単にできちゃうから、それは才能じゃなくて当たり前のこと、自分はたいしたことがないと思っているんですよ。

仲山:まさに大嶋さんの本のタイトルが『マッキンゼーが当たり前にやっている働き方デザイン』で。マッキンゼーの現役の人が書いていないという。全員がやっているから、誰もこれが強みだと思えていない。

大嶋:以前「当たり前にやっているということは、みんなが3.0になっているんですね?」という鋭い質問をされたことを思い出しました。そんなわけはないんですけど、たしかに当時、当たり前にやっていたことは才能だと思っていませんでしたね。