電気飛行機は実現するのか?

ステファン・チン:クリーンで再生可能なエネルギーを使うことは、私たちの地球の安全と健康のためにとても重要です。それほど驚くことではないでしょう。

ですから、多くのビルが太陽光発電や風力発電へと切り替え、電気自動車が主流になりつつあります。

そこで飛行機です。毎日、数万の商業飛行便が地球のまわりを飛び回り、そのほとんどが何千リットルもの石油を基にした燃料を搭載しています。

では、電気飛行機というのはあるのでしょうか? エアバスやNASAの航空機デザイナーたちが電気航空機に取り組んでいます。しかし、だからといってあなたの次の休暇が、熱放射をしない電気旅客機になることは期待しないでください。

飛行に十分なエネルギーをどのように格納するか

現在のところ、ジェット燃料のほうが優れているのです。電気だろうとその他のエネルギーだろうと、旅客機のデザイナーたちにとっての挑戦とは、飛行に十分なエネルギーをどのように格納するかという点を解決することです。

重量とスペースが限られているので、効率的で軽量な電力源を持つものこそが理想的な飛行機でしょう。航空機デザイナーたちが思案しているのが、単位体積ごと、もしくは燃料の単位質量ごとのエネルギー量を示す燃料エネルギー密度、または比エネルギーと呼ばれるものです。

ジェットAとジェットA-1は、最も頻繁に使われている商業用のジェット燃料で、その他の燃料が得られるのと同じだけのエネルギー密度があります。これらのジェット燃料は1キログラムごとの燃料、もしくは原料約1リットルごとに4,300万ジュールのエネルギーを保有しています。

比較対象としては、これは43本のダイナマイトを炭酸ボトルに詰め込んだ時とほぼ同じエネルギー量です。

その一方、商業的に使用できる最高の電池は、ジェットAとジェットA-1が持つエネルギー量の48分の1よりも少ない、1キログラムあたりたった90万ジュールしかありません。

ジェット燃料と電池は、どのようにエネルギーを蓄えるかで違います。ジェット燃料はエネルギーを直接、化学結合の構造の中に蓄えます。そして、それを燃焼するだけです。

電池を使った空の旅は、レンガを山積みして旅することと同じ

その一方で電池は、荷電分子やイオンの中に蓄えます。電池は、アノードと呼ばれる負のイオンをカソードと呼ばれる正イオンへと電子を移送することでエネルギーを解放します。

しかし、電池のエネルギー解放にはたくさんの部品が必要となります。アノード、カソード、転送するための荷電イオンのための電解物、そしてこれらをすべて入れておく容器です。さらに、これらの部品はとても場所をとります。

もし典型的な旅客機ジェットであるボーイング737型に電気で動力を供給するなら、100万キログラムの重量の電池を山積みすることが必要となるでしょう。これは旅客機の最大積載量の13倍にあたります。ですから電池を使った空の旅は、レンガを山積みして旅することと同じなのです。

いくつかの企業は現在、全て電力による旅客機の開発に取り組んでいますが、それがすぐに普及することは期待しないでください。

より小さく、エネルギー密度の高い電池の実用化

次の大きなステップは、私たちが電力の部分を解析している間に、(燃料から電力へと移行する)補助輪となる、ハイブリッド電力システムを組み立てることです。そしてさらに重要なのが、より軽く小さな電池を作ることでしょう。

研究者たちはすでにこの課題に取り組んでおり、ケンブリッジの科学者らは、現在の技術より10倍のエネルギー密度を持つ特別なリチウム空気電池をすでに開発しました。しかし、その実用化にはまだ時間がかかります。

ですから、今はまだトレイがついた座席にシートベルトをして座って、灯油燃料を使ったフライトを楽しんでおいてください。