「ハイブリッドスクーリング」を推進

松浦真氏(以下、松浦):G-experience代表の松浦真です。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

G-experienceは「Learning & Working Anywhere, Anytime」を実現するために、秋田から、日本全国、そして世界のすべてが子どもの学び場になる活動をしています。

G-experienceは、複雑性を増す社会の中で、大人と子どもがともに学び合い、主体的に生きる力を育む環境を実現することを目的に、「ハイブリッドスクーリング」という新しい学び方を提案・実施している団体です。

私たちが解決したい社会課題は、多様化する社会の中で、学校以外の学びの選択肢がないということです。そして、未来を生きる子どもたちに、その選択の機会をつくりたいということになります。

では、この学びの選択肢がないことによって、どんな問題が生じるか、例を1つ挙げていきたいと思います。

例えば、不登校の場合。不登校は、小中学生で年間30日以上欠席する児童生徒のことを指しますが、日本には30日以上休んでいる子どもは約10万人いるといわれています。しかし、年間30日以上ではなく、年間で4〜5日、もしくは1週間ぐらい休む子どもたちは、実は不登校とは呼びません。

それでは、そういう不登校傾向にある子どもたちは何人いるかというと、33万人いますので、合わせて43万人。昨年のデータで、小1~中3までの生徒数が470万人なので、約10パーセントの子どもたちは学校が合わないと思っています。

ちょっと会場に聞いてみましょう。学校の授業の進め方など、自分のやり方に合わなかったなという人、手を挙げてください。

(会場挙手)

あっ、けっこういる(笑)。

そうですね、合わない人もいると思うんです。じゃあ、その合わない人たちが再び学校に行けることが解決策なのでしょうか? 私は違うと思うんです。これだけテクノロジーが進んで、大人もノマドといったように、働く場所やパラレルワークなどが選べるようになった時代に、子どもだけは同じ場所で学ばないといけないのでしょうか?

実際に日本財団が昨年行った(調査の)データでは、学校に来ている子どもたちの声として、「学校で授業は聞いているけど、もう無気力になっている」といったような、いろいろなデータがあります。これも全部、学校以外の選択肢がないことが引き起こしている問題だと思います。

自分で学びを作っていく子どもを支援

松浦:不登校はあくまでも問題の1つです。この不登校以外にも、例えば、引きこもってしまうこと、うつ病になってしまうこと、自己肯定感が少なくなることは、学校以外の学びの機会が得られない問題とつながっていきます。

G-experienceは、学校以外の多様な学びの環境を作り出しています。秋田でさまざまな学びの場として、ハイブリッドスクーリングを提供し、企業とコラボレーションも行っています。

私が住んでいる人口9,700人の小さな町、秋田県五城目町という場所では、廃校となった校舎を使ったインキュベーション施設が5年前にオープンして、いまは14社が入っています。そして、いろいろな企業と一緒にコラボレーションしながら、子ども向けのさまざまな活動も始めています。

また、秋田で500年続く朝市がありまして、子どもたちが出店するとなると、道路交通法から見て問題があったり、警察に文句をいわれるんですが、500年続く文化のほうが強いということで、子どもたちがここに出店することもOKになっています。

人口が9,700人の町ですが、なかなか学校が合わない子どもたちも4〜5人います。その子どもたちが平日の昼間に、私たちと一緒にプログラミングをしたり、自分が学びたい歴史や地理などをどんどん探求していく場所を作っています。「遊ぶとき・学ぶとき」がミックスされたような場所で学んでいます。

そこで大事だったのが「ハイブリッドスクーラー」という言葉です。まだまだ日本では「ホームスクーラー」という言葉も知られていないんですけれども、家だけじゃなく、積極的に家から出て、自分で学びを作っていく子どもたちのことを「ハイブリッドスクーラー」と呼んでいます。

つまり、なにかとなにかを組み合わせる……学校の学びと学校外の学びを組み合わせて、ハイブリッドするスクーラー、学ぶ人を増やしたいと考えています。

ハイブリッドスクーリングは、不登校の子どもたちが30日間学校に行かず、学校外で逆に自分の興味・関心を広げていく。そして、大人は答えを持って指導するんじゃなくて、サポートをして伴走していく。

そして、学んだ子どもたちが学校にまた帰ったときに、「僕は今日、○○県に行って、こんなことを学んできたんだよ」などと学校の子どもたちにも提供する。そういう循環を生み出す活動を始めています。

ハイブリッドスクーラーには、どんな子どもたちがいるかというと、探究心が強くて、学校で学ぶ以上のものを求めている子どもがいます。うちの子は小4なんですけど、いまは中1レベルの数学を学んでいたりと、発達のでこぼこが大きい子もいます。うちの娘で小1の子は、地理がすごく好きすぎて、(地理は)小4からしかないんですけど、小4からしか学校に行きたくないといっています。

そういったかたちで、学校での学び方が自分の発達段階に合わなかったときに、無理やり学校に合わせるんじゃなくて、それを伸ばすということを、1年〜数年かけて行っていくということをしています。

自己決定の行動を促していく

松浦:なぜ私たちが、そんなハイブリッドスクーリングを提供しているのかというと、自己決定することを大事に考えているからです。今日、会場に足を運んでいただいているみなさまの中で、自己決定して、自分で「ここに来るぞ」と決めて来た方、手を挙げてください。

(会場挙手)

あっ、多い。その人たちは、たぶん幸福になれると思います(笑)。

(会場笑)

自分で決定すること。ここに来ることもそうですし、「今日の晩ごはんを何にするか?」もそうですけど、自己決定することは幸福にすごく影響します。学歴は影響しない。そして、年収も800万円以上は影響しないことが、データで出ています。

つまり、先ほどの楽天のエンパワーメントの言葉どおり、自分で自分の人生を決めていく、それがその人の幸福につながっているんですね。それを促進する場所を子どもの時から提供したいというのが、私たちのやり方です。

パン屋さんに社会見学に行くときに、「とりあえず、行きましょう」といわれても「へえ」で終わります。しかし、「なんでパンを発酵して食べるんだろう?」「Breadの語源は何なんだろう?」など、自分で目的を持って参加すると、まったく(参加への意識が)変わってくるんですよね。そういう学び方における自己決定をどうやって作るのかを、次の動画で紹介します。では、お願いします。

(映像が流れる)

ちなみに、この完全版はあちらのブースで流れていますし、YouTubeでは170万回再生されており、1万5,000ものコメントがついています。ぜひ見てもらったらと思います。

要は、新しい学び方なので、たぶん反発もたくさんあるんです。しかし、RSA(Rakuten Social Accelerator)に参加してからのこの半年間で、共感してくださる方がとても増えました。それがなによりありがたいことですし、企業の方も、こういう学び方がこれからの未来にあるんじゃないかということで理解してくれたことを、とてもありがたいと思っています。

こうして学んでいる私たちが、なぜ旅を選んでいるかといいますと、旅というものは思ってもないことが起きることが多いんですね。行った場所に応じて……単純な選択だと「今日は何のご飯を食べようか?」ですし、高度な選択では「いまある材料から何を作るか?」を考えます。

旅先では自分が食べようと思ったものがない、お皿がないといったときに、「どうしたらいいのか?」を子ども自身も考えます。そこで大人が先回りして答えを出すんじゃなくて、子どもが考えるということを、私たちは実行しています。そうすることで、自己決定の質と量がどんどん改善されていき、それが子どもたちの未来の自己決定にどんどんいい影響を与えると考えています。

ミネルバ大学に見る、「学ぶ」の多様化

松浦:実は、松浦家だけではなく、全世界的にも広がっている流れの1つについてです。ミネルバ大学をご存じでしょうか? ミネルバ大学は、合格率が1.7パーセントといわれる大学で、ハーバードより行きたいという学生が増えています。ここは校舎がありません。そして、19人以下の少人数で、すべてオンラインで、いろいろな地域を回りながら学ぶスタイルの学校です。

また文部科学省は、教育機会確保法という、「学校に行かなくても学べる方法を作ろう」という法律を制定しました。そして、地図を見てもらうとわかるように、ホームスクーラーも全国的な広がりを見せています。東京大学も「ROCKET」という異才発掘プロジェクトで日本財団さんと協力しており、もう5年ぐらい経っています。

こうしてどんどん学び方が多様化しているので、学校という場所に縛られなくても、子どもたちが学ぶ機会を得られるようになってきました。

そして、RSAにおいて、そんな学びをどうやってもっと加速化できるかと考えた時に、私は最初に、このLWAA(Learning & Working Anywhere, Anytime)を実現するためのツールの開発をしたいと考えました。ただ、実際にやってみると、半年ではなかなかツールを作れないですし、プログラムも難しいものがありました。

ということで、私たちがこのRSAで進めていく上でのコミュニティを、一人ひとりの方と一緒に丁寧に作っていくということで、楽天の本社で4回ほどイベントをさせていただき、延べ100名以上の方に来ていただきました。その(イベントにおける)コミュニケーションや専門的な部分を、楽天のみなさまにご協力いただいたのです。

では、ここから楽天のRSAの取り組みについて、チームリーダーの夜久さんのほうからお話しいただきたいと思います。

(ハイタッチして交代)

(会場笑)

ハイブリッドスクーラーの成果を記録

夜久:みなさん、こんにちは。楽天ソーシャルアクセラレーターでG-experienceチームのチームリーダーをさせていただいている夜久と申します。

我々は、8月以降、こちらの合計11人のチームメンバーで走り抜けてまいりました。こちらのメンバーですが、幸いなことに、なんと当初から1人も脱落することなく、今日まで至っております。ただ、本日、インフルエンザや身内の都合等々で来られない者が何名かいて、少し残念に思っているメンバーが各地にいるのですが、本日、あちらのブースにですね……みんな!

(メンバーに向けて手を振る)

本日来られる人は全員、あちらに集まっております。

(会場笑)

では、何をしてきたかについてです。先ほど松浦さんからご紹介がありましたように、「①企業とのコラボ事業での成果検証。保護者向けのサービスの構築」と、「②ハイブリッドスクーリングの認知拡大と、学びの記録方法の検討」というところで、いわゆるマーケティング活動の部分を、我々のチームとG-experience様とで行いました。

具体的にどのようなことをやったのか、2つ名前をつけてみました。1つは、「集まれ、ハイブリッドスクーラー!」。2つ目は、「学びの記録」。具体的にはこのような活動を行いました。

①では、秋田県五城目町の現地調査です。楽天事業部とハイブリッドスクーラーでのワークショップの実施が2回。そして、ハイブリッドスクーリング実践者とのタウンミーティング@楽天クリムゾンハウス。こちらも2回実施しました。そして、G-experience様のコンテンツの整理と営業資料の作成というところまで行いました。

②の「学びの記録」の部分では、実際に秋田県五城目町にも行かせていただき、直接取材をしたり、親御さんにもご協力いただきながら、学びの記録、記入シートのトライアルを実施しました。また、その親御さんへのアンケートの作成と実施、そして実践者のデプスインタビューまでを行いました。

その結果、得られたものをこちらにまとめております。①では、まず実践者向けのコミュニティづくりがきちんとできました。そして、「ハイブリッドスクーラーは各地に散らばっており、やはり実際に会うようなタウンミーティングの機会が非常に貴重である」というありがたいお言葉も頂戴しております。

「学びの記録」では、子ども自身の学びの記録をするのではなく、それを誰かと共有し合いたいニーズのほうが重要であることがわかりました。そして、親主体で電子媒体を用いた記録を残して成功している事例も判明しています。

さて、その結果を受けまして、今週から松浦さんが新たな取り組みを始めています。それがこちらのオンラインサロン。後ほど詳しく説明させていただきますが、こちらが始まっておりますので、興味のある方はブースに今すぐダッシュしてみてください。