2018年に我々が失った、偉大な頭脳の持ち主たち

2018年を通して、サイエンスのコミュニティーは新しい世代の研究者や考える人たちを迎えましたが、それと同時に別れを告げることもありました。一年を通して亡くなった偉大な頭脳の持ち主を完全なリストにするのはとてもできませんが、ここでその中のいくつかの人たちを例に挙げて、彼らがどれだけ幅広い分野に貢献したかを見ていただきたいと思います。

なかでも一つのケースを見れば、重要な新しい知識は必ずしも科学者によりもたらされるわけではないということがわかります。ここで述べるのは2018年に我々が失った貢献者のうちのほんの数名で、なぜ我々は彼らを非常に恋しく思うのか、考えてみましょう。

ホーキング博士の名前が「天才」の同義語となったのは

スティーブン・ホーキングの友人は、彼らが子供だった時、彼に「アインシュタイン」というあだ名をつけました。後に彼本人の名前が「天才」の同義語となった理由がここにありました。

イギリスのオックスフォードに生まれたホーキングの知性は幼い時から突出していました。父親が薬学を学ぶように進めましたが、17歳の時に郷里のオックスフォード大学で物理を学ぶようにと奨学金を受けました。 卒業後、彼は宇宙論の研究をケンブリッジ大学にて続けましたが、そこで誰もが認める、我々の宇宙に関する理解を深めた彼の偉大な貢献がなされました。ホーキングの研究はブラックホールを中心としていて、そこは宇宙で一定の基準を超える非常に強い引力があり、そこからは何も逃れることはできません。

少なくとも我々はそう思っていました。しかしホーキングは時間をかけて、ブラックホールは実際にあるタイプのエネルギーを放出することができると示しました。それを「ホーキング放射」と呼びます。しかもその過程でそれらは縮小するというのです。

量子力学の一つのおかしな癖ですが、二つの物質が突然存在するようになり、その一つは通常の物質、もう一つは反物質という、互いに異なる性質を持つ物質でした。通常物質と反物質が接触するとすぐに互いを破壊し合うのですが、ホーキンスはもしその現象が戻ることのできないブラックホールの端で生じた場合のことを述べました。

その場合、反物質がブラックホールに吸い込まれ、すでにブラックホール内にいる物質と自分自身を破壊します。するとブラックホールは微量失われ、少し収縮し、「ホーキング放射」を噴出するのです。

一般相対論と量子力学を結びつけた「万物の理論」

この発見で興味深いのは、通常は一致しない「一般相対論」と「量子力学」が両方関係するという点です。「一般相対論」は物理学者が非常に巨大で素早いものを説明する時に使う論理で、「量子力学」は物理学者が非常に小さいものについて説明する時に用いられます。

それらの理論は宇宙に関してそれぞれの側面が認められますが、数学的には両立しません。この量子の事がブラックホールの端で起こるというのは相対性原理に全く則しており、両方の理論の原則を合わせたものとなっています。そして何十年もブラックホールに関して様々な研究をした後ホーキングは最終的に、これら二つのメジャーな論理を結びつけることに注意を向けました。それは「万物の理論」と呼ばれるようになりました。

それでも彼にはおおよそのアイディアがありました。その中には「虚数時間」も含まれます。この論理は聞いての通り、複雑です。この特定の問題に関して彼が解くことはできませんでしたが、それで落ち込むことはありませんでした。ちょうど「万物の理論」と同様に、かなり高尚な定義だったからです。ホーキングはALSという、まれの人生でずっと彼の体を麻痺させてきた病気により3月14日に76歳で亡くなりました。

彼の発見の他に、彼はいくつもの科学の本を書き、あの有名な打ち込み式のスピーチ翻訳機を用いて数え切れないほどのレクチャーをし、たくさんのテレビ番組に出演しました。そのようにしてレクチャー本や「シンプソンズ」などのテレビ番組にも登場することにより、彼は誰にもできなかった方法で科学を人気なものとしたのです。

サンゴ礁に人生を捧げたルース・ゲイツの生涯

生物学の分野では今年、ルース・ゲイツという海洋生物学者を失いました。

彼女はほとんどのキャリアを、サンゴ礁を救うために使いました。彼女はジャック=イヴ・クストーのドキュメンタリーを見て育ち、小さい時からサンゴに魅了され、その情熱によりやがて彼女はハワイの海洋生物学研究所のディレクターとなり、そしてサンゴ状の研究における国際社会で初めての女性プレジデントに選出されました。

1990年代に開発された分子技術をサンゴ生物学に適用し、彼女はサンゴと藻の重要な関係を発見しました。そして海水の温度が上昇することにより相互のコミュニケーションを破壊してしまうということを明らかにしました。

ゲイツは我々がサンゴを理解する助けをしただけでなく、よりよくサンゴを保護することができるよう助けてくれました。なくなる前の数年、彼女と彼女のチームは「スーパーサンゴ」の繁殖に励んでいました。

それは強力な種類で、サンゴを漂白してしまう現象や、将来の環境問題にも耐えうるようなサンゴです。ゲイツは10月25日に56歳で、外科合併症で亡くなりました。サンゴ繁殖プロジェクトと彼女が示した、海洋生物を保護する努力はこれからも続いていくでしょう。

手話を理解する女王様・ゴリラのココ

野生動物は今年、非常に重要な大使をなくしました。6月、動物行動とコミュニケーションを研究する分野は悲しみに打ちひしがれました。その分野で一番大柄で毛深い貢献者、ゴリラのココが亡くなったのです。

彼女は科学者でも、人間でもありませんからこのリストに加えるには異論もあるかもしれませんが、彼女は多くの我々の思ってきた動物の知能に関するアイディアを大きく塗り替えたのです。

1971年にサンフランシスコ動物園で生まれ、ココは師匠のフランシーヌ・パターソンからすぐに手話を習得しました。彼女は千単語以上を手話で話すことができ、口頭の英単語も二千単語以上理解することができました。

彼女は自分のことを「女王様」と呼び、ナショナルジオグラフィック誌の表紙を二度飾り、何匹かの保護された猫の世話をし、ロビン・ウィリアムズと友達になるなど、非常にたくさんのことをしました。パターソンはココとしっかり会話することができたため、我々は質問をするだけでゴリラの認知能力を新たに発見することができたのです。

例えばよく知られたところでは、「動物は死んだらどこにいくのか」と聞いたところ、ココは、「居心地のいい穴」と答えました。サンフランシスコ動物園にある家でパターソンとともに過ごしたココの一生は心地の良いもので、亡くなった後も心地よく感じていると願います。彼女は寝たまま亡くなりました。さようなら。