創業当時の楽天は、たった6人の小さなスタートアップ

小林正忠氏(以下、小林):こんにちは! お忙しいなか、そして、とても天気がいいなか、外で気持ちいい時間を送ったほうがいいかなとも思うんですけれども、本日は午後のお時間をいただきまして、「日本の未来を明るくしていく」「世界の未来を切り拓いていく」、そんな熱のある起業家の方々の発表をみなさまにお届けできたらなと思っております。

楽天で創業からずっと、市場事業のショッピングモール事業をやったり、いろいろやってきました。小林正忠と申します。我々も実は、最初は6人しかいないちっちゃなスタートアップでした。正直なにもない、夢しかない、サーバすら大学の借り物だったところからスタートしています。

インターネットも触ったことがないどころか、パソコンも持っていない。そんな方に「ネットショップをやりませんか?」というお話をして。周りの方からは「そんなの無理じゃない? できっこないよ」と、99.999パーセントぐらいの方から理解いただけないようなスタートでした。

もしかしたら今日お話しされる6名の起業家の夢は、今この瞬間で言うと、みなさまからすると「それはちょっと無理じゃないかな?」「いやいや、見えないね」と思われるかもしれませんけれども、一番大事なのは、私は信じる力だと思っています。信じる人々が1人でも2人でも増えていく。すると、世の中は変わっていく、と考えております。

楽天を起ち上げた時のミッションは「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントしていこう」と。正直申し上げて、三木谷に出会うまで、私は「Empowerment」という英語を知らなかったので、自分が人生でこんなに「エンパワーメント、エンパワーメント」と連呼するようになると思っていませんでした。

我々は「世の中を元気にしていこう」というイメージで(エンパワーメントという言葉を)使っていたんですけれども、辞書を引いていくと……「権限を与える」のほかにも、「より良い社会を築くために人々が協力して、自分のことは自分の意思で決定しながら生きる力を身につけていこうという考え方」。こんな文章が出てきます。

まさに一人ひとりが自分の意思で切り拓ける、そんな社会が作り出せたらいいなと。楽天はそれをみなさまとともに一緒に作り上げていきたいなと思っています。

「楽天にとって重要なことは何か?」を改めて問い直す

小林:先ほど申し上げたように、1997年に6人でスタートした会社ですけれども、おかげさまで、かなりの規模で事業を展開できています。

今、私のようにバッジをつけている楽天に関わる社員が、グローバルで1万7,000人ぐらいいます。事業数で言うと、70以上の本当に多くのいろいろな事業をやっています。1997年、誰からも信じてもらえなかった時、我々が金融事業をやるだろうか。そんな会社になるだろうかと、誰も想像できなかったと思うんですけれども、信じる力があればここまでできるということかなと思っております。

いろいろやってきたんですけれども、「やっぱり世の中を元気にしていきたい」「もっといい社会をつくっていきたい」。そういう考え方をしたときに、2017年後半に、楽天社員・経営陣はもちろんのこと、お客様や店舗さんといったビジネスパートナーさんも含めて、ないしは株主の方々もひっくるめて、みなさまに「楽天にとって重要なことは何だろうか?」と問いを立てました。

すると、いくつかのカテゴリが出てきました。例えば「データセキュリティ」。まさに我々は情報でビジネスをさせていただいているので、「データセキュリティ、プライバシー管理みたいなところをちゃんとやってくれ。それが重要だよね」というお声があったり、「もっともっと責任あるビジネス推進をしていってほしい」とか。

そういうふうにして、「地域コミュニティを大事にしていく」といった課題をいただきまして。これは(サステナビリティ活動における重要課題として)「マテリアリティ」という言葉で言ったりしますけれども、楽天における重要課題を4つ定めました。

楽天における4つの重要課題

小林:1点目が「ソーシャルイノベーションを加速していこう」。この国にネットショップがなく、インターネットでお買い物する、インターネットでビジネスを展開する社会がなかった時代に、楽天はそれを提供して推進していった、まさにソーシャルイノベーションを起こしていったので、引き続きこれを続けましょうということです。

2点目が「持続可能な消費を促進していこう」。なんでもかんでも売ればいいのではなくて、その後、10年後も20年後も50年後も商売を続けられるような売り場・お買場を作っていければなということで、持続可能な消費を目指すべく、昨年「EARTH MALL」という、未来を変えるお買い物ができる新しい売り場を作っております。

3点目が「地域コミュニティを持続可能にする」。楽天の創業理念である「世の中を元気にしていこう」というのは、まさに1997年に我々がやったことです。地域社会は良い商品を持っているのに、商圏が小さいがゆえになかなか成長・成功しない方々に、「楽天」というインターネットのプラットフォームを使っていただいて成長・成功していただこう。

やっぱり地域が元気になって、はじめてこの国は元気になる。その思いは変わっていないので、地域コミュニティを持続可能にしていくことが3点目。

4点目に、おかげさまでこれだけのプラットフォームを作ることができたので、災害人道支援に我々が積極的に関わっていこうと。

この4点を楽天の重要課題(マテリアリティ)として設定いたしました。そして、本日お集まりいただいている「楽天ソーシャルアクセラレーター」というプログラムは、1点目にあげた「ソーシャルイノベーションを加速していこう」というテーマの1つになります。

この20年の間に楽天は、例えば寄付やボランティアといったピュアなソーシャル活動をやってきたんですけれども、それだけではなくて、これからもっと楽天のビジネスアセットをフル活用して社会課題の解決に取り組んでいこうと。

事業として社会課題が解決していけば、それは持続可能になっていくだろうと、続けられるだろうということで、今は思い切ってそちらに舵を切っていっております。

ボトムアップから生まれた「楽天ソーシャルアクセラレータープログラム」

小林:本日お集まりいただきましたが、ソーシャルアクセラレータープログラムでは、社会起業家、ソーシャルアントレプレナーと呼ばれる人たちが素晴らしいビジョンを掲げているわけですね。

もしかしたら人々があまり気づいていないような社会課題に目を向けて、「これが課題です」と、声を上げて叫んでくださっている、エネルギーのある方々です。素晴らしいビジョンなのですが、なかなか社会起業家の掲げる課題は規模がスケールしていかないと。

もちろん規模がすべてではないんですけれども、規模で結果を出していくことによって、一歩でも二歩でも課題解決に近づくと私は信じております。そこで、楽天のアセットをフル活用いただいて、みなさまの熱い想いを、夢を実現してほしいなということで、このソーシャルアクセラレータープログラムを作っております。

これからの時代は、1社がなにかがんばってすべてを解決するなどということはもうないと思うんですね。より多くの事業者さんやより多くの方々が、お互いの強みを活かしながら競争していく。ともに新しいアイデアを作っていく。それがこれからのあり方だと思っております。

今ちょっと偉そうにいろいろとしゃべりましたけれども、実はこの「楽天ソーシャルアクセラレータープログラム」は、うちの社員のボトムアップ企画でございます。

1年少し前ぐらいに、とある社員が私のところに来て、「正忠さん、これがやりたいです。こういったことで、楽天はもっとおもしろいことができると思います」と言って。「おもしろそう、いいね!」と言って始まったのが、このソーシャルアクセラレータープログラムです。詳細はその発起人であります、田中はる奈という社員から説明させていただければと思います。

私もみなさまと同様に、6団体の発表を楽しみにしております。それでは登壇してください。みなさま、拍手でお願いいたします。

(会場拍手)

途上国支援を志しながらも外資コンサルの道へ

田中はる奈氏(以下、田中):みなさま、こんにちは。ただいまご紹介にあずかりました、楽天でシェアリングエコノミー事業部におります、田中はる奈と申します。「楽天ソーシャルアクセラレーター」の発起人であり、事務局長を務めております。

本日はすごいですね。実はこんなにたくさんの方に来ていただけるとは思っていなくて、もう本当に感無量です。わざわざお越しいただき、誠にありがとうございました。

こちらのスライドにもあるとおり、私はふだん、シェアリングエコノミー事業部で新しいサービスを立ち上げる仕事をしております。実はCSRやサステナビリティとはぜんぜん関係のない仕事をしています。そんな私がなぜこんなプログラムを立ち上げたのか、最初にその経緯を簡単にご説明させてください。

(スライドを指して)ちょっと昭和な感じの写真なんですけれども、こちらが十数年前の私の写真です(笑)。2006年は、ちょうど大学3年生の時で、いわゆる就職活動真っ最中のような時代だったんですけれども、「自分の人生をどんなふうに使っていきたいか?」と考えた時に、最初に思ったのが社会課題解決。とくに途上国支援をやっていきたいと思って、就職活動しました。

当時、「途上国支援と言ったら国連とか世銀とかJICAとかでしょ」と思って、いろいろと回ってみたのですが、残念ながら全部落ちまして。あまり真面目な就活生ではなかったので、じゃあもう、最初に受かった外資コンサルに行こうと思って、そのまま行きました。

そこから数年経った(写真です)……まだかわいくないですか? 初々しさが残っていると思うんですけど(笑)。

(会場笑)

これがそれから数年経った私の写真です。この写真はけっこう笑顔なんですけど、当時はかなり激務で、毎日死ぬほど働いて、本当に涙と汗と……思い出すだけでちょっとつらくなるような日々でした。